「トレーナーさんはさ、好きな人とかいるの?」
「ん?どうした急に」
今日の練習も終わり、菊花賞に向けた最終調整メニューを見直していたトレーナーのもとに、汗を流してきたネイチャが訪れたのが5分ほど前。
ここは、トレーナー室である。俺が担当しているウマ娘はネイチャしかいないので、出入りは自由にさせてるしなんなら私物も置いていいと言ってある。ネイチャはとあるチームの一員でもあるが、そのチームの練習ではなく、俺の練習メニューでやらせている。理由としては、チーム担当のトレーナーの負担削減と、ネイチャの希望だ。
「あー、いや。気になったと言いますか。」
「はは、ネイチャらしいな。」
ネイチャは頬を人差し指でポリポリとかきながら『たはは···』と笑うネイチャ。
「好きなのかはわからんが気になっている娘ならいるぞ」
「!!」
そんなネイチャに、正直に答えてみる。まあ、正直に言えば恋愛には疎いので、本当に好きかどうか分からないのだが。
「その娘のこと···どう、思ってるんです?」
少し顔を赤くしたネイチャが近づきながら聞いてくる。
「うーん···まあ、これからも見ていたい。って思うかな。」
正直な気持ちだ。今までも彼女のことは見てきた。話す機会も多くあり、他のウマ娘よりも仲がいい自信はある。
「そ、その娘と休みの日に遊ぶなら、どこがいいですか?」
ふむ、休みの日か。遊ぶと言っても、外出すれば本屋か神社にしか行かない俺が女の子と出かけるイメージが浮かばない。なので。
「うーん、一緒にどこかへ出掛けると言っても俺が本屋か神社しか行かないから·····家で一緒に本を読んだり喋っていたりしたいな。」
ほんとに、分からない。と言うよりも誰かと出かけること自体いつからかずっと機会がない。次の休みにでも誘って行くか。
「えーと···じゃあ、その娘と私ならどっちの方がそばにいて欲しいですか····?」
「え?」
何か、すごいことを聞かれた気がする。
「え、あ、やっぱなし!今のなしで!」
ネイチャは顔を真っ赤にしながら慌てて否定する。まあ、はっきりと聞き取ってしまったので答える。
「その娘も何も、気になってる娘はネイチャだよ?」
その一言を聞いたネイチャは動きを止める。机を間に挟んで向かい合っている状況で相手が動きを止めてしまった時、こちらも動きを止めてしまうのが俺の癖。そのためお互いに時が止まるというなんとも言えない微妙な時間を作ってしまった。
「ま、またまた〜、嘘でしょ?」
「ほんとだよ?」
この言葉がネイチャにトドメを刺したようで、ネイチャは顔を真っ赤にした状態でうずくまってしまった。
これが、寮から俺の家にネイチャが引っ越してくる前の出来事である。
この短編集ですが、いくつかの短編を繋げてみようと思い立ちました。
なので、このネイチャの話は続きを書くかもしれません。
続きを書いたらその話に何か印を置いておきます。お楽しみに。