My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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TGS2021でガングレイヴの最新トレイラーが来たので第十三話です。
やっぱ内藤泰弘先生のデザインは…最高やな…!


第13話:歯食いしばれ

 廃品運搬を終えてみんなも帰り、辺りは少しずつ日が沈み暗くなり始めていた。

 昼はここまで喧騒が聞こえてきていたが、それも徐々に減り海浜公園は静けさに支配されていく。

 その静けさのなかでヒュンッヒュンッと空気を切り裂く音を幾度も鳴らし、間もなくドスンと音が鳴る。近くにあった廃品の冷蔵庫がバラバラに分断され、砂浜に倒れた。

 

 行っているのはもちろん僕だ。なにをしているかといえば鍛練兼廃品の整理だ。

 軽トラで運搬をするとなるとガソリン代も嵩むため、一度に多く積めるよう解体する必要がある。冷蔵庫だろうと廃車だろうと燃やせば楽なんだろうけどさすがに堂々と焼却するのはまずい。マナーも守ってこそのヒーローだ。そんなわけで右手に持った血刀でどんどん廃品を切ってバラして積み上げていく。

 斗流血法刃身の壱、焔丸。斗流血法の基本の型の一つでザップさんもこれを愛用しており、僕も割と気に入っている血法だ。

 重心を揺らさず正確に刃を降ろし一つ、また一つと継ぎ目を断ち廃品を分解していく。ちょっとした山が出来上がったころ、今日はこんなものでいいかと廃品整理を終わらせ別の鍛練に入る。

 今度は指から血糸を出し、近くの廃品にくっつけ、その上を歩く。簡単に言えば片方しか紐の結ばれてない綱渡りだ。血糸を出し続けその上を歩く。言葉にしたら簡単だが実際には相当きつい。

 なにせ出し続ける方の糸は支柱なし、集中力だけで固定していきながらその上を歩くのだ。進めば進むほど長さも伸びていき、その分集中力も必要で、気を抜くと解除されそのまま地面に落下してしまう。下は砂浜だから落ちてもダメージはないけど、だからって油断はしない。

 一歩、また一歩とゆっくりと進む。時には直角に曲げ、時には円を描き、ちょっとした地上絵のようなものになっていく。玉のような汗がぽたりと落ちてくるが気にしない。向こうではこれくらいの集中力を常に持って戦っていたのだ。

 

 そうして集中力に乱れが見え始めたころだった。血糸を触られる感覚に襲われたのだ。

 

 「えっ?ってうわっ!?」

 

 突然のことに驚き集中が途切れ、固定していた血糸は解除されそのまま落下する。受け身はしっかり取った。

 それよりも突然誰だ?ここに人が、それもこんな夕暮れに寄り付くことなんてないんだけど。もしかして偶然見つかり通報されて警察かヒーローが来ちゃったのか?なんてことを考え顔を上げた。そして思考が一瞬止まった。

 

 「…………へ?かっちゃん?」

 

 「あっ?」

 

 現れたのはまさかのかっちゃんだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 暗くなった時間だというのに海浜公園にかっちゃんが来た。ジャージ姿のところを見るとジョギングでもしていたのだろうか?それでもここまで相当距離があるのだけれど。もしかしてかっちゃん毎日これだけ走ってるのか?僕も明日からここまで走ってこようかな。

 思考が脱線し始めたころ、かっちゃんが無言で僕の隣に座った。当たってこないかっちゃんをこんな近くで見るなんていつ以来だろう……。とりあえずこのままじゃ何も始まらないし、話をしてみよう。

 

 「え~っと、こんばんはかっちゃん。どうしてここに?」

 

 「クソジジイから聞いた」

 

 「ふ、ふ~ん?」

 

 …………

 

 「あ~……、ヘドロ(ヴィラン)の怪我はもう大丈夫?」

 

 「してねえわ」

 

 「な、なんだそうなのか。よかった……」

 

 ………………

 

 「そ、そういえば雄英だけどいなかった分の出席日数とかはテストの評価がよかったから後は内申次第で受けれるかもしれないって言われたんだ!」

 

 「そうかよ」

 

 「う、うん……」

 

 ……………………

 

 う~ん、気まずい!!

 突然現れておいてなんにもアクションを仕掛けてこないとかこれどうすればいいの!?

 かっちゃんに対してどう切り出したらいいかまだわからないし、反応も薄いし、そもそも苦手意識がまだ残ってるし、内容もまだ固まらないしであーもう兄弟子(寂しん坊)とはまた違ったベクトルで面倒臭い!!

 最近どうも関わるのを避けてる節があるし、なのになんで突然向こうから接触を?いや、それを考えるのは後だ。今は目の前の状況をどうにかしないと……。でもどう切り出したらいいかわからないし、ああもう堂々巡りだよ。

 

 「おい」

 

 「っ!なな、なにかな!?」

 

 「さっきの指からなんか出してたの、あれがてめえの個性か」

 

 「え?………あ、うん。血っぽ……血液操作の個性なんだ。」

 

 「そうか」

 

 どうすればいいかわからず頭を悩ましてたら、嬉しいことに向こうから話題を振ってくれた。せっかくだし血法でそこらのゴミを拾ってお手玉でもしてアピールしておく。

 

 「む、向こうでちょっと死にかけるような事件に巻き込まれちゃってね!その時人助けしていてこう、絶対助ける!って気持ちになったら発現しちゃって。まるで少年漫画みたいな展開だよね。ハハ、ハハハ!」

 

 「おい」

 

 「っな、なぁに!」

 

 「ちょっと戦えや」

 

 「へ?ってうひゃあっ!?」

 

 必死の話題作りをしていたらかっちゃんから模擬戦と称して不意打ちの裏拳が見舞われた。咄嗟に反応して攻撃を躱したけど、どうしてこうなった?ひとまず距離を取らないと。

 

 「いや待ってかっちゃん!なんで?いきなり裏拳なんで!?しかも承諾前に攻撃してるし!」

 

 「ちっ避けたか。いいから今すぐ戦えデク!」

 

 「いやだからなんで!?」

 

 問答無用!?最近のかっちゃんは様子がおかしかったけど今日は輪にかけておかしいぞ。血の気が多いのは昔から変わらないけど手を出す事なんて中学に入ってからはなくなった。ヒーローを目指すにあたって暴力沙汰を起こすのはご法度だ、それはかっちゃんもよくわかってるはずだ。

 だというのに今かっちゃんは本気で殴りかかってきた。何が起きてる?まさかヘドロ(ヴィラン)の乗っ取りが今になって完了したとか?それとも別の個性の影響を偶然受けた?

 

 「来ねえんだったらこっちから行くぞ!」

 

 そう言うや上のジャージを脱いで顔に投げつけてくるかっちゃん。ジャージが顔に覆い被さり、視界が遮られたところに振るわれる音がする。が、それも少し身を引き避ける。

 大振りの右、昔からのかっちゃんの癖だ。初手とここぞという時、威力が高いこれを使ってくる。そうとわかっている以上油断してても避けるのは容易い。

 

 だけど攻撃はそこで終わらない。引いて避けられたと悟った瞬間、覆い被さったジャージを掴み、そのまま勢いをつけ振りきる。頭に引っかけたジャージに引っ張られバランスを崩そうとしてきたのだ。これは踏ん張るよりも流した方がいいと即座に判断した僕は、勢いに乗ってそのまま飛び、即座に受け身を取って隙を潰す。

 

 さすがと言うべきか。普通避けられたなら取り乱して攻めが緩むものだけど、かっちゃんは避けられた場合の手も瞬時に打ってきた。ここが凡人と才人との違いだろう。

 それでも向こうでの戦闘と比べたら圧倒的に楽だ。スイッチも入りもう油断もしない。だけどなんでこんなことを?

 

 「かっちゃん、模擬戦ならいくらでも付き合うけどいきなり仕掛けてきた理由だけでも教えてくれないかな?」

 

 「知りたきゃ俺をぶっ殺してみろや!」

 

 ぶっ殺すとか物騒だな!

 ……なんて思ったけど僕も師匠との模擬戦では殺意満々で襲ったり襲われたりしたから人のこと言えなかった。ああっと駄目だ駄目だ、思考を切り替えよう。うっかり修行を思い出すとまた震えが止まらなくなる。

 

 「考え事たぁ余裕だなおい!」

 

 「この瞬間だけは考えたくなかった!」

 

 かっちゃんが叫んで突撃してくる。個性なし、足元が砂浜だというのにかなり早い。

 今度はワンツーから連打を仕掛けてくるが左腕を盾に一つ一つしっかりと弾いていく。速度に緩急をつけてから素早く左ストレートを打ってきたがそれも弾く。

 弾かれるのは織り込み済みなのか、そのまま勢いをつけハイキックで攻撃をしてくる、がそれも左腕で防ぐ。

 

 「クソが……!さっきから全部左腕で受け止めやがって。俺なんて左だけで十分ってか……?ナメプしてんじゃねえぞコラッ!」

 

 いや、別に舐めているわけじゃない。これはクラウスさんから習った技術だ。

 向こうでは相手を血法で無力化するなり切り捨てるなりなんでもありだったけど、こっちではそうはいかない。こっちで血法を使おうものなら無断個性使用で即警察やヒーローのお世話になってしまう。個性を使うような事態に遭遇しなければいいんだけどそうは言っても(ヴィラン)は神出鬼没だ。ふとした時に目の前にいて人質に取られた、なんてこともあるかもしれない。

 

 というか先日そうなっていつもの癖で(ヴィラン)を殴り倒してしまい戦ってたデステゴロにまた怒られた。

 

 そんなわけで帰還後個性(血法)の使用が制限されてしまうことを見越してクラウスさん達に頼んで戦闘技術を仕込んでもらったというわけだ。他にもスティーブンさんの蹴術やK・Kさんのガン=カタなんかも指導してもらったり。

 ……その結果器用貧乏になりつつあることに危機感を感じている。やっぱり二兎を追うべきではないですね師匠。これを知られたら一体どんな凄惨なお仕置きが待っているやら……。やめてください魔獣が跋扈する森で簀巻きにして首から下を埋めて放置されるのはもう嫌です師匠。

 

 「また考え事かよ……もう俺なんて眼中にないってか……なぁッ!?」

 

 蹴り上げがくる、避ける。そのままかかと落としに変えて振り下ろす。受け止める。受け止めた足を軸に飛び蹴りを放とうとしたがバランスを崩して転倒するかっちゃん。だけど受け身を取りまたすぐに迫ってくる。

 ……おかしい、かっちゃんはすぐ怒るけど怒れば逆に冷静になるタイプだ。実際に最初はその攻撃が次の布石になるよう計算されていた。だというのにミスをした?

 

 拳がくる、避ける。蹴りがくる、いなす。掴もうとする、弾く。突進してくる、勢いを利用して投げる。

 今度は受け身を取れず背中から倒れ込む。砂浜だったからダメージが少ないだろうけど心配になって駆け寄った。

 

 「大丈夫かっちゃん?本当にどうして―――」

 

 「俺を心配するんじゃねえ!!!」

 

 「!?」

 

 駆けだした足が止まる。かっちゃんは少しふらつきながらも立ち上がり、すごい形相で睨みつけてきた。

 だけどその形相は怒りというよりも、焦りが強いように感じた。

 

 「なあデク……力をつけて強くなってよお……、今どんな気持ちだおい……?」

 

 かっちゃんの問いかけに少し困惑する。強くなった気持ち……それはまあ嬉しい、というのはある。

 誰かを守れる力を得た。ヒーローを目指す僕としては嬉しい限りだ。だけど僕はまだまだ弱いと思っている。あちらの世界にも僕なんて足元にも及ばないほどの存在がごまんといたし、こっちの世界でも圧倒的力を持つヒーローや(ヴィラン)も存在する。今のオールマイトでも短期戦なら分が悪い。

 だから僕は師の言葉通り慢心せずに研鑽を積む。強くなり、一人でも多くの人を救えるように。

 

 「俺は今必死でテメエに殴りかかってるっつうのにひとつもまともに当たる気がしねえ……。こっちは疲れてきたってのにそっちは息一つ切らしてねえ……。テメエはもうその気になれば俺なんて軽くひねり潰せるほど強くなっただろうが……」

 

 かっちゃんが再び攻撃を仕掛けてくる、だけどその攻撃に最初の精細さはない。まるでチンピラの喧嘩のそれだ。

 

 「本当にどうしたんだよ!?一度落ち着いて話し合おうよ!」

 

 「もうてめえは俺よりも上なんだぞ……。だってのになんで……クソ……!なんで変わらず優しい目で俺を見るんだよ……!」

 

 「優しい……目?」

 

 「なんでそんな……憎みも見下しも憐れもしねえで……昔からずっと!今も!優しい目で!心配する目で俺を見やがるんだよ!!」

 

 「!?」

 

 「なんで憎まねえ!馬鹿にされて悔しくなかったのかよ!なんで見下さねえ!苛められて恨まなかったのかよ!?俺よりも強くなったんだぞ!やり返せよ!?もう俺なんて敵じゃねえ、見下してた奴に追い抜かれて悔しいかって!積年の恨みを晴らしてやるって、今度はお前が怯える番だって!(あざけ)ろよ!罵れよ!!じゃねぇと……今も一人でずっとビビってる俺が馬鹿みてえじゃねえか!惨めじゃねえか!情けねえじゃねえか!!俺が!!俺を裁けねえじゃねえか!!?」

 

 今にも泣きそうな顔でずっとため込んでいただろう言葉を吐露していくかっちゃん。

 

 ……何故暴走しているのか、ちょっとわかった気がする。

 多分かっちゃんは罰せられることを望んでいるんだ。

 幼馴染の二人から聞いたワンチャンダイブ発言からの失踪。あれのせいでもしかしたらこの半年間、後悔に苛まれていたのかもしれない。

 しかし僕は無事に帰ってきた、それもかっちゃんどころかヒーローでも勝てる相手は少ないくらいに強くなって。

 いじめていた相手がそうなったのだ、今度は自分が僕にやっていたようないじめを……それもずっとやられるかも……いや、やってくれるかもしれないと、そう考えただろう。

 

 しかしふたを開けてみたらどうだ?僕がかっちゃんを害そうとすることはなかった。むしろ避ける自分を気遣ってくる。自尊心の強いかっちゃんからしたらお情けをかけられてるようなものだ。

 ……そう考えると僕は、知らず知らずのうちに善意の刃で彼を傷つけていたのかもしれない。クラウスさん、みんな。心を救うというのは、命を救うことの何倍も難しいです。

 

 「それとも俺なんてもうモブと一緒だってのか?だよなあ、そんな力手に入れたら俺なんてどうでもよくなるよなあ!……なあおい、何とか言えよデクぅッ!!!」

 

 技術もなにもない、がむしゃらに殴りかかってくる。もはやかっちゃんにいつもの傲岸不遜な面影はなかった。あるのはただ、裁かれたいと望む罪人のような顔だった

 

 ゴッ!!と、拳が顔に入る。当たると思っていなかったのか驚いた表情を晒すかっちゃん。

 ああクソ、痛い。相当疲れているはずなのにまだこんなに力が残っているのか。でも、かっちゃんの心を苛み続けた痛みはこんなもんじゃないはずだ。

 かっちゃんのその痛みは自業自得だ、因果応報だ。それでも彼は十分苦しんだ。僕がいなくなってからずっと、心を疲弊させ続けて、そして帰って来てからも僕は責めることなく接してさらに傷つけた。

 だからこの痛みは、誤った僕への戒めだ。彼を苛んだ僕への。

 

 「……かっちゃん、何故そこまで君が追い詰められているのか、まだなんとなくでしかわからない。でも僕の優しさがかっちゃんを追い込んでしまっていたのは理解出来た。

 それでも僕は君を謗ることも見下すことも憐れむこともしない。僕はそれをやれるほどまだ強くないから。

 だけど僕がかっちゃんを裁くことで納得してくれるなら僕もそれに応えるよ。だから……

 

 積年の恨みを思いっきり込めて、利子付きで返してやるから歯食いしばれかっちゃん」

 

 「!?」

 

 本能が察したのか、僕の言葉を聞いたかっちゃんはすぐさま歯を食いしばり身を固める。

 次の瞬間、僕の拳が一瞬音を置いていき、かっちゃんの腹部にささり、そのまま吹き飛ばしたのだった。

 

 「ガッ――――――ッ!!!」

 

 ドフンッ!と腹を貫く音が遅れて鳴り、砂浜を何メートルも先まで転げまわっていったかっちゃんは、そのまま意識を手放した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「ぅう……あ……どこだ……ここは?」

 

 「え、もう起きたの?一時間は気を失うくらいには強く殴ったんだけど。さすがにそのタフネスはちょっと引くよ?」

 

 「……目覚めて早々にくだらねえ罵詈飛ばしてんじゃねえ。……どんくらい気絶してた」

 

 「えっと、まだ十分も経ってないね」

 

 かっちゃんが気絶してから十分弱、ひとまず適当な廃材の上に横にしたけど、まさかこうも早く覚醒するとは……。とんだ体力お化けだよ。

 そうか、と零したかっちゃんの顔は、いつもの不遜な表情でもなく、悲壮に満ちた顔でもなく、凪いだような表情だった。あれだけ心に溜まってたものを吐き出したんだ。それでも少しだけなのはまだ言うことがあるからだろう。

 

 「……おいデク」

 

 「なに?かっちゃん」

 

 「……悪かった」

 

 「………………………………………はぁっ!!?

 え、待って?今何て?え?かっちゃんが……僕に謝、罪!?

 え、何それ?今日はエイプリルフール?それともバガン島あたり発の新しい行事が日本にもやってきた?いやむしろ罰ゲームかなにかの方が可能性が……?まさかDr.ボゾノスが脳に直接干渉する電波でもまた開発した!?いや、なんにしてもあのゲス煮込み定食特盛りなかっちゃんが謝るとか歴史的快挙だよ!!?」

 

 「言いたい放題言ってんじゃねえマジで殺すぞクソが!!!……俺だって色々あったんだよ……」

 

 「あ、うん。ゴメン」

 

 かっちゃんの謝罪という類を見ない事態に、驚きを隠せず盛大に毒を吐いたけど許してほしい。それだけの衝撃だったんです。うっかりの暴言に関してはこちらも謝る。しかし色々あった、か。

 

 「ねえかっちゃん。僕がいなかった間に、君にいったい何があったの?僕の失踪もきっかけだろうけど、それでも君がそこまで思い詰めるようなことなんだ、並大抵のことじゃないはずだ」

 

 理由を聞いてみると、バツの悪そうな顔をして目をそらすかっちゃん。それから眉間にしわを寄せ瞑目して、しばらくしてから口を開いた。

 

 「……わーったよ。こっちはてめえに負けたんだ。これ以上駄々こねるなんてみみっちいこと出来るかよ……。だけどお前もなにがあったんか話せや」

 

 僕の話か……。あまり話しちゃいけないのはわかってるが、かっちゃんも嫌な記憶を思い出させるのだ。対価として言うのもやぶさかではないと思うが。しかしうーむ……。

 仕方がない。今のかっちゃんなら言いふらすことはないだろうし、僕は隠すところは隠していいならと言ったらそれでいいと言ってくれた。そうしてかっちゃんは、僕がいなくなってからの半年間を話し出すのだった。

 

 「……泣かせちまったんだよ」

 

 「え?誰を?」

 

 「……引子おばさんをだよ」

 

 「…………………Oh……」

 

 かっちゃんの口から出てきた爆弾発言に、僕は天を仰ぐのだった。

 

 

 




かっちゃんいじめるのたのしい(暗黒微笑)

余談ですがバガン島という島は存在しません。
パガン島なら存在します。どうでもいいですね。

【誤字報告】

めそひげさん。 クオーレっとさん。 Skazka Priskazkaさん。

誤字報告ありがとうございました。

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