ヤンデレ綾小路(♀)   作:どこはかとなくやばい人

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メリクリです…


第2話

「……連絡事項は以上だ。各々思う所はあると思うが、それでクラス間の競争に影響が出て佐藤が戻ってきた時にクラスポイントが0でした、なんて事態になればそれこそ本末転倒だ。その点に関しては留意しておいてくれ」

 

 茶柱先生がそう言って教室から出る。

 確かに、茶柱先生の言っていることは正論と言っておおよそ差し支えなく、現に今も平田や櫛田といったリーダー格が前に出て、必死に生徒たちを鼓舞するためのプロパガンダを行なっている。

 

 とはいえ、それで士気が戻るのは佐藤とあまり関係が深くない、もしくは全く交流がなかった生徒のみ。

 いつも連んでいた軽井沢、松下、篠原の三人組と、俺は未だに落ち込んだままでいる。

 

 何処からか俺と佐藤が付き合ったという情報を仕入れたのか、それとも俺の顔色から何かを察したのかは知らないが、席に戻る際平田が軽く声を掛けてくれる。

 

 それに生返事しか返せないことに少し申し訳なさを感じつつも、直ぐに佐藤を心配する気持ちが帰ってきて、その気持ちを塗り替える。

 

 さてどうしたものか、と、碌に回らない頭を必死に回転させていると、正面から誰かに声を掛けられる。

 意識をそっちに回していなかったため詳しくはわからないが、声の高さからして恐らく女性。

 しかし、松下や篠原、軽井沢のそれとは似つかないので、他に俺に声をかける可能性のある女性といえば櫛田ぐらいか、と思って顔を上げると、そこには想定もしていなかった彼女。

 

「悪い、今、少しいいか?」

 

 綾小路が、そこには居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、突然呼び出してしまって」

 

「や、まぁ、それはいいんだが…。なんの用だ?」

 

 俺と綾小路の接点なんてはっきりいえば特になく、こうして他人の目を避けてまで話し合わなければならないようなことがあるとは思えない。

 

「………喫茶店で、三谷が佐藤と付き合うことを聞いた。その矢先にこの事故だ。私も、お前にはテストの件で世話になっているからな。…何か、私が出来ることはないか?」

 

「……あー、なるほど…。心配ありがとな、綾小路。だけどまぁ、俺は大丈夫だぜ。一応クラス内でもリーダーっぽい立ち位置につかせてもらってる以上、私情で調子落としてクラス全体に迷惑かけるわけにもいかねーしな」

 

 そういってみるが、綾小路が俺に向ける視線は一切変わらない。

 

「…無理はしなくてもいい。生憎と私は今まで恋人と呼べる人物がいた経験がないが、突然大切な人から引き離されて、言葉を交わすことすらできなくなる悲しみは良くわかっているつもりだ」

 

「………………」

 

 まさかこのような台詞が綾小路から出てくるとは思わず、少しフリーズしてしまう。

 なんというか、定期試験勉強の際の綾小路を見ていると、他者との関わりをなるべく拒絶しているように思えていたのだ。

 俺たち講師役に質問をすることは最低限、それも綾小路が質問をするのはいつも決まって俺にのみ。

 軽井沢や櫛田のような派手目の生徒とは一切関わらず、普段も井の頭や王のような大人しめな生徒とたまに話しているところを見る程度。

 

 今までは単にコミュニケーションが苦手なだけだと思っていたが、もしかしてコイツ、その経験が原因で人と深く関わりを持つことに恐怖を感じているのではないだろうか…。

 

 そう考えると、今この場で彼女にトラウマを思い出させてしまったかもしれないことに対し言い知れない罪悪感を抱く。

 だが、そんな俺を他所に彼女は言葉を紡ぎ続ける。

 

「そうだな…私は元来コミュニケーションというものが苦手なんだ。だから、回りくどい言い方をするのはやめにしよう。

 ────辛い時は泣いてもいいんだぞ、三谷。お前がクラスのリーダーとして頑張っていることは全員が知っている。ここらで一回休んだところで、文句を言うような奴は誰もいない」

 

 そう告げた綾小路。

 そう、か。

 少し休んでも、いいんだな。

 

 その言葉を聞いて嬉しく思いつつも、涙腺がつい緩みそうになるので何とか気を張り直す。

 流石に俺も、同級生である女子の前で涙を流すことは避けたいから。

 

「ありがとな、綾小路。今すぐに完全復活は無理かもしれないけど、なんとか頑張ってみるわ」

 

「そうか。まぁ、私の胸ぐらいならいつでも貸す。辛くなったらいつでも言ってくれ。…っと、そうだ。そう言えば、まだ私はお前と連絡先を交換していなかったな。佐藤と付き合っている手前他の女と交換するのは抵抗があるかもしれないが、一応番号だけでも控えておいてくれ」

 

「松下とか軽井沢とも交換してるからその辺の抵抗とかはほとんどないな。ありがと、登録しとく」

 

「ああ。それじゃ、先に教室に戻っておいてくれ。少し用事を思い出したんだ」

 

「そーか、そういうことなら先に戻っとく。ほんとにありがとな、綾小路」

 

 彼女に改めてお礼を言い、その場を去る。

 取り敢えず堀北と平田に今後の俺の立ち位置についてだけ説明しとかないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後。

 平田と堀北をカラオケに呼び出し、次の特別試験において俺が取るスタンスについて伝える。

 

「……そう。それじゃあ、次の特別試験ではリーダーとして指揮する立場からは離れる、ということでいいのね?」

 

「悪いけど、それで頼む。流石にまだ気持ちの整理が完全に終わったわけでもねーし、こんなときに指揮を取っても碌なことにならないだろうからな」

 

「…うん、わかった。とにかく、今は無理をしないで欲しい。ただでさえ佐藤さんが離脱してしまった以上、三谷くんにまで抜けられたら人数差による不利も生まれかねないからね」

 

「体育祭や無人島試験のことを踏まえると、本人によっぽどの事情がない限り特別試験への参加は免除されない。三谷くんには申し訳ないけれど、兵隊として少しは働いてもらうわよ」

 

「それはもちろん。無理を言って抜けさせてもらってるんだ、俺が兵として役に立てるならいくらでも使ってくれて構わない。…なんというか、意外だな。堀北なら、そんなことを言い訳にせずに指揮官として働け、ぐらいのことは言ってくるもんだと思ってんだけど…」

 

「貴方は私のことを悪鬼羅刹の類だとでも思っているの?流石に、今の三谷くんが精神的に相当な負荷を負っていることぐらいはそういった感情に疎い私でも理解できるわ」

 

 入学当初の堀北ならば本当にそれぐらいのことは言ってきそうだな。

 なんというか、これまでの試験を通して、彼女も人間的に成長してきているんだなぁと。

 そんなことを、改めて実感する。

 

「……まぁ、それはそれとして。貴方の代役はどうしようかしら。櫛田さんは恐らく、と言うかほぼ確定でCクラスとの繋がりがある、高円寺くんは論外…」

 

「幸村くんはどうだい?彼なら頭脳面は申し分ない。強いて言えばフィジカルには不安が残るけど、今までの試験を踏まえると、この学校の試験は基本的に集団戦だからね。そこは他の人たちでカバーすればいい」

 

「幸村なぁ…。確かに頭はいいが、それは勉強面の話だ。正直な話、リーダーとして動くとなると龍園や坂柳みたいな搦手を使ってくる相手にボコボコにされるだろうな。一之瀬みたいな正統派相手ならそこそこやれるとは思うんだが」

 

 幸村とはたまに雑談をするぐらいの仲だが、依然として学力で人の優劣を判断する節が時折見られる。

 この学校の試験が学力だけでどうにかなるほど単純なものだとは思えないので、そうなるとリーダー候補としては考えづらくなる。

 

「いっそのこと軽井沢さんに操り人形になってもらう、というのは?彼女なら恐らくそれなりにはクラスを纏められるでしょうし、平田くんが居れば恐らく制御も容易なはずよ」

 

「んー、まぁキツイだろうな。寛治、春樹が制御不能になる。まぁ春樹は最悪暴走されてもどうとでもなるが、寛治のコミュ力は捨てがたい」

 

「うーん…難しいね」

 

「つーかよ、別に俺が抜けたとしても平田と堀北で指揮官は事足りるんじゃねーか?」

 

 平田も堀北も、単独だと指揮官として少し物足りないところこそあるものの、二人が揃えば他クラスの指揮官と比べて実力に遜色はないように思える。

 

「確かにそうかもしれないけれど、万が一、と言うことがあり得るわ。私か平田くんのどちらかが常に指示を伝えられる状態が続くならともかく、この学校がそんな甘いことを許すわけがない」

 

「んー……それなら、さ。俺から一人候補を出したいんだが…」

 

 誰かしら、と、堀北は俺に続きを促す。

 

「綾小路だよ。アイツなら頭も回るし、フィジカルも平均程度にはある。俺が知る限り寛治たちからのウケもいいし、指揮官としては申し分ないだろ」

 

「綾小路さん…か。僕、彼女とはあんまり話したことがないんだよね。何か避けられてるみたいで…」

 

「事実、彼女のような人種からすれば平田くんは地雷要素の塊のようなものでしょう?」

 

「まぁクラストップのリア充で、挙句の果てにギャルの彼女付きってなれば大人しめのやつはあんまり関わりたくなくなるわな」

 

「うーん…それじゃあ、僕から交渉を持ちかけるのは難しそうだね」

 

「それは彼女とあまり話したことがない私も同様…、だとすると、必然的に」

 

「俺、ってことになるな」

 

「そうね。申し訳ないけれど、お願いできるかしら」

 

 確かに綾小路とは今まであまり話したことがなかったが、今日の件も含めてこの二人よりかは俺から持ちかけた方が成功確率も上がるだろう。

 任せろ、と、そう一言だけ伝えて、今日の集まりは解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私をリーダーに?」

 

 翌日、綾小路に件の交渉を持ち掛ける。

 俺からの急な提案に少し驚いたのか、ほとんど変わらないように見えながらも、なんとなく少し目を見開いたように感じる。

 

「ああ。綾小路ならもう察してくれているとは思うけど、今現状、俺は指揮官をできるような状態じゃない。だから代役を立てようって話になったんだが…」

 

「そこで白羽の矢が立ったのが私、というわけか。だが、何故だ?能力面で言えば私よりも優秀な女子生徒は多数…とまではいかなくても数人は存在する。そこで私を指揮官に据える意味がわからない」

 

「確かに能力だけ見ればそうかもしれないが、指揮官っていうのは単純な学力だったり、身体能力だったりの優劣で判断できるような単純な役じゃない。色々な面から判断した結果、綾小路が適任だってことになったんだ」

 

 ぶっちゃけ平田も堀北も、ある程度指示がまともにできて尚且つそこそこ人望があるやつなら誰でも良かったとは思うんだが、流石にそれを口に出すわけにはいかない。

 まぁ実際、平田や堀北の統治があまり及んでいない王や井の頭といった大人しめの女子生徒と友人関係である綾小路は今の状況にうってつけとも言えるのではないだろうか。

 

「……少し待ってくれ。考えをまとめる」

 

 そう言ったっきり、綾小路は目を瞑って何やら考えるような素振りを見せる。

 ………やっぱこいつ、改めて見たら容姿だいぶ整ってんな。

 そんな下世話なことを考えているうちに綾小路は考えがまとまったようで、いつもより幾分か強い…………ような気がする目線でこちらを見据える。

 

「……よし、取り敢えず、指揮官の件は引き受けよう。ただし、知っての通り私に男子との交友関係は一切ない…ああ、違うな。三谷、お前を除けば一切ないし、軽井沢や篠原のような女子との関係も薄い。その辺は平田達にカバーしてもらう形になる」

 

「その辺は大丈夫だ。女子に関しては平田が言えば従うだろうし、健は堀北で制御可能、残りの男子も最近は制御しやすくなってきてるしな。つーか、綾小路レベルの容姿だとちょっとお願いしたらちょろい男連中はすぐ従うだろ」

 

 より具体的に言えば寛治とか春樹とかあの辺の男子は。

 博士は二次元専なのでリアルの女子に靡くかどうかは全くの不透明だが、まぁアイツに関してはアニメのDVDか何かを餌に引っ提げておけば取り敢えず指示には従ってくれるので別段問題はない。

 

「私レベルの容姿………?」

 

「なに、自覚してねーの?軽井沢とかその辺と比べても遜色ないどころか、お前の方が好きって人も結構いそうなレベルで綺麗な顔してんぞ、お前」

 

「そうか………。なるほどな。それと、もう一つ条件があるんだが、いいか?」

 

「別にいいぞ」

 

「ありがとう。なら、単刀直入に言わせてもらうが…」

 

 と、そこで綾小路は一拍置く。

 

「三谷。次の試験、私専属の部下…と言っては聞こえが悪いか。次の試験、堀北や平田の管轄から離れ、完全に私の指揮下に入ってほしい。それが、私が出す二つ目の条件だ」

 

 

 




綾小路ちゃん:未だに名前が不明。喋り方に関しては色々自分の中で葛藤こそあったものの、最終的には鬼龍院話法に収まった。ちなみに初期案のうちの一つに朝比奈話法が存在していたので、そっちが採用されれば無表情ヤンデレ系ギャルとかいう化け物が誕生していた。

オリ主くん:綾小路ちゃんのことは「はえ〜、なんやこいつええやつやな」ぐらいの認識。メンタルはわりと逝きかけてる。
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