「我々は勝利へと近付いている!ファシスト共はもう虫の息だ!」
ジャーム帝国、大エジアン帝国によって引き起こされた世界戦争。彼らは序盤こそ優位に戦争を進めたが、レジスタンス「盟友」の活躍もあり崩壊に近付いている。
結局、その正義は建前だけだったということだ。
そして今、ジャーム帝国は既に降伏し、戦争は終わろうとしている。
「元帥、エジアンがルーサル宣言を受諾、無条件降伏しました。」
官邸は歓喜にむせぶ人民であふれ、街では祭りが開催された。この日は、「終戦記念日」として永遠に残るであろう。
ジャーム帝国は降伏し、盟友のメンバーが内閣を務める民主主義国家「ジャーム国」として生まれ変わった。
ジャーム国歴史調査委員会は旧ジャーム帝国の歴史保管庫に立ち入り、調査を行った。
調査委員会はただ一言「酷い保管庫だ」とだけ述べた。そこにあったのは捏造の歴史。例えばジャーム帝国総統であったルカラーを神格化する為の聖書、外国征服を国民に容認させる為の虚偽の歴史書など、呆れ果てるとしか言いようのないものであった。
歴史保管庫は直ちに燃やされ、その跡地には歴史省が建てられた。
さらに特筆すべきは強制収容所。
特定の民族ばかりを集め毒ガスで殺害。人間というのはここまで残虐になれるものかと調査委員の中に悲しみが広がった。壊してしまおうという意見も挙がったが、「負の遺産」として登録することが決定した。
これらの状況を伝えられたジャーム国初代大統領はこのような過ちを繰り返さぬよう、ジャーム帝国を支配していたユリ党を「戦争対策法」により非合法化。ユリ式敬礼をしたものやユリ党を賛美した場合法律違反となる。
法によって裁判は行われ、不当な判決が下る事はない。
「ジャーム帝国って何だったの?」
幼いリエンは聞いた。しかし誰もそれに答えてくれない。気まずそうな目でリエンを見るだけだ。
リエンも成長する段階で歴史を学び、ジャーム帝国の本当の姿を知った。
リエン・フィーネは歴史省大臣を勤めている。若き日の教訓から、より早い時期に戦争期の教育を行うべきであると主張を展開し、概ねの理解を得た。次の国会で教育法改正の審議に入り、おそらくは承認されるであろう。
しかしいつの世にも政府に反抗するものは出てくるもの。反政府団体「友邦」が今日もデモを起こしている。
リエンは「戦争対策法」による処罰を試みるも適用には様々な条件があり難しい。
業を煮やしたリエンを初めとする歴史省、国防省は条件の緩和を視野にいれた話し合いを進めている。
「当時の国民は戦争で死ぬ事が国の為になると洗脳されていた。」
教育法の改正により、教科書にはこれを含む幾つかの文が追加された。
リエン・フィーネ大臣はこれを機に大統領選挙への出馬を表明。諸派で「友邦」の総裁であるリータ・ジョーンズが他に出馬を表明しているが、フィーネ大臣の当選は揺るがないだろう。
「大臣、デモが激化しております。」
側近からの一言にリエンは溜息を漏らす。
リエンは早期の戦争対策法の改正を命じ、四日ぶりの睡眠をとった。
法律の改正の為の会議がなんとか進み始めた時、恐るべきニュースが官邸を襲う。
「大統領、友邦の奴らが武装隆起しました!」
リエン大統領は軍の動員を行った。
「ユリ党を賛美するものによる武装攻撃を我々は受けている。これを制圧する為にもこの改正案は早期に成立させなければならない!」
強気のリエンの演説に会場は心打たれ、会派を超え可決された。
「大統領、友邦の奴らを包囲、逮捕を完了いたしました。」
リエンはほっと胸を撫で下ろした。
ジャーム国第9代大統領リエン・フィーネ。彼の肖像画は百年後も歴史省の真ん中に飾られ讃えられている。
一方で武装隆起はとどまるところを知らず、友邦により国が倒される日も近いだろう。