謎の声はロストロギアでした   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


深まる謎

【アースラ】というSFチックな宇宙船にある訓練室にて。

 

『……誘導系の攻撃は点でダメですね。私のサポートありでも一発しか制御できないのは相当です。この分では遠距離は直射系しか満足に使えませんね』

 

全身に蒼い鎧を纏った自分に、スコールは呆れたようにダメ出ししていた。

全身鎧で顔も隠れているから、迫力がめっちゃ凄い。端から見れば不審者だ。

 

『契約者の安全重視で機動力を捨て、防御を優先しているからです。実際、これのおかげで瓦礫の山に埋もれても怪我一つなかったのですから』

「身体中のあちこちが痛かったのにか?」

『それは契約者が未熟だからです。なのでもっと身体を鍛えてください』

 

つまり腹筋や腕立て伏せをしろってことか?

 

『それだけではなく素振りも行ってください。私を振るうのに“斬る”のではなく“叩いている”の状態ですから』

「そうは言うが、剣なんて振るったことないんだぞ?剣道すらしたことねぇし」

『そんな事は知っています。だから素振りをしろと言っているのです。そんな考えだから、クロノ執務官に一方的に殴られるんですよ』

 

ちなみに模擬戦はクロノさんとアルフがやってくれている。高町とテスタロッサはデバイスが修理中だから見学しかしていない。

ユーノとも模擬戦をしたが、戦闘スタイルの相性から一回やっただけでお払い箱となった。

何せ、捕縛魔法のバインドが決まった瞬間に溶けるように消えていくのだ。クロノさんとアルフもその事実に頭を抱えてたし。ついでに魔力弾も全然通らなかったし。

 

『契約者の周りには魔力結合を分断するフィールドが形成されてますからね。バインドやスティンガーなんぞ通るわけがありません』

 

マジでチートだな、そのフィールド。

 

『当たり前です。私は対魔導師を想定して造られたんですから』

 

あー、ハイハイそうでしたねー。

……って、ちょっと待て。

 

「その状態で結界に体当たりしたら、簡単に外へと抜け出せたんじゃないのか?」

『なに当たり前の事を聞いてるんですか?当然じゃないですか』

「……ひょっとしなくても、簡単に結界を壊せるからアイツらは自分を瓦礫の山に沈めたんじゃないのか?」

『ひょっとして気づいていなかったのですか?でしたら契約者は本当にバカですね』

 

スコールは本当にどうしようもないと言いたげな感じだが、自分の怒りのボルテージは最高潮だからどうでもいい。

 

「お前はやっぱり疫病神だ!お前のせいで自分の生活が散々だ!!」

『疫病神ではありません。自身の生活が苦行なのは契約者の自業自得でしょう』

「んなわけあるか!」

 

自分がスコールに怒鳴っていると、高町とテスタロッサ、ユーノとアルフが訓練室に入ってきた。

 

「まーた喧嘩してるよ。本当に仲が悪いね」

『契約者がどうしようもないバカなので、良好な関係など築けません』

「……あたしから見ても、険悪なのはあんたにあると思うんだけど」

 

アルフのその言葉に自分は大振りに頷き、ユーノ達は苦笑いだ。

 

「それにしても凄い見た目だね。全身鎧だから迫力も凄いし」

『防御重視だから当然です、なのは。契約者の安全が第一なので』

 

そうは言うがこれ、めっちゃ動きづらいんだよ。もう少し動き易くできないのか?

 

『機動力が欲しければ、訓練して動けるようになってください。私としても攻撃と機動を捨てているのは不本意ですので』

「結局、鍛えるしかないのかよ。やることいっぱいなのに」

『ぐだぐだ文句を言う暇があるなら鍛えてください』

 

本当に容赦ないスコールにうんざりしながらも、再び誘導弾……というより光剣二本を形成して50メートル先の動いている的に向かって飛ばす。

一つは軌道を変えて的の真ん中に命中したが、一つは明後日の方向へと飛んでいった。

 

『二本でもダメですか。一本の制御自体は及第点ですので、一本だけで複数の的を貫く方向にしましょう。術式を調整しますので、その間は四人からアドバイスでも受けていてください』

 

わかりましたよー。

 

「つうわけでアドバイスくれ」

「アドバイスをくれと言われても……僕に出来るアドバイスは全部言ったからね。これ以上はアドバイスのしようがないんだ」

 

ユーノが申し訳なさそうにそう言ってくる。

 

『役立たずですね。まあ、魔力を物理的なエネルギーに変換可能な相手の指導なんて初めてのケースでしょうが』

 

そう言うなら役立たず言うな、スコール。

 

「スコールは魔力とそのエネルギーの二種類を使えるの?」

『ええ。魔力分断フィールドは自身の魔力結合も分断しますからね。AMFという防御フィールド魔法が他の魔法と併用できないのと同じです』

 

ん?魔力も運用出来る?

 

「なあ、スコール」

『なんでしょう?』

「その魔力分断フィールド、ひょっとしてオンオフが出来るんじゃないのか?」

『できませんよ。どうせ、どうやって純粋な魔力を運用してるのかとう疑問からでしょう。単に変換機を介して契約者の魔力に分断耐性を付与しているだけです。無論、本来の分断にはあまり効果は望めませんが』

 

つまり、ちょっとだけマシ程度か?

 

『代わりに魔力暴走しづらいですよ。《ディバイドモード》では物理的なエネルギーに変換しないといけなくなるので、普段からそちらを使うことを推奨します』

「ベルカの遺産って本当にすごいね……」

 

高町は感嘆げにそう呟くが、自分としては凄さより腹立たしさの方が強いんだが?

そう考えていると、ユーノがまるで意を決したような表情で口を開いた。

 

「ねえ、スコール。君の言う後継機はひょっとして……【ディバイダー】という名前じゃないかい?」

 

【ディバイダー】?

ユーノが告げた聞き慣れない名称に自分はもちろん、高町達も首を傾げている。

 

『はい。それが私の後継機の総称です。バイオ兵器の名称は【エクリプス・ウイルス】―――通称【ECウイルス】ですが』

 

スコールがヤバいバイオ兵器の名称も答えた瞬間、ユーノの顔が強張った。

この反応……予想を越えてヤバいものだったのか?クロノさんの取り調べの時にヤバいものだと分かってたけど。

 

『契約者の心配をしているのなら、それは杞憂ですよ。私にそれは欠片も搭載されていませんから』

 

スコールがそう言うと、ユーノは安心したように息を吐く。

 

「それを聞いて安心したよ。詳しくは知らないけど、【ディバイダー】の危険性は教えられていたからね」

『そう言えばユーノは考古学を生業とする一族の出でしたね。万が一見つけた場合、間違って触れないように教えられてましたか?』

 

スコールのその言葉にユーノはコクリと頷く。

おーい、自分たちを置いてくなー。それやってる自分が言うのもなんだけど。

 

『【ディバイダー】は触れた瞬間に【ECウイルス】を流し込みます。適合できなければその場で即死。適合しても殺人と破壊衝動に駆られますから、感染したら最後、自己崩壊で死ぬまで人を殺し続ける存在となります』

「めちゃくちゃ危ないじゃないか!!」

 

スコールの説明にアルフが叫び声を上げる。うん、自分もそう思う。

 

「そんなに危ないなんて……まさか暁も……」

『話を聞いてましたか?私にはそれは搭載されてないと言いましたよね?ですから契約者が狂戦士(バーサーカー)になることはまずあり得ませんよ』

「あ。そ、そうだった。ごめんなさい」

 

相手を心底馬鹿にするスコールの物言いに、心配していたテスタロッサは怒るどころか申し訳なさそうに謝る。

 

「でも、スコールくんとその【ディバイダー】とでどうしてこんなに違うのかな?」

『これはクロノ執務官にも言いましたが、私の適合者は一万人に一人という確率でした。それを緩和しつつ、優秀な兵士を造り出す為にバイオ兵器―――【ECウイルス】を完成させました。【ディバイダー】は私の運用データを元にし、バイオ兵器の制御装置たる【リアクター】も完成させました。結果は失敗しましたがね』

「失敗?どんな形で失敗したんだい?」

『簡単に言えば完全に【ECウイルス】を制御できなかったそうです。後継機の初期構想は魔力以外のエネルギーも分断するものでした。ですが、完成した最初の【ECウイルス】は【リアクター】でも制御できず、暴走して周辺に多大な被害をもたらしました。その為、最初の【ECウイルス】を強制的に休眠させ、それを母体とし、人による媒介を繰り返して弱体化した【ECウイルス】を実際の【ディバイダー】に搭載する形へと変わりました』

 

……本当に恐ろし過ぎる。そんなヤバいものと深く関わりのあるスコールもヤバいけど。

 

『私の場合は魔力暴走による爆死くらいです。後継機とは天と地ほどの差がありますよ』

 

それだけでも十分ヤバいのに、マシと思えるのは本当に不思議だなー。

 

「その【ディバイダー】とウイルスは……」

『母体となった【ECウイルス】がどうなったかは不明ですが、ゼロ因子を蓄える初期の【ディバイダー】は暴走の際に修復不可能なまでに壊れました。少なくとも天文学的な確率でない限り、ゼロ因子を有した適合者は現れないでしょう』

 

ゼロ因子?ゼロ因子って何?

 

『ゼロ因子は端的に言えば、魔力以外のエネルギーも分断可能にする因子です。私も魔力以外……電気や炎といったエネルギーなら分断できますが、生命活動に対する分断は不可能ですので』

「つまり、ゼロ因子は何でも分断できるってことなのか?」

『はい。だから暴走した際は多大な被害が出たと記録されています』

「実際に見たわけじゃないのかい」

『現場にいたら私はこの場にいませんよ。それだけゼロ因子は強力なのです』

 

アルフの呆れにもスコールは淡々と返す。感情任せじゃなく屁理屈で反撃するから余計に腹立つけど。

 

『屁理屈ではありません。純然たる事実を申しているだけです。いい加減に学習してほしいですね。それと無駄話している間に術式の調整は終わりましたので、実際に撃って試してください』

「本当に平常運転だよな、お前は」

 

えーと……確かこうやって術式を展開して……光刃を展開して……

そうやって教えられた方法で蒼色に光り輝く十字剣を自分の正面に展開。

 

「えっと、これで……穿て!」

 

そうして掛け声と共に光刃を発射。鋭角な軌道で動き回る的を次々と貫いていく。

 

『貫通力と速度重視で調整したので、通常の誘導弾より早いですがちゃんと制御できてますね。本来の誘導弾より劣りますが、ないよりマシですね』

 

ないよりマシかー。一々下げるから全然喜べない。

 

「サトルって切り替えが早いよね」

「やらなきゃコイツが早くやれ言うからだ」

 

ユーノの指摘に、スコールを指差しながらそう返す。

 

『当然です。時間は有限なのですから』

「な?」

「ハハ……」

 

ユーノ、苦笑い。高町とテスタロッサも苦笑いでアルフは同情するような目を向けてくるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

―――数日後。

 

『今回の目的は【夜天の書】の疑問解消です。なのでクロノ執務官から離れずに付いていってください』

「言われなくても分かってるよ。どうせ二人の邪魔になるだけだし」

 

毎度のやり取りをする自分とスコールに対し、先を進んでいるクロノさんは呆れたような眼差しを向けている。

あれからも練習を繰り返し、いざ出陣!……というわけではなく、ほぼスコールの判断で赴いた形だ。

飛行もまだ覚束ないが、何とか形になっているのでしっかりとクロノさんの後に付いていけている。

 

「僕としては、その辺りの確認は逮捕してからにして貰いたいんだが……」

『会話から交渉の糸口を見つけると思って黙認して下さい。そちらだって【闇の書】か【夜天の書】かはっきりさせたいでしょう?』

「…………」

 

クロノさん、黙り。

それから数分後、守護騎士の一人である《風の癒し手》を発見。後ろを取りました。

 

「抵抗しなければ弁護の機会もある。結界内で戦っている他の者達にも投降を促してもらいたい」

「…………」

 

クロノさんの降伏勧告に《風の癒し手》さんは無言。念話で彼女達と話し合いしている最中か?

 

『やはりその魔導書は【夜天の書】ですね。あくまで外装は、ですが』

 

スコールのその言葉に、《風の癒し手》さんは疑問を浮かべた表情でこちらへと顔を向けた。

 

「【夜天の書】……?《魔法殺しの剣》、何を言ってるの……?」

 

その声は明らかに動揺し、困惑している。隠しているとかじゃなく、言葉の意味が理解できていないといった感じだ。

 

『本気で言ってるのですか?魔法ではなく魔力が目的だった《烈火の将》もそうですが、“魔力さえ集めれば何でも良い”は【夜天の書】の本来の目的から外れています。それとも本当に【闇の書】という名称で、【夜天の書】の兄弟機なのでしょうか?』

 

スコールのその言葉に、彼女はますます困惑の色を浮かべていく。

 

『しかし、兄弟機なら互いに存在を知って―――』

 

その瞬間、自分はクロノさんと共に吹き飛んだ。

 

「うわぁっ!?」

「ぐえっ!?」

 

突然の勢いで自分はフェンスに直撃。クロノさんは自分が受け止める形になっていたのですぐに復帰したけど、自分はその場で咳き込んでしまう。

 

『だらしないですね。まあ、敵の接近に気付けなかった私が言うのもなんですが』

 

スコールが自嘲するような声を聞き流しながら顔を上げると、そこには仮面で顔を隠した青い髪の男がいた。

 

「あなたは……」

「使え。迷っていたら捕まるぞ」

 

仮面の男は《風の癒し手》さんにそれだけ言うと、クロノさんとの距離を詰めていく。

こうなったら自分も……!

 

『契約者!後ろです!』

 

スコールの警告に咄嗟にスコールを構えながら振り返ると、同じ姿をした仮面の男が何故か鉄板を間に挟んで蹴り飛ばしてきた。

 

「くっ!―――ブレードショット!」

 

自分は鉄板ごと蹴り飛ばされながらも、この前練習した魔法―――《ブレードショット》を放つ。

放たれたブレードショットは仮面の男へと真っ直ぐ進み―――直前で方向転換して軌道を変えて後ろを取る。

しかし、仮面の男は振り返りもせずに手をかざし、展開したシールドでブレードショットを防御してしまった。

 

『ふむ。シールドを割るには威力不足ですか。別に構いませんが』

 

いやいや!何でお前はそんなに冷静なんだよ!?あんなに練習したのに、ああもあっさり防がれたのに!

 

『冷静でないと負けるからですが?しかし、今の戦い方は……』

 

スコールが疑問を露にしていると、仮面の男は光を放ちながらその場から消えていく。

え?あれだけで逃げんの?そっちが優勢だったのに?

その答えは、空から落ちた雷で結界が破壊されたことでもたらされた。

 

『どうやら魔導書の力を使って結界を破壊したようですね。守護騎士達はもう逃げたでしょう』

「あの仮面は何だったんだ?」

『現時点では判断できませんね』

 

結局仮面の男が何者か分からないまま、自分たちはアースラに帰還するのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「……ねえ、シグナム」

「どうしたシャマル?まだ何かあるのか?」

シグナムの疑問に、シャマルは迷いながらも意を決したように口を開いた。

「【夜天の書】っていう名前に心当たりはない?」

「…………心当たりはない……筈だ」

 

シグナムは迷いながらもそう答えるが、妙な引っ掛かりを覚える。

知らない筈なのに、知っている……そんな引っ掛かりだ。

 

「そう……」

「その【夜天の書】がどうしたというのだ?」

「《魔法殺しの剣》がそう言ってたの。【闇の書】のことを」

「……《魔法殺しの剣》が?」

「ええ。その名前を聞いて引っ掛かりを覚えて……何か、とても重要なことを忘れている気がして……」

「……実は私も引っ掛かりを覚えていた。《魔法殺しの剣》が私達の目的を魔法集めと言った時から」

 

その引っ掛かりは日を追うごとに強くなっている。先程シャマルが言った通り、重要な何かを忘れている気がするのだ。

 

「……このまま【闇の書】を完成させて、本当に大丈夫なのかしら?」

「……どちらにせよ他に方法がない。我々の主を救うためには」

「そうね……」

 

彼女らは疑問を抱きながらも、愛する主の為にただ進むだけであった―――

 

 

 




そんな訳でこのロストロギアは【ディバイダー】関連でした。
ちなみにウイルス関連は作者の勝手な想像です。原作は再開が未定の休載状態ですので。
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