宇宙歴797年、11月末──
「オペレータ。定時通信送れ。異常なし。時間、場所、だ」
「
アイゼンヘルツ星系を一隻の商船が航行している。船名は「クネルスドルフ」。南朝の某大手商事会社と契約している商船で、南朝の領土から鉱石をフェザーンに運び、そして、フェザーンから軍艦の装甲板を南朝首都、ブラウンシュヴァイクへ輸送する。装甲板は表向きメイド・イン・フェザーンではあるが、造られたのは自由惑星同盟ポレウィド星域にある、形だけフェザーンが経営している会社が造ったものであることは、商船の乗組員はみんな知っていた。
南朝としては全く面白くない事実であったが、南軍の軍需生産に、同盟の工業力が欠かせないことは周知の事実である。もし、同盟が南朝との貿易を止めてしまったら、南軍の戦闘能力は著しく減殺されるだろう。それはさておき──
クネルスドルフ号の艦橋はピリピリしていた。二か月前、ここを通った時は全く違っていた。アイゼンヘルツ星系といえば、帝国南朝支配下の星系であり、ここからワープすればその先はもうフェザーン回廊である。それが故に、この星域は、ある意味南朝で最も重要な星域である。南朝航路警備隊の警戒も厳しいここは、宇宙海賊のリスクも低い星域であるというのが共通認識だった。航路も十分整備されており、自動航行のスイッチをオンにしておけば、乗組員全員が寝込んでいても全く問題ない、そう言われていたほどである。しかし、今は様相が全く変わっていた。
「ヨハン、レーダーに変わりないか」
「問題ありませんよ船長。みんなビビり過ぎなんですよ」
「さぁな。一週間前からニュースも、本社の指示もそればかりだ」
「まったく……
「だが、ロスバッハはやられた。ツォルンドルフもだ」
船長の言葉に、レーダー手は黙った。
一週間前、ヴァルテンブルグ星系を哨戒中の巡航艦、「ロスバッハ」号が突然襲撃を受け、大破するという事件があった。乗組員94名中36名が死亡、ロスバッハは轟沈こそ免れたが航行不能状態で、爆破処分の憂き目に遭った。
ロスバッハのデータレコーダーによると、至近距離で突然同盟軍の戦艦と思われる艦船と遭遇、ほとんど無警告に近い状態で中性子弾の連射を浴び、大破に至ったとのことだった。レーダー記録からもそれは裏付けられた。問題は、同星域を南軍の警備隊が必死で捜索したにもかかわらず、『戦艦』が発見できなかったことであった。
そのため、ロスバッハ側の見間違いやコンピュータの故障を疑う声があがったが、それは否定された。生き残った乗組員の証言、通信記録、悲鳴と変わりない同艦の救援信号、全てロスバッハが敵と交戦したことを示していた。
そして三日前、アイゼンフート星系を航行中の商船「ツォルンドルフ」号から、救難信号が発せられた。救援にかけつけた巡航艦「レーヴェンハルト」によると、突然現れた同盟戦艦に脅迫され、食料や推進剤といった必要物資を略奪されたとのことだった。ツォルンドルフは機関部に損害を受けており、自力航行には修理が必要だった。奇襲攻撃を受け、機関部が傷つけられた結果、離脱できなかったのだった。そして、ツォルンドルフに接舷し、ブラスター片手に物資を略奪した海賊は、まぎれもなく同盟の軍服を着用していたというのである!
このニュースに南朝だけでなく、北朝も衝撃を受けた。当然ながら同盟にクレームが寄せられたが、同盟フェザーン大使館は、被害者にお悔やみの言葉を伝えたものの、同宙域を単独で航行する戦艦は存在しないと明言した。帝国領内をどうやって同盟戦艦が単独で航行できるというのか、スポークスマンはそう言い切った。実際その通りで、「事実上の休戦」とはあくまで事実上に過ぎず、同盟軍が勝手に帝国領に侵攻したら、それは撃沈されても全く文句は言えないし、組織的な侵攻が行われたとしたら、それは戦争の再開である。
まぁ、そういうわけで「クネルスドルフ」号は、滅多にやらない三直体制で警戒を続けながら、フェザーンに向けて航行していた。おっかない幽霊戦艦がいるからといって、船腹の鉱石を納期通りに届けないわけにはいかないからだった。南朝の保険会社では、『戦艦』が確認された星域の航行保険料を「再検討」するとの声明を発表しており、南朝の株式市場では相場が混乱していた。
「叛徒共は何がしたいんですかね」
レーダー手が船長の方を振り返って言った。
「共和主義者の考えることは分からん。ヨハン、レーダースクリーンから目を離すな」
船長はレーダー手を叱りつけ、レーダー手は慌てて元の姿勢に戻った。
「諸君、辛いだろうがもう少し辛抱してくれ。あと8時間の辛抱だ。そうすれば、ゲートゾーン(安全なワープが行える宙域)にたどり着く。そうなれば、後はフェザーンだぞ。そうすれば『さまよえるオランダ人』とはおさらばだ」
船長の言葉に、レーダー手はスクリーンを見ながらうんうんとうなずいた。ちなみに、『さまよえるオランダ人』というのは、正体の分からない幽霊船を指す俗称である。といっても、何故そう呼ばれているのか、そもそもオランダ人とは何者なのか、知る者はいない。
「哨戒のフネが少ないことを除けば、異常はありません。やはり、北軍の方へいったんじゃないですか」
「さぁな、ヨハン。エックハルトの件はどうやら誤報らしいという噂ではある。SNSでは」
「しかし船長、フェザーンの目と鼻の先で海賊行為なんて、天をも恐れぬ行為──」
レーダーに反応があったのは、次の瞬間だった。
その三日後──
「というわけで、真意を質しに来た、ということかね」
「目的の半分はそうなります。別に、今の仕事が全く自分に合っていない、というわけではありませんが、この仕事がずっと続くようなら、特務支援課に居る意味がないと思うのですが」
「ヤン少佐は仕事熱心だな」
「そうではありません。亡命者相手の業務だけやるなら、ここに居るのは非効率だということになります。自分としては問題ありませんが、中佐は問題でしょう。本来、必要とされていた人材と、自分はミスマッチではないのですか」
「君は独特な考え方をするな。まるで自分をお払い箱にしてくれと言っているようだ」
ムライは背もたれに体をあずけながら言った。
「それでも構わないのです。御承知のはずですが」
「ならばそれで問題はないのではないか」
ムライは眼鏡を直しながら聞いてきた。
「まぁ、君が手伝い仕事ばかりやらされていることは認める。我々が特務支援課の看板に相応しい仕事を回していないことも。ただ、ありていに言わせてもらえば……ヤン少佐は、特務支援課に欠くべからざる人材だ、私はそう思っているよ」
「理由をお聞かせください」
ヤンがムライに詰め寄っているのは、トークショーの一件から2か月近く、放置に近い扱いを受けているからだった。その間、やっていることは以前と同じく亡命者対応であり、ほとんど専門部署──入国管理局亡命課の一員に近い状態になっていた。もう特務支援課など辞めてこっちに来てしまえよ、そう亡命課の人から言われて、ものはためしと言ってみた、というわけである。
「特殊作戦というのは、『急いで待て』だ。その時が来ないのに動いてもしょうがない。普通はパトリチェフ君のように、『準備』のための訓練で日々を過ごすものだが、君にそれをやらせてもしょうがないだろう?」
「それはそうですが……」
「君は今の任務に精励したまえ。だからといって、入国管理局に君を渡す気はない。大丈夫だ、荒事は向こうから寄ってくる。ああ、業務に関しては手伝いを寄越すように手配している。近日中に着任するはずだ」
ムライはそう言ってヤンを追い出した。ヤンはため息をつくしかなかった。向こうは自分のような素人がここに居る意義を説明しようとしない。というか、そもそも上司が部下を放置するというのはあまりよろしくない行為だとされている。でも、ムライはヤンを放置しているにもかかわらず、自分が何をしていて何を問題だと思っているかは把握している。一体どうなってるんだ。
ヤンが言おうとして結局言えなかった「問題」は、降ってくる業務量が最近急に増えてきたので、人員を補充でもしない限りどうにもならない、亡命課にクレームを入れてくれ、だったのだ。
翌日──
出勤して自分の椅子に座ったヤンは、ミネラルウォーターの瓶を開け、半分ほど飲んだ。本来は紅茶を淹れて飲みたいところではあったが、フェザーンの紅茶は値段相応質不相応という感じで、ヤンのお眼鏡に叶う紅茶は、目の玉が飛び出るほど高い。これが同盟(エル・ファシル)だと、安くても質のいい紅茶が手に入ったのだが。さらに、水の質が紅茶と合わないらしく、本当に美味い紅茶は水も選ばなければならないらしい。面倒なことこの上ない(でも、早速ウォーターサーバーを契約するところ、ヤン・ウェンリーである)。
元々、エル・ファシルで巻き込まれた騒ぎから逃れるための転任だったはずなのに、どうも自分の周りに集まってくるのは、ムライやパトリチェフのような世界が違うはずの人間ばかり。書類仕事で適当に時間を過ごしてくれ、ってならばこちらもやりようがあるが、どうにも向こうは自分を『工作の駒』として期待しているようだ。一体何故なのだろう。なんで、あんな一癖も二癖もある連中から関心を持たれるのか。前世の報いだろうか。前世に何をやったかなんて知らないけど。
最近のヤンの勤務場所は、手伝い先の亡命課のオフィスにある、会議室の一つであった。あまりに亡命課となじみ過ぎているので、亡命課の方が手を回してそんなものを用意したのである。つまりはヤンの出張オフィスである。さて今日の仕事は、と思ったその矢先──
公用のコミュニケータがアラームを鳴らした。発信者を見ると、なんとムライであった。嫌な予感はしたが、勤務時間に上司の通信に無視を決め込むわけにはいかない。
「はい、ヤンですが」
「喜べ少佐。君の願いは間もなく叶う。言っておくが、我々の本職の方だぞ」
ムライは時間と場所だけ告げると、ヤンに言い返す暇も与えず通信を切ってしまった。
何が喜べ少佐だ。
呼ばれた来客用の応接室には、先客が待ち構えていた。一人はもちろんムライ課長、もう一人は中年の男だったが、なんと帝国軍の軍服姿である。もう一人は同盟軍の軍服姿である若い女性だった。何とも奇妙な取り合わせであった。
「ああ、少佐に紹介しよう。こちら、南軍のフォン・ファーレンハイト准将だ。閣下、こちらは今回担当するヤン少佐です」
ムライは紹介するついでに、とんでもないことをあっさり口にした。
「ヤン・ウェンリーであります」
ヤンはファーレンハイトと呼ばれた男に対して敬礼した。第一印象は歴戦の戦士というか、随分と苦労しているような男でかなり年上のように見えた。ファーレンハイトも答礼する。
「あと、こちらはこの度、フェザーン同盟大使館に赴任してきたグリーンヒル中尉。前任のハイネセンでは情報管理局に勤務していた」
「フレデリカ・グリーンヒル中尉であります。よろしくお願いします」
グリーンヒル中尉は立ち上がり、完璧な敬礼を披露した。金褐色のロングヘアーと
「ヤン・ウェンリーです」
ヤンも答礼した。ムライに促されて全員がソファに座る。
「では、少佐も来たことなので、本題に入らせてもらう」
ファーレンハイトが会議の始まりを宣言した。
「
ヤンは思わずそう口にしてしまい、ムライに睨みつけられた。
「君達の呼び方に興味はないが、そういうことだ。五時間ほど前に哨戒隊が発見した。今はまだ報道管制を敷いているし、主要航路からも外れているから問題ないが、そのうち誰もが知るようになる。奴がフェザーン回廊外縁部に現れた」
「確認ですが、同一であるという確証はあるんでしょうな」
ムライが訊く。
「無論だ。海賊行為の被害を受けた商船から提出されたデータと完全に一致する。あと、つい今しがただが、こちらの哨戒隊がワルキューレを飛ばして撮影した映像がこれだ」
ファーレンハイトが応接室のスクリーンを操作した。ワルキューレから撮影したであろう同盟戦艦の姿が映っている。少々映像は荒いが、まぎれもなく同盟軍の戦艦である。ワルキューレは、前から、側面から、後方から、いろいろな角度でそれを撮影していた。
何度か繰り返して映像を見たヤンは、何ともいえない違和感を抱いた。それはグリーンヒル中尉も同じだったようで
「何でしょうか……試作艦でしょうか」
グリーンヒル中尉が言った。
「我が軍で運用されている戦艦のフォルムに類似していますが、細かな箇所で相違点があります。この艦首のアンテナですが、我が軍ではここまで大型のものを使用しておりません。そして、底面に……これはシャトルでしょうか……露天繋止されているように見えますが、我が軍ではこんなタイプはなかったはず。というか……10機近くもあります。こんなに大量にシャトルを搭載してはいないはずです」
グリーンヒル中尉はヤンの違和感を見事に説明してくれた。
「中尉、申し訳ないが分析はそちらの内々でやってくれないか。我々としては、まごうことなき同盟戦艦が突如現れた、ということだけで十分だ。それも、複数の海賊行為に関与しているとなれば、通告無しに撃沈しても問題はないはずなのだ」
「その通りです」
ファーレンハイトの言葉に、ムライはうんうんと頷きながら同意した。
「ですが、我々も疑っているのですよ。フェザーン回廊に我が軍も哨戒部隊を配備、運用しておりますが、戦艦は運用しておりません。さらに、艦名、運航ルート、全てフェザーンに通知しております。もちろん、南北双方共に」
「だが事実は事実──」
「そう。だからこそ、その事実を確かめなくてはならない。通信に対して応答はないのでしょう?」
「そうだ。緊急周波数で呼びかけを続けているが、応答はない。反応もない」
「分かるのは、艦首に記されているハルナンバーか。13FB14-6537、艦名は『デ・ロイテル』……」
ヤンとムライは顔を見合わせた。グリーンヒル中尉は何やら端末を操作している。ファーレンハイトはそんな三人を見て眉をひそめている。しばらくしてグリーンヒル中尉が口を開いた。
「我が軍のデータライブラリに問い合わせましたが、該当の番号にヒットしませんでした。そもそもこの番号体系は、我が軍のものではありません。艦名の『デ・ロイテル』ですが」
「何か分かったのか?」
ファーレンハイトが身を乗り出した。
「いえ、それが……確かに794年戦力整備計画の建造予定艦リストにこの艦名がありました。ですが、建造計画の変更により起工されておりません。存在しない艦名です」
「何だと……同盟は帝国を謀っているというのか」
「いえいえ。そういうわけではありません。我々も困っているのです。その点だけはご理解ください」
ファーレンハイトの怒声に、ムライが返す。
「この船について分かっているのは、艦名、そしてどうやら同盟の軍服を着た人間が搭乗しているということぐらいです。ファーレンハイト殿同様、我々も何も分かっていないのです。本国に秘密があるなら別ですが……ですが、第三の事案では、妙なことがあったそうですな。何でも、船に踏み込むなり、医者を要求したと?」
「クネルスドルフ号の乗組員によると、同盟軍人が銃をつきつけながら、船医を呼ぶように言ったらしい。短距離航行のために搭乗していない、そう言ったら、医薬品や食料品を略奪して去って行ったそうだ。その船員によると、銃を突き付けている軍人の方も、血の気がまるでなかったそうだ」
「海賊行為にもいろいろありますが──」
ヤンが初めて口を開いた。
「随分と変わった海賊行為ですね」
「変わっていようが変わっていまいが関係ないであろう!協定がなければ、すぐに撃沈しているところなのだ!!」
「もちろんです」
ファーレンハイトが爆発したので、ヤンはなだめるように言った。
「ご通告には感謝致します。もちろんこちらとしては、すぐさま調査を開始し、結果を公開する義務があります。それで……」
「それで?」
「課長、何故我々なんですか?」
「君達!!」
ファーレンハイトの爆発はもう抑えきれない。
「で、何故私達なんだろうね」
「分かりません」
ヤンの大きすぎるぼやきに、フレデリカ・グリーンヒル中尉はぶっきらぼうにそう返した。今、二人はフェザーン宇宙港から出る宇宙エレベーターの中に居る。二、三時間経てば軌道基地に到着し、そこから専用の哨戒艇に乗り込んで、謎の幽霊戦艦に向かうのである。
ヤンとしては不満でならない。説明が不十分なのもそうだが、会議室から直接地上車に乗り込み、宇宙港に直行させられているのだ。爆発したファーレンハイトに納得してもらうには可及的速やかに調査に入るしかないのは分かるが、何故自分なのか。調査には同盟の哨戒部隊をあてればいいだろうに。
「同盟の哨戒部隊は、惑星フェザーンより同盟寄りに居ます。我々が向かうのが早いでしょう」
ヤンは不満を途中から口にしていたようで、フレデリカが感情の感じられない声でそう言った。今のところ社交的なタイプには見えないが、ファーレンハイトとのやり取りや、今、初対面であるはずのヤンと会話ができている点で、コミュニケーション能力はそれなりにありそうではある。
「そうだ。君は、その『戦艦』が通常運用されているタイプに当てはまらないと言うんだね。それでいいかい」
「はい。ハルナンバーはむしろ、20年前の旧規格を思い出させるものがあります。艦首のアンテナですが、デ・ロイテルが794年に起工したものであれば、あんなに大型なものを装備するはずがありません。それに、全く同盟で採用していない機構も一部あるように見えます。試作艦のようにも思えますが、ならば帝国で発見された理由が分かりません」
「詳しいな。君は、艦政本部に居たのか?」
「いえ、自分は情報管理局に居ました。今回の件は、帝国領内に調査隊を派遣する
ヤンは口笛を吹きかけて、やめた。事務処理能力もそれなりにありそうだ。
「我々の知らない艦だと、いろいろ苦労しそうだね」
「艦の中央側面にメンテナンスハッチがあるはずです。艦橋に行くにはそこが一番近いでしょう。試作艦であってもこのフォルムであれば、内部構造に大きな変化はないはずです」
どうやら、『グリーンヒル中尉の予習』は大したものらしい。
二人を乗せた駆逐艦「エルムラントⅢ」は、一日かけてフェザーン回廊外縁部の宙域にたどり着いた。目的の幽霊戦艦は既に艦のカメラにはっきりと映っている。聞くところによると幽霊戦艦は現れてからこのかた、動かずにじっとそこに止まっているそうだ。
「叛乱軍の戦艦をこんな間近で見るとは、人生最初で最後でしょうなぁ。おっと失礼」
駆逐艦の艦長、ベルナー大尉は、すぐ横にヤンが居ることに気づくと、ばつが悪そうに頭をかいた。
「いや、いい。向こうから何か反応はありますか?」
「ありませんな」
ヤンの質問にベルナーが答える。エルムラントⅢ号は、戦艦の死角からゆるゆると近づいている。反応がないからといって、攻撃してこないと決まったわけではないからだ。戦艦の後方、戦艦から見たら7時の方向から近づけば、戦艦側の攻撃は最小限になるはずであった。事前の計画では、後方から近づき、側面のメンテナンスハッチより艦内に入ることになっていた。
「で、どうなんですか?少佐殿によると、初めて見る艦だそうですが」
「帝国軍のデータバンクに合致パターンが無いことはさっきレーダー手が言っていました。ならば、私の意見も同じです。同盟軍人だって、宇宙艦隊にある全ての艦を知っているわけではないですから」
「ちげぇねぇ」
ベルナー大尉は笑った。叩き上げの士官だけが出すことのできる豪快な笑い声だった。
「本当に入れるのでしょうか」
フレデリカが心配そうに言った。
「まぁ、決まったわけじゃないけど、入れると思う」
「何故ですか」
「確かにあの艦は見慣れない。だけど、同盟戦艦の基本的な形は継承している。ならば、基本的な装備については変わらないと思っただけさ。それに、どうしても入れないなら、帰ればいい」
「そうですなぁ。自分としては、是非お宝を掘り当てて欲しいものですが」
ベルナー大尉が口を挟んだ。
「何故ですか?」
「単なる願望でさぁ」
ベルナー大尉の答えに、ヤンは思わず噴き出した。
結局、幽霊戦艦側の攻撃は全くなかった。短距離ミサイルの射程に入っても、投射爆雷の射程に入っても、果ては対空レーザー機銃の射程に入っても、何も、何もなかった。ベルナー大尉は、それならと艦の周りをぐるりと一周してみせた。それでも何もない。艦首の砲塔を横切っても何もない。
「いったいこれはどうしたことですかねぇ。ロスバッハをやったのに、本艦は手を出してこない」
「それは自分にも分かりません」
ヤンはそれだけ答えた。ベルナーが周囲をぐるっと回りましょうと言い出した時、内心恐怖がなかったわけではない。ただ、現場がそう言い出したら、何か止める理由でも無い限り一任するしかない。それが軍隊の、いや軍人の見栄というものだ。
「艦底にあったのはスパルタニアンのようですね。確かにああやって露天で繋止すればスペースを節約できますが、戦艦にわざわざ搭載する意味が分かりません。重整備もやりづらいでしょう」
「そうだなぁ」
フレデリカの疑問に、ヤンは適当に相槌を打った。ま、調べれば分かるさ。
「大尉。メンテナンスハッチは見つかったかな」
「指示頂いた所とは少し離れていますが、多分これでしょう」
ベルナー大尉がスクリーンに画像を映し出した。画像を拡大すると、確かに扉のようなものが見える。
「わかった。やってみよう」
ヤンは答えた。
事前の計画通り、メンテナンスハッチより中に入ることに成功した。ヤンとフレデリカは船外作業用宇宙服姿のまま、艦内を探索している。センサーによると、平服でも滞在可能とはあったが、念のためである。
「人がいませんね」
「船の大きさに対して、人間はごくわずかだよ。旗艦は違うと思うが。だけど、本当に人が居るなら、出迎えがあるはずだ。つまり、君の意見に同意だ」
二人は、ヘルメットに取り付けられているヘッドセットを通じて会話をしている。相手の声がややうるさくはあるが、聞こえづらいことがないのは有難い。艦内、一体何が起こるか分からないなら、指示や報告は明瞭なほうがいい。
「恐らく、このエレベーターで艦橋レベルに行けるはずだが」
ヤンはエレベーターのボタンを押した。どうやらエレベーターは普通に動いているようだ。
「……妙ですね。あまり見たことのないボタンです」
「……そうだな」
ヤンは答えた。最近の同盟艦は、民間製品の導入が進んだこともあって、艦内のエレベーターはビルで見慣れたインタフェースそのままであるはずだ。だけど、このボタンからしてやたらとごつくて押しにくい。艦内の景色もそうで、基本的な構造は変わっていないが、内装にどうも違和感がある。似ているようで同じではない。
「なんというか……久しぶりに親戚の家に行ったら、がらりと模様替えしていたような……」
「そんな体験があるんですか?」
「ないけどね」
などとどうでもいい会話をしているうちに、エレベーターは艦橋レベルにたどり着いた。恐らくここから少し歩けば艦橋に着くはずである。
「中尉」
ヤンは壁の一面を指差した。そこには、「デ・ロイテル号掲示板」と掲示してあり、何枚かのポスターが貼ってある。
「……これが何か?艦橋へ通じる廊下には大抵あるものですが」
「いや、違う。このポスターだよ」
フレデリカは、ヤンが指し示したポスターを見た。それは、どこにでもありそうな戦意高揚ポスターである。今年こそ勝利による平和を、と大書されたポスターだった。疑問なのは、ポスターの写真がトリューニヒトであることだった。そして、ポスターの左上には
『宇宙歴798年』
そう書いてある。
「???これに何の問題が???」
フレデリカはいまいち分かっていないようだった。
「こんなポスターの写真にトリューニヒトが載るはずがない。最高評議会議長はおろか、閣僚でもないのに。選挙ポスターなら話は別だけどさ。それに、宇宙歴798年って」
「後少しで798年ですよ」
フレデリカはなおも理屈をこねくり回す。
「こんなポスターがあるとして、新年の前から貼る人間なんか居ない。どうもこれは、何かが怪しい」
ヤンは足早に歩くと、艦橋に入った。
艦橋も機械音の他には人の気配はない……と思ったが、艦長席に人影らしいものが居る。ヤンとフレデリカが駆け寄ると、うずくまっている人間が一人居た。髪は乱れ、マフラーを側に落としているが、まぎれもない同盟軍の軍服を着用していた。
「死んでいる」
センサーで走査したヤンは、生命反応がないのを確認した。身体は固まって動かすことはできない。ということは、死後硬直ということを考えると、死亡して一日二日ということである。
「少佐」
フレデリカの動揺した声が聞こえた。ヤンはフレデリカの方を振り返ると、フレデリカは何かを指差していた。指差した方をヤンは見た。そして、あっと声をあげた。
「あの時計は宇宙歴798年5月10日……どういうことなんだ」
「分かりません。他に誰かいないんでしょうか」
「……どうやら居ないようだ。もしくは、死んでいるのかもしれない。この人が艦長なんだろうか」
ヤンは死体の階級章を見た。少佐、ということは戦艦の艦長とみてもいいのかもしれない。ポケットが盛り上がっている。中にあるものを取り出すと、1つの手帳があった。
「少佐、端末のアクセスができません。IDカードでも指紋でも、ロックを解除できないのです。ですが」
「ですが?」
「緊急事態ログだけは見ることができました。あくまで端末から見るだけですけど。それによると、宇宙歴798年4月10日に、大質量のワープアウトを検知したことと、退避が間に合わず緊急の短距離ワープを自動実施したようです」
「それだけか……世の中意地悪くできてるね。だが、宇宙歴798年というのは何なんだろうね。悪戯にしては質が悪いというか、何のための悪戯と言うべきか」
ヤンは手にした手帳をめくった。どうやら艦長はその『4月10日』以降の記録をここに書きつけているようだった。航海日誌の代わりなのであろう。曰く、イゼルローン回廊で哨戒中に、大質量ワープアウト警報を受け、自動的に退避ワープを行ったこと。気が付くと帝国領のど真ん中に居たこと……
「このイゼルローン回廊って何だい?中尉」
「……イゼルローン回廊はイゼルローン回廊ではないのですか」
「イゼルローン回廊には監視衛星と機雷が山ほどあって、あんな所を戦艦が哨戒していたなんて聞いたことがない。特殊な装備を付けた警備艇でないと、危なくて仕方がないだろう」
手帳の続きを読む。機械が軒並みトラブルになって、大部分の戦闘機能や様々なAI、自動記録の機能を喪失したこと。機関部は奇跡的に持ち直したが、ワープドライブの暴走だけは対処できなかったこと、設定もしていないのに短距離ワープを繰り返したこと。乗組員にワープの影響と思われる脳の障害が続出、死亡者や自殺者、脱走者が相次いだこと、食料や薬は尽きてしまい、航行する帝国の船舶を襲って食いつないだが、もう限界であること。自分が最後の一人で、もう耐えられないこと──
「……どうやら、本物の幽霊戦艦で間違いないらしい。遺憾ながら」
ヤンは手帳を閉じながら言った。
「間違いだったほうがよいのですか」
フレデリカが聞き返す。
「まぁ、ね。これで同盟大使館、いや、同盟政府は痛くもない腹を探られるだろうからさ。だが、この宇宙歴798年というのがよく分からない。何でこの戦艦は未来の時計なんだ?これに何の意味があるんだろう」
ヤンはフレデリカに、このページを撮影して記録しておいてくれと言って手帳を渡した。ヤンも艦橋にある端末を動かしてみた。確かにロックは解除できない。それに、端末のUIがやけに古臭いというか無骨というか垢ぬけていないというか、とにかくヤンの見たことのない画面であった。
「まるでおとぎ話の世界だな。こんな戦艦のナリではあるけど。テーマパークでも作ろうとしたんだろうか。だが、テーマパークは海賊行為をしない。おとぎの国ねぇ……」
次の瞬間、フレデリカが背中に棒を突っ込まれたかのように直立不動となった。
「……まさか!」
「??どうしたんだ、中尉」
「いえ、まさか……信じられない。まだ実証されていないのに」
「どうした中尉。何でもいいから言ってくれ!」
ヤンはフレデリカの肩を掴んで揺らした。なおもフレデリカは心ここにあらずという感じであったが、しばらくしてようやく落ち着いたようで、話し出した。
「少佐、笑わないでください」
「わかったわかった」
「宇宙歴798年のカレンダー、コンピュータに残った緊急退避ワープのログ、そして大質量ワープアウト警報、謎の病気や自殺……一つだけこれを繋げる仮説があります。そして、この前提があればこの艦に生存者が居ない理由も分かります」
「一体何だね」
ヤンの言葉に、フレデリカは一瞬黙って、そして話し出した。
「時間遡行によって発生する並行宇宙ジャンプ仮説です。大質量のワープアウトで理論上は起こるとされていましたが、誰も確認したことがありません。もしこれが正しいなら、私達は世紀の大発見をしたのです」
ワープ──
宇宙を旅する時に必要不可欠な技術であるが、宇宙歴797年の現在においても、その原理を説明できる人間はあまり多くない。なるべく多くの人に分かるように、噛み砕いて伝えるとすると、以下のようになる。
まず、ある大きな紙の中心にワープしたい艦船がいるとする。そして、ワープしたい艦船の前方に、ごく小規模の
これを第三者が観測するとどうなるか。紙の中央に居たはずの艦船が、一瞬で紙の端に移動することになるわけである。相対性理論から、宇宙爆発、収縮、艦船の移動は瞬時に行われ、観測することはできない。となると、一点から一点に
もちろん、事はそう単純ではない。まず、小規模とはいえビッグバンとビッグクランチを至近距離で発生させておいて、物体が無事であるはずがない。そのため、艦船は特殊装置を用いてワープフィールドという特殊空間の中に自らを閉じ込める。そうでなければ、船は微粒子レベルまで分解されてしまうからだ。
さて、ワープ技術が誕生してしばらくの後、人類はある一つの概念を思い出した。かつて科学者アルバート・アインシュタインは、宇宙には過去、現在、未来、あらゆる時間軸の時空が存在し、時空を繋ぐ所謂『ワームホール』の存在を予言した。全く同時刻に二つの場所で同じ物体が存在する(ことになっている)ワープとは、このワームホールを生成する行為に他ならないのではないか?ワープの方法を工夫すれば、過去や未来に行くことも可能ではないのか?
この概念に科学界(のごく一部)は熱狂し、実験が行われた。いや、今も行われている。だが、時間の遡行、あるいは未来時空への瞬間移動を観測した事例は無い。ワープ技術は日々改良されているものの、相対的にはごく短距離、小規模の移動を実現させているに過ぎないからだった。時間移動のためには、宇宙爆発および収縮を大規模に行わなければならないが、現時点では、発生させることができる宇宙爆発は、主体となる物体の容積に比例する「限界」があるとされている。そして、巨大な物体が巨大な爆発を起こしたとして、その物体が瞬間移動するというだけのことである(大体、巨大物体のワープというのは未だ実用化に至っていない)。
では、巨大な体積を持つ物体のワープに「巻き込まれた」場合はどうだろう?ワープインあるいはワープアウトの瞬間に、小さい物体が偶然存在した場合はどうだろうか?偶然ワープフィールドが展開されて、空間の爆発・収縮に耐えられた場合は?それについても実験は続けられているが、成果はあがっていない。第一、時間が遡行できたとして、タイムパラドックスとの整合性を考えると、観測は可能なのか、という疑問は根強い。つまり、
もし過去に移動できたとして、それは我々が体験していない別の世界線に移動することになってしまうのではないのか?
「この船は未来から来た?だと──」
グリーンヒル中尉の言葉にヤンは絶句した。考えてみれば単純な結論だ。あまりに単純すぎて信じることの方が難しい。
「はい。その理屈が確かなら、タイムパラドックス仮説により、過去に移動した時、同時空には居られないと言われています。そして、それは──」
「今までの体験と全く異なる、別の歴史世界に移動するってことか。なんてこった。あまりにも大規模なワープだとしたら、ワープ障害で脳に与える影響も大。そういうことか」
ヤンはうめいた。もしそうだとしたら、同盟戦艦のように見えて、違和感のありすぎる艦内とか、操作することのできないシステムというのも納得できる。この艦は、我々の知らない歴史の、全く別物の自由惑星同盟軍の艦なのだ。どれだけ同じように見えても。
「宇宙物理学者がこれを見たら何て言うことやら。いや、その前に信じようとしないかな」
「でしょうね。こんなに綺麗な状態で時空移動するわけがない、そう言うでしょう」
ヤンの言葉にフレデリカは同意した。
「であれば、軽々しく信じるわけにはいかない」
そう言ってヤンは艦橋を出ていこうとした。
「どこに行くのですか?」
「私に考えがある。中尉、君はコンピュータにアクセスできるかどうか引き続き試してくれ。あと、艦橋の撮影も頼む。15分程度で戻る」
ヤンは無人の廊下を歩く。今のところこの船は、細かなところに違いがあるものの、全体構造にそこまで違いがない。となればここらへんに──
「あった」
ヤンはとあるドアを見つけて言った。ドアの上のプレートには『図書室』と書いてあった。
「たとえ別の歴史世界でも、船に図書室があることには変わりないか」
ヤンは図書室の中を見回した。書棚と小ぶりの机、椅子が4つ。ヤンが知る同盟艦に比べやや小ぶりではあるが、ここは非番の乗組員が書を読み、休息や勉強をする場所である。電子書籍がいくら普及しても、紙の本はしぶとく生き延び続けてきた。同じ本というオブジェクトをやり取りするについて、未だに電子書籍は紙の本を超えられていない。
ヤンは書棚をチェックした。軍に必要な実学の本が大部分だが、ノベルズやコミックが配架されている棚もあった。
「やれやれ。収納用のバックパックを持ってくるんだった」
ヤンはぼやいた。この図書室にある本全部を持って帰りたかった。これが別の歴史世界の本であればだけど。ヤンはなおも書棚をチェックし、雑誌置き場の上にある1つのパンフレットに目をつけた。
わたしたちの自由惑星同盟軍 宇宙歴797年版
パンフレットにはそう書いてあった。表紙には、同盟のエンブレムである五芒星と、ハイネセンとおぼしき惑星の写真がある。
ヤンはパンフレットの表紙をめくった。
目次に続き、「最高評議会議長 ヨブ・トリューニヒトより」というページがある。ざっと読む限り、同盟は正義であり、悪辣な銀河帝国を打倒することは国民の願望であり、義務であるみたいなことが書いてあった。ちょっときつい表現であるが、まぁスローガンと大して変わることはない。それよりも、本当にこの世界では、トリューニヒトが最高権力者になっているということの方が驚きだった。
2ページ目以降は、同盟軍の編成が簡単に書かれていた。軍の編成は今の世界とあまり変わるところはなかったが、やたらと辺境艦隊や警備隊の数が多いのが気になった。時間がないのでページをめくる。
3ページ目は、これまでの自由惑星同盟軍のたたかい、であった。年表形式で同盟軍の戦闘の記録が2ページにわたって書かれている。どうやらこの世界では「第二次ティアマト会戦」(アッシュビー率いる同盟軍が帝国軍に大勝し、アッシュビーが重傷を負った会戦のことらしい)で、アッシュビーは戦死、当然アッシュビー・ラインが建設されることはなく、同盟軍は帝国軍との戦争をだらだらと続けていることになっていた。この世界では、ティアマト会戦は第四次まであるそうだが、詳細は分からない。
5ページ目は、宇宙歴796年の同盟軍、であった。どうやら796年の歴史は独立した章で扱っているようだった。
2月、我が軍はアスターテ星域に侵攻してきた帝国軍と交戦、第2艦隊、第4艦隊、第6艦隊の3個艦隊は勇戦奮闘し、第4艦隊パストーレ中将、第6艦隊ムーア中将といった歴戦の勇将が戦死したものの、帝国軍を撃退することに成功しました。
おやおや──
パンフレットの記述にヤンは苦笑した。3個艦隊のうち2個艦隊で司令官が戦死、ということは2個艦隊は大損害を被ったということじゃないか。大敗と書きたくないのは分かるが、この一文を書くだけでもいろんな部署が散々頭をひねっただろうな。さらに驚くことに、三人の司令官の顔写真は、自分達の知る司令官と全く同じなのである。第2艦隊パエッタ中将(昇進おめでとう)は、エル・ファシル時代にいつも顔を突き合わせていたあのパエッタだし、ムーアはともかく、パストーレならヤンも十分知っている。
5月、我が軍は、今まで悩みの種であったイゼルローン要塞を奪取すべく、七回目の攻略作戦を発動しました。今までの力攻めではうまくいかないことを悟った我が軍は、方針を転換し、一人の人物に作戦を託しました。
どうもこの世界では、イゼルローン回廊に機雷堰は無く、そこに帝国軍が要塞を建造していたらしい。同盟軍は六度力攻めをして失敗し、七度目で方針を転換したということか。ヤンはそこまで読んでページをめくり──
そして先はなかった。どうもパンフレットの管理がよくないのか、ページがいくつか落丁しているらしかった。折角いいところなのに、ヤンはそう思ったがしょうがない。次のページでは、いきなり9月まで時間がとんでいる。
奪取したイゼルローン要塞から出撃した8個艦隊ですが、帝国の抵抗に傷つき、同盟からの補給の不安もあったため、帝国を解放する作戦を棚上げし、イゼルローン要塞に撤退しました。
へぇ、イゼルローン要塞を奪取したのに飽き足らず、帝国に攻め込むとは、この世界の同盟はよっぽど戦争が好きらしい。それに8個艦隊の共同作戦とはね、そりゃ補給も不安になるよ。今の後方支援本部なら、聞いただけで全員卒倒するだろうな。
同盟は民主主義の理想のもと、帝国の大きな領域を解放しました。ですが、勇戦敢闘した戦士達の犠牲は大きく、出征した3000万人のうち、2000万人が還らぬ人となりました。
それを見たヤンは、頭を殴られるような衝撃を感じた。2000万人が戦死というのは空前絶後という言葉でもまだ足りないぐらいだ。今の宇宙艦隊全部を合わせても2000万人には到底及ばない。それがそっくり無くなってしまったら、それは軍が崩壊しているのと一緒じゃないか。一体この世界はどうなっているんだ。
ヤンはパンフレットを閉じた。どうやら中尉の言っていた並行宇宙ジャンプ仮説は当たっていたと言っていい。このパンフレットさえ見れば、誰だって中尉の言うことを信じるだろう。ならば──
ヤンはヘルメットのシールドを開けると、顔の前にあるわずかな空間にパンフレットを折りたたんで突っ込んだ。視界がさえぎられるがしょうがない。さて、時間も時間だし戻るとするか。
次の瞬間、艦が大きく震動し、思わずヤンは尻もちをついてしまった。
「すまん。中尉。少々時間を食ってしまった」
艦橋に戻ったヤンは謝罪したが、フレデリカからは返答がなかった。フレデリカは立ちすくんで、メインスクリーンの方を見ている。メインスクリーンには、惑星の姿がでかでかと映し出されている。
「中尉。この惑星は一体──」
「少佐。突然艦が震動したと思ったら、あれがあったんです。それまで何も無かったのに……嘘でしょ。あれは──」
ヤンも惑星を少し見て、同じように固まった。間違いない。あれは惑星フェザーンじゃないか。
「中尉、もしかして、あの震動は即時超短距離ワープか?」
フレデリカはうなずきながら、恐らく、と、それだけ言った。次の瞬間、それまでの震動よりはるかに大きい震動が艦を襲った。
少し時間を戻す──
惑星フェザーンの宇宙港は、それを支援する無数の地上施設で成り立っている。第十九宙域観測所はそんな施設の一つである。ムライと幾人かの大使館技術員は、その施設に「案内」され、ヤン達の調査活動を「指揮監督」するものとされた。
もちろん、実質はヤンが調査している間、留め置かれている「人質」である。ヤンから何の通信もないので、ムライができることとすれば幽霊戦艦を眺めることぐらい。でも、ヤン達が幽霊戦艦の調査を終えるまで、彼らはここを出ることはできない。事情が事情であるので、彼らの「サポート」をする帝国軍人やフェザーン人のサービスを期待することもできない。
「艦に異変はないか」
「ありません」
ムライの言葉に、フェザーンのオペレーターはうんざりして答えた。幽霊戦艦の周囲にはエルムラントⅢだけではなく、他3隻の駆逐艦が監視にあたっている。戦艦の方はうんともすんとも言わない。最初は、緊急周波数で呼びかけをおこなっていたが、何も回答がなかったのでやめてしまった。
「通信してくれればいいんですけどね」
ムライに付いてきた技術者が言った。
「艦の通信アンテナを制御できないのだろう」
ムライが答えた。
「ならば、出てくるまでやることはないですね。あの戦艦が動けばまだしも、ですが」
技術者が言った。暗に、オペレーターを急かすな、と言っているのである。
「入ってからどれぐらいになる」
「そろそろ一時間です。予定ですとそろそろ脱出するか定時連絡があるはずですが」
「……待つしかない」
ヤンに調査を押し付けた以上、見捨てることはあり得なかった。流れでそうなってしまったとはいえ、いや、だからこそである。もちろん、ムライは、ヤンとフレデリカが「世紀の大発見」をしたことを知る由もない。
ムライは用意されたデスクに座ると、ミネラルウォーターの瓶を開けて飲もうとした。とっくに空になっていた。本当は代わりが欲しかったが、帝国の警備員は水を買いに行くのはもちろん、トイレに行くときすらぴったりと離れない。おかげで、この部屋から出ていくことすらやりにくいのである。
特務支援課の有名税かな──
ムライは頭の中だけでそう思った。情報工作部隊の長であれば、警備厳密な場所から抜け出す秘密の魔法でも持っている、そう思われているのかもしれない。
ムライはゴミ箱に瓶を投げ込むと、スクリーンを眺めた。状況は変わらず、謎の戦艦はそこにあるだけ。一体彼らはどこから来たのか。同盟軍データバンクにない謎の戦艦、お前は一体何者だ……
警報ブザーがけたたましく鳴り響いた。
「何事だ!」
同席している帝国軍の連絡士官が咎めた。
「ワープ警報です。次元震動反応を検知しました!場所は至近です!!」
「馬鹿な。この宙域に直接ワープアウトしてくるのか!」
「い、いえ……恐らくは」
オペレーターが言い終わるより前に、幽霊戦艦は小さくぱっと光り、消えてなくなってしまった。
「……消えた」
オペレーターが震えながら言った。
「ムライ中佐、これはどういうことかね」
連絡士官がムライに詰め寄った。
「……」
ムライは何も言わなかった。いや、俺にだって分からんよ、と言ったつもりだったが声になっていなかった。
「ま、まぁ、今のは自分にも分かりません。まずは次元震動から場所を推測しましょう。恐らく長距離のワープではないはず。大丈夫です。必ず調査は遂行することをお約束します。あの船を隠し立てすることなど──」
「フェザーン宇宙港より通信!!例の戦艦が!!」
オペレーターの声は悲鳴そのものだった。
あまりに大きすぎる震動に、ヤンはまたも尻もちをついてしまった。グリーンヒル中尉は耐えることができたが、それは体幹が優秀というよりも、たまたま近くにオペレーター用の座席があるから、それにしがみついただけだった。
「少佐!一体これは……」
「分からない。だが、フェザーンがこれほど大きく見えるとしたら……中尉、近くに民間船の航路が見えるか?」
「見えません」
「……やばいなこれは」
ヤンの膝が震えだした。惑星フェザーン近傍で、付近に宇宙船が見えない。ということは、ここは宇宙船の居てはいけない宙域だということ。そこに侵入した物体はあの『首飾り』によって排除される。
「ヤン少佐!応答しろ!!ヤン少佐!!」
茫然自失としたヤンを引き戻したのは、レシーバーから聞こえるムライの声だった。
「馬鹿者、攻撃をやめるのだ。幽霊戦艦は攻撃などしておらん」
惑星フェザーン近傍に突然現れた幽霊戦艦に、ムライはじめ指揮所の誰もが仰天した。しかし、その戦艦への攻撃が始まるのを見たムライは、フェザーンの航路担当者に詰め寄った。『首飾り』の一つが発射したレールキャノンは1発が命中、艦の動力に深刻なダメージを与えたものと思われる。
「ですが中佐、航行禁止宙域に侵入したオブジェクトは、例外なく自動迎撃の対象となることは御存知でしょう。あの船は禁止宙域のど真ん中にいるのです」
航路担当者は当然のように反駁した。だが、ムライとしてもはいそうですかと言うわけにはいかない。
「これは何かの事故だ。事実、我が軍の調査はまだ終了していない。それだけでも待ってくれ。ヤン少佐とグリーンヒル中尉の脱出は確認できていない」
「中佐殿、事故だとおっしゃるなら、あの戦艦が再び動き出さない保証はあるのですか。事故で砲門を開くことはないと保証できるのですか」
そう言われてムライは黙った。帝国、同盟双方のコントロール下にない戦闘オブジェクトがこんなに惑星に接近していることがリスクである。もしかしたら、宇宙港から目視で見えているかもしれない。もし仮に戦艦が全火力を投射したとしたら……
「だが、まだ戦艦は動き出していない」
ムライは絞りだすように言った。
「三十分です」
連絡士官が言った。
「あの戦艦が動き出さないという前提で、待てるのは最大限それだけです。それ以上は航路を規制しなければなりません。もちろん、戦艦が動き出したら、即時攻撃開始です。あと、これだけ近くなら通信も届くのではないですか」
航路担当者の言葉に、ムライはオペレーター席に駆け寄った。
「何故そこにワープアウトしたかは知らん。だが、分かっているとは思うが首飾りが戦艦を狙っている。もう初弾は発射された」
「分かってます」
ヤンは答えた。照明が非常灯に切り替わり、重力制御にエネルギーが回せなくなったのか、体が自由に動かせなくなっている。センサーによると、重力はおよそ0.2Gとのことだった。恐らく機関部が大破したのであろう。
「三十分しかない。すぐ脱出するんだ」
「待ってください。この戦艦を破壊するんですか。これは金塊なんかよりはるかに貴重な──」
ヤンは抗弁した。もしこの戦艦を分析することができたら、人類の科学に大きく進歩するに違いない。帝国、同盟そんなことは関係ない。人類の宝と言ってもいい。
「馬鹿者!死にたくないならさっさと逃げろ!!艦の底部にある緊急脱出ポッドだ!それなら小さすぎて首飾りの迎撃システムから逃げられるかもしれん。早く!」
ムライからの通信はそれだけ言うと切れた。
「少佐……」
グリーンヒル中尉がこちらを見つめているようだ。ヘルメットを被っているので分からないが、呼びかける声は震えている。
「……命あっての物種。仕方ない。艦底に急ぐぞ」
ヤンとフレデリカは非常階段を下りていた。動力がなくなってしまっては、エレベーターを使うこともできない。そういえば少し前に同じようなことをしたな、ヤンはそれを思い出したが、思い出にひたっている暇はない。というか、重力が低いせいかまともに脚を動かすのも苦労する。
前を歩いているフレデリカが立ち止まった。
「中尉」
ヤンの呼びかけに中尉は反応しなかった。代わりに、非常階段の手すりをひょいと飛び越えると横にある配管を掴み、滑り棒の要領で一気に下に降りていった。
「お、おい、中尉──」
「少佐、低重力なので失敗するリスクは低いです。棒をゆるく掴めば止まることもありませんし、スーツなので摩擦も気にしなくていいです。早く!時間がありません!!」
レシーバーから聞こえる声にヤンは一瞬ためらったが、年下の女性に先に行かれてはどうしようもない。意を決して手すりを乗り越えると、配管を掴んで、同じように滑り降りた。確かに、階段を下りるよりずっと早い。さすがだ。
ヤンとフレデリカが艦底レベルにたどりついた時、時間の猶予は10分を切っていた。普通に階段を下りていたらとても間に合わなかっただろう。
「中尉、ありがとう。感謝する」
「脱出ポッドまで距離があります。急いで!」
二人は通路を急いだ。少なくともそのように努力した。だが、例によって低重力状態では体が思うように動かない。
「少佐、壁か通路を思いっきり踏みつけてジャンプしてください。低重力ではそちらの方が早いです。踏み切ってジャンプ!」
フレデリカはそう言うと、両足を器用に立桟に引っかけると、スクワットのからの立ち幅跳びの要領でぴょんと飛んでいった。なるほど、そちらの方がずっと早く移動できそうだ。ヤンもそれを見よう見まねで真似して進んでいく。有難いことだ。
なんで彼女はこんなことを知っているのだろう?
脱出ポッド区画にたどりついた時、時間は5分を切っていた。
「少佐、あれ!」
運のよいことに、脱出ポッドは1個だけ生き残っていた。残りは恐らくデ・ロイテルの乗組員が使用したのであろう。まさか故障しているから残っていた、なんてことはあるまいな。
フレデリカは脱出ポッドに取りつくと、ポッドを起動させた。
「よかった。動きそうです!少佐、早く!!」
フレデリカの声にヤンはポッドに駆け寄った。その途中、ヤンの体がふらつき、壁に叩きつけられる。ヘルメットのスイッチが壁に押し付けられ、シールドが開く。ヘルメットの中に無理矢理入れていたパンフレット「わたしたちの自由惑星同盟軍」がヘルメットから飛び出し、通路の向こうへふわりと飛んでいこうとしていた。
「あ──」
ヤンがパンフレットに手を伸ばした。掴もうとしたがうまくいかない。もう一度──
ヤンがなおも掴もうとしたその時、フレデリカが反対側の腕を掴んで、ポッドの中に引きずり込んだ。
「少佐、念のためシールドを閉じてください」
「中尉。ちょっと戻っていいか。すぐに戻る」
ヤンはフレデリカを振りほどいて、ポッドから出ようとした。
「だめです!!ここから出たら、もう戻ってこれません。あと3分しかありません」
再びフレデリカがヤンの腕を掴んで叫ぶ。
「3分もあるじゃないか。何か持ち帰らないと……」
なおも反論するヤンに
「少佐、死にたいんですか!脱出したって、距離が十分離れないと戦艦の爆発に巻き込まれるんですよ!!」
フレデリカの絶叫に、ヤンの心の中で何かが折れた。ヤンが抵抗をやめたことを確認したフレデリカは、脱出ポッドを操作すると、戦艦デ・ロイテルからの緊急脱出を実施した。
フレデリカの判断は全く正しかった。三分後、脱出ポッドが戦艦と十分距離を取った後に、首飾りが放った光線が戦艦デ・ロイテルを貫き、戦艦を粉々に爆砕したのであった。
二週間後──
出勤したヤンは、特務支援課の執務室にある自分の椅子にどっかりと腰を下ろした。幽霊戦艦から脱出して二週間、ヤンは自分の職場に出勤することができなかった。
脱出ポッドが同盟軍差し回しの救助艇に回収され、なんとかフェザーンにたどり着いたのが翌日、それからフレデリカとは別行動となり、同盟、北朝、南朝の係官が入れ替わり立ち替わり取り調べにやってきた。特に同盟の取り調べは執拗だった。
ヤンの証言は、当初誰も信じる者はいなかった。だが、ヘルメットのカメラが撮影した画像を解析し、脱出ポッドの調査が進むにつれ、どうやら言っていることに間違いはないらしい、と思うようになった。
取り調べと同時に身体検査も厳重に行われた。見たことも聞いたこともない検査をあまりに多くやらされるので、「グリーンヒル中尉は女性で将来があるんだから、もう少し勘弁してやってくれ」とヤンがクレームを入れるほどだった。
一週間経って取り調べ、検査が一段落し、これで元に戻れると思ったのも束の間、今度は同盟、北朝、南朝、フェザーンのマスコミが押し寄せ、ヤンはいろんなメディアにまつりあげられる羽目になった(ヤンは直接確認していないが、フレデリカも同じようにメディア攻勢に遭っていた)。
これは主に同盟側の事情があった。海賊騒ぎの謝罪と賠償を体よく押し付けられる形となった外務委員会が、失点を挽回する手段として、「人類の財産を破壊したフェザーン」というストーリーに飛びついたからだった。同盟の学術団体を動員して脱出ポッドを調査し、それが同盟の採用しているタイプではないことを確認すると、大々的に宣伝につとめた。また、惑星フェザーン軌道上に存在するデ・ロイテルの残骸について、帝国・フェザーン共同の調査を提唱、調査が一段落するまで『首飾り』の機能停止を要求することさえ行った。
首飾りの件に関しては、当然フェザーンは抵抗したが、頼みの綱である北朝・南朝の科学アカデミーから抗議を受け、政府からも無視されては抵抗できなかった(帝国としては、首飾りのせいで航路が限定され、フェザーンへの行き来が慢性的に渋滞状態となっていることへの不満があった)。
ここから後はヤンの直接関わる話ではないが、幽霊戦艦騒ぎはこの後も意外と長く尾を引くことになった。デ・ロイテルの残骸から、本世界のいかなる工業規格、軍事規格にも合致しない合金であることが発表されるとか、惑星フェザーンの高等教育機関がこの騒ぎを利用し、独自の学術団体を立ち上げるとか、残骸を回収するために海賊まがいの
ヤンとしては、そんなこんなのイベントと比べれば、机で仕事ができるのは天国に居るに等しかった。一刻も早く、幽霊戦艦とおさらばしたかった。事務端末を立ち上げ、たまっているメールでも読むか、と思ったその時、
執務室にあるコミュニケータがアラームを鳴らした。コミュニケータを見ると、相手は事務所ビルの入口にある受付AIであり、ヤンに面会を求めている人が居るとのことだった。ヤンは心当たりがなかったが、AIが通知してきたということは、セキュリティレベルに問題はないということであろう。ヤンは執務室まで案内するように通知した。
しばらくの後、執務室の入口のドアが開いた。訪問者はすたすたとヤンの机まで歩くと、ヤンに敬礼を行った。来訪者を見て、ヤンは仰天した。
「君は……一体どのような用件で」
「申告致します。この度、特務支援課に配属されましたフレデリカ・グリーンヒル中尉であります。課長からはヤン少佐の補佐を承っております。着任の確認を」
「…………」
ヤンは声が出なかった。補佐……確かに手伝いは欲しくて、事務処理の手伝いはそのうち来るだろうとムライは言っていたが、今日来るとは知らなかった。それに手伝いがフレデリカというのは想定外もいいところである。
「君は、情報管理局ではなかったのか?」
「それは前の所属です。一か月前にフェザーン大使館特務支援課に転属となりました。いろいろありましたが、今日が初めての出勤です。よろしくお願いします」
「…………」
「少佐、どうかなさいましたか」
「あ、いや。着任する話は来ていたんだが、今日だとは思ってなかった。申し訳ない。大使館の方に着任の挨拶を先に済ませた方がいい」
「もう済ませました」
「では、ムライ課長の方に」
「それも済ませました。大いにやってくれ、と」
「では、大使館総務のベティス大尉のところに行ってくれないか。君の机や仕事に必要なものを用意させるから」
「分かりました。それと」
「それと?」
「着任の確認を」
そう言われてヤンははっとした。一応、部下を受け入れる時、上司は部下の着任を確認し、許可する決まりになっている。ヤンはコミュニケータに届けられた着任申請に
「着任を確認した。よろしく、中尉」
ヤンの答礼を見て、フレデリカはようやく敬礼を止めて、執務室を出ていこうとした。
「ああそうだ──」
「何でしょうか?」
「念のために聞いておくけど、本当にここで問題ないんだね。私の補佐ということは、通常は煩雑な事務処理だし、時たまあんな馬鹿騒ぎに付き合わされることになる。君の事務処理能力をもってすれば、情報管理局に居た方が──」
「問題ありません」
ヤンが言い終えるよりも先に、フレデリカが言った。
「私は冒険がしたいのです」
フレデリカはそれだけ言って、執務室を出ていった。
フレデリカ・グリーンヒル中尉が執務室を出ていったのを確認して、ヤンは頭を抱えた。
どうして自分の周りには変わり者しかいないんだろう。
次回予告
フェザーンでのポーカー大会に参加するヤン・ウェンリー。ヤン本人の任務は、カジノで行われる違法取引の監視であったが、何故か大金のかかったポーカー勝負に巻き込まれてしまう。
第十話「カジノ・ロワイヤル」
著者より
本作におけるワープの挙動についての参考文献は以下の通りです。
Wikipedia - 「ワープ」
Wikipedia - 「アルクビエレ・ドライブ」
BBC News - 「タイムマシンは造れるのか 科学者たちの挑戦」