てな訳でどうぞ。
「僕の名はクロノ=ハラオウン。現在、君にはロストロギアの不法所持と使用の嫌疑が掛かっている」
連れて来られた白い部屋で同い年くらいの黒髪の少年―――クロノが厳しい目付きでそう告げてきた。
結論から言えば、毎日自分にだけ聞こえていた変な声にスコールと名付けて契約とやらをして、襲ってきたピンクの髪の女性と戦ったらこうなった。
あれはマジで怖かった。炎を纏った剣を連続で叩き込まれたし、それを変な剣で受け止めて何度も地面や建物に叩き付けられたし。しかもビルに押し潰されそうだったし。
後、身体のあちこちも痛いし。けど……
「悪い。そのロストロギアって何?意味が全然分からん」
自分のその言葉にクロノは「そこからか……」と呆れてたが、本当に知らないのでしょうがないと思いまーす。
分からないことはちゃんと聞くようにと、じいちゃんも学校の先生も言ってたし。
「ロストロギアは過去に滅んだ世界、文明が残した遺物だ。現代の技術では解明できない物が多く、場合によっては次元世界そのものが滅びてしまうこともある危険な物だ……その顔は良く理解してないな」
「おう」
「即答か……」
クロノはまた呆れてるが、事実なので許してくれ。
世界が滅びるアイテムってどこのゲームとアニメなんだよ?いくら何でもあり得ないだろ。
『相変わらず契約者はバカですね。非日常を目の当たりにしながらそんな考えしかできないんですから』
本当にお前は自分に喧嘩売るよな、スコール。
お前のせいで周りから凄く浮いたし、医者でさえお手上げで本当にイライラの毎日だったし!!
原因は事故の大怪我で脳にも影響を与えたのではないかと医者は言ってたが……
「……まさかとは思うが、魔法についても知らないとは言わないよな?」
「魔法って、テレビや本、ゲームに出てくるあの魔法?MP消費して使うアレ?」
そう返した瞬間、クロノが頭を抱えた。
何で頭を抱えるんだよ?あの摩訶不思議現象が魔法とでも言うの?
『契約者、私を出してください。そうすれば私が目の前の少年に説明します。バカな契約者じゃ話が進まないので』
ムカつくけど分かったよ、スコール。で、どうやってお前を出せばいいの?
『念じれば出てきます』
スコール出てこい、スコール出てこい、スコール出てこい!!
そう念じると、ヘンテコな形状の剣がオレとクロノの間に瞬間移動のように出てきた。
……本当に変わった剣だよな。ゲームに出てくるガンブレードみたいだ。だからこんな名前にしたんだけど。
『警戒せずとも大丈夫です。あくまで私がバカな契約者の代わりに答える為に現れただけですので』
「……なら聞こう。君はロストロギアか?」
『かつて私が造られた世界はとっくに滅んでいるという点で言えば、私は貴方の言うロストロギアとなるでしょう。私のいた世界が滅んで以来、ずっと次元の狭間を漂流してましたが』
じゃあなんで此処にいるんだよ?漂流してたならずっと漂流してろよ。
「……そうか。なら、名称は?」
『現在はスコールです。以前の個体名称は【殲魔の断剣】ですが』
おい!無視すんな!聞こえてんだろ!
「なぜ名称を変えた?」
『契約において必須だからです。【殲魔の断剣】も前の契約者が与えた名称です。過去には【魔法殺しの剣】や【滅びの魔剣】とも呼ばれていました』
だから無視すんな!お前は自分の考えてることが聞こえてんだろ!?
……あれ?そう言えば。
「前に聞いた時、名前はないって言ったよな?あれは嘘だったのか!?」
『嘘は言ってません。適合者との契約が切れた時点で私は名無しとなるので』
「それ、屁理屈だろ!?」
『屁理屈ではありません。そもそも契約で名付けが必要だと契約者はもう知っているでしょう。本当に契約者は頭がバカですね。後、契約者に対応してたら話が進まないので思考共々大人しくしていてください』
「誰がバカだ!後、やっぱり無視してたのか!!」
『契約者以外に誰がいると?このやり取りももう246回目です』
「なんでそんな事細かに覚えてるんだよ!?」
『私は優秀ですので。後、その台詞は25回目ですね』
「ウォッホン!!」
自分とスコールが言い合ってると、クロノがわざとらしく咳き込んで止めに入った。
「口喧嘩はできれば後にしてくれ。可能ならそのロストロギア……スコールをこちらで解析したいんだが……」
『解析は認めません。これが元で後継機のような悪辣なものが生まれるのも面倒ですので』
スコール、即却下しやがった。せめて考える素振りをしろよ。
「悪辣って……君の言う後継機はどれほど危険なんだ」
『具体的に上げるとしたら、脳以外の肉体が欠損しても元通りになる不死に近い再生能力。武装も大破しても自己修復のみで綺麗に修理可能。魔力結合を自由に切断可能に加え、個体ごとにおける特殊な能力。契約者を殺しを求める
「最後の方で確かに悪辣だと納得した」
うん。オレも最後の方で納得した。契約者を殺人鬼にするとかマジヤバい。
あれ?それが後継機ならスコールもまさか……
『その悪辣はバイオ兵器ですので、そのバイオが私には欠片もないので
そうですかー。そのバイオ兵器が一番危ないことは理解できたわ。けどさー……
「お前とその後継機とで何でそんなに違うんだよ?」
『一番の理由は使える人間が極端に少なかったからです。過去に適合した人間は数える程度ですし、その確率も一万人に一人の確率なので』
「それを緩和する為のバイオ兵器、という訳か……」
『はい。結果、後継機は百人に一人の確率で使用者を発見できるようになりました。適合しても死ぬ危険性はありますが』
「何でそんな危険極まりない造りにしたんだよ……」
『危険?この程度はまだ可愛い部類ですよ。中には水を猛毒に変えたり、大地を緑育たぬ腐敗の地に変える兵器もありましたので』
全然可愛くねぇよ!お前の世界はどんだけカオスなんだよ!?
『これがカオスなら、未成年が仕事する世界も十分にカオスです。そちらの世界は余程人員に余裕がないみたいですね。それとも未成年しかいない組織でしょうか?』
「……時空管理局はちゃんと大人の局員もいる。今回は艦長も忙しいから、執務官の僕が担当しているんだ」
『そうですか。貴方が優秀なのか、組織が脆弱なのかは判断出来ませんが』
だから何で露骨に喧嘩売るんだよ!?クロノも眉間にシワ寄せて青筋を浮かべてるし!!
お前がそんなんだからあんな後継機が生まれたんじゃないのか!?
『違いますよ契約者。そもそも後継機に管理人格は搭載されてません。私は全てをシステムを介して行うので、ユニゾンデバイスに匹敵する管理人格が搭載されているのです。なので解析と処理速度は後継機より遥かに優れてます。分断に対する耐性も有しているので後継機に遅れを取ることはありませんよ。あくまで契約者次第ですが』
本当にコイツは……!
後、後継機に管理人格がないのは絶対にお前のせいだ。間違いない。
「どんなに優れててもそんな捻曲がった性格じゃ、昔の奴らも相当苦労しただろうな」
『確かにどの契約者も苦労していましたね。この機関は適合者でなければ確実に魔力暴走を起こして死亡しますし、適合した契約者でも魔力暴走を起こす確率は高いですから』
「そういう意味じゃない!!」
本当に皮肉が通用しないな!本当にイライラさせる疫病神だよ!!
「その暴走する確率は?」
そっちは普通に話を進めるなよクロノ!指で机をトントン叩いてるからかなり苛ついてるのは分かるけど!
『適合者でない者は100%、適合者でも良くて65%です。今回の契約者は50%と過去最高の数値ですので、簡易の魔力分断なら暴走することなく問題なく使えます。本来の
半分の確率で死ぬんかい。後、あれで一割以下なんかい。蒼色の光線で変な壁に穴開けたのに。
『ですので《ディバイドモード》の使用はしばらく禁じます。せっかく見つけた契約者がすぐ死ぬのは御免ですので。後、《ディバイドモード》であれば触れた瞬間に結界は霧散します』
それでいいよ。自分もまだ死にたくないし。
そのディバイドモード?ってやつはマジで恐ろしいな。反則すぎない?
『それと契約者に魔法の知識は皆無です。私の独断から仮契約を行いましたが、魔法については本契約を交わしてから教える予定でした。その本契約も契約者の判断能力が一定の水準に達してから行う予定でしたが、《烈火の将》の襲撃で実行せざぬを得ませんでした』
「仮契約?」
『はい。私を行使するには名称を登録し、リンクを完璧に繋げる本契約と、適合者に対しての緊急措置としての仮契約の二種類があります。仮契約の場合は念話の妨害や仮契約者の治療等といった小事しかできませんが』
「なぜその仮契約を行った?」
『契約者が生死の境を彷徨っていたからです。久方ぶりの適合者の発見で少し舞い上がってしまい、契約者の治療の為に仮契約を決行し、融合しました』
……え?融合?オレ、お前と一つになってんの?
確かに物心ついてすぐに事故に合ったけど。じいちゃん達の話じゃ自分は奇跡的な回復で一命を取り止めたとか言ってたけど。
つまり、コイツが自分の命を救ったと?
……全然喜べない。こんなヤツに命を救われたとか。
「つまり君は、話の中に出てきたユニゾンデバイスという存在なのか?」
『そうとも言えます。本契約を交わした契約者が死ぬまで融合は解けないので完全な同一とは言えませんが』
「その言い草からして、君は彼と死ぬまで離れないと?」
『はい』
クロノ、再び頭を抱える。今度は机に突っ伏しそうな程に。
「えっと、何で頭を抱えてるんだ?何かまずいことでも?」
「……ロストロギアは見つけ次第、管理局が押収、封印するのが決まりなんだ。この場合だと最悪、君を特殊刑務所に入れなければならなくなる」
え?刑務所?それって悪いことした人が閉じ込められるあの?
つまりオレ、その刑務所に入れられるの?この先ずっと?
『知りません。そもそも時空管理局とやらの存在すら知らない相手にそれは傲慢ですよ。上に報告するなら特殊なデバイスとでも言っといてください。年齢と身長が一致してなくてもそれくらいは出来るでしょう?』
「……それはどういう意味だ?」
……あれ?クロノの様子が今までで一番ヤバい気がするんだけど。
『言葉通りの意味です。生体分析の結果、推定年齢十四歳にも関わらず、身長が契約者と大して変わらないのですから』
「一々君は喧嘩を売らないと会話ができないのか!?」
え!?クロノは年上だったの!?じゃあクロノさんじゃないと駄目か!?
イヤ、それよりも!!
「スコール!お前は頼むからこれ以上喋るな!どんどん事態が悪化している気がする!」
『バカな契約者では背が低い目の前の少年から自由を勝ち取れる確率は皆無に近いでしょう。なら、私が交渉する方がまだ可能性があります』
「相手に喧嘩を売りまくっているのに、マトモな話し合いができるかぁ!」
『喧嘩など売っていません。純然たる事実を述べてるだけです』
「せめて優しく包め!お前の言葉はどストレート過ぎるんだよ!!」
『必要ありません。変に誤魔化す必要性を感じませんし、未成年が取り調べする組織です。大人の随伴すら無いのですから組織としての力も高いとは思えません』
あーもー!ああ言えばこう言う!
見ればクロノさんが同情するような眼差しを向けてるけど、同情するなら何とかしてくれ!
『そもそも私がロストロギアなら、【夜天の書】もロストロギアでしょう。希少な魔法の保存目的で開発された危険性が低い魔導書の騎士を野放しにしている時点で説得力がありません』
「【夜天の書】?それは一体何だ?」
『あの襲撃者のことですよ。あれは【夜天の書】の守護騎士の一人です』
「……あれは【闇の書】という第一級捜索指定がされている危険なロストロギアの騎士だぞ?」
クロノさんがまた剣呑な雰囲気を発し始めている。けど、スコールも嘘をつくとは思えないし、どうなってんだ?
『【闇の書】?貴方こそ何を言ってるのです?あれは【夜天の書】の守護騎士プログラムの《烈火の将》シグナムです。太刀筋は洗練されていましたが、間違いなく【夜天の書】の騎士です。実際、シグナムは私を【魔法殺しの剣】と当時の名称で呼んでましたし』
……なんか、とんでもない方向に話が向かっている気がする。
あ、緑のポニーテールの大人の女性が入って来た。
「か……艦長」
『おや。この話し合いを遠くから聞いて急いで来たのですか?どうやら私の言っていたことは事実のようですね』
だーかーらー!お前は本当に喧嘩売るな!
「……あなたの言うことは否定しないわ。否定しても揚げ足を取るだけでしょうし。それより私の質問に答えてくれるかしら?」
『構いませんよ。契約者の不自由なき安全を約束して頂けるなら』
「散々煽っておいて露骨に要求すんな!」
『煽っていません。後、バカな契約者は黙っていてください』
もう、本当にやだコイツ。
「……本当に苦労してるわね。それと彼の安全は可能な限りそちらの期待に添うように努力します」
『期待せずに期待しましょう。それで、何が聞きたいのですか?』
「あなたの言う【夜天の書】について詳しく教えてくれないかしら?」
『構いませんよ』
スコールは艦長さんにそう答えると、【夜天の書】について話し始めた。
『【夜天の書】はリンカーコアを介して対象が有する魔法を記録、保存する魔導書です。守護騎士プログラムの他に自己修復機能、世界を旅する空間移動機能もあります。加えて魔導書本体はユニゾンデバイスですので戦闘能力も高いですよ。かつて私の有する魔法を当時の夜天の主が襲撃しましたが、全員返り討ちにしてやりました』
「……なら、彼女達の名前は分かるかしら?」
艦長さんはそう言って空中に映像を表示していく。その映像には赤い少女と緑の女性、蒼の犬耳マッチョメンが写っていた。
『ええ。赤服の少女が《紅の鉄騎》ヴィータ。緑の服の女性が《風の癒し手》シャマル。褐色の獣人が《蒼き狼》ザフィーラ。以上のシグナムを含めた四名が【夜天の書】の守護プログラム、通称《ヴォルケンリッター》です。後、《風の癒し手》が抱えている魔導書は間違いなく【夜天の書】です』
スコールのその説明にクロノさんと艦長さんは難しい表情で互いに顔を見合わせている。
「それは間違いないのかしら?これが機能がよく似た別の魔導書の可能性は?」
『兄弟機の可能性ですか?存在の可能性は否定しませんが、今回はその線はないですね。でしたらシグナムが私を【魔法殺しの剣】と呼びませんし、その後の対応は私を知っていないと出来ないものです』
え?あの建物に何度も叩き付けたり、ビルで押し潰そうとしたのはお前対策だったの?
『はい。シグナムは契約者が戦いに疎いことを見抜いていました。ビルを倒壊しまくっていたのはおそらく《紅の鉄騎》です。大方、私と契約者を瓦礫で押し潰して動きを封じている間に、事を済ませるつもりだったのでしょう』
やっぱお前、疫病神だわ。あれはめっちゃ怖かったんだぞ。
『あの程度で恐怖を覚えるとは情けないですね。魔法文明のない、争いからは程遠い世界では仕方ないかもしれませんが』
「仕方ないなら情けない言うな!」
「……艦長、どうします?」
「そうねえ……今のところは保護観察で大丈夫とは思うけど……彼女らの目的からしても再度狙ってくる可能性もあるし……」
『でしたら魔法を教えてもらえる護衛を所望します。私だけで教えるよりも効率が良いですし、契約者の安全もある程度保証できるので』
だから露骨に要求すんな!!
「……護衛はともかく、魔法を教えることは流石に難しい」
「そうね……嘱託魔導師になるならまだしも、魔法文化のない人間に魔法を教えるのは……それもロストロギアを所持している子に……」
『本当に面倒くさい親子ですね。護衛も毎日付けられないでしょうし、守護騎士達が再度襲撃した時の自衛手段は確立させないとそちらの責任になるでしょう。だから諦めて契約者に魔法を教えなさい』
なんかスゲー気になること言ったけど、もう正直面倒なのでスルー。
「取り敢えず、自分がその嘱託魔導師?になれば解決するだろ?なら、なるよ」
そう言った瞬間、クロノさんと艦長さんは揃って困ったような溜め息を吐いた。
「確かに嘱託魔導師になれば今の状況は解決するが……」
「それを深く考えずに受けるのは……ねえ?」
『契約者は本当にバカの極みですね。よく知らない組織に警戒せずに属するなど、常軌を逸しています。まあ、別に構いませんけど』
半分はお前のせいだからな。後、別に構わないなら文句言うな。
『責任転嫁しないでください。後、協力に吝かでないと判断したのは、現在の【夜天の書】に疑問があるからです。会話でも些か食い違いが生じてましたし、その辺りを可能であれば確認したいので』
……あー、確かに。スコールとそのシグナムとのやり取りを聞いてて、何か話が噛み合ってないと感じたし。
その日は結局、そのままお泊まりとなった。
――――――
「あれから六年か……」
『何が六年です?彼女との出会いからですか?』
「人生初の取り調べから」
『契約者の頭は本当にバカで残念ですね。彼女とのデートとやらに無関係なことを思い出してますから』
「お前は六年経っても相変わらずだよな!」
時間が経てば人は変わると聞くが、コイツは百年経っても今のままな気がする。
守護騎士達は丸くなってると言うのに。
『何が相変わらずです?私は魔導書型のデバイスの管理も行っているので、六年前より優秀になってますが?後、守護騎士達も言うほど変わってないでしょう。プログラムですから肉体的成長は一切ないですし』
「そういう意味じゃねぇ!!」
コイツ、絶対分かってて言ってるだろ!!
後、その魔導書型デバイスはお前の要望からだろ!お前が勝手に作った術式を保存する場所として!!
『それらの術式は指定した時間の三十分前に来た契約者が十全に使えるように調整しているのですから、一々文句を言わないでください。後、ご自身が指定した時間より早く来るのは本当に謎ですね』
「こういうのは普通、男が待つもんなんだよ!!」
『意味不明です。仮にそうだとしても三十分は早すぎます。…………おや、くだらない無駄話している内に彼女が来ましたね。では尾行付きの人生初のデート、頑張ってください』
「おいちょっと待て。尾行ってどういう意味だ?無視せずに答えろ!」
ちなみに初デートはスコールに散々ダメ出しされ、彼女からも同情の笑みを浮かべられる始末だった。
後、尾行した面々は彼女の関係者だったので、彼女の一声で大人しく帰った……と信じることにした。
続くかは未定。