ヤンデレ綾小路(♀)   作:どこはかとなくやばい人

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ヤンデレ綾小路(♀)

「やっぱ綾小路って可愛いよなぁ。あのミステリアスな感じがまだ何とも…」

 

「そーか?堀北と比べたらまだまだだろ」

 

「健は堀北一筋だもんなー。流石にあそこまでツンがきついと俺は無理だわ」

 

「そこがいいんじゃねーか」

 

「理解できねー…。蒼太はどうなんだよ?誰か好きな女子とかいるのか?」

 

 昼休憩。

 学食で健、寛治と昼食を取った俺、三谷蒼太は現在、教室にて男子高校生らしい恋愛話に花を咲かせていた。

 

「俺?俺は……」

 

 今現在昼休みの教室には、当然ながら、俺たちのみならず他の男子生徒や女子生徒も教室内には存在するわけで。

 そんな場で自身のタイプを話せるほど肝が据わっているわけでもなければ、寛治のように何も考えないほどお気楽なわけでもない。

 

 思春期の男子高校生という存在は、例に漏れず妄想逞しい。

 ここでてきとうにはぐらかそう物なら男子グループチャット、下手をするとクラスチャットであることないこと書かれてタイプを捏造される可能性まで存在する。

 

 さてどうしたものか、と頭を悩ませていると、俺の元に救世主が訪れた。

 

「あれ、三谷君達がこの時間帯に教室いるの珍しいね」

 

「お、佐藤か。いや、今日は学食がいつもより空いてたからな。その分早めに帰って来れたわけだ」

 

「へー、普段ってそんな学食混んでるんだ?私、毎日お弁当だから学食ってあんまり行かないんだよねー」

 

「まぁ俺みたいな男は多分自炊しないやつのが多いしな」

 

 だからこそ、佐藤みたいな自炊をする女子力高い系の人は本当に凄いと思う。

 そもそもクッソ辛い寝起き早々の時期にわざわざ料理をしようって奴の気がしれん。

 

 その後もてきとうな雑談を交わし、佐藤が普段絡んでいる軽井沢、篠原、松下といった面々が教室に帰ってきたため、そのタイミングで佐藤との会話を切り上げた。

 

「……なぁ、蒼太。お前佐藤と付き合ってんのか?」

 

「?や、そんな事はないけど。普通の女友達って感じだろ」

 

「普通女友達ぐらいならあんな身体近くに寄せねーっつーの…」

 

「佐藤が距離近いだけじゃねーの?つーか寛治、お前女友達いないんだからそんなことわかんねーだろ」

 

「はぁ?!俺にだって女友達の1人や2人ぐらいいるし!」

 

「だったらお前の連絡先一覧見せてみろよ。頻繁に連絡取り合ってる女性が2人以上いるならさっきの発言取り消して謝罪するぜ?」

 

「うっ……」

 

 呻き声を上げて押し黙った感じの様子を見て軽くガッツポーズを取る。

 と、そのタイミングで昼休憩終了5分前の予鈴が鳴り響き、健や寛治も自らの席に戻り、授業の用意を始める。

 

「綾小路、かぁ…」

 

 先程寛治が話題に出していた少女、綾小路について、少し考えてみる。

 

 容姿に関しては寛治の言う通りかなりハイレベルに整っており、少しコミュニケーション能力が不足している節がある分櫛田や一之瀬のように人気があるわけではないが、この2人と並べたとして、綾小路が見劣りするような事は決してないだろう。

 

 学力、運動能力に関しては全て平均的。

 テストで際立っていい点を取ることもなければ、体育の授業で凄まじい好成績を残したこともない。

 

 能力で言えば至って平凡、まぁDクラス内で言えば中の上ぐらいには位置するであろう、というのが大方の評価である。

 

 とは言ってもDクラス内における中の上は大体Cクラス内の真ん中辺りと同レベルであり、多少の協調性不足こそあれど、何故綾小路がDクラスに配属されたのか、という点には少し疑問が残るのだが…まぁそれを考えたところで何かが分かるわけでもない。

 

「っと、俺もさっさと準備するとしますかね」

 

 次の授業は日本史。

 ロッカーに置いてある資料集を取りに行くべく、席を立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやどういう集まりだよこれ…」

 

 放課後。

 寛治がカラオケに行きたいなどと宣った為、いつも通り俺と健、寛治にプラスαで博士がついてくるいつものグループかな、と思っていたのだが。

 

 俺が想定していたメンツでこの場にいるのは寛治のみであり、健は部活、博士はパソコン関係の作業があるらしく、この誘いを辞退していた。

 

 流石に野郎2人でカラオケに行くなどと言った虚しいことをするわけにもいかず、代わりに寛治が誘ってきたメンツがこれまた意外なものだった。

 

 軽井沢グループ…いや、肝心の軽井沢は平田にべったりで恐らく今日も2人で出かけているのかこの場にはいないが、それに属する佐藤、篠原、松下の3人だった。

 

 俺個人としてはそこそこ交流もあり、特に問題のないメンツでもあるのだが、よく寛治の誘いを篠原が受けたよな、と。

 無人島試験の際、川の水を飲むか否かに関して口汚く罵り合いをしていた光景を思い浮かべる。

 

「今日は誘ってくれてありがと、三谷くん!」

 

「ん、ああ、俺たちも流石に男2人でカラオケっつー虚しいことはしたくなかったからな。こっちこそきてくれてありがとよ」

 

「うんっ!」

 

 合流早々近寄ってきた佐藤の相手をしつつ、後方、松下や篠原が歩き遅れていないかどうかを確認する。

 

 俺たちは一応5人でカラオケに向かっているとは言え、前方でボッチの寛治、その少し後ろに俺と佐藤、そこからもう一歩引いたところに篠原と松下、という位置関係になっており、側からみればとても今から一緒にカラオケに向かう様には見えないのではないだろうか。

 

「やっぱあれか、軽井沢は今日も平田にべっとりか?」

 

「んー、まぁそうだねー。ほんと、軽井沢さんは早いタイミングで彼氏できて本当に羨ましいよ」

 

「そんなもんか。寛治がどう思ってるかは知らんが、俺としては平田クラスのやつがさっさと彼女作ってくれた分俺みたいなやつにもチャンスが回ってくるって前向きに捉えてるけどな」

 

「三谷くんは平田くんがフリーだったとしてもいくらでも彼女なんて作れそうだけどねー。かっこいいし、頭もいいし」

 

「頭はともかく、顔面偏差値に関しちゃ並オブ並だろ、俺」

 

「そー?彼氏にしたい男子生徒ランキング第6位だし、結構人気あるんだよ、三谷くんって」

 

「なんだよそのランキング……」

 

 男子チャットで行われていた『特殊性癖を持ってそうな女子生徒ランキング』『彼氏から寝取ってみたい女子生徒ランキング』の様なものなのだろうか。

 というか、改めて列挙してみると俺らロクなことしてねぇな。

 

 ちなみに前者のランキングの1位がAクラスの神室、後者の1位がBクラスの一之瀬だったりするのだが、まぁそこはどうでもいい話だろう。

 

 つーか、6位。

 微妙に喜んでいいのかわかんねー順位だな。

 まぁ平田とか里中とか、割と全体的に顔面偏差値が高い高育でこの順位ってのは誇っていい……のか?

 

「なんならさ、三谷くん、私と付き合ってみない?」

 

「やめとけやめとけ、俺とお前じゃ釣り合わねぇよ」

 

「そんなことないと思うけどなー。私は三谷くんと佐藤さんっていいカップルになると思うよ?」

 

「うん、私もそう思うな」

 

 佐藤の様な良妻賢母の素質があるような女が俺みたいなモブofモブのような奴と付き合うのは勿体無い。

 まぁ冗談だろうとは思うのだが、もっと上の男引っ掛けられるだろ、と。

 そういった意味合いを込めて、佐藤にそう返すと、松下と篠原が後ろから揶揄う様に声を投げかけてくる。

 

「ほーん、そんなもんなんかねぇ」

 

「そんなもんだと思うよー?大体、付き合ってからのことなんて付き合ってからじゃないとわかんないしね」

 

「まぁそれもそーか…って、大衆の前でなんつー会話してんだ俺たち…」

 

 そういうと佐藤や篠原も相当恥ずかしい会話をしていた、という自覚を急に持ったのか、頬を軽く朱に染める。

 唯一松下だけがどこ吹く風で飄々とした様子を崩していなかったのだが、まぁコイツはなんとなくサバサバしてそうだからそんなもんか、と。

 俺は普段教室で寛治たちのもっと恥ずかしい会話に付き合っていることである程度耐性の付いているので、今更この程度の会話で狼狽えたりすることはない。

 

「んー、それなら、さ」

 

 俺たちが立ち止まっていることに気づかず、既に寛治の背中は遥か前方へ。

 流石にそろそろペースを上げないとまずいか、と、そんなことを考え未だ悶えている佐藤と篠原に声を掛けようとすると、そこに何かを思い付いたかの様な松下が再び声を上げる。

 なんだろうか、猛烈に嫌な予感がするんだが。

 

「あのさ、三谷くんと佐藤さん、付き合ってみたら?一回お試しって感じで」

 

「「「…………は?」」」

 

 俺と佐藤、ついでに篠原の口から出たのは、この困惑の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 怒涛の展開、正にこの言葉が似合うだろう。

 松下は頭がパンクしそうになっていた俺たちを連れて人目が少ない、というかほとんどない彼女お気に入りという穴場のカフェへと向かい、そこで概要を話す。

 

 彼女がいうには、俺と佐藤はお互いに好意らしきものは持っているがきっかけがなくこれ以上の関係になる、ということに踏み切れていないだけなのだとか。

 正直松下の言葉は胡散臭いことこの上なかったのだが、よくよく考えてみると少しは思い当たる節があった。

 

 寛治の誘いにこの3人が乗ってくれたのは、佐藤と俺の関係を進展させるためにカラオケという密室でのイベントを利用しようとしたのではないか、とか、佐藤が日頃俺への距離が少し近いのはそういうことを意識してのことなのではないか、だとか。

 

 佐藤について、改めて考えてみる。

 

 料理ができて、他の家事は知らないが少なくとも高育のDクラスで生活をしている以上最低限洗濯掃除ぐらいは出来なくては話にならない為、その辺も問題なし。

 おまけに容姿も整っていて、学力やら運動神経やらでちょっとポンコツっぽいところはあるが、それも専業主婦をやるなら特に関係なし…。

 

 あれ、これ、もしかしなくてもかなりの優良物件ではないだろうか。

 なーんか考えれば考えるほどこの申し出を辞退する理由がなくなっている様な気が…。

 

「ぅぅ…」

 

「っ?!悪い!」

 

 思考中、どうやら無意識のうちに佐藤に視線を向けてしまっていたらしい。

 真っ赤になった彼女の顔を見て、あまりに不躾すぎた、と謝罪をする。

 

「ううん、別に、大丈夫だから……」

 

「ふんふん、やっぱ2人とも満更じゃないよね?だったら尚更付き合ってみなよ」

 

「ぅー…」

 

「身近に平田くんと軽井沢さんっていうお手本カップルも存在することだし、さ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「席につけ、HRを始めるぞ」

 

 翌日。

 佐藤と恋人(仮)になったわけだが、寮の自室に着いてから連絡先を交換していなかった、と言うまさかの事実が発覚。

 

 遅刻するギリギリまで佐藤のことを寮前で待っていたが結局出て来ず、女子寮に足を踏み入れるわけにもいかないので仕方なく一人で登校してきたところだ。

 

 普段ならば朝から寛治達と話し込む所だが、遅刻数秒前に着いた俺にそんな余裕があるわけもなく、慌てて荷物を置き話を聞く体制を整える。

 

「今日は特に学校関係の連絡事項はない。体育祭が終了してから間もないが、気を抜くことなく1日を過ごすように」

 

 茶柱先生のHRはかなり短く、連絡事項だけ伝えてさっさと退室してしまうので、場合によっては30秒程しかかからない時もある。

 今日もそのパターンか、などと推察していたが、何故か茶柱先生は一向に退室の素振りを見せない。

 

「……それで、だ。数名気づいているかもしれないが、今日は佐藤が欠席となっている。

 元より病欠にはペナルティが発生しない、と言うのがこの学校のルールなのだが、今回は事情が特殊すぎる。

 佐藤に関しては、登校が可能になるまでの期間、定期テスト及び特別試験への参加が免除となる」

 

 そこまで聞いて、頭の中が真っ白になる。

 特別試験への参加免除。

 

 この文言は、この学校においてとてつもなく重いものだ。

 夏休みの無人島試験では持病で不参加だったAクラスの生徒、坂柳有栖の分のポイントもリタイア扱いされキッチリ差し引かれたし、体育祭に関しても同様、何か特別な措置が取られる、と言うことはなかった。

 

 と、いうことは。

 

「佐藤は現在、意識不明の重体となっている。

 昨日の深夜帯に、階段の下で倒れているところが発見された」

 

 佐藤の怪我は、それ相応に重い、と言うことだ。




まさかの綾小路セリフ0とかいう悲劇
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