「······はぁ」
モルモット君がため息をついている。日頃、私の実験に文句のひとつも言わず付き合ってくれている彼が、だ。
「···どうしたんだい?モルモット君。ため息なんて君らしくないじゃないか。」
一抹の不安を覚えながら彼に尋ねる。万が一、私がしたことだったのならば····
最悪の展開が頭によぎる。契約解消だけは避けたい。彼は大事なモルモットであり、トレーナーだ。
「いや、気にしなくてもいいよ。大丈夫だから。」
やはり。彼はそう言うと思っていた。モルモット君はあまり自分のことを語らない。と言うよりも語ろうとしない。お陰で以前過労から来る貧血で倒れられたことがあった。
「····それは本当かい?トレーナー君。」
「····大丈夫だよ。ほら、実験に戻らないと。」
確認を取るもやはり『大丈夫』だと言う。トレーナー君の顔を改めて見ると、少し赤くなっている。恐らく、今日は早朝からの実験ではなかったため、夜遅くまで練習プランを練っていたのだろう。私のためにやってくれるのは嬉しいが、もう少し自分の体を労わってほしい。
「····やめよう。」
気付いたら声に出していた。トレーナー君はこちらを見ている。まるで、こう、うん。
····なんだろうか、この胸の高鳴りは。トレーナー君の、赤く紅潮した顔を見ていると、こう、何故か護りたい。いや、世話したくなってしまった。これが庇護欲というものだろうか?
「トレーナー君、君は今日は休みなさい。」
「え·····」
「ほら、特別にこの私が君の看病をしてあげよう!」
「····え?!」
トレーナー君が驚いて少し大きな声を出す。こちらを見ているトレーナー君に向けて高らかに宣言する。
「喜びたまえよ?私が直接君をお世話してあげるのだから。」
私はトレーナー君を促し、トレーナー寮へと向かった。
寮の部屋に着くとトレーナー君は立つ気力も危うかったのか、すぐに倒れ込んでしまう。体からは熱が出ている。やはり風邪か。仕方ないので、靴をぬがせ、スーツから部屋着に着替えさせて布団まで運んだ。
日頃から整理してあるトレーナー君の部屋。そんな綺麗な部屋の一角には積み重なったトレーナーノートが見える。彼がいつも書いているものだ。ほんとに、彼は優秀なトレーナーだとつくづく思う。
「····まあ、働きすぎでこうなるのも君らしいか。」
既に眠りに落ちている彼の体に布団をかけ、濡れタオルを額に乗せて様子を見よう。彼の横でノートPCを起動する。実験データの打ち込みを済ませよう。でも、その前に。
パシャッ
寝顔を撮る。スヤスヤと眠っている彼はとても可愛く見える。スマホの待ち受けにしておこう。恐らく、トレーナー君も見ないだろう。
おやすみ、トレーナー君。
最推しタキオンSSやっと書けた·····!
ちなみにですが、写真を撮った時にはまだトレーナー君の意識はありました。寝てません。ベタですが。