中津の四季島皇帝生活   作:阿鬼羅

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奉天会戦前夜

明治38年1月21日奉天ルーシ軍司令部

この日グリッペルベルク大将は全軍にこう訓示した

 

グリッペルベルク「全軍将兵に告ぐ先の沙河での敗戦は私の不徳の致すところにあるその事は認めようだが我々はこれ以上負けてはならないここで敵を食い止めバルチック艦隊や本国からの来援までこの奉天を死守する。数では未だ我々は敵に優っているそれにあの飛行船を撃ち落とすために新兵器も届いている恐るる事はない勝利は我等とともにあり」

 

マチュニク「皇帝陛下万歳」

 

「「「皇帝陛下万歳」」」

 

グリッペルベルク「さて参謀長、各陣地の進捗は?」

 

参謀長「はい、まず第1陣群は完成しましたが列車砲には耐えれぬかと」

 

グリッペルベルク「仕方あるまいあれに耐えるには厚さ3mのベトン陣地が必要だろう」

 

参謀長「はい」

 

マチュニク「閣下、歩兵ライフルが不足しております」

 

グリッペルベルク「なんだと!どのくらい足りないのだ」

 

マチュニク「約200000丁程足りません」

 

グリッペルベルク「そんなにか」

 

マチュニク「はい」

 

グリッペルベルク「各地の武器保管庫から掻き集めれないのか?」

 

マチュニク「それが武器保管庫の大半は旅順や鴨緑江沙河にありましたので」

 

グリッペルベルク「そうか、本国に補給を要請してくれ」

 

マチュニク「はい」

 

グリッペルベルク「敵が来る前に届けばいいが」

 

 

ルーシ軍の武器不足遼陽や沙河の敗走で重量物どころかライフルやサーベルを放棄した事により兵士は居ても武器が無い状態となっていたグリッペルベルクとしては最悪スコップ片手に白兵戦を行わせる覚悟をしていた。

 

 

対する四季島軍はルーシ軍のあまりの多さにどう叩くかの会議をしていた

 

満州方面軍司令部

 

南郷「約500000か、これで最低数だというのだな」

 

総参謀長「はい多ければ600000を超えるかと」

 

南郷「さてどうしたものか、我が方の戦力は3個軍に装甲車軍騎兵統合戦闘団に軍直轄部隊含めて400000になるかどうか」

 

総参謀長「空軍による攻撃でどうにかと思いますが」

 

斯波「空軍としては厳しいとしか言いようがないな敵は37㎜クラスの対気球撃墜砲を少数配備したらしい」

 

南郷「そうか、だとすると正面決戦しかないな」

 

アーチボルド「なら列車砲で釣瓶撃ちにするのはどうですかな、それに例の特戦隊に対空砲を破壊させるのもよいかと」

 

南郷「仕方あるまい、その手でいこう」

 

 

1月28日満州方面軍司令部は特戦隊2000名をルーシ軍奉天陣地に侵入彼らはルーシ語を話すことができた。

 

 

ルーシ軍砲兵陣地

 

砲兵1「士官殿いかがなされた?」

 

ルーシ士官?「いや増援としてこっちに来たのだが迷ってな弾薬庫は何処かな?上官にそこに集合するように言われてな」

 

砲兵1「弾薬庫なら向こうです」

 

ルーシ士官?「そうか、向こうか、ありがとう」

 

タッタタッタ

 

砲兵2「どうした」

 

砲兵1「迷子の士官が来ただけだ」

 

砲兵2「本国から来た援軍の士官かな」

 

砲兵1「らしいな、弾薬庫前に集合しろって言われたみたい」

 

砲兵2「さっきも迷子の士官が来たなアレは砲撃指揮所に視察に来たみたいだったが」

 

砲兵1「そうなのか」

 

このような会話がルーシ軍陣地では増えていた。そう先の士官もその前の士官も侵入した特戦隊であったのだ。

侵入した彼らは鹵獲したルーシ軍の軍服を装備し増援として各地より参集したルーシ軍兵に化け迷った士官や視察中を装い各陣地を廻り対空砲や重陣地に時限起爆システム付の爆薬を設置食堂に忍び込みひまし油を混入させるなどの妨害を行うと何らかの任務を偽装し陣地より撤退1月30日に爆薬が起爆これにより対空砲の約9割を破壊若しくは使用不能にし弾薬庫や砲撃指揮所観測所を破壊し防衛能力を削いで行った

 

 

ルーシ軍司令部

 

参謀「破壊された気球砲72門野砲49門カノン砲31門砲撃指揮所7箇所観測所19箇所弾薬庫5箇所何らかの薬物により腹痛などを訴えている者士官157名下士官81名兵卒248名補給物資500トン焼失。被害は以上となります」

 

グリッペルベルク「手ひどくやられたな、気球砲で動かせるのはたったの3門か」

 

参謀「はい、敵飛行船が来た場合対抗する手段を失いました」

 

グリッペルベルク「警戒を厳重にしろ。迷子になる士官など存在せんよいな」

 

参謀「はい」

 

参謀長「とはいえ閣下、何分参集したばかりでは迷うのも致し方ないかと」

 

グリッペルベルク「ともかく警戒は厳重にそれしかない」

 

 

そんなグリッペルベルクに衝撃的な報告がもたらされる

 

グリッペルベルク「講和、宮廷内で講和について議論されているだと!間違いないのかマストツキー中将」

 

マストツキー「はい、間違いありませんその中には皇太子殿下もいらっしゃるらしく。なにせ四季島軍により我軍は連戦連敗先日の飛行船によるウラジオストック攻撃もありましたので、それに宮廷の1部ではドイツ帝国*1が四季島と同盟を結ぶのではないかとの噂が立っておりますので」

 

グリッペルベルク「ドイツ領から飛行船を使えばサンクトペテルブルクを攻撃可能か」

 

マストツキー「はいシベリア奥地まで攻撃できますので可能になります」

 

グリッペルベルク「そうなれば講和もやむなし、条件は厳しいものになるだろうな」

 

マストツキー「はい、帝都攻撃を許せば満州は愚かウラジオストックや樺太太平洋に面する全域は最低でも持っていかれるでしょう、最悪ヤクーツク辺りまでと推定されています。宮廷内ではその前に講話と」

 

グリッペルベルク「馬鹿な未だ我軍は奉天を守っておるし、バルチック艦隊とて未だ向かっておる」

 

マストツキー「だからです、四季島艦隊に破れぬうちに講和すべしと」

 

グリッペルベルク「負ける前提か」

 

マストツキー「ここだけの話ですがどうにも士気が上がらぬと、ドッガーバンクの一件でエングランド政府は四季島寄りの態度フランカも中立ではありますが四季島寄りドイツは完全に四季島側に立っておりますので」

 

グリッペルベルク「補給か」

 

マストツキー「はい無煙石炭は入手不能です。それどころか水や食料も厳しいとの事、エングランド政府がバルチック艦隊には水食料の補給も微々たる量しか認めぬと」

 

グリッペルベルク「たどり着けぬかこのままでは」

 

マストツキー「1部の艦を本国に戻し戻す艦から物資を移譲する話も出ているようで」

 

グリッペルベルク「どのくらいこちらに廻されるのだ」

 

マストツキー「戦艦、海防戦艦14装甲巡洋艦2防護巡洋艦13駆逐艦12補給艦病院船12だとか」

 

グリッペルベルク「勝てぬぞ四季島海軍は戦艦12装甲巡洋艦8それ以下の艦多数を誇るのだぞ」

 

マストツキー「はい、だから講和と」

 

グリッペルベルク「負けれなくなったな、せめて海で負けても陸ではこの奉天では負けれん」

 

マストツキー「はい」

 

 

1月31日斯波空軍中将率いる15個飛行戦隊が奉天陣地を夜間空襲マストツキー中将が戦死多数の堡塁が破壊損傷したそれに対してルーシ側は破壊工作を逃れた対気球砲で対抗するも夜間による視界不良により見当違いの場所を攻撃全く役に立たなかったこの事によりルーシ軍では対空火器の開発より重飛行船による飛行船撃墜を主に置くこととしたこの事により対空火器の発達は遅れに遅れた、その後も連日連夜に渡る空襲により多数の死傷者と陣地に被害が出ていた。

 

2月1日時点での奉天防御陣の稼働率は47%不足するライフルは75000丁立て籠もる将兵425000名野砲等の大砲720門対する四季島軍将兵372500名列車砲36門を含め大砲3800門(迫撃砲代わりの小型臼砲含む)兵の数ではルーシ軍に采配が上がるが持ち込んだ大砲の数では四季島軍が圧倒していた。

 

2月3日満州方面軍司令部はついに月2号作戦発動を宣言先陣として斯波中将率いる飛行船36隻がルーシ軍陣地を空襲した

*1
明治38年プロシア帝国から改名




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