謎の声はロストロギアでした   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


憐れな王様

「完全に偽物だろ」

『そうですね。これで迷っていたら契約者は頭のネジがだいぶ外れてると判断してましたよ』

 

ひっでぇ言い草。けど、これで迷ったら反論できないよなぁ。

だって……

 

「……誰だよテメェ。なんで自分と同じ顔をしてんだよ?」

 

自分の偽物だからな。

 

「自分にしか聞こえない声だけでも腹立たしいのに、こんな格好でこんな場所……本当に何がどうなってんだよ」

「ああ、うん。確かに混乱するよな。あの夜もそうだったし」

 

スコールと本契約した時も何がどうなってるのか分からなかったし。一番衝撃だったのが謎の声の正体がゲームの武器だったことだけど。

 

『あれは私も想定外でしたよ。結果オーライですが』

「その声……!そうか、お前があの声のやつかよ!」

 

自分の偽物は睨みながらそう叫ぶと、有無を言わさない勢いで突撃してきた。

振るわれる偽スコール。それを自分は同じスコールで受け止める。

 

『やはり魔力分断が働いてますね。問答無用の先手必勝も納得いきますね』

「……こんな風に突撃したら、先手必勝にもなるか」

 

自分の偽物がこんなに面倒なことに、自分は内心で高町達に謝罪する。被害被ったから直接謝らないけどな。

 

『―――エッジバースト』

 

スコールが初めて聞く名称を唱えた途端、スコールの刀身が爆発した。

 

「うおわっ!?」

「ぐああああっ!?」

 

自分は驚きから、偽物は悲鳴のように声を上げる。

爆発の煙が晴れると……自分の偽物はすでに崩壊して消えているところだった。

 

『ふむ。《ディバイドモード》でなかったからもしやと思いましたが、偽物には簡易の分断耐性しかないようですね。そこまで再現すれば、維持そのものができないかもしれないですね』

 

淡々と分析する刀身を無くしたスコール。お前、一体何をしたんだ?

 

『私の刀身をわざと爆発させ、その破片と衝撃で偽物を攻撃しましたが?殺傷性が高いのであまり使えませんが』

「めっちゃ物騒な攻撃をしてんじゃねぇよ!?」

 

殺傷性が高いとか何!?下手したら相手が死ぬじゃん!!

 

『ですからあまり使えないと言いました。ちなみに刀身はすぐに直せます』

 

スコールはそう言うと、刀身を一瞬で元通りにした。

 

「……本当にお前はぶっ飛んでるよな」

『当然です。私は優秀ですからね。では、次に行きましょう』

 

本当に相変わらずのスコールの言葉に頷き、自分は数値が異常に高いポイントへと向かっていく。

そこにいたのは……

 

「八神のコピー……にしてはかなり違うよな」

 

顔や服装の作りは八神だけど、色合いは勿論、浮かべている表情は傲慢そのものだ。コピーにしては明らかにおかしい。

 

『リインフォースの言っていたマテリアルでしょう。彼女をベースとして独自の存在になりつつあるようです』

 

……つまり?

 

『今までのように分断攻撃を受けても崩壊しないということです。守護騎士達と同様と考えればバカな契約者でも理解できるでしょう』

「喧嘩腰の説明どうも。てか、あのマテリアルって確か八神達がぶっ飛ばしてなかったか?」

 

道中の報告で高町、テスタロッサ、八神似のマテリアルを撃破したと通信があった筈なんだけどな。

特にあのマテリアルは守護騎士全員を含めた八神家で撃破された筈なんだが。

 

「ほう……?そこの塵芥の武器は【闇の書】の記録にあった《魔法殺しの剣》だな?」

『私を知ってますか。面識は全くないのですが』

 

スコールの言葉を無視し、マテリアルは差しのべるように左手をこちらへと向ける。

 

「その他者を圧倒し、蹂躙する力……王である我にこそ相応しい。その塵芥なんぞ見限り、我と契約しろ。さすれば貴重な機能を破壊した件は不問としてやろうぞ」

『適合率ゼロなので却下します。そもそも浮気機能もないので無駄骨ですよ、最弱王』

「……誰が最弱王だと?」

 

罵倒されたマテリアルは眉間にシワを寄せるも、スコールは構うことなく言葉を発していく。

 

『一度彼女と守護騎士達に吹っ飛ばされてボロボロなのに、欠片で無理矢理繋ぎ止めている勘違い少女のことを言いましたが?』

「……気が変わった。貴様はその塵芥共々、我が闇で跡形もなく滅ぼしてくれる」

 

沸点低ッ!このくらいの挑発で滅ぼすとか!!

それとやっぱり八神達にやられてたのか。つまり満身創痍で逃げたところに自分と出会したと。

 

『契約者。これは勝利フラグですね。ああ言って自分を強く見せる相手ほど、実は弱いというのがお約束なので』

「……弱い?誰が弱いと?」

 

マテリアルが顔を俯かせてプルプル震えてる。これは爆発寸前のやつだ。

 

『自覚がないのですか?ああ、自覚がないからなんちゃって強者オーラを出そうと必死なんですね。私への勧誘もその一環で、私を手に入れて無敵感を出そうと必死だったのですか。それに気づかなかったのは私の落ち度ですね。謝罪しましょう』

「貴様ぁああああああああああッ!!」

 

雑魚認定された挙げ句、謝罪でない謝罪を受けたマテリアル、青筋を立てて咆哮。最初の尊大な態度が嘘のような小者感が出てきた。

 

「さっきから聞いていれば好き勝手言いおって!我は破壊と混沌をもたらす闇統べる王!貴様なぞなくとも無敵と不滅を体現する最強の王ぞ!!断じて最弱王ではないわ!!」

『それが素ですか。さっきの芝居かかった口調よりよっぽど自然ですね』

「うがぁああああああああああっ!!」

 

あ、憐れ。このマテリアルが急に憐れに思えてきたぞ。頭抱えて叫んでる姿なんか特に。

 

「貴様も我を憐れんだ目で見るなぁ!!こうなったら……!」

 

こうなったら?

 

「エクスカリバーで塵も残さず消し飛ばしてくれるわぁあああああああッ!!」

 

マテリアルはそう叫んで紫の杖を掲げると、黒紫と白が混じったベルカの魔法陣を前方に展開。三角形の頂点に位置する円陣全てに魔力を集束させていく。

 

「あれって八神の《ラグナロク》だよな?」

『ええ。とは言っても射程は短く威力が高く組まれているので別魔法でも問題ないですが』

 

調整しただけで別魔法になんの?

 

『せっかくなので《ディザスターストーム》を使いましょう。広範囲魔法の練習に丁度良いので』

「ええー……」

 

完全にマテリアルを雑魚扱いしてるじゃん。あのマテリアルもめっちゃ青筋立ててるし。

まあ、やるけどさ。

 

「―――息吹いて唸れ、災禍の旋風。滅裂の嵐となりて消し飛ばせ!」

 

スコールを掲げて詠唱を終えると、スコールの刀身から黒き風が唸りを上げて球体の形状を取っていく。

 

「―――消え去れ!エクスカリバーァアアアアアアアアアアッ!!」

 

術を完成させたマテリアルは自分に向けて高威力魔法を発射。白と黒紫が混じった三つの閃光が迫って来る。

 

「災厄の嵐、ディザスターストーム!!」

『カートリッジ、使用します』

 

カートリッジを一発使い、広範囲魔法《ディザスターストーム》を発動。スコールの刀身に集っていた黒き風は一気に広がり、迫っていた《エクスカリバー》を黒き嵐と化した旋風で消し飛ばしながらマテリアルへと迫っていく。

 

「なぁあああああっ!?」

 

目の前の自身の高威力魔法があっさりと呑まれるように消えていく光景にマテリアルはすっとんきょうな声を上げ、そのまま黒い嵐に呑み込まれていった。

 

『私のサポートありにも関わらず、威力も範囲も私の想定を下回ってますね。魔導師相手ならまだしも、対魔法兵器の人形相手には不十分です』

「対魔法兵器の人形って……【ディバイダー】以外にもあんのかよ?」

 

『ありますよ。数と安定性で言えばその人形の方が兵器として優秀です。戦力としては後継機の方が遥かに上ですが』

本当にベルカの兵器ってお前含めてぶっ飛んでるよな。

 

「そういやあのマテリアルは?」

『最弱王は下の方向にいますよ』

 

スコールがそう言ったので下を見ると、マテリアルはその身体を塵芥と化しながら消えているところだった。

 

「馬鹿な……!我が……我がぁ……!」

『ボロボロの状態で一撃でも受ければこうなるのは必然です。自身が塵芥となるのは皮肉ですがね』

「こうなったら、一矢報いて……!」

 

マテリアルは怒りの形相で同じように消えかけている杖を掲げるも、何も起きない。

 

『魔法を行使できないほどボロボロになっているのに気付かないとは……自らを王と豪語するだけはありますね♪』

「ぁあああああああああっ!!」

 

か……完全に挑発してるだろお前。今のセリフ、確実に悪意があったぞ。

 

『あれだけ大言壮語を口走ってあれですからね。後、阿呆極まりない提案に対しての仕返しも兼ねて』

 

……本当に性格が悪い相棒だよ。

 

『最近は言葉による精神攻撃も時と場合によっては有効と学びましたからね。格下相手にしか通用しないのが残念なところです』

「格下……我が格下……」

 

マテリアルの精神ライフはもうゼロじゃね?顔が明らかに死んでるし。

 

『これまでの報告と状況からして、この最弱王が最後でしょう。残りの欠片を全部かき集めて再構築したのも無駄に終わりましたね』

「……ごふっ」

 

スコールのその言葉がトドメとなったのか、マテリアルは口から白い何かを出しながら消えていった。

 

「この屈辱……一億年経とうと絶対に忘れんぞ……【砕け得ぬ闇】があれば……」

 

……意外と大丈夫だったかもしれないが。

 

こうして『闇の欠片事件』は無事に終わるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

『闇の欠片事件』解決から二週間。自分は八神とリインフォースさんと公園で日向ぼっこして寛いでいた。

「いい天気だなぁ」

「せやねぇ」

「ああ……そうだな」

『天気予報では今日一日は晴天なので当然かと』

 

……お前は本当に空気読めないよな。

 

『空気を読めと?私は優秀ですから、お望みなら大気成分の調査をしますよ?』

「絶対分かってて言ってるだろ」

 

コイツは本当に相変わらずだよ。マテリアルの時でさえ平常運転だったし。

 

『敵を挑発するのは常套手段です。余裕がある時に限りますが』

「お前は余裕関係なく相手を挑発してるだろ。あのマテリアルなんか、逆に憐れになるくらい言いまくってただろ」

『単に事実を口にしただけですが?まあ、あの迷惑プログラムから生まれた割には子供ぽかったですが』

「子供かあ……あの時はリインフォースを馬鹿にされたから問答無用で倒してもうたけんど、もう少し話を聞いた方が良かったんかなぁ……?」

「確かに話を聞けば聞くほど、ナハトから生まれた存在にしては違和感を覚えるが……」

『確かに。記録映像の言葉からして、【砕け得ぬ闇】は【ナハトヴァール】の強化発展というより()()()()()()()()()可能性も捨てられませんね』

 

元から存在していたって……八神とリインフォースさんが知らない何かがあったと?

 

『その可能性は濃厚と判断しますよ。【ナハトヴァール】は元々、【夜天の書】に存在しないプログラムでしたし。もっとも、消し飛ばした以上どうでもいいことですが』

「ここまで疑惑を掘り下げときながら、どうでもいいとか言うな」

「うーん……気になるけどもう調べようもないし……」

 

……本当にすっきりしねぇ。本当にコイツのせいで。

 

『また責任転嫁ですか。本当に成長しない契約者ですね』

「お前風に言えば事実だボケ」

「……やっぱり二人は仲ええなぁ」

「あの……我が主。これが仲が良いと言えるのでしょうか?」

 

リインフォースさんの反応は当然だろう。だって喧嘩してるようにしか見えないし。

 

「この話は一先ず終わりにしよか。暁くんはこれからどないするん?」

 

これから……か。

 

「一応局で働くことになるんじゃないか?お前や高町、テスタロッサのように具体的な展望はないけどな」

『それが普通なので気にすることはないかと。しばらくは戦技教導隊に身を置くのがよろしいでしょう。ちょうどスカウトされてますし』

「戦技教導隊?それはどんなところなんや?」

『概要だけ伝えるなら、新たな戦術やデバイスを試す部隊ですね。戦闘能力なら武装隊より上ですし、実力を上げるには最適です。契約者は適性が幅広いにも関わらず、なのはと八神と比べて物覚えが著しく悪いので』

「天才二人と比べるな」

 

コイツは自分にどれだけ求めてんだよ。そりゃお前のサポート無しじゃ満足に魔法使えないけど。

ちなみにスカウトされた理由は対魔導師相手に有効な戦術を作りたいからだそうだ。

魔力結合を弱めるAMFという魔法もあるし、スコールの後継機は結構な数で作られたそうだから来るべきに備えておきたいという考えから自分をスカウトしたそうだ。

 

『後、戦技教導隊には教育隊という教官の集まりである部隊もありますからね。資格がいるので契約者が教官になる可能性はゼロに等しいですが』

「……せめて一割と言えよ」

『必要性がないので却下します』

 

ああ、そうかい。

 

「ちなみに八神はどうすんの?」

「私は特別捜査官になろうかなと思うてる。今回の件で色んな人達に迷惑掛けてもうたし」

『迷惑を掛けたのは守護騎士でしょう。監督不行き届けに関して言えば八神の責任でしょうが』

「すみません、我が主。我々のせいで……」

 

スコールの言葉でリインフォースさんが申し訳なさそうに八神に謝ってるよ。

 

「ううん。家族の責任は家長の責任や。それに、私もすずかちゃんとアリサちゃんを巻き込んで暴れてもうたし」

 

この二人―――月村とバニングスは『闇の書事件』で巻き込まれた民間人であり、高町とテスタロッサの友達でもある。

その二人も今回の件の事情説明、魔法の存在についても教えられ、高町達の協力者になった。協力と言っても転送地点の提供と情報くらいだが。

 

『どちらかと言うと八神も巻き込まれた側ですがね。一部の人間の暗躍でコールドスリープさせられるところでしたし』

 

……微妙に慰めている、のか?

あの『闇の書事件』の後、グレアム()提督さんは八神達に謝罪していた。

【闇の書】を完全封印する為に八神を犠牲にしようとしたこと。両親の友人と偽ったこと。そして、彼女の家族を奪おうとしたことを。

それさえ八神は赦したけど。

 

「本当に八神は強いよな。普通だったら許さないと思うんだが」

「グレアム叔父さんの話聞いて少しショックやったけど、あの人も心から望んでやろうとしたことやないのは分かる。それに、それ以外の方法も考えとったみたいやし」

『私を利用したプログラムの切断ですね。分の悪い賭けでしたから諦めていたようですが』

 

これはクロノさんから聞いたが、グレアムさんはスコールの存在を知ってすぐにリーゼ姉妹に『無限書庫』でスコールについて調べたそうだ。

 

そして運良くスコールに関する書物が見つかった結果、スコールの識別名称―――【プロト・ディバイダー】は魔力結合だけでなく、他のエネルギーやシステム、プログラムの分断……ゼロに近い分断(ディバイド)が可能であることが判明したのだ。

 

それによって八神を犠牲にせずに【闇の書】を止められる可能性が浮上したが、スコールの契約者である自分へのリスク、分断できても暴走そのものは止められないことから諦めたそうだが。

 

「あの人も良心の狭間で悩んでたんだよな……」

「彼らもまた私の被害者だからな。むしろ私のせいで主を不幸に追いやってしまっていた。だが……」

 

リインフォースさんはそう言って、微笑んだ顔で自分に視線を向けた。

 

「お前達が、それを終わらせてくれた」

『私と言うより頑固な契約者でしょう。加えて意識を取り戻した八神のおかげでもあります』

 

照れ隠し……じゃないよな。単に事実を言ってるだけだろうし。

 

「そうやね。微睡んでたら、頭を叩かれたような衝撃受けて目が覚めてもうたからなぁ」

 

何でだろうな。八神の視線がジトーとしたものに感じられる。

 

『そうですか。眠気覚ましには丁度良かったですね』

「お前は一度、罪悪感を覚えろ!!」

『罪悪感とは悪いことをした事に対する後ろめたさです。私は悪いこと等一つもしてないので覚える必要もないですね』

「マジでコイツの性格を矯正したい……」

 

自分のその呟きに、八神とリインフォースは困ったように笑みを浮かべるだけだった。

 

「そういやスコールくん。何で私だけ名字なん?」

『知った当時は八神が名前と判断していたので。後に間違いと知りましたが、特に問題ないと判断して放置しました』

「……スコールくんはもっと心を勉強しような?」

 

 

 




「あと暁くんには責任取ってもらわんとな」
「何の責任だよ!?」
『良かったですね契約者。将来の結婚相手が見つかって』
「その責任ちゃうわ!!」
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