He is immortal Transporter 作:trois
腕輪型の端末から投影されたホログラムの地図を見ながら、周りの地形と擦り合わせていく。
「地図とまた地形が違う…またマッピングデータを更新しないといけないな。」
天災の影響で、地形がコロコロ変わってしまう。そのせいで、目の前には無かったはずの川が出来ていた。
普通はありえない変化が起こるのがこの惑星の特徴だ。
(地下水脈でも湧き出したか?この深さならギリギリ渡れるか…)
深さは膝丈くらいだが、勢いが強い。斜めに突っ着れば平気だろうが…一応荷物を背中のバックパックに移してから渡る事にする。
「この川を越えれば…村まで直線距離であと5キロ。まぁ…夜までには帰れるか。」
再びトライクの収納スペースに荷物をしまい直してから、バックパック左側に折り畳まれていたセンサーユニット、『オドラデク』を立ち上げ、周囲の地形スキャンを行う。
スキャン結果は、
(…こっちはマップと変わってないか。ただ…赤色が多い…)
足が滑るか、危険な地点や源石が埋まっていたりする場所は、赤色の×で表示される。
1箇所だけ×の表示が異常に密集している地点があったので、双眼鏡で確認すると、何かが蠢いていた。
「…うわ、オリジムシにバクダンムシ。コロニー作ってるよ…後で駆除依頼出しておくか…」
触らぬ神に祟りなし、刺激しないように気をつけながら、大きくぐるっと迂回する。
センサーで定期的に地形をスキャンしながら危険な地点を避けて、村に向かう。その途中で、トライクでは下れそうにない切り立った崖にたどり着いた。
(……洞窟か、あそこにトライクを置いておこう。)
洞窟に隠したトライクのそばで、空を見ながらエナジーバーを齧る。
味は二の次で栄養重視なので腹持ちがいい事が一番だ。
空から視線を外し、荷物に異常がないか依頼品を開けて確認しているとへその辺がじんと熱くなってきた。
「……おいおいマジかよ。予報はなかったはずだろクソが!」
空気が変わる。重くじっとりとした空気が漂う。
気の所為であることを祈りながら、慌てて洞窟から空を睨む。
だがその祈りは裏切られた。
「どうしてこのタイミングで天災が来るんだ!」雲一つなかった青空には暗雲が立ち込めていたのだ。それは急速に広がりつつあった。
急いで荷物をまとめて背負い、トライクを押しながら洞窟の奥に逃げ込む。オドラデクをライトモードにして地面を照らしながら奥へ、奥へ。入り口の方からは雷鳴のような音が聞こえてくる。どうやらもうすぐそこまで天災が迫っているようだ。
奥へどれだけ進んだだろうか、少し開けた場所に出た。そこでじっと音が消えるまでじっとする。激しい雷鳴と、強風の声。
20分ほど経ち、音が収まると空気が心做しか軽くなった気がした。
恐る恐る外へ出ると、そこには天災による破壊の痕跡が残り、そして黄色の結晶体があちらこちらに散乱していただけだった。
「……助かったか。」
ほっとしてその場に座り込みそうになるも、こんな所はさっさとおさらばするのが吉だろう。と考え、荷物の整理をして、どうにかトライクで降りられそうな場所を見つけようと動き出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
天災跡から1時間ほどで、目的地の村まで辿り着くことが出来た。村の入口付近に止めてあるトライクは目立つためすぐに見つかり、村長らしき人物に迎え入れられた。
村長宅に招かれると、村長は俺の姿を見ると驚いた表情をしていた。
まぁそれもそうだな。あんな天災にあったような格好だし。
「これが頼まれてた荷物だ。精神安定剤のオキシトシンとスマートドラッグ、点滴用の栄養剤と救急パックの4点。中身を確認しておいてくれ。」
手に持った荷物を渡すと、村長はケースを開けて中身をよく検品して、その間に雇い主へ荷物を無事に届けた旨のメッセージを送っておく。
ちょうど送ったタイミングで、
村長が顔を上げた。
「確かに受け取りました。傷一つない。さすがですね。報酬ですが……」
「ああ、金ならいいよ。代わりに頼みがあるんだが……」
「えぇ構いませんとも!私どもが出来ることならなんでも致しますよ!」
俺はニヤリと笑う。
「悪いね、じゃあどこか空いてる家にでも今夜泊めてくれないか?帰ろうと思ったらトライクがバッテリー切れでね。充電がてら1泊したいんだが。」「そんなことでしたら喜んで引き受けさせていただきますよ!」
こうして俺は無事仕事を終え、一夜の宿を提供してもらうことになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、荷物の整理とトライクのメンテも終わったし、ちょっと散歩いくか。」
夜になり、トライクの足回りのメンテナンスを終えた後、部屋着に着替えてから外に出ることにした。
玄関を開けると目の前には湖が広がっていた。月明かりが水面を反射しておりとても幻想的な光景だった。
(……ん?)
「あれ?……サムじゃん。おひさー」
「誰かと思ったらAyaか。こんな所で何やってんだ?」
淡い桃色の女、有名なバンドチームに所属している彼女は儚げな雰囲気で湖の畔に座っていた。
「いや、別に何もないけど。強いて言うなら星を見てる感じかなー。」
そう言って空を見上げる。
つられて見上げてみると、満天の星空が広がっている。都会では見ることのできない美しい景色。思わず息を飲むほど綺麗で、言葉を失うほどだった。
しばらく2人で黙ったまま空を眺めていると、彼女が口を開いた。
「こうやってゆっくり星を見るのも久しぶり。サムは仕事でここまで来たの?」
「あぁ、お前は作曲のネタ探しか?またインスピレーションが足りないから〜とか言ってここまで来たんだろ。」
Ayaとは昔からの知り合いで、配送業をする前にバンドのちょっとした手伝いなどしていた時からの仲だ。
だが俺が配送業を始めたため、お互い忙しくなってからは会う機会が減っていた。
「そうだけど、今回は違うよ。新曲の歌詞を書くためにここに来たんだ。」
「へぇ、どんな歌詞なんだ?」
「それは秘密。完成した時に聞いて欲しいから。それにしても、この湖はいい所だね。私たちの故郷によく似てる。どこかで海と繋がってるのかな。」
「さぁ……どうだろうな。ハッキリしてるのは、景色が綺麗って事だけだ。」
「月夜の下、湖の畔で二人っきり……フフ、文字にしてみるとロマンチックだね。」「そうだな……ところでそろそろ中に戻った方がいいんじゃないか?風邪引くぞ」
「大丈夫だよ。それよりもう少しだけここに居たい気分だから、付き合ってくれると嬉しいんだけどダメかな?」
……まあいいか。どうせ暇だし少しくらい話してもいいかもしれない。
「分かった。俺もそのつもりだったから。」
それから俺たちは他愛もない話をした。
ふと配送先で立ち寄った街や村の暮らしについて。
ボーカルメンバーがふらっと居なくなって、ライブ前には帰ってくるけど、どこに行ってるのか気になるとか。
ふと、会話が途切れた時、
「ねぇ、サム。最後に一つ聞きたかったことがあるんだけど。」
「どちらを選ぶか決まった?」
その問いに俺は答えられなかった。
「…………」
「ごめん、変なこと聞いた。忘れてくれると助かる。それじゃ、私は戻ることにするわ。今日はありがとう。楽しかった。」
「…ああ、俺も久しぶりに会えて嬉しかったぜ。今度またあったら、飯でも奢るよ。」「うん!楽しみにしとく!じゃあね。」
……俺はあいつの質問の意味が分からなかった。いや、分かりたくなかったという方が正しいだろうか……。
俺は一体どちらを選んだんだろうな。
「決まってる。俺は人間だ。それ以外の選択肢なんてあるはずがない。俺は……サム・ブリッジス。ただの運び屋だ。」自分に言い聞かせるように呟く。
「さて、明日に備えてもう寝るか。」
俺は部屋に戻り、眠りについた。
翌朝、目が覚めると既に村にAyaの姿はなかった。
「相変わらずふらっと居なくなるのは変わらないな。」
まぁそのうちどこかでまた会うことになるだろう。
「さぁ、帰るか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
配達用のスーツに着替え、バックパックを身につけて、宿を後にする。
村長に軽くあいさつをして村を出ようとすると手荷物をひとつ渡してきた。
「これを持っていってください。昼食です。粗末なものですが……」
そう言って差し出されたものはサンドイッチだった。
「これはありがたい。ちょうど腹が減ってたところだったんだ。遠慮なく頂きます。」
「いえ、こちらこそ荷物を持って来てくれて感謝しています。何か困ったことがあったらいつでもいらしてください。」
「えぇ、その時はよろしくお願いします。では失礼。」
こうして俺は昼を過ぎて本領を発揮した太陽の下、龍門に向けて再びトライクを走らせ始めた。
カーネリアン来ねぇ!40連くらい爆死した!
水着チェンまでまた貯めないと…けどカーネリアン欲しい…