ダーケストダンジョンで出会いを求めるのは間違いだ   作:アイゼンパワー

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第二話

ダンジョンに潜るためにはファミリアに入ることが必須である。

 

 

そのことを聞いた領主は大いに頭を悩ませた。

ファミリアとは一人の神を主神として崇め、主神のために働き続ける一種の宗教的団隊といってもいいだろう。領地内であれば邪教崇拝者として排除していた。

ディスマスは信仰心など特になく、どの神を崇めようと対した苦痛はないだろう、領主もそうだ。問題となるのはレイナルドである。

レイナルドは聖騎士……信仰心によって支持された強烈な戦士なのだ。天にまします我らが主を唯一の神として崇め、主の威光を恐れず、主の聖なる声を聞くのを拒んだ愚か者を討つのを生業としていたのだ。

彼の信仰心は強く、自らの信仰を告白しただけでアンデッドを一人浄化したこともあるほどだ。総大主教の令状を肌身離さず持ち歩き、シャツには聖書の繊維が編み込まれており、鎖帷子には聖句が、鎧の表面には聖なる紋章が彫り込まれている。

彼が崇める対象を変えるわけはないし、他の神の使徒として動くこともないだろう。

 

果たしてどうしたものか。

そう思い、彷徨っていると声をかけられた。

「ねえ!キミ!ファミリアを探しているのかい?」

一人の少女が声をかけてきた。髪を二つに縛った白い服装を着た娘。これだけ言えばどこにでもいる村娘のように聞こえるが、ただの村娘と違うのは胸が非常に豊満であることだろう。

領主はそうだと答えた。おそらくギルドからふらふらとした足取りで出てきたところを見られたのだろう。

「それならボクのファミリアに入らないかい?!」

彼女は“ボクの”ファミリアと言った。ここから察せるのは彼女がファミリアの主、つまり神であるということだ。このような小娘が神だというのか、このような小娘が神になれるというのか!領主は大いに驚いた。神とはもっと偉大で、荘厳なるものだと考えていた。しかしそれは違ったようだ。

 

領主の心の内に一つの妙案が浮かんだ。

主の教えを利用してレイナルドをこの憐れな小娘のファミリアに入れよう、と。

主の教えの中には“憐れなるものを助けよ”とある。レイナルドならきっとこの教えを守り、実践しようとするに違いない。

早速行動しなければ。時は金よりも高くつく。それはこれまでの経験で分かりきっていたことだった。領主は二つ返事で彼女のファミリアに入ることを了承した。ここで待っているようにいうとすぐにギルドに向かって駆け出し、レイナルドとディスマスを呼びに行った。

 

ーーーーーーーーー

レイナルドは思っていたよりもだいぶあっさりと了承した。彼の信仰心は強いが、そこら辺の頑固な神父や主教と違って融通が効く人物だったのだ。

 

曰く「生きていくために不可欠ならきっと主も赦してくださるだろう。」とのことだ。今は急いであの小娘……もとい神の元へ向かわねばならない。そう思ってギルドから駆け出すとそこには既にあの小娘がいた。どうやら領主の後ろをつけてきたらしい。

 

「もー!いきなり走り出すからびっくりしちゃったじゃないか。どうしてそんなに急いでいたのさ?」

 

彼は自らの無礼を詫びた。あの時は貴女が本当に神であるとは思っていなかった!と。ほぼ出まかせだがいい感じの謝罪にはなるだろう。

 

「……嘘をついているね?神は嘘をついているかどうかわかるんだよ。本当はどうして急に走りだしたんだい?」

 

なんと。自分は今嘘だということを全く悟られないように言ったはずだ。貴族の嗜みとして嘘を見破る方法を学んだ上で嘘つきの特徴をできるだけ潰したはずだ。彼女は本当に神……もしくは何か超自然的な存在であるに違いない。領主は再度無礼を詫び、理由を今一度説明した。

 

「ふーん…キミはレイナルドくんっていうんだ、そっちのキミはディスマスくん。で!どうだい?うちのファミリアに入る気はある?!」

「もちろんです、神よ。ただ私の心は常に主とともにあることはお忘れなく。」

「俺ぁこいつらと一緒にいれりゃあどうだっていいぜ。」

「よし!じゃあ早速神の恩恵(ファルナ)を刻もう!キミたちは今日からボク、ヘスティアの眷属だ!」

 

小娘改めヘスティア神はそう宣言した。

そしてみんなでヘスティア・ファミリアの拠点に向けて歩いた。

 

 

ーーーーーーー

ここがヘスティア・ファミリアの拠点………

領主は一抹の懐かしさを覚えていた。村にあったあのオンボロの修道院と似たものを感じたのだ。

ヘスティア・ファミリアの拠点、ヘスティア神の住居は崩壊した教会の地下室だった。この教会がなんの神を崇めていたのかは不明だがレイナルドは再建する気らしい、そして主を崇める教会に改築する気らしい。君それヘスティア神の前で言うことかい???

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。今重要なのは神の恩恵(ファルナ)なるものを刻むことである。神の恩恵(ファルナ)を刻むことで身体能力が大幅に向上し、ダンジョンに潜むモンスターに対抗できるようになると言う。それは只人には読めぬ神聖文字(ヒエログリフ)によって書かれたもので、その者の持つ能力、特技、魔法について記述されていると言う。正に超自然的な上位的存在(デウスデア)が与えたもうた恩恵というに相応しい。

 

これでようやく食い扶持を稼ぐことができる。

「じゃあみんな服を脱いで、このベッドにうつ伏せに寝転がって!」

全員直ちに……まぁレイナルドは鎧を脱ぐのに手間取ったが……服を脱ぎ、寝台のそばに立って待機していた。一人づつ寝台に寝転がり、聖なる神の血(イコル)をその身に受けた。

 

 

ジョン=マクスウェル=レイナルド

 

レベル1

 

力【I】0

耐久【I】0

器用【I】0

敏捷【I】0

魔力【I】0

 

 

スキル

【主神信仰】

・信仰心によって効果を発揮する

・主の名の下に置いて戦う時に力と耐久が上昇する

 

魔法

熱心な告発(ジーロス・アキュゼーション)

・攻撃魔法

・信仰心が強いほど効果が上昇する

・告発を耳にした者を攻撃する

・告発を耳にした者は気絶する

詠唱:不浄なるものよ、聞くが良い。熱心な告発(ジーロス・アキュゼーション)

 

神の癒し(ディバイン・ヒール)

・回復魔法

・信仰心が強いほど効果が上昇する

詠唱: 主よ。我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、 我らの罪をも赦したまえ。神の癒し(ディバイン・ヒール)

 

 

 

ディスマス

 

レベル1

 

力【I】0

耐久【I】0

器用【I】0

敏捷【I】0

魔力【I】0

 

発展アビリティ

【決闘者の前進:A】【血管炸裂:A】【追いはぎの勘:A】

 

スキル

【隠遁者】

・敵に発見されにくくなる

・隠遁している者を見つけやすくなる

・器用が上昇する

 

魔法

なし

 

 

アウグスト=ダーケスト

 

レベル1

 

力【I】0

耐久【I】0

器用【I】0

敏捷【I】0

魔力【I】0

 

発展アビリティ

【深淵を覗いた者:A】【暗黒の子孫:A】

 

魔法

召喚術(サモニング)

・モンスターを召喚する

・召喚した者を使役する

・一度に3体まで召喚できる

・ごく稀に失敗する

詠唱:来れ、不浄なるものよ。我が剣となり、盾となりたまえ。召喚術(サモニング)

 

奈落砲術(アビサルアーティレリー)

・攻撃魔法

・離れた敵を攻撃する

詠唱:ファイア!

 

悪霊引手(デーモンズプル)

・攻撃魔法

・攻撃対象を目の前まで牽引する

詠唱:我が面前にかの者を連れてこい。悪霊引手(デーモンズプル)

 

 

ヘスティアには見たこともないようなスキルや魔法ばかりだ。

 

「キミたちってここに来る前何してたの?」

 

「地元に巣食う怪物退治をしてましたぜ」

それに答えたのはディスマスだった。思えばあの探検でどれほどの血が流れ、死体が積み重ねられたのか……思い出したくもない。

「おっ、そういえば珍しいものがあるんですよ。見てください」

 

そう言ってディスマスは徐に血が滴る麻袋を持ち出した。

ヘスティア神は大層驚いており、後ろに向かって飛び跳ねた。

 

「ななな、なんだい?!それ?!」

「俺の首です。」

 

そうだ。そういえば屋敷の廃墟でディスマスの首を拾ったのだった。これを見た時はもう腰を抜かしてしまって、葬儀屋を呼ぼうとしていたのを思い出す。その後にディスマスが何事もなく顔を出した時には聖書で殴ってしまった。

 

「不思議でしょう?俺はこの通りピンピンしてんのに、首がここにあるんです。」

「ほんとに生きてるのキミ?もしかして実は幽霊だったりしないかい?」

「生きてまさあ。本当ですよ。神は嘘を見抜けるんでしょう?」

 

ディスマスはヘスティア神と仲良くなれたようだ、まるで歳の離れた兄妹が戯れあっているようで見ていて実に微笑ましい。

領主は早速ダンジョンに赴きたいと言った。生きるためには金がいるのだ。

「おっと、その前にギルドによって登録をしなきゃいけないんだ。ボクも一緒に行くからついておいで!」

必要ならば仕方ない。戸籍登録や納税を怠り、その対価を血で支払うことになった奴らはごまんと見てきた。死や怪我を防ぐためにできることはやっておこう。

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