ダーケストダンジョンで出会いを求めるのは間違いだ   作:アイゼンパワー

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第一話

何よりもおぞましく、恐ろしい場所、ダーケストダンジョン。

その最奥に踏み込めたのは聖騎士レイナルドとその相棒、追い剥ぎのディスマスのみであった。

四人いた仲間は戦いの中で傷つき、斃れてしまった。

 

宇宙的恐怖を湛え、おぞましく蠢きこちらに牙を剥く肉塊。

宇宙の色をしたストレスと狂気をもって牙を剥くゲル状の何か。

 

襲撃者と戦い、全身の筋肉とバネを用いて敵に剣と鉛玉を叩き込む。

 

目的はただ一つ。

“暗黒の心臓”を撃ち破り、この村と自らの親友である領主に平穏をもたらすことである。

先代領主が放蕩の末、開いてしまった禁断の門。古の悪に通ずるポータルを閉じ世界に今一度平穏と安らぎをもたらすのだ。

 

そのためには自らがどうなろうと関係ない。彼らはそう思っていた。

 

 

 

 

ディスマスがちょうど百発目の銃弾を叩き込み、レイナルドの長剣が血糊に塗れ、鈍器としてしか使用できなくなった時。ついに“暗黒の心臓”は悲鳴をあげ、斃れた。

 

『勝利……それはどうしようもなく空虚で、愚かな概念。』

 

四方八方から声が聞こえる。

蠢く肉塊は消え、宇宙色のゲルもどこかへと消え去った。

 

『我々はそこから生まれ、そして時が来ればそこに帰る。』

 

足場となっていた遺跡の石が崩れ、そこの見えない奈落へと落ちていく。

 

『我が大いなる一族の末裔よ、見えるだろう?あるまじき悍ましい肉の塊が。肉塊が増殖し、巣食い、生きて、死ぬ様子が』

 

肉に塗れていた天井が浮き上がり、どこかへと消え去った。

ディスマスとレイナルドの体は空に向かって浮上し、足元には増殖する肉の群れが村を押し流すのが見えていた。

友である領主が見える。彼の体も空に向かって上昇し、宇宙の真実を垣間見んとしている。

 

『星が今一度あの不変の並びに位置し、星の奥底にて眠りし物が目覚め、この脆い土と岩の殻を突き破り、我らに逃れられぬ死をもたらすまで。』

 

体はついに宇宙へと達した。遠くでは星が煌めき、目の前ではこれまで自分たちの住んでいたであろう星がまるで卵の殻のように突き破られ、悍ましくも神々しい偉大なる何かが目覚めた同時に、その場にいる全員が脳を揺らすような“気づき”を得た。

 

『私と貴様らはここから逃れられぬ。永遠にこれ繰り返すのだ。私は真実を探るために古の悪を解き放ち、貴様らはその悪を封ずるために不浄なるものを殺し続ける。』

 

時が加速し、目まぐるしく宇宙の環境は変わり、偉大なるものは再度土と岩の殻に閉じこもり眠りについた。

 

『だから君よ。慰めを探したまえ。永遠に続く繰り返しの中で祈り、その声を永遠の時と暗闇に中に木霊させるのだ。』

 

体が凄まじい速度で落下し、星の表面に押し込められる。目の前と頭の中が徐々に白くなって行く。

時間は巻き戻り、これまで再建した村の建物はまたもや見窄らしく崩れ去り、補修したオールドロードの石もまた欠け、病と暴力がその割れ目に潜み続ける。

 

先祖より届けられた手紙がまたもや自らの手中に現れる。内容も全く同じだ。全ては無かったことになってしまった。全てが最初からになってしまった。

 

再び目の前が白くなっていく。

『我が一族に滅びが訪れた。』

 

しかしそれまでのものと感覚は違った。

馬車は村へと向かっておらず、御者は精神を患っていない。

旧道はいつもより明るく、割れ目に潜むものも少ないように感じる。

 

領主は御者に尋ねる。この馬車はどこへ向かっているのかと。

「お忘れですかい?実家に嫌気がさしてオラリオに向かうとおっしゃっていたじゃないですか。」

そう御者は答えた。

 

オラリオ。一度たりとも聞いたことがない場所だ。

自分の領地にそのような名前の場所はないし、地図の上にもそのような場所はなかった。

世界は破滅を迎え、再び元のまま生成された筈だ。元々このような街があったのを単に知らなかったのか、それとも新しく生み出されたのか。定かではない。

 

旧道を抜けてオラリオに近づくにつれ瘴気は薄れ、正気が取り戻される。

このような場所なら悪くない。少なくとも陰鬱で、病や暴力が横行する村よりは遥かにいい。彼らはオラリオにつくまで一眠りすることにした。

 

ーーーーーーーーーーーー

数時間後、馬車の揺れはおさまり、ついにオラリオに到着した。

一行が馬車を降りると華やかな風景が目についた。

人でひしめき賑わう大通り、露天が並びたつ華やかな広場。村とは雰囲気も作りも違った。遠征でさまざまなものを見て来たレイナルドも見たことがないような建物の様式で、数々の宝物を奪ってきたベテランの追い剥ぎであるディスマスも見たことがないような美しい装飾品が露天には溢れていた。

 

まだ見ぬ冒険を夢見て、果てしない富と名誉を夢見て。彼らはこの巨大な冒険者の街へと踏み込んでいったのだ。

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