ある若者が部屋に閉じ込められていた。謎の空間にいる若者は、そこからロボットと怪獣の戦いを見ることとなるが...
 
 オリジナルのロボットもののような作品です。楽しんでもらえたら幸いです。

 
 

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閉じ込められた若者

 20代くらいある若者がどこかで目覚めた。彼が最初に感じたのは、幸福だった。どういう夢を見たのかは覚えていなかったが、幸せな夢だったには違いないの彼は思う。しかし、夢での幸福感は消えさり現実に戻った感覚が脳から響く。

 

 昨日は、酒を飲みすぎた。ある種の飲み会をしていたからだ。若者は、とある連絡を受けると決まっていつもより多めの酒を友達と共に飲んで騒ぐのが恒例行事である。それでも二日酔いになることは今までなかったため、彼はこの脳から響く頭痛に悩まされ、次は飲みすぎないようにしようと反省する。

 

 頭痛と焦点の合わないぼやける景色に悩まされる若者だが、しばらく経ち、周りが把握しやすくなってからこの状況に気づく。

 

 ここが家ではないことだ。とある連絡を知らされた後は、自分1人で住んでいるマンションの広めの一室で飲み会をすることにしている。そのため、目覚めた場所はベッドの上であり自分の寝室であるはずだが、シートベルトのようなもので胴体を固定され座っている状態で目覚めていた。そして、身に覚えがない狭い空間の中にいた。

 

「なんだここ...?」

 

 目覚めて第一声が疑問である若者は、あたりを見渡すが見渡すほどの広さはなかった。天井についている電灯である程度見えるこの空間で最初にわかったのは、自分が鉄の箱のような部屋にいること。その次にわかったのは、今まで寝ていたであろう、肘掛け付きの自動車シートのような座席である。他は何もなく、座席が一つあるだけの人1人入れるドアのない狭い一室である。

 

「...おい!誰か!誰かいないのか!」

 

 状況が理解できた途端、一気に背筋が冷たくなり、パニックになる若者。

 

「誰か助けてくれー!誘拐されたんだ!誰かいないのか!」

 

 若者は隣の壁を両手で叩き、助けを求める。しばらく経ったあと何度叫んでも助けが来ないことに気づき、一旦落ち着こうとする。しかし、突然の誘拐に落ち着くことができず、怯えて頭を抱えてしまう。

 

 抱えた時、自分がヘルメットのようなものをかぶっていることに気づく。ヘルメットを手探りに触っているとボタンのようなものを見つける。押すと電子音が流れ、目の前を隠すように上から何かが下される。急に何かが視界を妨げたことにビビるが映像のようなものが流れる。会社のロゴマークらしきものが出た。VRゴーグルのようなものかと彼は思った。

 

 ロゴマークの映像が、別の映像に切り替わる。自分の目の前にロボットのようなものが立っていた。そのロボットは、若者が5才の頃に見ていた日曜の朝のヒーロー番組に出てくるような見た目だった。全身が真紅のカラーで鎧武者を思わせるこのロボット。このヘルメットから見られる映像はこれだけではなかった。どうやら、VRゴーグルのように方向を変えることでその方向が見えるようになっていた。方向を変えるとそこには、他にもロボットが同じ方向で揃えられた状態で立っていた。そのロボットを小さな人間たちが、いじっていた。おそらくこのロボットはでかい。巨大ロボットだと若者は思った。そして、自分もこの巨大ロボットに乗っていることに気づく。

 

 この状況を見て、若者は何かに気づいた。

 

 -これは、ゲームか!最新のVRゲームか!あいつらが俺が寝ている間にここに入れたんだ。そういえば、動画配信とかやってたもんな...。これは俺を驚かすためのドッキリだ-

 

 そもそもロボットのようなもの...ましてや巨大ロボットが現実にはいない、アニメやマンガの中の話である。それが目の前に複数もいるため、これはVRゲームか何かで、ロボットを操縦する感覚を体感するようなものだと若者は考えた。

 

 そう考えるとこの状況は、別に悪いことではない。ロボットには興味はない若者だがこういうことなら別である。このまま待っていれば、ロボットが何かの怪獣に勝って映像が終わり、壁が倒れて友達がカメラを持ってドッキリであることを伝えてくれて笑いあうだけなのだから。このことを今もどこかについているであろう隠しカメラで見られていることを考えるとさっきまで誘拐だの叫んでいた自分が馬鹿らしくなった若者は、表情が明るくなる。

 

 -でも、これがゲームならリモコンがついてるはずだよな?なんでついてないんだ?あっこれはVRゲームじゃなくてVR映像か!ならまあ、同じようなもんだから気長に楽しもう。-

 

 しばらくするとロボットの目が一斉に光り起動する。右奥にいるロボットから順に前へと足を動かしていく。次々に動き出し、若者の番になると乗っているロボットは、彼に操作されもせず動き出す。一歩一歩と前へ歩んでいくごとに、その振動がこの部屋にも伝わってくる。前へ前へと歩いた後はそのまま右に曲がり、ドアのない大きなエレベーターに若者含めた4体が乗り、上へと上がっていく。

 

 若者は、非常にワクワクしていた。ロボットには興味はなかったが、ロボットに乗っているような体験を実際に感じるとその手のマニアでなくても、心が踊るものである。ロボが動くごとに伝わる振動と音、それにエレベーターで上がっている時の音とこの待ち時間も彼は楽しんでいた。おそらくこの後、怪獣が目の前に迫っていて戦うことになる。その時、どのような体験をするのかと期待を膨らませる。

 

 そして、ついに待ちに待った外である。このエレベーターはそのまま外につながっていた。後ろを見るために後ろに体を捻るとロボよりも大きな建物が立っていた。四角い箱が積み重なったような形状と一番てっぺんの回転するアンテナ。おそらくロボットを作った研究所に違いない、まさしくアニメだと若者は思う。

 

 若者がそういったことを思っているとき、何か獣の声のようなものが、前から聞こえてくることに気づき前へと向き直す。

 

「すげー、怪獣がいる」

 

 そこには、たくさんの怪獣がいた。形がわかる程度の遠くの距離にいた。水色のヒトデに、黄緑の二足歩行のアリ、紫色のナメクジそんな印象が強いこの怪獣たちは、同じような見た目のものがそれぞれ複数存在し一つの軍団となっていた。 

 

 元の動物そのままの見た目と元の動物にはないであろう奇抜な色の怪獣は、見る人によっては安直すぎると思われるが、若者にとっては怪獣そのものでこれから自分が乗っているこのロボットが戦うとなるとすごい体験になるとウキウキしていた。

 

 付け加えて敵は怪獣の軍団であり、立ち向かうロボットも軍団である。正義の巨大ロボット軍団vs悪の大怪獣軍団といったところ。ウキウキできないシチュエーションではなかった。

 

 ロボット軍団が全機地上に上がり、3列になって戦列を組む。若者の乗っているロボットは2列目にいた。

 

「そろそろ、戦いがはじまるか」

 

 若者がそう言った時、怪獣軍団が迫ってくる。その中でも黄緑アリが2本の足を素早く動かして、先陣を切る。

 

 怪獣が動き出したところで、1列目のロボットが右手を顔の方に向けてポーズをとる、とると兜の部分が燃えて炎の火球が飛ぶ。向かってくる黄緑アリは火球にあたり燃えて炭のように黒くなって倒れていく。

 

 それでもいくつかの黄緑アリは、火球を避けて尚も向かってくる。その後ろには、自分自身を転がして動く水色ヒトデと這って動く紫ナメクジが続いてくる。

 

 火球を1発撃った1列目のロボットたちが前へと動き出し、前へ走り出す。巨大なロボットとは思えない軽快さで走る。それに続くように2列目3列目も走り出す。

 

「おおお!走ってる。走ってる。すげぇ~!」

 

 昂る若者をよそに、怪獣とロボットによる接近戦が始まる。若者が乗っているロボットが目の前にいる黄緑アリの顔を殴り、よろけたところをもう一度、両手合わせた状態でハンマーのように黄緑アリの頭に打ちつける。頭は砕かれ黄緑アリは前へ倒れる。そして、次々と攻めてくる黄緑アリを拳と蹴りで屠っていく。

 

「よし。いけ!そこだ!」

 

 若者は、見たものを全部口に出さないと気が済まなくなっていた。周りの状況も気になり首を右左に向けて、ヘルメットを通して見てみる。他のロボットも同じように格闘戦をするものやどこから出したのか刀や槍で戦うものもいた。

 

「武器持ちもいるのか~。こいつもはやく使わないかな~」

 

 と、若者は自分が乗っているロボットがどう戦っていくのかの期待をふくらませていく。

 

 ロボット軍団が有利に戦いを進めていくが、戦況は一変する。

 

 若者が右側を見ていた時だった。槍を振り回し前方の黄緑アリをなぎ倒していたロボットの腹部に何かの物体が刺さる。それは、怪獣軍団にいた水色のヒトデだった。

 

 ロボットは、怯むことなく腹に刺さった水色ヒトデを掴み引き抜こうとするが、水色ヒトデも怯むことなく回転し加速。そのままロボットの腹を切り裂いてしまう。切り裂いたと同時にロボットは内部から火を吹き爆発する。

 

「うわぁ。味方がやられたよ...」 

 

 ロボットの爆発に驚愕する若者。よく見れば、周りのロボットもこの水色ヒトデの猛攻に苦戦を強いられ、当たる前に、火球や武器で撃ち落とすものもいれば、他の怪獣と戦っている隙を狙われ不意打ちで爆散するものなど、激戦が繰り広げられる。

 

「飛ぶとかなしだろ...」

 

 若者は今のいままで、無敵だったロボットが飛行し相手を切り裂く水色ヒトデの猛攻で爆散する姿に驚愕すると同時に、水色ヒトデの存在を反則のようなものだと思っていた。

 

 若者のロボットの前方に少し距離はあるが水色ヒトデがいた。水色ヒトデは身体を水平に回転すると宙を浮く、そしてそのまま若者のロボット目掛けて飛んでくる。

 

「うわぁ!きた!」

 

 水色ヒトデの攻撃に怯む若者のことなど知らないとばかりに、ロボットは火球を飛ばして水色ヒトデを撃ち落とす。それに続くかのように、3体ものヒトデが襲いかかるが、ロボットは火球と腕から複数の手裏剣を高速で飛ばして応戦する。1体は火球で丸焦げになり、2体は手裏剣に身体を切り裂かれ地に落ち、トドメと言わんばかりに火球を受ける。

 

「おお。強いぞこいつ」

 

 自分のロボットが、他のロボットを倒していた水色ヒトデを一気に複数倒したことに若者は元気になる。このロボットは、もしかすると見た目は他と同じかもしれないが中身は特別かもしれないと若者は思う。

 

 そう思っていた時、乗っているロボットの足元が盛り上がる。地面が動き滑るようにロボットのバランスが崩れる。転倒はまぬがれたが中に乗っている若者のいる部屋も傾く。

 

「なんだ。何が起きてる!?」

 

 ただの地震でもないこの現象の正体は、怪獣である。地面の土を盛り上げ吹き飛ばしたのは、紫色のナメクジだった。地面を這うだけが移動方法ではなかったのだ。

 

「うわぁ!巨大なナメクジ!気持ち悪!」

 

 近くで見るとわかるナメクジがそのまま巨大化したかのような見た目とロボットを覆うような巨体に若者は、気持ち悪さを感じていた。

 

 紫ナメクジは、ロボットの目の前に現れ、ロボットに覆うように体全体を使って押しつぶそう。ロボットは、見事なみのこなしで転び回避する。回避されたことに気づいた紫ナメクジは、身体を素早く起こし口と言える部分から液体を吐く。

 

 見た目に反して、ちょっとした動きだけならロボットよりも早かった紫ナメクジの攻撃に、ロボットは防ぐことができなかった。液体は、ロボットの胴体にかかる。そして、かかった部分を溶かしていく。これは強酸だったのだ。この強酸は、ロボットだけでなく若者にまで影響することとなる。

 

 若者がヘルメット越しで見える映像は、ロボットの頭部に近い位置からの映像であるためか、紫ナメクジの攻撃がどのようなものだったかいまひとつ理解できていなかった。が、彼のいる部屋の天井が何かの液体が染みてそれが床へ落ちてきたことで、異変が始まる。

 

 若者は、何か床に水滴のようなものが落ちていることに気づきヘルメットのバイザーのようなものをあげる、するとその水滴が落ちた地面を溶かしていることに気づく。

 

「な、なんだ?」

 

 不注意にもその液体に近づくため、なぜか外れないシートベルトを無理矢理でも外そうとする。その時、天井の方から光が刺してくる。

 

「ひ...光?」

 

 部屋を照らしていたものとは違うその光の先を見ると、天井部分に穴が空いていた。やがて、目が光に慣れてくると光の先が見えるようになる。

 

 それは、空だった。青い空が見えた。若者は、この部屋は室内ではなく外でやっていたのかと思う。もう終わりなのかと若者が思った時、急に青い空は黒くなる。

 

 何かに遮られたようなものだった。よく見ると黒ではない。紫だ。

 

「え...なんであのナメクジが...」

 

 そう、今、ヘルメットの中でロボットと戦っていた紫ナメクジの巨大な顔が空いた穴から見えた。そして、紫ナメクジを何か巨大な拳のようなものが殴っているのを目にする。

 

「うそだ...ゲームかアニメじゃなかったのか!?これぇ!!」

 

 視点は、部屋の中から外へと変わる。ここは、現実の出来事であり戦場だった。怪獣と戦いを繰り広げるロボットは怪獣とともに現実に存在していた。人型であり人間の顔を模した頭部と真紅の甲冑を模した身体。このロボットは、別次元から出現する怪獣から地球を守るために作られた全長30mの量産型ロボット戦士「ダイムッシャー」である。

 

 若者が乗っているこのダイムッシャーは、胸の装甲を紫ナメクジの強酸で溶け、機械的な部分と若者のいる部屋とされるカプセルが丸見えになっていた。だが、奇跡的に溶けたのは装甲とカプセルの端のみであり、侵食することはなかったためロボットに与える影響は防御力の低下のみとなっている。

 

 ダイムッシャーは、生物ではないため痛みを感じない、搭載されているAIが操縦するため、パイロットによる操作も必要としない。そのため身体が完全に壊れるまで戦い続けることができるのだ。

 

 自分を攻撃した紫ナメクジに対して、ダイムッシャーは額の円状のマークを赤く発火させて火球を飛ばす。武装の一つ「ダイカキュー」である。ダイカキューを食らった紫ナメクジの体全体は炎に包み込まれやがて黒い炭の塊になり地面に倒れる。

 

 続けるように、水色ヒトデ3体が前左右の方向から飛んでくる。ダイムッシャーは、足の外側についている部品から十文字槍型の武器「ムッシャージャベリン」を上に飛ばす。上がってきたジャベリンを掴み、素早く円を書くように振り回す。ジャベリンの刃が水色ヒトデを斬り裂き、斬れない範囲まで接近していた水色ヒトデは長い鋼鉄の棒によって薙ぎ倒してから腕から出す手裏剣「ムッシャーカッター」の的にされトドメを刺される。

 

 戦いが激化するごとに次々と倒れるダイムッシャーの中で、若者が乗るダイムッシャーは戦い続けていた。次第に残った怪獣たちに囲まれ背中を任せる仲間もいなくなるもダイムッシャーに搭載されているAIは敗北を認めなかった。振り回していたジャベリンが、戦いで消耗し切れ味がなくなると額に当て炎を纏わせ爆弾にして敵の群れへと投げ込む。爆弾で複数の怪獣を巻き込む形で爆発が起きる。爆発が起きた後も近づいてくる怪獣たちをカッターと火球で数を減らす。

 

 それでも残った怪獣に対して、ダイムッシャーは掌から刀身の長い日本刀型の武器「ムッシャーソード」を呼び出し両手で柄を握りしめ構える。狙うは胴体か頭のみ。無駄に動かず、攻撃範囲に入った怪獣を正確に、1体に対して一振りで仕留めていく。四方八方から来る怪獣に対してダイムッシャーは決して引かなかい。

 

「なんだよ...一体どうなってるんだよ...」

 

 その頃、若者はヘルメットを外してうつむいていた。怪獣の断末魔や怪獣を斬り裂く音やそれ以外にも何かよくわからない不気味な音、ヘルメットからの映像では聞こえてこなかった音が若者のいる部屋にも入り込み別々の音が合わさり不快なものとなって若者を苦しめる。今までのことが現実であるという恐怖とこの不快な音、どうしようもない絶望感の中で若者は、なぜこんな苦しみを受けなければならないのかと心の中で何度も問う。何度も何度も頭の中で問い続けていき、やがて問いは怒りになって口に出していった。

 

「おい!おい!!どういうつもりだ!!ドッキリじゃねーのかよ!!ふざけてんじゃねーぞ!!おれが何したっていうんだよ!おい!!」

 

 ただ怒りのまま叫び続ける若者。何がどうなのかはわからないが友達が裏切ったと彼は思っている。

 

「タダじゃすまさねぇぞ。お前らの親父なんて関係ねぇ!こんなもん被せやがって!」

 

 勢いのまま、もう一度ヘルメットを被る若者。ヘルメットの映像は、今も外の状況を映していた。外は、ダイムッシャーがひたすら怪獣をムッシャーソードで斬っていた。若者は、乱雑に見る方向を変えて荒れる。若者自身なぜこんなことをしているのかは怒りと混乱で考えていない。

 

 その時、たまたま左方向で両膝をついた状況で停止しているダイムッシャーに目がいく若者。この停止しているダイムッシャーの胸から何かがついているように見えたからだ。距離があったため何かはわからなかった。が、その時ヘルメットが意思に応えるようにその部分だけが拡大される。

 

「!?」

 

 拡大してわかったこと、ついていたのは人間であり若者がさっきまで裏切り者と思っていた友達だった。もう死んでおり頭から血を流し目は開いたままだった。

 

「ヒィ...!」

 

 友達の裏切りではなかった上に死んでいたのだ。若者にはもう1人いつもつるんでいる友達がいるがおそらくこの戦場で転がっているロボットの中にいると思った時、若者は一気に血の気が引いた。そして、被っているヘルメットを投げて見ているだろう誰かに向かってまた叫ぶ。

 

「こ、こんなことをしてタダで済むと思ってるのか!目的はなんだ!復讐か!ふざけんな!遊びで死んだのが悪いんだよ!」

 

 叫びを上げるもののさっきとは違い口は震えていた。

 

「お、おれの親父は警察官僚なんだぞ!そ、それにお前らが死なせたおれの友達の親父は政治家だし、あいつの親父なんて自衛隊なんだぞ!お前らはもうタダじゃ済まされないんだ!おれが死んだ時点で警察も敵に回すんだぞ!」

 

 何が言いたいのかがわからなくなっているものの、この状況をどこかで見ているものへ、若者は怒り、命乞い、怨みといったものが合わさった訴えを続ける。

 

 訴え続けていた時、強い衝撃が左側から響き大きく揺れる。しかし、若者の叫びに似た訴えは止まらない。訴え続けないと正気を保っていられないのだ。そして、やがて白い光に包まれこの身が消え去るまで若者は、恐怖が残った状態で訴え続けるのであった。

 

 少し時は遡る。若者の乗るダイムッシャーは、襲いかかる怪獣たちを斬り続け全ての怪獣を倒していた。あたりは、怪獣の死骸と他ダイムッシャーの残骸だけとなり、このダイムッシャーのみが戦場に立っていた。

 

 そんな時、青空だった空に黒い穴「次元の裂け目」が現れる。そこから、ダイムッシャーの全長より大きい怪獣の頭が現れ徐々に裂け目から全体を出していく。その怪獣は、さっきまで戦っていた怪獣よりもデカい。見た目はピンク色のトンボであるこの怪獣は、ゆっくりと羽を動かし宙を浮く。

 

 ダイムッシャーは、ダイカキューを撃つがピンクトンボには通用しない。火球は身体に命中しながらも火はすぐさま消えた。ピンクトンボは、次は自分の番と言わんばかりに光線を目から放つ。ジグザグ軌道の白く輝く光線に、ダイムッシャーは回避行動を取り右へ避ける。が、完全には避けきれず左腕をくらわれてしまう。左腕は衝撃とともに爆発。爆発で粉砕しなかった腕の一部が地面へと落ち転がる。若者のいる場所で揺れたのはこれが原因である。

 

 ダイムッシャーは、強力な怪獣ピンクトンボの攻撃で左腕を失う。その上さっきの衝撃でダイムッシャーの武装が今右手で握っている「ムッシャーソード」以外使用できなくなっていた。

 

 ダイムッシャーは、今あるエネルギーを右腕からムッシャーソードへと流す。やがて、ソードの刀身はエネルギー状の刀身で延長されていく。延長されたソードを下斜めに構え、ダイムッシャーは上に上げて振り下ろす。振り下ろしとほぼ同時にピンクトンボも光線を放つ。

 

 光線は、胸部に貫通しダイムッシャーは内部から火を吹き爆発する。しかし、攻撃はダイムッシャーが一瞬速かった。ダイムッシャーが光線で爆発する前に、エネルギーで延長されたムッシャーソードが振り下ろされ、ピンクトンボを真っ二つに斬っていたのだ。ダイムッシャーの必殺技「ダイ・斬り」である。

 

 ピンクトンボの斬られた断面には、ムッシャーソードに流れていたエネルギーがうつっていた。そのエネルギーが断面から内部に入り込み爆発を起こした。ピンクトンボは上空で大爆発し跡形もなく消滅した。

 

 戦場には、もう動くものはいなくなっていた。まだあちらこちらに火が燃えているこの戦場にあるのは、ダイムッシャーの残骸と怪獣の死骸のみ。若者の乗っていたダイムッシャーももう残骸のみである。

 

 そんな戦場をずっと見ていたものが研究所にいた。

 

「60体のダイムッシャー軍団がまさか全滅するとは...博士、やはり敵は日に日に強くなっています」

 

「やはり、思っていたことが現実になっている」

 

 戦場の状況を大型モニターで見て話し合う白衣を着た2人の人物。眼鏡をかけた30代前半の男は、博士と呼んでいる人物に見た状況を説明していた。おそらく助手だろう。そして、博士と呼ばれた白髪の50代後半の男は、助手の言葉を最初っから察していた。

 

「あの怪獣どもが姿を現して3ヶ月。奴らを倒せる最低限の武装と能力を持った量産機を準備し、ここまで戦ってきたがここが限界のようだ」

 

「遂に、出すのですね。あれを」

 

「そうだ」

 

 そう断言する博士は、モニターの画面を切り替える。モニターに映る深紅のロボットは、ダイムッシャーに似ているようで別物だった。装甲が厚くなりゴツくなっており、大きさも50mとデカイ。このロボットを見ながら博士は話を続ける。

 

「このダイブシンは、ダイムッシャーと違い強化前提で作った新型。奴らも強くなるならこちらも強化するまでだ。パイロットの方はどうなっている?」

 

「はい。次の出撃にはこの3人になると思われます」

 

 ダイブシンは、その強力さゆえにエネルギーも大きくなる。ダイムッシャーの時は、必要エネルギーは人間1人のみで燃費も良く、すぐに消耗することはなかった。だが、ダイブシンを1人で任せるとパイロットが死ぬ恐れと急な機能停止の恐れがあるため、十分に動かすには3人必要となる。

 

 先程、博士はパイロットといったが操縦は搭載されているAIが行うため、パイロットというよりはエネルギー供給係になるわけだが、わかった上で彼らはとりあえずパイロットと呼んでいる。

 

「ふむ...。む、この3人のうち1人は、最後まで戦ったダイムッシャーのパイロットの父親か。もう出すのか」

 

 助手から渡されたタブレットの情報を読む博士がつぶやく。助手は答える。

 

「はい。息子さんが関与していた複数の事件の隠蔽以外にも犯罪行為をしていたことが情報部の調査でわかり、捕獲部が昨日捕獲したそうです」

 

「なるほど。いつかくるだろうと思ったが、すぐとは」

 

「あと2人も今回の出撃で死亡した2人の父親となっています」

 

 そう、次出動するパイロット3人は、あの若者とその友達2人の父親3人である。この3人はそれぞれ子供に似て犯罪行為をしていたため、この研究所に目をつけられ捕獲されていたのだ。

 

「よし、ダイブシンの再最終チェックを済ませておけ。奴らはまたやってくる。それと量産型の生産と改良もしないとな」

 

 博士はそう言った後、タブレットを助手に返し、モニターの電源をきり部屋をあとにする。助手も博士につづく。

 

 その後、彼ら3人の尊い犠牲のもと機動するダイブシンは次々と怪獣たちを倒しながら強化を繰り返した。そして、怪獣たちを送り込んでくる別次元に量産型を従えて攻め込むこととなるが、それはまだ先の話である。

 

 完


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