すみません。お納めください。
静寂だった森に銃声が木霊する。
右から左から。四方八方から迫り来る魔物へと弾丸を叩き込む。
「ケケッ!」「ケーッ!」「ケッ!!」
正面から1匹。それを囮にするように背後から2匹が襲いかかってきた。
3匹が私に触れる直前、地面を勢いよく蹴り後ろ2匹の頭上を飛び越える。
3匹を正面に捉えた私は撃ち漏らすまいと無数の弾丸を放った。
…今のを含めて十数匹は倒した。
が、この魔物達はまだ勝てる自信があるのか逃げようとしない。
ゴブリン。
一体一体は駆け出しの冒険者でも狩れるし、腕に覚えがある人なら苦戦もしない魔物。だけど恐ろしいのは狡賢く、群れで行動する点。
しかし、狡猾なゴブリンは勝てないと分かればすぐに逃げる種族だ。群れにこれだけの犠牲が出ても逃げないというのは何かある。
万が一の為に魔力を練る。
すると、ゴブリン達の動きが止まった。
何があったかと訝しむと、大地が揺れた。
ズシン、ズシンと地鳴りが聞こえる。
視界に入ったのは、私よりも大きな魔物。
ゴブリン達を束ねる騎士『ゴブリンナイト』、その上位個体。
『ゴブリンパラディン』だ
ゴブリン達を統括する個体は複数確認されているが中でもパラディンは危険度が高い
「ギシャアアア!!」
パラディンの剣が迫る。私は咄嗟に飛び退いた。
すると元いた場所には小さなクレーターが生まれており、もし避けれなかったらと思うと血の気が引く。
呼吸を整え、冷や汗を拭いながらゴブリンパラディンを見据えた。
屈強な肉体に着込んだ甲冑。一筋縄ではいかないだろう。
「最悪、魔法を使わないといけないかも…」
本当ならこんな相手に使うのは気が引ける。
だけど今の私じゃここまでが限界だろう。
仮にパラディンを倒しても無数のゴブリンが控えている。
プライドがどうこう言ってる場合じゃない。
パラディンがその大剣を振り上げる。
(仕方ないけど、魔法を…)
呼吸を整え、魔王様に教えられた魔法を展開しようとした瞬間。
「伏せろッ!!」
ーーー誰かの声が聞こえた。
咄嗟に身体を伏せると、頭上を一陣の風が過ぎ去った。
その風は刃となって迫り来るパラディンの大剣と衝突、あろうことか弾いたのだ。
弾くことは造作もない。ある程度の実力者ならば可能だし私だってできる。だけどそれほどの実力者がこの場にいることが私にとっての驚きだった。
風が来た方角に目を向けると金髪を風になびかせ、剣を振り切った状態でこちらを見据える青年の騎士がいた。
「油断しないでくれ!倒せた訳じゃない。」
青年は私に駆け寄りながら警告してくれるが、私は内心おかしくって仕方がない。この人に警告されるほど私は弱くはないのだ。だけど今は皮を被っておこう。
「あ、ありがとうございます…助かりました。」
役としては…そこそこ戦える冒険者でいいだろう。バックボーンは適当に。そこまで長くなる付き合いでも無いはずだ。っと、パラディンが体勢を立て直していた。
「私が隙を作るので、その内にトドメを。」
「わかった、無理はしないでくれ」
青年と私はそれぞれ反対方向に駆け出し、パラディンを中心として円を描くように移動している。マガジンを替え、狙いを定める。
「ギシャアアアア!!!」
パラディンがどちらを狙うかを定める前に撃つ。すると、やはり私の方に注意が向けてきた。ダメダメ、私になんか気にかけてちゃ。
上手く行き過ぎて口角が意図せず上がってしまう。
「ありがとう、これで倒せる!」
反対側に位置していた青年が、パラディンに背後から切りかった。彼は遠距離攻撃でパラディンの一撃を弾く力を持っているのだ。それが直接首に加えられたら…
「ッッ!!」
電源が落ちたかの様にパラディンの巨体は止まり、首がボトリと落ちてくる。それと同時にパラディンの亡骸が倒れて軽く地面が揺れた。
得物を仕舞いつつ断面を見ればやけに綺麗だ。あの青年、力だけじゃなくて技量もそこそこあるな。なんて考えてたら…
「大丈夫?怪我はないか?」
なんてベタな質問してきた。無傷だし無事って返しておこう。
「ええ、お陰様でなんとも。」
…あれ?何やら困っているようだ。何故だろう。
「あ、名前!名前はなんて言うんだい?」
ああ、話題がなくて困ってたのか。ならばお答えしましょうと言いたいけど…うん、実名は駄目だ。だから…
「マリア、"マリア・ネイトス"。あなたは?」
「俺は"ロナルド・ライグリッド"。よろしくな!」
ニカッと笑う彼の笑顔が、ちょっと眩しく感じた。
マリア・ネイトス
マリオネットs