ヤンデレ綾小路(♀)   作:どこはかとなくやばい人

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あけおめ!!!!!!!!!!

後、今回の話は原作未読勢からすると「???」となりそうな場面がいくつかあるので、出来れば『よう実 林間学校』とでも調べていただき、軽く概要を把握していただけるとより楽しめると思います。



第3話

 三学期が始まって間もない木曜日の朝、俺たちはおそらく特別試験が行われるであろう会場に移動するため、バスに乗車していた。

 今回の試験において俺は指揮官から外れ、綾小路の直属として動くことになる。

 

 平田はともかく、堀北はポッと出の綾小路が俺の指揮権を完全に握ることに対し少し難色を示していたが、この条件を飲まないのならばこの件は白紙にする、という綾小路の言葉に渋々承諾していた。

 

 出発前には予備のジャージ、下着を複数枚用意することを強く推奨されていた為、数日に渡る試験であることはほぼ確実、それに移動時間も3時間とかなり長く、皆携帯を弄るなり、ゲームで遊ぶなり、雑談に興じるなり、各々で時間を潰していた。

 

「盛り上がっているところ悪いが、静かにしろ」

 

 トンネルを抜けたあたりでハンド形のマイクを手にした茶柱先生がそう声をかけ、特別試験の説明を始める。

 

 その内容を要約すると、このバスは現在特別試験の会場へ移動している。

 だが、夏休みの無人島試験ほど大がかりなものではなく、むしろ無人島に比べれば生活そのものは極めてイージーなものであるという。

 その試験は、『混合合宿』。

 

 口頭説明のみであったペーパーシャッフルと違い詳細なマニュアルが配布されている点も含めて、どちらかと言えば仕組みがややこしいタイプの特別試験である。

 男女別、学年毎に6つの小グループを作り、更にその小グループが統合されて最終的に6つの大グループが成立することになる。

 ただし、その小グループの中には最低2クラス以上の生徒が在籍している必要があり、強制的に今まで敵として鎬を削っていた生徒たちと共闘する必要が出てくる。

 

 採点方法は大グループのメンバー全員の平均点であり、他学年の良し悪しも大きく試験結果に影響してくる為、大グループを形成する際に選ぶ他学年の小グループは慎重に決めなければならない…とまぁ、大体こんな感じだろうか。

 

 大まかなテストの内容が『道徳』『精神鍛錬』『規律』『主体性』な為、頭がいい生徒だけで組んでも勝てないし、脳筋の生徒だけで固めても勝てないという、これまで以上にグループの総合力が問われるような試験になりそうだ。

 

「つーか平田、これって…」

 

「うん…資料を見る限り男女別で行われる試験らしいし、綾小路さんが三谷くんに直接指示を出せるタイミングがほとんどなさそうだね」

 

「どうすんのかね…っと、悪い。メールだ」

 

 平田に一言断り、メールを開く。

 送り主は当然の如く綾小路で、その内容は特別試験についてのことだった。

 

『この試験の内容だと、私がお前に直接指示を出すのは不可能に近い。だから、こちらからお前に指示することは一つだけだ。

とにかく家事ができるやつと班を組めるよう最大限努力しろ。お前のスペックがあれば試験で苦戦することはそうそうないだろうが、家事だけは話が別だ。

今回の試験もまた一癖ありそうだが、退学にだけはならないようお互い頑張ろう』

 

 冬休みの間に一度綾小路を部屋に招く機会があったのだが、その際に俺の汚部屋具合、絶望的な料理センスを目の当たりにしている彼女からの忠告。

 当然無碍にできるわけもなく、俺の友達で家事ができるやつを脳内に思い浮かべ…浮かべ…浮かべ…やべぇ誰も居ねぇ。

 

 いや、俺の知り合いが皆家事が壊滅している、というわけではない。

 部屋の掃除ぐらいならほとんどのやつが出来るだろうし、俺のようにカップラーメンを作ることすら若干怪しいだなんてことはおそらくないだろう。

 

 だが、それが自炊となると話が一気に変わってくる。  

 以前Bクラスの面々、プラス平田と学食に行った際に話したことなのだが、少なくとも平田や神崎や柴田、浜口は普段から自炊をしない、やったとしても精々が目玉焼きとか、そのレベルのものだそう。

 

 だったら残りのDクラスの連中はどうなのか、ということなんだが、考えてほしい。

 山内や池、須藤が、果たしてまともな料理を作ることができるだろうか。

 前述三人よりはまともとは言え、幸村や三宅が家庭料理を作ることができるだろうか。

 

 答えはおそらく否である。

 三馬鹿に関しては以前、料理ができない、と言った趣旨の発言をしていたため確定、幸村は勉強以外のことが基本的に死んでいるタイプの人間なため、ワンチャン俺と同じ穴の狢な可能性がある。

 三宅は……知らんけど、まぁ多分出来んだろ。

 アイツからは俺と同じ、家事壊滅マンの波動を感じる。

 ……これはもしかしなくても、手詰まりというやつなんじゃないだろうか。

 

 会場に到着したバスから下車するように指示をする茶柱先生の声を聞きながら、俺は1人、軽く絶望するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスから降りて案内されたのは、通常の学校と比べてもかなり大きめのサイズであろう木造の建物。

 なんというか、よくテレビで見る廃校を少し綺麗にしたような感じがする。

 

 点呼が終わった後はすぐ男女別に分かれさせられ、俺たち男子は大きい方の建物、本棟へと入るよう指示された。

 

 やがて全学年の男子生徒が体育館の中に集められると、肩身の狭い一年生はすぐに集まり、騒いだりすることなく教師陣の指示を待つ。

 程なくして壇上に立った見覚えのない男性、恐らく他学年の教師であろう人物が、マイクを持って口を開く。

 

「バスの中の事前説明で、各自、試験の内容は理解できていると判断させてもらう。よって、この場で改めての説明は行わない。ではこれより、小グループを作るための場、時間を設けさせてもらう。各学年、話し合いのもと6つの小グループを作るように。また、大グループを作成する場は、本日の午後8時から設けてある、以上だ。補足だが、大小問わずグループ決めに関して学校側は一切関知しない。仲裁役として入ることも一切しない」

 

 教師が壇上から降りた後、各学年の男子生徒たちは戸惑いながらもリーダーの指示をもとに行動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この特別試験が始まってから、早数日が経過していた。

 Dクラス男子勢で唯一家事が得意、ということが判明した男の娘、沖谷を班に加えることになんとか成功した俺は無事今日の今日までなんとか生きながらえ、先輩方や同じ班となった他クラスのメンツも比較的友好的な人物が多く、このままいけば最終日の試験でもかなりの高得点を出し、クラスに貢献できそうだ。

 

「三谷くん、それ運んでもらってもいい?」

 

「あいよ。悪いな、任せきりで」

 

「ううん、別にいいよ。普段あんまりクラスの役に立ててない分、ここで頑張らないとね!」

 

 ………はっ。

 あまりの可愛さに、一瞬心がどこかに行ってしまっていた。

 危ない危ない、もし完全に堕ち切ってしまえばその先に待つのは修羅の道、いつか佐藤が目覚めた時に合わせる顔がなくなってしまうからな。

 

「いやいや、沖谷が居なかったら俺らの班は終わりだったからな。そういう意味じゃ、今回の試験のMVPって言っても過言じゃないだろ」

 

「そーそー、俺らもまともに作れるのは目玉焼きぐらいだし、三谷に至っては触った食材全てを炭に錬成する能力の持ち主だからな」

 

 ……何も言えん。

 初日になんというか、初対面のやつにもいいところを見せておきたかったというか。

 そんな感じでいささか浮かれていた俺は、沖谷が切った野菜を炒める、という作業を命じられていたのだが、気づいた頃にはフライパンの中で炭が錬成されていた。

 

 別によそ見をしたわけではないし、火力を間違えたということも(恐らく)ないはず。

 一体どうしてなんだ……。

 

「あはは…ほら、人には向き不向きがあるって言うからね」

 

「その気遣いが身に染みるぜ…」

 

 この数日間寝食を共にしただけあって、初対面の連中ともかなり打ち解けることができていた。

 その証拠に、今も他クラスと一緒に特別試験を受けている最中とは思えないぐらい弛緩した空気が流れている。

 

 和気藹々とした雰囲気で雑談を続けながら調理に取り掛かる他の奴らを尻目に、沖谷から渡された料理をテーブルまで運びに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、三谷くん」

 

「おはよう、平田。今朝も元気そうで何よりだ」

 

 朝食後、何やら全体で共有しておかなければならない話とやらがあるらしく、俺たちは学年、性別を問わず、最初に説明を受けた体育館への招集を受けていた。

 また何か変なルールが追加されるのではないか、と危惧する生徒や、もしかしたら何かアクシデントが起こったのではないか、という推察をする生徒。

 その辺は三者三様だと思うが、とにかく体育館内は生徒達のざわめく声で溢れていた。

 

 そんな生徒達の様子を諌めることもなく、壇上に置かれているマイクの前に立ったのは、最初に説明をした教師ではなく、俺たちもよく知る顔ーー1年Aクラス担任の、真嶋先生だった。

 

「1年Aクラス担任真嶋だ。今回の緊急呼び出しで伝えなければならない事項が1年生に関わることのため、私が説明を担当させてもらう」

 

 1年生に関わること、と真嶋先生が口にした瞬間、再びざわめきが起こった。

 誰かが何か変なことでもしでかしたのではないか、自分たちで作った料理で何か失敗があったのではないか、など、さまざまな憶測を口々に話している。

 真嶋先生はそれに対して『静粛に頼む』と一言だけ告げ、再び本題を話し始める。

 

「本来なら、こういったアクシデントが起こった場合は当該生徒の所属グループにのみ口頭で伝えた上、その生徒はリタイア扱いにする、というのが規定だ。

 だが、今回のアクシデントに関しては、我々教員及び学校職員に過失の全てがあり、当該生徒に非はなかった、ということが証明された為、このように全員に特例措置を伝える運びとなった」

 

「過失の内容は、一言で言えば備品の配置の仕方が間違っていた、ということだ。

 そのせいで、当該生徒が少しその棚に触れただけで積まれていた備品が崩落を起こし、生徒も足の骨を折る大怪我を負ってしまった」

 

「これに対し学校側としては、当然こちらのミスで怪我を負ってしまったのだから、その生徒、及び所属クラス、グループに対して最大限の配慮をする必要がある。

 起こったのが昨日の晩故、まだ教職員間での結論が出ていないこともあり、今この場でその内容を伝えることはできないが…その生徒が所属するグループ、及びクラスに不利益となる内容は全て排除すると、この場で約束させてもらう」

 

「繰り返しにはなるが、今回の件は完全に私たち、職員に落ち度がある。本当に、申し訳なかった」

 

 そういい、マイクの前で大きく頭を下げる真嶋先生。

 横を見ると他の職員も全員が頭を下げており、如何に今回の事故を重く捉えているか、ということが見て取れる。

 

 

 話が終わり解散となった後、1年生の各クラスにはそれぞれ別室で30分間、男女を問わず現状について話し合う時間が設けられた。

 俺たちはCクラスに割り振られた部屋まで移動し、そこでリーダー格である平田と櫛田が前に立って、まずはその事故に遭った生徒がDクラスの生徒であるかどうかを確かめ始める。

 

「……………あれ?」

 

 誰かがそう呟くと同時に、他の生徒も一斉に疑問、それと共に不安を感じ始める。

 今現在この部屋に居るのは38人。

 佐藤が抜けている為、元々このクラスは39人の筈なのだが、更に1人足りない。

 

 一体誰なのか、周りを慎重に見渡してみる。

 

 そのことで気付いてしまったのは、彼女が居ないこと。

 今回の試験において、傷心した俺の代わりにリーダーを引き受けてくれた、心優しく、頼もしい少女。

 

「綾小路………?」

 

 綾小路の姿が、そこにはなかったのだ。




次辺りで終わらせるとかこの前の後書きで書いてましたが、多分まだまだ続きます。今回は繋ぎ的なアレです。
後、短編から連載に切り替えておきました。書いてるうちに綾小路ちゃんが勝手に動き回るので、作者自身もどこまで話数がいくのか全くわからないのです
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