My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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ちょっと難産だった十一話です。

今まで喋らせてたキャラがほぼ消えたため話を動かすのがすごい大変でした。


第11話:すでに誰かのヒーローなのだろう

 ハロー、クラウスさん。元気ですか?僕は元気です。

 僕が元の世界に帰ってから二週間が経過しました。そちらではどれくらい経過してるのでしょうか?

 

 こちらはこの二週間。色々とありました。あの後、行方不明者だった僕は保護、無事見つかったことが両親にも報告され、警察署で感動の再会を果たしました。ちょうど父さんも一時帰国しており、久しぶりの一家集合です。

 色々言いたいことはありましたが、両親の顔を見た瞬間ただただ抱き締め、「ごめん」「ただいま」としか言えませんでした。二人とも半年もいなくなっていた僕を心配していたのかやつれており、母さんに至っては丸かった体型がぽっちゃりくらいに戻ったかな?

 抱き締めてくる父さんは静かに、母さんは涙腺が決壊し、僕も釣られて泣いて……事故みたいなものとはいえ、いなくなって心配させた分は、これからたくさん親孝行して取り返していくよ。

 

 ちなみにこの日僕たちが原因で警察署の一部が水浸しになる事故が発生したとか。警察の皆様、申し訳ありません。

 

 いなくなっていた間、何をしていたのかも二人に話しました。

 こことは違う世界のニューヨークにいたこと。そこで個性が発現したこと(どういうものか話したけど血法との兼ね合いもあり、以降は血液操作の個性で誤魔化してもらうよう頼んだ)。師を持ち、修行をしてヒーロー活動をしていたこと。……四年半過ごした世界と、仲間とお別れをしてきたこと。

 ライブラのこと、世界の危機との戦い、師の修行といった危険性の高いものはぼかすか言わないようにしましたので安心してください。

 個性の発現に関しては二人とも大喜びで母さんも「今までごめんね」「よかったね」「これからはちゃんと支えていくからね」と抱き締めて大泣きしてました。

 ちなみに僕が19歳になってることに両親は大層驚いてました。……顔も身長もほとんど変わってないので気付かなかったらしいです。

 ……まだ、まだ成長期なので大丈夫なはず……!

 

 メディアに何故いなくなってたのか聞かれたりしますがなんとか設定を作って誤魔化しています。

 具体的には"転移系の個性事故でニューヨークへ飛ばされ、そこで出会ったヒーローに拾われるも、大きな事件に巻き込まれなんの因果か個性が発現。ヒーローを目指すために似た個性を持つ人を師に持ち、修行とヒーロー活動のお手伝いをしていた。それから半年後、修行を終えてこちらに帰って来た。家族に連絡を取れなかったのはヒーローや師匠が極度のアングラ系でメディアとの接触を嫌っており、電話一本でも足がつくから修行が終わるまで禁止されていた"という内容です。

 

 ……なんだこの胡散臭さ?でもニューヨーク(元紐育)に行ってたし修行とヒーロー活動(+世界の危機の対処)をしていたのは事実だから嘘は言ってない。

 そもそも正直に異世界の元ニューヨークでこちらとは桁が二つほど違う世界の危機と戦ってたなんて言って誰が信じるだろうか。律儀に話すべきことじゃないし世の中知らない方がいいことだってある。しばらくはこれで通していく予定です。

 

 学校にも先日復学しました。19歳で中学生ってどうなのかと思われますが、こちらでヒーローをやる以上ヒーロー科に進学して免許を取得するのが最短で効率がよかったんです。幸い容姿は昔と変わってないため誰も気づいていません。今だけは成長が止まっていたことに感謝してます。

 

 クラスメイトも心配してくれてたのか、話しかけてくることも少し増えました。帰国子女だから珍しいのもあるのでしょうけど。

 逆にかっちゃんは僕に関わることがなくなりました。気になりますが、話しかけてもなかなか取り合ってくれません。

 仕方がないので幼馴染みの二人に聞いたところ、ぼかされましたがどうやらワンチャンダイブ発言の後の失踪だったからそれが堪えた、とのこと。

 え?あの俺様の代名詞が服着て歌舞伎町を練り歩いてるような性格のかっちゃんがそんなことで?なんて口にしたら幼馴染み達にドン引きされました。ごめん、兄弟子のせいで口が悪くなったのは自覚しているけど根っこは変わってないから安心してほしい。

 ひとまずかっちゃんに関しては時間が解決してくれるかもしれないので一旦置いておきます。

 

 さて、そんな僕のこちらでの生活ですが、ちょっとしたイベントが起きてます。

 

 

 「君なら私の"力"を受け継ぐに値する。どうか受け取ってみないか!今なら私もついてくるぜ!」

 

 「自分をおまけみたいに扱わないでくださいオールマイト!?」

 

 

 何故かオールマイトに次代の象徴としてスカウトされていました。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 僕はその日、近場の海浜公園に来ていた。理由は単純。奉仕活動の一環だ。

 向こうにいた頃、僕は仕事や休みの合間にヒーロー活動のひとつとしてホームレス救済の奉仕活動に勤しんでいた。紐育(ニューヨーク)といえば煌めいている印象があるが、その裏でホームレスもかなりの数存在している。H・L(ヘルサレムズ・ロット)以前の時でもその数は七万とも八万とも言われ、その中に子供のホームレスも相当数いたらしい。

 特に大崩落後は混沌を極め、ホームレスの数も劇的に増えた。街から出られなくなり、職も失った者などが生き残るためにあらゆる手段に出ることもある。

 そんな彼らを支援し、犯罪を減らすべく活動している人がおり、そんな人のために僕もアレコレ手伝っていた。みんな元気にしてるだろうか。特にメイさんとピーターさんはあの街では貴重な善人だ。元気であってほしい。

 

 とまあ、そういうこともあり生活の一部といえるほど根付いてしまった奉仕活動を行うべくやれそうなものを探して見つけたのがこの海浜公園の掃除だ。

 この公園は海流のせいでゴミが漂着しやすく、それをいいことに不法投棄がまかり通ってしまっている。結果辺り一面ゴミだらけで、近くの住民も近付こうとしないほどだ。

 それほどの量を掃除するとなると力もそうだが身体の使い方やペース配分も考えなくてはならない。さらに言えば人が来ない分個性……もとい血法を使っても文句を言われず、修行にはもってこいだ。

 

 そうやってせっせと廃品を軽トラに載せては捨てに行く、という作業を行っていく。ちなみにトラックを運転してくれているのはまさかのかっちゃんのお父さんである。

 僕が失踪中、母さんを夫婦揃って支えてくれ、先日お礼に行ったついでにその事で頼んでみたら、暇なとき手伝ってくれると了承してくれた。

 「息子とヒーロー活動の訓練とかするのは夢だったんだけど、勝己は小さい頃から僕達に甘えてくれなかったからね。息子の友達に付き合うのも悪くないよ」とのこと。かっちゃん、君のお父さんはイイ人だね。もっと優しくしてあげようよ?

 

 そうして積んでは運んでもらいその間に積むものを吟味していき、一息入れたときだった。

 

 「やあ、精が出るね少年!これだけの廃品を掃除するなんて大変だろう。これ良かったら飲んでね!」

 

 「あ、ありがとうございます!いえ、奉仕活動もまた立派なヒーロー活動ですし、何より研鑽を積むのにもってこい……で……」

 

 後ろから声をかけられ、飲み物を手渡される。笑顔で受け取り話をしはじめて、誰が来たのか気付いた。

 鋼のような肉体、天をつくように立つV字の前髪、そこだけ違う作画。間違えようがない。

 

 「オールマイト!?」

 

 「そうだ少年!私が来た!!」

 

 No.1ヒーロー、僕の前に再び降臨である。

 前ほどの衝撃はないけれどまさかまた会うことになろうとは。あ、前のサイン転移の時落としちゃって無くしたんだ。もう一回もらわないと。

 

 「オールマイト!これにサインを…ヒュバッ…って早っ!あの速度を出してノートに摩擦の焦げ目がないってどういうこと!?」

 

 「HAHAHA、サインならいくらでも書いてあげるよ!……でもちょっと待って少年。今の見えたの?わりと本気の速度で書いたんだけど?」

 

 おかしいな、もしかしてかなり衰えた?と不安がるオールマイト。だ、大丈夫ですオールマイト。あの街で音速以上の世界を見慣れた僕がおかしいだけで、あなたはおかしくありません。

 まあそんなこと言えるわけもないから話を逸らして誤魔化さないと。

 

 「そ、それでオールマイト!僕になんのご用で!?」

 

 「おっとそうだった。いやね少年……君に謝罪と礼、訂正と提案を言いに来たのだ。……まずはすまなかった」

 

 そう言ってオールマイトは僕に頭を下げた。突然のNo.1の謝罪に僕は驚く。え?僕オールマイトに謝られることをされたっけ……?

 

 「半年前、私は君に心無いことを言った。あの時君に伝えた言葉は確かに本心だ。

 個性(ちから)を持たずにこの業界でヒーローをやることは出来ない、私とてこのような身体になってしまうほどの(ヴィラン)が存在するのだから。それにあの時の君は焦っている様子もあった。仮になれると言って、その結果悲惨な末路を辿る可能性も考えられた。それならば自分が悪者になってでも君にヒーローへの道を踏みとどまらせようとした」

 

 オールマイトの話を聞き、謝罪の理由を思い出す。確かにあの時、憧れの英雄に否定された僕は絶望した。

 あの後H・L(ヘルサレムズ・ロット)に飛ばされ紆余曲折を経て強くなったが、もしそうならなかったら、今なお現実に目を背け、怠惰の日々を過ごしているか、心壊れ腐っていただろう。そう考えると、あの世界に転移したのはある意味で僥倖だったかもしれない。

 ……そのせいでみんなに迷惑をかけたけど。

 

 「……だがその結果、君が行方不明になってしまったとき、私は心から後悔した。もしや心が折れ、自殺を図ってしまったのかと。この半年間、所謂自殺の名所などを廻り、色んな人やヒーローネットワークも使って君を探して……それでも見つかることなく時は過ぎた。あの時どれ程己の言葉を呪ったか、このニセ筋がと罵り続けたか……!

 

 そして先日、君の無事な姿を見たとき私は安堵した。だがそれ以上に君の成長に驚いたよ。この半年の間で君は劇的に強くなった。

 それだけじゃない。みんなが攻めあぐね、悔しがるなかで君だけがあの時、彼の顔を見て真っ先に動き出していた!あの時自分が情けなかった……!制限時間が過ぎ、無茶できないことを理由に動けなかった自分が!

 ……それと同時に嬉しくもあった……。あんな事を言ってもなお、君が腐らなかったことを。誰かを守るために力を振るった姿を見れたことに。だから私は礼も言いたい……ありがとう、力を得てなおヒーローを目指していてくれて。なにより生きていてくれて……!」

 

 言葉の節々から悔しさと不甲斐なさ、そして嬉しさが伝わってくる。オールマイトからすれば、ダイヤの原石だった僕の心を折ってしまったものだろう。実際は師匠の魔改造によって石炭からダイヤになったようなものだけど、それでもオールマイトからすれば自分の目は節穴だったと責めたのだろうとなんとなくわかる。

 彼の気持ちを汲めるかはわからないが、僕の答えを伝えよう。

 

 「オールマイト。礼はともかく謝罪はいらないです。確かに絶望はしました。でも力をつけた今ならわかります。ヒーローがどれだけ危険かを、あの時僕がどれだけ無力で無茶だったかを。

 仮にあの時なれると言われていたらそれを糧に目指したかもしれませんが、間違いなくどこかで腐っていたでしょう。今だからこそ言えることですが、あなたの取った選択はともかく、間違ったことは言ってなかったと納得しています。だからどうか頭をあげてください。

 それに僕の本質は今も昔も変わりません。誰かの笑顔を守るためにこの力を振るう。これだけは変わらないし変えさせない」

 

 「……ありがとう、君のその言葉に私は救われるよ……。そして今の君を、力を手に入れたにも関わらず傲らず、誰かのために振るった君に訂正させてほしい。君はヒーローになれると。

 ……いや、もしかすれば君は、すでに誰かのヒーローなのだろうな」

 

 そう言うオールマイトの声は決して大きな声ではなかったが、響くほど力強く、そして暖かかった。今彼の口から出た言葉は全て本心からの言葉だろう。

 ヒーローNo.1にも認められたって思うと少しこそばゆく、そして嬉しい。

 

 ……しかし今日の僕は驚いてばかりいるな。これ以上の驚きなんてそうそうないだろうけど驚き疲れてきたよ。

 

 「そしてそんな君ならば、私の"力"を受け継ぐに値すると、それを今確信した!」

 

 「………………ほへっ?」

 

 「HAHAHA!なんて顔してるんだい少年!提案だよ。ぶっちゃけこれが本題でね、

 

 君なら私の"力"を受け継ぐに値する。どうか受け取ってみないか!今なら私もついてくるぜ!」

 

 「自分をおまけみたいに扱わないでくださいオールマイト!?」

 

 どうやらまだまだ驚きそうです。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「ワンフォーオール?」

 

 「そう、私の持つ個性の名称さ。ずっと隠し続けてきた私の個性、それは聖火の如く引き継がれてきたものであり、また誰かに引き継がれていく個性さ。一人が力を培い、そしてその力を誰かに引き継ぎまた培い、また次へ引き継いでいく。そうして救いを求める声と義勇の心により紡がれてきた、謂わば力の結晶なのだ!」

 

 力を受け継ぐ個性……聞いたことがない。オールマイトの個性は世界七不思議に冠されるほど謎に満ちており、毎日毎夜議論が繰り返されるほどだ。ブーストだの超パワーだのわかりやすい推論もあれば、レベルアップだの強くてニューゲームだの異世界チートだのトンデモ推論まで立てられていたが、まさか"蓄えた力を次代に継がせる個性"だとは……。

 

 かつての僕だったらあり得ないと否定していただろう。個性とは自己を確立する要素でもあるのだ。自分の個性あっての自分、アイデンティティが他者に継がせれるとなるとどうしても自分の個性に疑問を持ってしまう。

 しかしあの街で超常に触れ続けて、何より僕自身がザップさんの属性を自分の身に適合させた事例なので、今となってはそういうのもあり得るかと気軽に思えてしまうが。

 

 「でもなんでまたそんなご大層なものを突然僕に?」

 

 「突然ではないさ、元々後継者は探していたからね。そして君になら渡してもいいと思えた。絶望してなお立ち上がり、心身ともに強くなった君ならね!」

 

 ……あ、まずい。それ以上はやめてくださいオールマイト。僕はそういうのに弱いんです。

 あっちにいた時もクラウスさんに純度100%の賛辞を送られては涙腺を刺激させられていたけど、こちらでも似たことをされるとは思わなかった……。

 

 まあしかし、君次第ではあるけどね。どうする少年?と返事を待つオールマイト。

 僕にここまで秘密をさらけ出してくれたんだ。出来れば応えたい。そして僕の中で決心は既についている。

 

 

 「さあ少年!この"力"、受け継いでくれるかね!」

 

 「お断りします」

 

 「即答ッ!?」

 

 

 あまりにもすっぱり断られたのがショックだったのかガハァッ!と吐血するオールマイト。その拍子に身体も萎むのであった。

 なんかごめんなさい、オールマイト。

 




【悲報】OFA、継承先不明。

【誤字報告】

zzzzさん。三六号さん。百面相さん。ハレウサギさん。

誤字報告ありがとうございました。最近チェックが甘いのか少しずつ誤字が増えてきてしまってますね…もう少しちゃんと確認せねば(`・ω・´;)

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