てな訳でどうぞ。
取り調べの次の日、自分は昨日のドンチャン騒ぎ?していた人達と会った。
つっても病室でだけど。
「なのは、大丈夫?」
「心配してくれてありがとう、フェイトちゃん。私は大丈夫だよ」
金髪の長いツインテールの少女の心配そうな声に、ベッドから体を起こしている茶髪の短いツインテールの少女は元気アピールをして笑顔で答える。
……自分が此処にいるのが場違いな気がすんだけど。
『大丈夫でないからベッドの上でしょうに。慰める意味が不明ですね』
スコールが空気を読まずにそう言った瞬間、病室の空気が一気に重くなった。犬耳の女性なんか殺さんばかりに自分を睨んでくるし。
「お前はマジでデリカシーがないな!」
『デリカシー?デバイス大破で完敗喫した相手を気遣う必要があるとは思えませんね。相性の悪さから負けは仕方ないにしても、失敗を誤魔化す意味は皆無なのでは?』
ああ!ベッドの女の子がまた落ち込んだ!
そもそも何でお前の声がこの場にいるみんなに聞こえてんの!?今までは自分にしか聞こえてなかったのに!
『私と本契約を交わしたからですが?まあ、契約してすぐ戦闘に突入したので調整が遅れましたが』
「自分としてはその調整が遅れたままの方が良かったんだけど?お前の誰彼構わず喧嘩売る声が周りに聞こえるとか、マジで悪夢なんだが」
『喧嘩など売ってません。純然たる事実を率直に申しているだけです』
本当にコイツの相手は疲れるし、苛つく。けど、その前に謝らないと。
「悪い。コイツは昔からこうなんだ。マトモに取り合ってたらマジで心がもたないから、できればスルーしてくれ」
「にゃ、にゃはは……」
「う、うん……」
自分のその言葉に二人は苦笑い。心なしか同情してるように見えるのは気のせいか?
「えっと……君の名前は?私は高町なのはだよ」
あー、そういえばまだ名乗ってなかったなー。
「自分は
「フェイト=テスタロッサです」
「あたしはアルフ。フェイトの使い魔さ」
自分の紹介に合わせて、テスタロッサとアルフも名乗るが……使い魔って何?そのピコピコ動く耳と尻尾と関係があんの?
『犬や猫に自身の魔力を与えて主従契約を結んだ生物の事をさします。昨日の守護騎士達のような存在と認識しておけばいいでしょう』
つまりアルフは……犬?
『はい、彼女は犬です』
「間違ってはないけど……妙に癪に触るね」
だよなー。コイツが言うと挑発してるように聞こえるし。
『これが挑発なら、この場にいる全員が挑発口調ですね』
だーかーらー、それが挑発してるように聞こえるんだよ。悪意がないのが余計に質が悪いし。
「僕はユーノ=スクライアだよ。これからよろしくね、サトル」
「あ、ああ。よろしくユーノ。それにテスタロッサにアルフも」
自分はそう言って手を差し出したユーノの手を握る。同年代の男の友達はいないから、ユーノが男友達一号になるかも……
『その声……以前、無差別に念話を飛ばして助けを求めた傍迷惑な存在ですね?』
「「……え?」」
自分とユーノの声が見事にハモった。
念話ってスコールが今やっているこれ?これをユーノが無差別に飛ばしてたって……え?え?
「ちょっと待って。君はあの時の僕の声が聞こえてたの!?」
え?ユーノは声を上げて助けを求めてたのか?スコールが知ってて自分は知らないって、どゆこと?
『はい。シャットアウトして契約者には聞こえないようにしましたが。魔法文明が皆無に近いこの世界で念話など、どんな危険があるか分かったものじゃありませんからね。実際、何度も大きな魔力反応を感じましたし』
「……それ、危険を放置してたと同じじゃないのか?」
何か自分が知らないところで面倒事が起きてたとか、何か怖いんだが。
『放置は否定しませんが、複数の魔力反応から問題ないと判断しました。むしろ素人が首を突っ込む方が遥かに危険です。まあ、素人を巻き込もうとしたそちらの少年には何を言っても無駄でしょうが』
スコールのその言葉にユーノが俯いた。あ、これ地雷だ。後、素人を巻き込んだって……
『おや?図星ですか?図星ならとんだ疫病神ですね。それと高町なのはは名前の羅列からして、契約者と同じ世界の人間です』
「ユーノ君は疫病神じゃないの!」
高町はそう言ってユーノを庇うが、追い討ちを掛けてると感じるのは自分の気のせい?
『庇うつもりですか?被害者が加害者を庇う典型的な例ですね。まあ、変態に普通に接している時点で察せますが』
……変態?ユーノが?
自分がそう聞きたげにユーノを見ると、ユーノは以前として俯いたままだった。何故か頭から湯気が出ていたが。
「変態ってどういう意味だい?」
『言葉通りの意味です。動物のフリをして少女の裸を見たのですから』
スコールのその返しに、質問したアルフ共々言葉を失った。
動物のフリして女の子の裸を見たって……マジ?
「ち、ちが……っ!動物のフリじゃなくて、てっきりなのはは僕が人間だと知ってたとばかり……!」
つまり事実なんだな。このムッツリスケベめ。
『それで隠蔽無しの駄々漏れ念話ですか?おかげでこちらが何度シャットアウトしたと思います?そちらの少女の念話も駄々漏れでしたのでいい迷惑です』
「え?……ええ~~!?ユーノ君!念話って漏れるものなの!?」
「えっと……それは……」
高町、驚愕してユーノを見つめるもユーノは視線を泳がせて言い淀んでいる。
『魔法初心者によく見られるミスとはっきり仰れば良いでしょう。時が経過していてもこれくらいは常識の筈では?』
「うん。私もリニスにそう教えてもらった」
「なのはの魔法の才能が凄かったから……すっかり失念していたんだ……それに、僕の声が聞こえたのはなのはだけだったのもあって……」
『つまり凡ミスということですか。あのデバイスの苦労が容易に想像できます。ま、だからこそ彼女が素人だと判断できたのですが』
あのデバイス……?高町が持っていたあの壊れた杖か?
『ええ。変形機構を組み込んでいるようなので耐久性に難ありですが』
変形機構?変形機構って何?
『変形機構というのは、使用する魔法を効率良く行う為の形状にモードチェンジする機構です。ちなみに私には搭載されていないので、期待するなら無駄ですよ』
つまり、お前はあのヘンテコな形状の剣にしかなれないの?
『代わりに強度は抜群。自己修復も刀身程度なら数秒で元通りなので全く問題ありません。後、ヘンテコではありません。カートリッジシステムも内蔵しているのでむしろ優秀です』
負け惜しみにしか聞こえないんだけど?
「あのさサトル……出来れば声に出して会話してくれないかな?スコールの声しか聞こえないから会話に入りづらいんだ」
「あー、悪い。昔コイツに対してギャーギャー返して周りから浮いて、考えるだけで伝わるからそれで……」
分かるか?周りからいきなり何叫んでるんだ?と訝しげな視線を一斉に向けられて、そこから距離を置かれるツラさを。
自分の友達一号は苦労してるんやねと慰めてくれたけど。
「で、そのカートリッジシステムって何だ?」
『魔法の強化システムの一つです。魔力を圧縮したカートリッジを使い、強引に魔力を上乗せして攻撃や防御を強化するシステムです。デバイスの変形にも魔力を使いますので、スムーズな変形にも使われます。強引な上乗せなので使用者の負担は大きいですが』
「つまり、ドーピング?」
『はい』
何か聞けば聞くほど、お前はとんでもないもんだと分かってくるな。
そんな中で、ユーノがおもむろに口を開く。
「そのカートリッジシステムはひょっとして……」
『ええ、お察しの通りです。昨日襲撃したシグナムとヴィータの使用するデバイスにも搭載されています。元々カートリッジシステムはベルカが開発したものですし』
ベルカ?ベルカって何?
『かつて魔法文明が栄えた世界ですよ。まあ、四六時中戦争して次元ごと滅びましたが。ちなみに私もベルカと繋がりが深いですよ』
「つまりスコールはベルカの遺産ってことかい?それにしては異質な気がするんだけど」
スコールが異質?まあ、性格が最悪だからユーノの異質と言う意見には同意だけど。
『当然です。私の開発コンセプトが対騎士……あなた方に分かりやすく言えば対魔導師ですからね。魔力を異なるエネルギーに変換できますし、基本術式はベルカがベースですがほぼ別物と言っても過言ではないでしょう』
「つまりなんだ?あんたは魔導師相手に有利に戦えるってことかい?」
『はい。純粋魔力攻撃は全くもって無意味ですし、ダメージを与えるなら物理的な手段しかないですよ。そちらは純粋な魔力攻撃しかなさそうなので相性は最悪ですね』
「自慢してないか?」
心無しか、ユーノとアルフに対して妙に威張ってるし。
『ええ。守護騎士相手に手も足も出なかった相手ですからね。デバイスも大ダメージを負いましたしね。黒の方は多少は近接を想定していたようですが、強度が全然足りずに中破してますが』
「自分共々瓦礫に潰されてたのにか?」
『あれは契約者が未熟なのが原因です。後、連中の結界に風穴開けたのでむしろ活躍してます。あれで守護騎士達も撤退しましたし』
露骨に自分上げ、相手下げをすんな。
「正直、あれは助かったよ。あのままだったらなのははスターライトブレイカーを使うことになっていたからね。それもリンカーコアに干渉されていたタイミングだったから、あのまま撃てばどうなっていたかわからないからね」
「うん。私もあのままだったら彼女に負けてた。だから、ありがとう」
ユーノとテスタロッサが自分とスコールにお礼を言ってるけど、素直に喜べない。
『礼をするくらいなら、早く瓦礫の中から引き摺り出してほしかったですね。状況を好転する可能性がある存在を足止めされたとはいえ放置したんですから』
主にコイツのせいで。ユーノとテスタロッサ、高町は苦笑いなのに対してアルフはめっちゃ睨んでるし。
『おっと、話が逸れましたね。彼女らのデバイスもカートリッジを使う前提なので全弾使っても耐えられる強度を有してます。使用者に対する負荷も然程問題ないでしょう。彼女らは魔法生命体なので』
「魔法生命体……つまり、彼女たちは……」
……あれ?なんでテスタロッサが暗い顔になんの?高町達も心配する眼差しで彼女を見てるし。
『おや?もしかして貴女は人工的な生まれですか?だとしたらバカバカしいですね』
「おいスコール!」
どう見ても傷口に塩を塗りたくったスコールの言葉に、自分は声を荒げて止めようとする。
『何故声を荒げるのです契約者?彼女が何者でも彼女は彼女でしょう。生まれはその一部に過ぎません。そんな一部を気にする等、貴重な時間と考えの無駄です。それを気にしてたら命が幾つあっても足りませんよ』
もう本当にヤダ、コイツ。
「ごめん、テスタロッサ。本当にごめん。コイツが傷口に塩を塗りたくる真似して」
自分、謝りながらテスタロッサに土下座。許してくれるか分からないけど、完全にこっちが悪いんだし。
『この程度で土下座とは、本当に情けない契約者ですね』
黙れ、諸悪の根源。
「私は大丈夫。大丈夫だから、顔を上げて。逆に私も気にしすぎていたし……」
「ただしその極悪はフェイトに謝れ、今すぐ」
『謝る必要性がありませんので却下します』
「お前は本当に謝れ!マジで!!」
この後はスコール以外の謝罪合戦となるのであった。
――――――
「あの時はクロノ提督とリンディさんが来るまで謝罪しあってたな」
「そうだね。スコールが火に油を注ぐから全然止まらなかったし」
自分のその呟きに、眼鏡を掛けた少年―――ユーノが苦笑い気味に頷く。
ちなみにここは『無限書庫』。探せば大抵は何でも出てくる不思議な図書館だ。
「しかもコイツは自分の訓練を要求しながら、現場には出させないとかほざくし」
『当然です。危険地帯に護衛無しで行かせる訳がないでしょう。転移機能があれば間違いなく私はあの現場に行かせませんでしたよ』
あの『闇の書事件』で実際に現場へ行ったのは二回だけだからな。一回目はスコールの疑問解消の為。二回目は……自分の判断で。
「でも、客観的に見ればスコールの判断が正解なんだよね。僕もジュエルシードの時は仕方なかったとはいえ、なのはを巻き込んだのには罪悪感があったから」
『そのなのはは巻き込まれてラッキーと考えているので別にいいのでは?』
「そういう問題じゃないと思うんだが……」
まあ実際、この年になったら自分達の行動がいかにヤバかったのかは理解できる。
理解できるが……
「そもそも自分が事件に首を突っ込むのは反対だったくせに、なのはたちに関してはノータッチだっただろうが」
『契約者に関係ないので当然です。あれは周りの大人と当人の責任ですので』
お前は本当に情というのがないよな。こんなに流暢に喋るのに。
あの事件の時も、コイツは慰めるどころか辛子を塗りたくってたし。あれはマジで殺意を覚えたよ。その場で魔導書を殴り飛ばすくらいに。
「せめてカートリッジシステムのデータくらい提供しても良かっただろ。当時、頭を下げに来た技術スタッフが涙目だったんだぞ」
『私のカートリッジシステムは少し独特ですし、それで責任追及されて契約者に被害が及べば本末転倒です』
確かにスコールのカートリッジシステムは独特だ。形状はリボルバー式だが、圧縮したエネルギーを充填する仕組みだから薬莢の排出と弾切れは無し。代わりに最大強化は六発までだけど。
ついでにこの件で、スコールはカートリッジシステムを要求したレイジングハートとバルディッシュをバカデバイスと扱き下ろした。なのはとフェイトは反論したけど、正論叩きつけられて涙目で黙りとなったし。
「……スコールも最初と比べたら結構丸くなってるよね」
は?コイツが丸くなっただって?ユーノもふざけた冗談を言うようになったのか?
「僕の知るスコールなら、『なに当たり前の事を言ってるのですか?』と言ってそこからグサグサとキツい言葉を刺していくだろうからね」
……あー、言われてみれば確かに。
『私は優秀ですからね。六年もあれば自己強化できます。あの時のぶっつけ本番に近いプログラムの切断もしっかり確立させましたし、この【銀の教典】で契約者と別行動が可能となりましたしね』
スコールはそう言って宙に浮く銀色の剣十字の装飾が施された黒い本―――【銀の教典】をクルクルと回転させる。
【銀の教典】はスコールが管理してるから、こうして意思があるように動けるのだ。
おかげでウザさと腹立たしさが増したが……
「それはかつての【夜天の書】を参考にし、協力も得て作っただろうが」
『そのおかげで【蒼天の書】や現在の【夜天の書】が生まれたのですから、むしろ感謝してほしいですね』
……コイツの性格を矯正できないかな。マジで。
「まあまあ落ち着いてサトル。スコールに悪気は……」
『そちらはなのはとの仲はどうなってます?ちなみに契約者は誘った相手の関係者に最後まで尾行されるデートを行いました』
「…………」
スコールの言葉にユーノ絶句。自分もあのデートは結局最後まで尾行されていたことに絶句。
……彼女を泣かせたら物理的に排除されるんじゃね?
『排除されますね。噂で聞く私のような対魔導師に対抗できる兵器を強引に拝借し、全力全開で潰しにかかるでしょう』
だよねー。自分もその姿が容易に想像できるし。
「さすがにそこまではしないんじゃないかな……?」
『一月前、局のシャワールームとロッカールームに隠しカメラを仕掛けた局員に、なのはは全力全開のエクセリオンバスターを叩き込みましたが?フェレット姿で覗こうものなら、スターライトブレイカーを叩き込まれるでしょうね。ひょっとしたらフェイトも加わってブラストカラミティかもしれませんが』
ちなみにその局員は謹慎三ヶ月の給料大幅カット。加えて降格という厳重処分を受けた。クビにしない辺り、局の人員不足の深刻さが分かりやすい。
まあ、結構な人数が関わっていたのが最大の理由だが。どんだけ女性の写真に餓えてるんだよ、時空管理局。
『無限書庫もユーノが来るまではブラック企業も真っ青のブラック体制でしたからね。どんな書物もあるのは称賛に値しますが、管理がガバガバでしたから宝の持ち腐れでしたし』
「それはまあ……確かに」
「ユーノがいなかったら……あの事件もどうなったか分からないし」
あれは本当に同情したよ。悪辣な改変で健全な資料本だった【夜天の書】が、破壊を振り撒く【闇の書】になってしまってたんだから。
しかも蒐集に関係なく主は死ぬんだから、その悪辣さはある意味スコール以上だ。
『裏付けが取れたという点では確かにそうでしょう。解決に関しては契約者が無茶した結果とも言えますが。後、私は悪辣ではありません。悪辣は改悪された【夜天の書】と私の後継機とバイオ兵器と思いますが?まあ、ヘタレなお二人には無意味でしょうが』
「……全然変わってないと思うんだが?」
「あはは……」
自分の指摘に、ユーノは苦笑いするだけだった。
軽くオリ主を紹介。
天本暁(15)
魔導騎士:Sランク
所持デバイス:魔導書型ストレージデバイス【銀の教典】
ロストロギア【スコール】
魔法系統:(分類上)古代ベルカ
戦闘スタイル:近接戦が主体。射撃と砲撃も可能だが直射しかできない。