ダーケストダンジョンで出会いを求めるのは間違いだ 作:アイゼンパワー
「と、言うわけでこいつを連れてきたぜ*1」
ディスマスは酒で赤くなった顔でそんなことを言い放った。
何が“と言うわけ”だこのクソッタレの酔っ払いめ。そう怒鳴りたいのを堪えて領主は眉間を抑えた。思えばこいつの奇癖に悩まされたのは一度や二度ではないな……思い出すと胃が痛くなってくるのでやめよう。
「ふむ、君。名前はなんと言う?」レイナルドは問いかける。
「ぼ、僕はベルです!ベル・クラネルです!」
白髪の少年は実に元気よく答えた。前に話した通りディスマスの鑑識眼(スキルではない)は実に信頼できるものだ。そしてその鑑識眼は人にも適用される。
一目見ればわかる。その手足は細く、華奢に見えるが、強くしなやかな筋肉のばねになるであろう。素質は上々、あとは経験を積ませ、体を鍛えてやれば素晴らしい戦士になるに違いない。そして立派な戦士は金のなる木ともなる。
領主は彼を向か入れることを検討する旨をそれとなく伝えた。
「えっ、本当にいいんですか?!」
自分が決めることではないが、推薦くらいはしよう。領主はそう伝えた。
少年のほうを見れば彼は顔を真っ赤にして歓喜に打ち震えていた。どうやら思っていたよりも困っていたらしい。
「どこのファミリアに行っても門前払いされて……グスッ…ようやくファミリアに入れたんだぁ……!」
ついには泣き始めてしまった。
「団長サマが推薦してくれるんなら間違いねえなぁ。ようこそ、我がヘスティア・ファミリアへ!」
「そもそもウチは人手が足りませんからな、なんにしても歓迎します。ようこそ。」
ディスマス、レイナルドがそれぞれ歓迎の言葉を口にした。それを耳にしたベルはいよいよ感極まって大泣きしてしまった。
「ウゥ……ありがとうございますぅぅ……!」
「全くかわいい野郎だ。拾ってきてよかったろ?」
それとこれとは話が別だ。領主はそういった。
「我らヘスティア・ファミリアの神であるヘスティアが帰還しない限り
「神さんはいつも夕方ごろ帰ってくる、まぁゆっくりしていきな。おっ、そうだ。今まで集めたコレクション見るかい?」
ーーーーーーーーーーー
夕方になってヘスティアが主の教会(レイナルド命名)の地下室に足を踏み入れるといつもとは違う雰囲気が感じ取れた。広間に近づくに連れてディスマスのバカみたいに大きい笑い声が鮮明に聞こえるようになり、広間のドアを開けると、最高に出来上がってるファミリアメンバーが目に飛び込んできた。
「おお、神さん。遅かったじゃねえか。まま、駆けつけいっぱいどうだ?ん?」
そう言って彼は手に持っている酒杯をヘスティアに押し付けてきた。
ヘスティアは部屋のあまりの惨状にたまらず叫び出してしまった。
「なんでこんなことになってんのーー?!?!?!」
レイナルドの手によって綺麗に整理整頓された部屋はごっちゃごちゃになり、領主の大事なコレクションだったはずのヴィンテージワインの酒瓶がそこらへんに転がっている。ディスマスの横には見知らぬ白髪の美少年が全身を真っ赤にして寝転がってるしでカオスなことこの上ない。
領主はというと腹を抱えて「我が家自慢のヴィンテージワインが……!」とうめいていて、レイナルドはその隣で大泣きしながら何事かを口の中で呟いていた。
「新人歓迎会さ!そうだろ?」
ディスマスがそう問いかけると領主がすっ飛んでいき、彼の頭を床にめり込ませた。怒りで顔が真っ赤になり、腕には血管が見えている。
「貴様ッッ!よくもこのッ!よりによって当り年のワインばっっかり飲みやがってッッ!!!!」
そう叫びながらディスマスの顔面をグーで殴り続けた。何気に領主の声を聞いたのは初めてだ。これまで何度もディスマスやレイナルドと話しているような素振りは見せていたが、声はどうしても聞き取れ無かった。
「アッハハハハ!悪かった!わrゴベ!がぼべ!ちょ、ぐへ!殴るのやめ痛」
殴られながら笑っていられるディスマスも大したやつだ。
そんなことよりも気になるのは白髪の少年の正体だ。この前肩を落として大通りを歩いているところを見た記憶はあるが……
「そいつはうちのファミリアに入りたいらしいぜ。」
領主が寝落ちしてしまったため拳から逃れられたディスマスが説明する。
「路地裏でカツアゲされてたところを助けてやったんだ。俺エライだろぉ?……そんで行くところがないらしいから『ウチに来るか?』っつったら来るって言ったから連れてきたぜ。早いところあれ……あれだよ、ホラ、えーと……」
「
「そうだ!ファルナだ!刻んでやりな!もうそいつはウチの団員だ!だからこうやって歓迎会を開いてやってんのさ!」
歓迎会で領主のコレクションを空けたのか……可哀想な領主君、今度余裕があったら
「そういうことだったんだ。じゃあディス君!彼をこっちまで運んできて。ステイタス刻んであげなくちゃね!」
「あいよ!」
そういうとディスマスはベルを担ぎ上げ、寝台まで運んで行った。
「綺麗な背中じゃねえか、ん?」
「じゃ、ちょっと離れてて。今から刻むから……ねっ!」
ヘスティアは指の先を針で軽く刺し、血を一滴白い背中の上に垂らした。ここに新しく一人の冒険者が生まれたのだ。
今回短くてすいませんほんとすいません