ようこそ天与の暴君のいる教室へ   作:うたたね。

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龍園書くの楽しいね。


第二話 邂逅

 入学式を終えた俺は、教室へと戻りそれぞれ自分の席に着く。

 しかし、だ。

 入学式なんざ初めて経験したが、めちゃくちゃつまんねぇなあれ。面白味のねぇ話をうだうだと数時間喋りやがって。後半の方はもうほとんど寝ていて聞いていなかった。

 ああいう行事に参加するのはゴメン被る。次回からはサボるか。

 

「さて、全員揃ったみたいですね」

 

 視線を前に向けると、眼鏡を掛けたインテリ風の男が立っている。

 俺と同じくらいか、あるいは少し上程度の年齢だろう。如何にも理屈っぽい性格してんな。

 だが、コイツ誰だ? マジで見覚えがねぇんだが。おそらく、教師だろうが……。

 

「さて、皆さん入学式お疲れ様でした。

 入学式で私の名前は伝えたと思いますが、覚えていない方もいるでしょうし、もう一度自己紹介の方をしておきましょうか」

 

 そう言って、チラリと俺の方を向くメガネ。

 寝ていたことは筒抜けらしい。

 

「私は坂上数馬。君たちCクラスの担任だ。

 学年ごとのクラス替えは存在しないから、卒業までの3年間私が担任として君たちと学ぶことになる。

 さて、早速で悪いがこれからこの学校の特殊なルールについて説明させてもらう。まずは資料を配るから、前から順に回して行ってくれ。既に入学案内と一緒に配布はしてるが、覚えてない者もいるだろうからね」

 

 そう言って、坂上はテキパキと資料を配っていく。

 程なくして俺の下にも資料が回って来る。伊吹から受け取ろうとすると、ふと彼女の動きが固まった。

 

「……何だ?」

 

「……別に」

 

 そう言うと、伊吹は素直に資料を渡した。

 何だったんだ? 思春期のガキの相手はあんまりしたことがねぇからよくわかんねぇな。

 もしかしたら、箱入りの娘だったりしてな。そんなナリには見えねえけどな。

 

 坂上は全員に資料が回ったのを確認すると、説明を再開する。

 

「では、また配り物で悪いが、これから学生証を配布する。

 このカードは敷地内にあるすべての施設を利用、商品を購入することができるクレジットカードのようなものだ。

 ただし、クレジットカードと言った時点で分かってると思うが、無料(ただ)ではない。お金の代わりにポイントを消費することになる」

 

 この学校には他の学校とは決定的に違うポイントがある。

 それがこのポイント制度──Sシステム。

 学校内でのお金の支払いはこのポイントにて支払われることになる。電子マネーってなると、ちょうど俺が死ぬ4年前くらいから普及され始めたな。

 俺たち呪詛師は金のやり取りの足取りが残るから使うことは滅多になかったけどな。

 

 ただ、そのポイントはどうやって賄われるのか。

 考えられるとすれば、成績に準じて月毎に支払われるか、だ。あるいは部活動とかの課外活動か。

 その辺についてはこれから説明があるだろ。

 

「君たちも気になっていると思うが、ポイントは毎月1日に自動的に振り込まれる。

 一先ず、君たち全員平等に10万ポイントが既に支給されている。ポイントは入学説明書にも書いてあったが、1ポイント=1円──つまり、今君たちの手元には10万円があると同義だ」

 

 坂上の言葉に教室が騒めく。俺もこれには流石に驚いた。

 10万? 俺からして見りゃ端した金だが、ガキに当たるには充分すぎる額だ。

 何せ、俺たちは寮暮らしだが、光熱費も賃貸も払わなくていいのだ。そう考えればプライベートで使える金は相当な量になる。

 

「ポイントの支給額に驚いたようだね。が、何も不思議ではない。この学校は()()()()()()()()。入学を果たした君たちにはそれだけの価値と可能性がある、ということ。

 これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()。嘘ということはないから、安心してくれたまえ」

 

「……なるほどな」

 

 その坂上の説明に、俺は()()()()が読めた。

 10万円を毎月? 国が運営しているとはいえ、んなものを3年間毎月3学年4クラスに払ってみろ。あまりにも莫大な浪費だ。

 何か裏があるとは思ったが、「実力で生徒を測る」という点で半ば確信に至る。

 しかし、この坂上という男。嘘はついていないが、真実を隠すとはとんだ狸だぜ。

 今時点で気づけているのは、このクラスだと俺以外に数人いるかいないかだろうな。

 

「ああ、これだけは伝えておく。卒業後にはポイントは全て学校側が回収することになっている。現金化は出来ないから気をつけてくれ。

 ポイントが振り込まれたあとは君たちの自由さ。()()()()()()()も出来る。ただ、強奪などの犯罪行為には手を染めないように。処罰に関しては、まぁ問答無用で退学だと思ってくれていい」

 

 ポイントの譲渡が可能──!

 それが出来るならギャンブルだって出来るんじゃねぇのか? パチンコも競馬もねぇから、別の方法を探す必要があるが。

 

「さて、Sシステムについての説明は終わりだ。何か質問はあるかね?」

 

 坂上が質問の有無を問いかける。

 俺の推察を確定させるなら、聞いた方がいいことはあるが──まぁ、その辺は隣の席のガキがやりそうだな。

 

 が。

 結局、龍園が質問を投げかけることはなかった。

 だが、解散した後すぐに坂上を追いかけていったところを見るに、件のことを聞きにいったに違いねぇ。

 

 さて。んじゃあ俺も行くとするか。

 

 

 

 俺も龍園を追い、廊下に出る。しかし、既にあいつらの姿はない。

 どこに行ったかはすぐに分かった。

 俺()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。容易く居場所を突き止めることに成功した。

 龍園たちがいたのは屋上近くの踊り場だった。

 

「クク、なるほどな。俺が聞きたかったのはそれだけだ。もう行っていいぜ」

 

「君は賢い生徒だが、礼儀はなっていないな。まぁいい。君のような優秀な生徒がCクラスにいたことは嬉しいよ」

 

「ハッ、そうかよ」

 

 話は終わったのか、龍園が階段から降りてくる。

 必然と、下の階にいた俺と目が合う。

 

「あ? おまえは」

 

「よう、お隣さん。こんなとこで何してたんだ?」

 

「おまえに関係ねぇよ。失せろ三下」

 

「そいつは無理だな。俺も坂上に用があるからな」

 

「ああ?」

 

 俺の言葉に龍園が怪訝な様子を見せるが、すぐに理解したのか独特な笑い声を溢す。

 

「クク、オレ以外にも思い至った奴がいたとはな。ボンクラばかりだと思っていたが、存外おもしろい奴がいたもんだ」

 

 そう言って、龍園は俺の横を通り過ぎ、去っていった。

 俺はそれを見ることなく、龍園との会話の様子を黙って見聞きしていた坂上へと話しかける。

 

「よう、坂上。アンタに聞きたいことがあるんだが」

 

「まったく……龍園も君も、年上に対しての礼儀がなっていないな。それで、伏黒。私に何か用があるのかね?」

 

 敬語を使わない俺たちを窘めるようにぼやくが、特に気にしてはいない様子だった。寧ろ、期待している──そういう風に、俺は聞こえた。

 

「聞きたいことがあってな。どうせあのガキも同じことを聞いたんだろ?」

 

「そこは守秘義務で語れないな」

 

「ハッ、この学校で守秘義務っつっても()()()()()()()()()()()()

 

「! ふふ、今年のCクラスは豊作だな」

 

 嬉しそうに、押し上げながら坂上は語る。

 

「そんなことはどうでもいい。坂上、この学校は()()()()()1()0()()()()()()()()()()()?」

 

 単純に気になっていた。

 毎月10万を全校生徒に配布するなんざ正気の沙汰じゃねぇ。幾ら国が運営しているとはいえ、流石に無理がある。寧ろ、労力もなく10万円を与えることは堕落を生み出すきっかけになる。

 そして、坂上は()()()()()1()0()()()()()()()()()()()()とは言っていない。毎月ポイントが支払われると言っただけで、10万はあくまで()()()()()()()だ。

 そして、この推察が正しいかどうかは、坂上の答えで分かる。

 

「その質問は、現時点で私では答えられないんだ」

 

 やはりそうだ。想定通りの答え。

 

「そうか。それだけ分かれば十分だな」

 

 その返答は、答えを言っているようなものだ。

 だからこそ、坂上は喜色を隠すことなく笑みを浮かべている。

 

 坂上が「もういいのか?」と訊ねた。俺はそれに答えることなく、踵を返す。

 

 俺の推察は正しかった。

 おそらく、俺たちのクラスは──というより、他のクラスも差はあれど、来月に10万ポイントを貰えることはねぇ。

 現時点での評価は10万ポイント。これからの成績次第で、俺たちのポイントは必ず変化する。

 まぁ、個人のポイントが減らされるか、クラスごとでポイントが減らされるかは分かんねぇがな。坂上の言葉通りなら、クラスごとだろうが。

 ただ、今言えることは、最初の一月はチュートリアルといったところ。見極めにはちょうどいい。

 だからこそ、龍園もクラスの前ではなくこうして独りで聞きに来た。不確定要素を減らすためにな。

 

「で、オマエは盗み聞きか?」

 

 階段に足を踏みかけた時、俺は廊下の影に隠れている龍園に話しかける。龍園は逃げることなく姿を現した。

 

「クク、気づいてたか」

 

「バレバレだな。次からはもっと上手く隠れるんだな」

 

 尤も、無駄だろうがな。

 別世界、若返った肉体──だが、天与呪縛は未だ俺の肉体を縛り続けていた。

 生前の全盛期には及ばないものの、肉体強度は依然と常人のそれを軽く超えている。そして、それは五感もだ。先ほどのように臭いで追跡することも容易く行える。

 

「頭もキレる、そしてその分だと腕っ節も相当か?」

 

「俺は暴力は嫌いでな。喧嘩なんざからっきしだ」

 

「ほざけ」

 

 龍園は嗤う。

 

「それよりどうだ、伏黒? せっかく同じタイミングで気づいたよしみだ。おまえ、俺の舎弟になる気はないか?」

 

「ほざけよ。俺を下に付けたかったら、金──ポイントでも用意するんだな」

 

「拝金主義者か。くだらねぇとは言わねぇが、つまらねぇな。ま、そういう単純な奴こそ扱い易くていいがな」

 

 確かにそうだ。

 金で動く奴は信頼は出来ねぇが、信用は出来る。呪術には縛りという概念があったため、金を担保に契約することは呪詛師の中では珍しい話ではなかった。

 おそらく、この学校でも似たようなことが出来る。ポイントの譲渡が可能な以上は、書類と教師の付き添いを基に縛りを結ぶことは可能な筈だ。

 

「話は終わりか? 生憎、男と長々話す趣味はねぇんだ」

 

「ああ。だが伏黒、余計な真似はするなよ? おまえがこれから良い学校生活を送りたいならな」

 

 話は終わりだ。龍園の言葉を無視し、俺はこの場を去る。

 

 これが俺と龍園のファーストコンタクト。

 後々、この謎めいた学校生活の中で深く関わることとなる男とのはじめての会話だった。

 

 

 




よう実二次作家さん、みんな頭良すぎてびっくりする。
あ、データベースを作ってみましたよ。そのうち公開します
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