My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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モンハンライズを買いに行ったのにスイッチ版ディアブロ3を買っていたので第十七話です。

投稿が遅れてるのはいつもの最終チェックで本文が気に入らなくて書き直しまくってるからです。決してひたすらディアブロ3をやってたわけじゃありません。ほんとです。


第17話:どこの蛮族だよ

 『どうしたお前らァッ!実戦じゃあカウントなんざねえんだ走れ走れぇー!既に賽は投げられてんぞー!』

 

 後ろからプレゼントマイクの声が聞こえてくる。実技試験がスタートしたのだ。

 合図もなにもない、いじわるな開始に受験生が驚き戸惑っているが納得できるやり口でもある。

 

 突発的に起きる犯罪に合図なんてあるはずもない。仮にあるならそれは完全に後手に回る案件だ。あっちにいた頃、上がった合図がやられた瞬間万単位の死者を覚悟しなくてはいけない大儀式完了の合図だった、なんてこともあった。

 だからライブラのみんなは普段から些細な変化に注視し、いち早く情報を集め危機に繋がる証拠を掴んでは先手を取る。全ては世界の均衡を守るために。

 

 閑話休題。ともかく試験の開始は突然の対応力を問われる最初の関門でもあったが、僕はそのあたり慣れきってるから問題ない。だけど眼鏡の人は違い、他の受験生共々走り出している。出遅れの原因になったことに心のなかで謝罪するが、ここからはみんな競争相手だ。場合によっては協力も惜しまないけど合格は決して譲らない。足に力を込め加速した。

 

 後続たちをさらに引き離し早速と言わんばかりに索敵を開始する。

 

 CRAAASH!!!

 

 しかしその必要はなかった。突然横の壁が破壊され、1Pの仮想(ヴィラン)が現れた!

 

 「標的補足、ブッ殺ス!!」

 

 「口悪っ!?でも遅い!」

 

 こちらへ向き両手を振り上げるが下ろされる前に急接近、頭部を蹴り抜き機能を停止させる。まずは1P、この調子で稼いでいこう。

 最初の仮想(ヴィラン)を文字通り一蹴して走り出すが、そこに間髪入れず続々と現れた。

 

 「ヒャッハー!新鮮ナ人間共ダー!」

 

 「頭ネジ切ッテオモチャニシテヤル!」

 

 「オレ様オ前マルカジリ!」

 

 「ヤロオオオオブッ殺シテヤアアアア!!」

 

 「あんたたちどこの蛮族だよ!?」

 

 向こうでも通用する先進技術だというのに思考が蛮族とか遊びすぎじゃないかな雄英!?しかも3P(ヴィラン)も何体も混ざっていて、一人に波状攻撃を仕掛けてくるという性格の悪さまで出ている。……まあ僕だけ前に出ているのも悪いんだけど。

 だけど動きは素直だ。試験用というのもあって威圧感があるだけで大したことはない。

 

 斗流血法・刃身の弐(ひきつぼしりゅうけっぽうじんしん に)

 

 空斬糸(くうざんし)!!」

 

 両手から血糸を吐き出し、仮想(ヴィラン)を次々と拘束していく。必死にもがいて抜けようとするがその前に一体ずつ破壊していく。さすがに3Pとなると少し硬いが、一撃で倒す分に支障はない。

 3P(ヴィラン)が残り一匹だけになったところで後ろを向く。後続がドンドンやってくる中で最初にやってきたのがさっきの眼鏡の人だ。足から煙を上げて走ってくるところを見ると加速系の個性持ちかな?

 ちょうどいいからさっきのお詫びにこいつを譲ろう。眼鏡の人にこれあげると3P(ヴィラン)を指差し足早に去っていく。

 

 それからも索敵しながら走り続け、次々と仮想(ヴィラン)を探し出しては時には正面から、時には隙を突いたりと色んな手段で倒していく。試験中ではあるが様々な固さの(ヴィラン)がいて咄嗟の手加減といった鍛練にはもってこいだ。

 たまに危ない学生を見かけては血糸を飛ばして(ヴィラン)の行動を阻害し、助けていく。すまねえ!、ありがとー!、メルシィ☆と感謝の声を聞きつつ飛び回り索敵を続ける。

 

 そうして現れる(ヴィラン)を破壊したり拘束したりとポイントを稼ぎ、残り時間が5分を切ったその時だった。

 

 THOOOOM!!!

 

 今まで隠れていた0P(ヴィラン)がついに姿を現した。

 ……現したのだけどデカいな!?情報がなかったから何がきてもいいように警戒はしてたけどさすがにこのサイズは驚く。パッと見10階建ての建物くらいか?あの街(H・L)でもあまり見かけない大きさだ。

 倒さなくていいお邪魔キャラか。確かにこんなのを相手に戦えって言われても普通なら無理だ。他の受験生も我先にと逃げ出している。そしてその判断は正しい。

 三十六計逃げるに如かずとあるように、手に負えないと判断したならばとっとと逃げるのが最善であることも多い。立て直すなり他の(ヴィラン)を相手する方が得策だ。

 だけどそうはいかない。逃げている他の受験生に仮想(ヴィラン)が好機と襲いだしている。浮き足立ってるところに襲ってきたため奇襲に近い形になってしまい、数の暴力に苦戦を強いられている。

 

 「みんな、逃げるなら何人かで固まって散らばって!一塊になっても危ないけど、バラバラに逃げると仮想(ヴィラン)の的になっちゃうよ!それと出来れば何人か避難誘導手伝って!」

 

 「いや、まずは君も逃げようよ!?」

 

 「ちくしょう、こっちは瓦礫で塞がっちまった!」

 

 「まずいよ!仮想(ヴィラン)が集まってきてる!このままじゃウチらも危ない!」

 

 「あっぶね!瓦礫が飛んできたぞ!?」

 

 声を上げて避難誘導をするが、あちこちで混乱が起きてしまって上手くいかない。しかも0P(ヴィラン)が現れてから(ヴィラン)も固まって動くようなってるし、このままじゃ怪我人続出だ。

 

 「静まりたまえー!雄英を目指す者としてこの程度で慌てていいのか!彼の言うように数人で固まって避難するんだ!それなら他の(ヴィラン)の対処もできるはずだ!」

 

 突然大きな声が隣から聞こえてきた。振り向くと眼鏡の人が機敏な動きで避難誘導していた。

 

 「眼鏡の人!」

 

 「飯田天哉だ!避難誘導なら心得ている、俺も手伝おう!さっきのポイントの礼だ!」

 

 「あれお詫びのつもりだったんだけどな……まあいいや、ありがとう!僕は緑谷出久!」

 

 ありがたいことに眼鏡の人―――飯田君が手を貸してくれた。的確に避難誘導を行う姿からして、そういう経験があるのだろうか?もしかしたら家族に警察かヒーローがいるのかも。

 そうして呼び掛けをしていくうちに周囲も落ち着き仮想(ヴィラン)を倒して避難していく。あたりに人がいなくなったしいい加減アレをどうにかしようとした時だった。

 

 「いったぁ……」

 

 かすかに聞こえた声に反応する。今の声はどこから?急いで辺りを見る。

 すると0P(ヴィラン)の足元に人影を見つけた。そこには一人の少女が、麗日さんがいた。

 

 苦しそうな顔を見て思考が加速する。何故あそこに?足に瓦礫が、動けない?怪我をした?いつからいた?暴れた時からか?ずっとあそこに取り残されている?

 0P(ヴィラン)がこちらへ向かって歩き出す。足元にはまだ彼女がいるのにというのに。

 このままじゃ彼女が危ない―――そう判断した瞬間、一も二もなく走り出した。

 

 「待つんだ緑谷君!危ないぞ!?」

 

 後ろで飯田君が声を張り上げるが気にせず走る。こんなこと茶飯事だし、それより目の前の彼女だ。

 わかっている、これは試験だ。試験中に死者が出るなんてまずない。ましてやここは雄英だ。危機管理には細心の注意を払っているだろう。

 それでも僕は助けるために走り出す。この世に絶対なんてないのだ。もしかしたら大怪我に発展するかもしれないし事故死する可能性も否定できない。なにより……あんな辛そうな、救けを求める顔を見て、救けない理由がない!

 

 僕は走る。

 少し説明になるがこちらに帰ってきてからというもの、あちらでの超常戦闘を僕は行っていない。

 音速で攻撃を放つ、ナノ単位の反射神経で攻撃を捌くといった超々人の動きが多々行われ、僕も例に漏れず、あの世界で師匠のしごきや血界の眷属(ブラッドブリード)といった超々以上の生物を相手に奮闘していた。しかしそれはこちらの世界に取って異常すぎる力だ。そんな力で戦闘しようものならあっという間に話題になってすぐに危険視されてしまう。だから僕は特定の条件下以外は力を縛っている。

 

 その条件のひとつは「他者の生命に危機が迫ったとき」つまり今の麗日さんを助けるための状況だ。

 

 頭の中でスイッチを切り替える。その瞬間僕の心持ちは、あちら(H・L時)へと切り替わった。一歩の踏み込みで何mもの距離を走り抜ける。瞬く間に距離が縮んでいき麗日さんの下にたどり着いた。

 

 「大丈夫麗日さん!?救けに来たよ!」

 

 「えっ……緑谷君!?なんで来たん、あんなおっきいのがおるのに危ないよ!?」

 

 「君の救けを求めている顔を見て動かないヒーローなんていないよ!瓦礫をどかすから待って!」

 

 麗日さんを挟む瓦礫をどかし、かかえて離脱する。横抱きされたのに慌ててるが今は避難優先なんで我慢してください。

 飯田君のところまで戻り麗日さんと一緒に出来るだけ離れるよう促すと、迫り来る0P(ヴィラン)に振り返った。目標は大型ロボット。狙うは無力化じゃなく破壊。これ以上被害を増やす前に完膚なきまでに斃す!

 

 斗流血法・刃身の壱(ひきつぼしりゅうけっぽうじんしん いち)

 

 焔丸(ほむらまる)!!」

 

 その身から血を繰り出し刀を形作りだす。出来上がった一本の血刀を構え0P(ヴィラン)へと向かった。こちらへ向かってくる僕に脅すように振り上げる腕を無視し速度をあげる。

 まずは動きを止めるべくその脚を切る。どんなに太かろうと関係ない、断つ!

 一気に肉薄し一閃。斬ッ!と音が鳴った次の瞬間0P(ヴィラン)の脚部は泣き別れした。

 

 斗流血法、大蛇薙。相手に瞬時に接近し居合いから斬撃を浴びせる必殺技だ。その威力は凄まじく、神性存在すらバラバラに切り裂くことも出来る。

 

 脚を失い倒れだす0P(ヴィラン)。腕で支えようとするが、それを見逃すはずもなく身体を足場に登り肩関節部へ接近、腕を切り落としていく。そうして四肢を失った0P(ヴィラン)は俯せに倒れる。これで奴が自力で動くことはもうない。

 

 仕上げだ。身体をしならせ血刀を勢いよく投擲。小さく風を切り裂き、弾丸のように飛ぶ血刀は0P(ヴィラン)の体内に吸い込まれていく。

 ガシャンッ!と機械の身体にぶつかりなお中を突き進む、そうして半ばに埋まる形で刀はめり込んだ。しかしこれでいい。貫通しなかったことに意味がある。

 

 0P(ヴィラン)に刺さった刀から糸が伸びている。それは僕の指へと繋がっている。

 

 斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう)

 

 そして僕の手に持っているのはジッポライター。

 それに火を付けると血糸に引火、導火線の役割を果たし0P(ヴィラン)へ向かって火が走りだした。

 

 「―――カグツチ―――」

 

 くらえお邪魔ロボット。これが師が、人類の頂点が研鑽の果てに編み出した極致の一つだ。

 こっちではお前が初めてくらう相手だ。冥途の土産として持って逝け。

 

 

 七獄(しちごく)!!」

 

 

 直後、ドッゴォオオオオオッ!!!と0P(ヴィラン)を中心に炎が燃え上がる。もはや災害ともいえるそれは外殻を焼き溶かし、内部も焦がしては火花を散らし、エラーを吐く電子音が時折聞こえてくるのみとなる。

 最後に炎が集束し爆発、大きな爆音が会場内に鳴り響きその巨体を吹き飛ばした。

 技を解かれ炎が霧散すると、空から何かが降ってくる。それはもはや原型を留めていないほどグズグズに溶解し黒ずんだ0P(ヴィラン)の残骸だった。

 

 

 

 ……だったのだがちょっと、いやかなりまずい。吹き飛んだ軌道が悪かったのか戦場とは別方向に落下している。試験会場だから一般市民はいないがそれでも散らばった受験生がいる可能性を考慮すると大変危ない。第一街の破壊行為はヒーロー的に絶対にNGだ。マウント・レディ?彼女のあれは持ちネタだから……なんて余計なこと考えてる場合じゃない!

 大急ぎで血糸を吐き出し、降ってくる0P(ヴィラン)に巻き付ける。全身の筋肉を総動員して必死に引っ張り必死に抵抗するが、質量差がありすぎて修正が効かない。

 

 「あ、これ終わった……」

 

 諦観しそんなことを呟いたその時、突然0P(ヴィラン)の残骸が軽くなった。何故?と見上げるとなんと0P(ヴィラン)の側に麗日さんがいた。

 朝のことを思い出す。麗日さんはモノを浮かせる個性持ちだ。きっとそれで重さを取り払ったのだろう。だけどどうやら許容量があるのか、どんどん顔色が悪くなっていく。

 僕は急いで引っ張り、0P(ヴィラン)を残骸を元の位置に引っ張り飛ばす。それと同時に限界だったのか重さが戻った。

 ズウゥゥン……!ガシャン、ドシャッと残骸が重さを取り戻し降ってくるが軌道修正に成功したため無事元の位置に落下した。

 だけどそれと同時に麗日さんも降ってくる。

 

 「避難間に合ってない!?危ない!!」

 

 急いで走りギリギリのところで飛び込み、抱きかかえて受け身を取る。な、なんとか救助に間に合った……!

 救けて救けられて、かなりドタバタした試験だ……。まだ終わってないから油断も出来ないけど、今は麗日さんだ。顔色も悪いし、個性の副作用か?

 

 「麗日さん大丈夫?顔色がかなり悪いよ?」

 

 「ぅ……は……」

 

 「は……?」

 

 「はきぞ……うぉえぇぇぇ……」

 

 

 

 「」

 

 その言葉と同時に彼女は吐き出した。僕の上で。

 ……ああそっかー、麗日さんの個性の副作用は吐き気かー。それも多分重度の車酔いのようなものかなー。副作用の重さは数に比例するのか物体に比例するのか、きっと後者だろうなー。許容量は対象によってやっぱり差があるのかな?その辺も気になるなー。

 ―――なんて死んだ魚の目で分析していく。

 

 ベストとシャツが悲惨なことになったことを嘆くべきか、上着だけで済んだことにほっとするべきか、どちらにしても僕はそっと彼女を降ろし、背中をさする。死んだ魚の目で。

 

 『終―了―――!!』

 

 「…………Oh……」

 

 そうこうしているうちに、試験終了の合図が響いたのだった。

 0P(ヴィラン)がどうなったのか確認しに戻ってきた受験生が僕らの惨状を目の当たりにし、うわあ……と同情の視線を向けてくる。見ている暇があったら誰か雄英の人を呼んで来てよ……。

 

 ……今回の戦犯はあの0P(ヴィラン)だな。いつか製作者に文句言ってやる。

 逆恨み?自業自得?……わかってます。でもこのやるせない気持ちどこかにぶつけさせてください……。




この小説吐く頻度高くない?
戦闘描写は書いてて楽しいけど動きの表現が難しいです。

【誤字報告】

クオーレっとさん。荒魂マサカドさん。

誤字報告ありがとうございました。

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