My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
去年の今頃に血界戦線で何か書きたいなーと呟いた以外ほぼノーヒントでたどり着いたってどういうことだよ…!
今回書き溜めチェック時3500字くらいでこれならすぐに更新できるかなーと思ったら3000字以上加筆していて更新がまた遅れました。書き溜めとは一体…。
あれからリカバリーガールなる看護系ヒーローが駆けつけてくれ、麗日さんの個性酔いは無事収まった。僕に関しても学校側が受験生へシャワー室の使用を許可しており無事
尊厳にまみれて死んだ魚の目でシャワー室へ向かって歩く姿にあちこちでドンマイと呟かれていたけど聞かなかったことにする。
汚れを落とし着替え終わった後、服を汚したことで麗日さんが平謝りしてきたが、あれは事故だし仕方がないことだから大丈夫だよと返した。死んだ魚の目で。
さすがに悪い、いやいや大丈夫だよと何度か繰り返した後私が責任もって洗って返すから!と麗らかじゃない圧に押し負け、麗日さん側でクリーニングに出してもらうことで落ち着き、その過程で連絡先も教えてもらった。レオさん、K・Kさん。こっちに帰ってきて僕の携帯に初めて同年の女の子の連絡先が入りました。いや、僕の方が4つ年上だけど。
こうして締まらない結果だけど、僕の受験は終わったのだった。
「……お前なんでそんなフローラルな香りさせてんだよ」
「ノーコメントで……」
帰りかっちゃんと合流出来たけどその辺り延々と吐かせようしてきた。少女の尊厳も絡んでいるのでそっとしておいてかっちゃん。
◆◆◆◆◆
受験から一週間、今日も元気に掃除とかっちゃんとの手合わせをしに海浜公園へ向かおうと準備をした時だった。
「い、いず、出久ー!!来た、来たわ!雄英から合否の手紙が来たわよー!!」
母さんがドタドタと慌ただしく部屋に突撃してきた。手に持っているのは雄英からの手紙のようだ。でも渡そうとやってきたのはいいんだけどそんなに慌ててると危な「あひゃあっ!?」ああほらドアのスロープに足を引っかけて勢いよく転けちゃった。足元注意だよ母さん。
母さんを起こすついでに落ちた手紙も拾う。確かに雄英から僕宛ての手紙だ。中を確認しよう。
大丈夫だからね出久、きっと合格してるわよ!今まで苦労したのはきっと今日のためよ!なんて僕以上に緊張して過剰なまでのエールを送る母さん。確認のために封に手をかけ……、
「待って出久心の準備は大丈夫!?先に一人で見た方がいいんじゃない!?」
「そろそろ落ち着いて母さん?」
と慌てふためいて心配してくる母さんを宥める。心の準備が出来てないのは母さんじゃないかな……?
隣で過剰に慌てる人がいると逆に冷静になるっていうけどあれ本当だな。最初は合否の手紙が来た時に少し緊張したけど母さんを見てると落ち着いてきたぞ、なんて明後日のことを考えつつ一気に開封して中身を確認する。隣で悲鳴をあげる母さんは置いといて……用紙とは別に円盤が出てきた。
これはなんだ?と思うより先に、それは起動し、
『わーたーしーが、投影された!!』
「オールマイト!?」
まさかのオールマイトが投影された。
『いやあ色々手続きがあってね!切り出せずにいてすまない!私がこの街に引っ越していたのは他でもない、来年度から雄英に勤めることになったからさ!』
オールマイトが雄英に?それは嬉しい情報だ。血法の手解きをする機会が増えるしコネが学内にいるのも助かる。……だけど大丈夫なのかな、あの身体で?
『多分君は私の―――え、なに?巻きで?彼には話すことが……あーわかったわかったOK
えー、緑谷少年。君の合否発表だが……あえて先に結果を言おう。合格だ!!』
オールマイトのその宣言に後ろで見ていた母さんが歓声を挙げる。僕も小さくガッツポーズを取った。
『筆記も上々だったが、実技試験も見事の一言だ!君が獲得した
隠された内容?なんのことだ?考えるもわからず頭を捻ってると、すぐ答えが出てきた。
『実はこの入試、見ていたのは
もうひとつ我々が見ていたのはずばり、"
おめでとう緑谷少年、合格……それも首席だ!』
首席合格。それを聞いた途端、母さんが幸せそうな顔で気絶した。ちょっとオーバーアクションすぎないかな?
でも無理もないか。かつて無個性と言われた自分の息子が、自分で培った力で雄英に、それも首席で合格したのだ。僕だって嬉しい。今度オールマイトに会ったらこの喜びをどう表すか。いや、その前にかっちゃんが立ちはだかりそうだけど。
『だが喜ぶのはまだ早いぜ少年。君は確かに首席だが……首席が一人とは言ってないからな』
「へっ?」
『なんと今回、首席合格者がもう一人いるのだ!そっちは
『そんなわけで首席ではあるが首席にあらず!傲らず上を目指してくれたまえ。我々は君の成長を手助けしよう!
それじゃあ最後に……。来いよ緑谷少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!!』
そう言って映像は終わった。首席がもう一人?一体誰……いや無双の働きってことは……もしかして……。
「いいいずぐううう!!よがっだあ!よがっだねえええええ!!」
「おわっぷ!?母さんちょっと危ない!?いくらなんでも大袈裟……いや、大袈裟でもないのか」
少し考え込んでいたら母さんが復帰し喜びのあまり抱きついてきて、そのまま引っ張られてに躍りだした。最初は大袈裟じゃないかと思ったが、考えれば雄英に首席というのはすごいことだ。まあ僕の場合ちょっと特殊すぎるから手放しに褒められたものじゃないけど。
いい年した二人が手を取り合って小躍りというのも恥ずかしいが、僕も嬉しいので悪い気はしない。しばらく一緒に躍るのだった。
「ところで出久。オールマイトが親しそうに話していたけど、もしかして知り合いなの?」
「それじゃあ掃除に行ってくるね母さん!」
はい小躍り終わり!海浜公園に向かおう!
逃げるように出かける僕へ今日はご馳走よー!と後ろから聞こえる。それに返事代わりに手を振って走るのだった。
◆◆◆◆◆
それから僕は脱兎のごとく海浜公園まで走ってきた。別にオールマイトと知り合いなのを内緒にしなくていいだろうけど、また外堀が埋まりそうだから出来るだけ隠したい。
準備運動がてらの走り込みもやったことだし早速残りの廃品を解体だ。とはいってもあれだけあった廃品はもうほとんどなく、うまくいけば今日で全て運び切れるだろう。焔丸を展開し解体しようとしたその時、後ろから車の音が聞こえた。見るとかっちゃんとおじさんがやってきた。
やあ出久君と挨拶するおじさんに挨拶をし、解体作業を始める。降りてきたかっちゃんも準備をしていくのだが、おいデクと声をかけてきた。
「テメエのとこにも合否通知届いたんか?」
「あ、そうそう!そうなんだよかっちゃん!僕合格したよ!かっちゃんはどうだった!?」
「テメエが合格して俺がしてねえ訳ねえだろが」
どうやらかっちゃんも無事合格したようだ。これでまた三年間一緒だ。おじさんがそれを聞いておめでとうと祝ってくれている。
せっかくだからハイタッチをかっちゃんに求めてみる。やるかと拒否された。知ってた。
仕方がないのでそのまま解体作業に戻……ろうとしたが、ちょっといたずら心が湧いた。
そう、僕は雄英に首席で合格したのだ。せっかくだからかっちゃんにそれを伝えてみる。
「そうだかっちゃん。僕の実技試験の取得ポイント、いくらだと思う?」
「121P」
「実はね……え?」
「121P、さすがに振り分けまでは知らん」
え?待って?なんでかっちゃんが僕のポイント知ってるの?偶然?でもかっちゃんのことだから自分より低いポイントを言うだろうし、でもそれで121なんて数字ピンポイントで…………あっ。
そこまで考えて僕は察した。オールマイトは言っていた首席が二人いると。さっき僕がなんとなく予想していたこと。そしてかっちゃんのドンピシャ。つまり……。
「……かっちゃんがもう一人の首席?」
「ちっ、やっぱりもう一人はテメエかよ」
ジト目で舌打ちをしてくるかっちゃん。いやいやこれ凄い快挙じゃないかな?同じ学校から雄英へ進学でかつ揃って首席とか、まるでマンガのような展開だぞ?この奇跡の瞬間をおじさんに頼んで写真に残してもらおうよ、なんて言ったら「誰がするか!」と怒られた。いやでもこれ本当にすごいことだよ?現実は小説よりも奇なりとはこのことだよ?絶対未来でドキュメンタリーに使われるよ?
必死で説得したけど、最終的には返事代わりに十字固めを極められて泣く泣く断念した。かなり痛かった。ちなみに振り分けを聞いたら
「……かっちゃん中学生だよね?僕が言うのもなんだけど殲滅力ちょっと高くない?」
「逆に聞くがテメエと半年近くやり合って成長しねえと思ってんのか?」
ごもっともです。
かっちゃんとは頻繁に模擬戦をしてはそのすべてに食らいついてきた。それが楽しくてつい数時間耐久戦闘とか何度もやっちゃったこともある。それで成長してなかったらそれこそおかしいか。
そんなやりとりをしているとオールマイト、もとい八木さんも軽トラでやってきたため、その日残りの廃品をすべて積み、ついに海浜公園の掃除が完了したのだった。今度こそはとかっちゃんにハイタッチを求めたけど、だからやるかと拒否された。もう少し粘ろうかと思ったけどまた関節技を決めようとしてたので渋々諦める。
その日は八木さんがやり遂げた少年達へのご褒美に焼き肉を奢るよ!なんて言ってくれたけど今日は母さんが合格祝いをしてくれるのでこれを固辞。かっちゃんも好きでやってるからいらんと誘いを蹴った。
世のオールマイトファンが聞いたら垂涎もののイベントなんだろうけどさすがに間が悪かった。僕としては徐々に外堀を埋められてるようにしか感じなくて複雑だけど。
軽く談笑し日も暮れだしたころ、僕らは解散することになった。八木さんが家まで送るよと送迎してくれることになったためかっちゃん達とはここでお別れだ。
またね、と挨拶をして車に乗ろうとした時、かっちゃんに止められた。
「おいデク」
「ん?なにかっちゃん?」
「……雄英だ」
「え?」
「雄英からだ。そっからのし上がってテメエを追い抜いて、そのままぶっちぎりで差をつけてやる。一番になるのは俺だ、覚悟してろや」
「!……いいよ、望むところだ!」
投げかけられたのはかっちゃんからの宣戦布告だった。僕を一人の倒すべき相手、越える相手と定めたのだろう。
そうだよ、やっぱりかっちゃんはこうでないと。驕りはすれど腐らず、ひたすら我が道で研鑽を積み重ねるその姿こそが、僕の憧れたかっちゃんだ。
それからかっちゃんはこちらを見ることなく、おじさんと帰っていった。八木さんが「青春だねえ」と暖かい目でつぶやいている。
僕も八木さんに連れられ、家に帰るのだった。もうすぐ始まる、雄英という新たな舞台に期待で胸を膨らまして。
◆◆◆◆◆
ここは雄英にある会議室、そこではヒーロー科合否の確認と組み分けが行われていた。実技の総合成績が表示され教員たちの話し合いが始まった。
「今年の試験はすごかったな。まさか
「おまけに同じ得点ってだけでも驚きなのに同じ学校出身ともきたわ。こんな事雄英始まって以来じゃないかしら?」
成績の一位と書かれた項目、それが二つあり3桁を越える記録が表示されている。色んな内容が合わさりかなり特殊なそれは酷く目立っていた。
「片ヤ余裕ヲモッテ戦イツツ他ノ受験生ヲ援護、片ヤ迫ル
「なにが面白れぇってこのモジャ毛だよ。会場でも自虐ネタで場を和ませて面白かったがよ、地味な顔して
「楽しそうなところ悪いが俺としては冗談抜きできつい話だぞ……。
あるものは感心を、あるものは楽しく、またあるものは恨みがましい言葉が飛び交う。
もちろん三位以下も高い評価を得ている。バランスよくポイントを稼いだ者、避難誘導を自ら行った者、
そんな中ヒーロー科の教師である二人、イレイザーヘッドとブラドキングは組み分けの話をしていた。
「まずは推薦組と首席だな。例年なら首席の取り合いになることが多いが今年は二人もいるから取り合いにならず嬉しいことだ。ちなみに俺は緑谷の方が欲しいな、こいつの個性は血液操作と炎の複合型か?他にもあそこまでしっかり固めて武器を作ったりも出来るのは面白い。俺としても刺激を受け―――」
「悪いがブラド、首席二人はAクラスに預けてくれないか」
「おい待て、いくらなんでもそれはないぞイレイザー。理由を言え」
「調べたところこの二人、地元ヒーローに良くも悪くも顔が知られてる二人組でな。俺としては引き離すよりも一緒にして意識させ合って切磋琢磨してもらう方が合理的だと判断した」
「良くも悪くも……?まあ言いたいことはわかる。だがその理由じゃお前じゃなく俺のクラスでまとめて取ってもいいことになるぞ。そこはどうなんだ?」
「……俺個人としては彼、緑谷にちょっと危機感を抱いててな。去年折寺で起きた失踪事件、こいつはその当事者で、なんでも半年ニューヨークでヒーローに鍛えられていたらしい。が、鍛えたにしても容赦がなさすぎる。
ロボットとはいえ彼は人体で言う急所に当たる部分を的確に砕いていき、0Pを破壊するにしても四肢を破壊した時点で行動不能だったというのに念入りに燃やし尽くした。向こうでどんなことをしていたかはわからんが15の子供がここまで躊躇いなく出来るとなるとどうしても倫理観に異常をきたしてないか心配になる。
オールマイトが自分の名前を使ってまで受験を受けさせてあげてほしいと言ってきた手前杞憂かもしれないが、そうだったとしてもやりすぎなのも問題だ。俺達はヒーローだ。力は確かに必要だが、だからといってやりすぎていい理由にはならない。それじゃあ
「……世の中には公に暴力を振るいたいからヒーローになったなんて馬鹿もいる。そういう類の可能性も捨てきれない以上正当な倫理観への矯正ならお前の方が向いてるか。だが諭すのなら俺も得意だぞ?」
「お前の場合は親身になりすぎて相手を尊重しすぎてしまう。こういうじゃじゃ馬の扱いは割り切れる俺のが適任だ」
「むう……緑谷に関してはわかった。だがそうなると何故爆豪もなんだ?」
「コイツなら緑谷を御してくれるからだ。さっき地元ヒーローに良くも悪くも顔が知られてるって言ったな。なんでも緑谷は普段大人しく誰にでも優しいが
「過剰防衛にならないのかそれは……。しかしよくそんな情報を短時間で集められたな」
「オールマイトが推薦した時点で色々調べたからな。まあ失踪時の情報はまったく手に入らなかったが」
「……はぁ、わかった。同じ血を操る個性持ちだから是非来て欲しかったがそこまで淡々と並べ立てられたら仕方がない。だが首席を二人も譲るんだ、推薦他何人か目をつけていた奴は俺に優先してもらうからな!」
「こっちが無理を通したんだ。そっちの要望にも応えるさ。それに個性なら贔屓しすぎない程度に個別で教えてやればいいだろ」
「まあその話はひとまず置いておく。次は推薦だが俺はこの―――」
そうしてあれよあれよと組み分けが決められ、ほどなくして会議は終了した。
異界帰りの少年が雄英へ入学するまで、後ひと月。
Q:レスキューポイント原作より低くね?
A:下手したら街を破壊して帳消しだったんでむしろ穏当。
毎度説明会は会話の違和感や矛盾が出来てないか探すのが大変です。下手すると一日潰れます。潰れました。
【誤字報告】
珈琲藩士さん。zzzzさん。愛想豆腐さん。津名原桐太郎さん。楓流さん。所長さん。なまわさびさん。
誤字報告ありがとうございました。今回何人か同じ箇所の誤字報告が来てるあたりわかりやすい箇所の見落としが増えてしまってますね…。もう少し気を付けます。