ウマ娘短編集   作:固床式

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11話:勝ちたい気持ちの果てに

私は、走ることに明確な目標を持っていたはず。でも、今はその影もない。

 

メイクデビューは、周りを圧倒して勝った。その後は悔しいレースも多くあったけど、自分らしく精一杯走ることが出来ていた。でも、私が一勝するのにかける努力をしている間に同期のみんなはどんどん勝ち星を伸ばして行った。

 

「また、負けるのかしら」

 

そう呟いた声は、明確にトレーナーへと届いてしまっていた。彼は、トレーニングメニューを全て再編しなおして持ってきた。

 

「次こそは勝とう!」

 

そんな言葉と共に。

それからのトレーニングは脚の疲れを見つつ、これまでよりも更に数倍の負荷をかけていた。 夏合宿でも、同期のみんなとは違う場所で、1人黙々と血の滲む様な努力を重ねてきた。

 

でも。それでも。

 

その年の天皇賞・秋。これまでのトレーニングが実を結ぶことは無かった。ファンは、励ましてくれる。幸いにも、ヤジは来なかった。でも、勝った同期を見ていると。

 

悔しい。

 

ただただ悔しい。また負けた。まだ足りない。これじゃまだ足りない。彼女に、彼女達に届かない。

 

 

 

努力する、というのは普通のことだ。勝ちたい、ならば努力する。何かを欲する時も、それを得るために努力する。だからこそ。人の何倍も努力して、努力して。

 

レースで、勝ちたい。

 

そして、迎えた高野宮記念。出走前、トレーナーにはもう伝えたこと。このレースに負けたら、今年限りで走るのを辞める。もう、みんなには負けていられない。

ゲートインの時、隣の彼女が何か言っていた。でも、聞こえなかった。いや、聞こえてはいたのだろう。体が反応しなかった。

 

 

 

 

 

ゲートが開く。みんな一斉に走り出す。高野宮記念は有馬やダービー程の人気はないもののG1レースのためレベルは高い。G2、G3のトロフィーは、もう、要らない。G1で、彼女達に勝ちたい。負けられない。

やはり、最初に出たのは逃げが得意なスカイさん。彼女の逃げは脅威だが、今日の私には何か遅く感じた。そして、私の後ろには日本一のウマ娘、スペシャルウィークさん。その後ろには世界で戦ってきたエルコンドルパサーさんがいる。

スカイさんの後ろについて、最終コーナーに入る。

 

「負けたくない。」

 

その気持ちだけだった。

最終直線に入る。スパートをかける。これまで、ずっと鍛えてきた末脚で、勝つ!

 

後ろから、あの2人が追ってくるのがわかる。最後の上りに入る。残り200の坂。

ゴールが遠く感じる。限界まで脚を速く動かす。もう、みんなに、負けない!

 

 

 

先頭でゴールすることの嬉しさを、久々に噛み締めることが出来た日だった。

 

 

 

これが、キングヘイローの思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 




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