My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
みなさんも体調管理に気を付けてください。
ハロー、レオさん。元気ですか?僕は元気です。
こちらでは雄英に合格してからひと月経過し、今は桜咲く四月です。
あれから学校や友達に雄英に合格したことを伝えました。そんななか麗日さんから自分も合格したと連絡があり、お互い合格できたことに喜びを露にして、はしゃいでいました。服はその時に返してもらいます。
余談ですが、母さんは僕に女友達が出来たことを父さんに嬉々として電話してました。恥ずかしいのでやめてほしいです。
学校でも雄英に合格だけでなく、揃って首席というのも前代未聞で、ちょっとした話題になりました。幼馴染み同士なのもあって新聞部からツーショットを求められるも、かっちゃんは頑なに拒否。僕が無理矢理絡んでみたらキャメルクラッチで返されました。その場面が写真に撮られ、学級新聞に載りましたが、かっちゃん的には不服だったのかひたすら顔をしかめてました。
海浜公園の掃除は終わりましたが奉仕活動は続けてます。入学が近いため街の清掃活動程度にとどめてますが、率先して奉仕活動をしているためかヒーロー達からも顔を知られてきました。きっと元行方不明の少年が奉仕活動を行っていることが彼らに印象を与えているのでしょう。
……決して遭遇した
さてさて、そんな僕ですが……、
「出久ハンカチ持ったの?ティッシュは?」
「大丈夫だよ母さん、全部昨日のうちに済ませたから!」
「それならいいわ。せっかくの入学式だもの、バッチリ決めていかないとね。……出久、超カッコいいわよ!」
「……うん!いってきます!」
緑谷出久。本日から雄英一年生です!
◆◆◆◆◆
「あーまずい!時間がない!!」
雄英に到着した僕は急いで教室を探していた。
入試の時もそうだったけど、敷地は無茶苦茶広く、案内板がないと初見はどうしても迷ってしまう。
今日は入学式だからと余裕を持ってかなり早く出たのに結局このザマだ。なんで遅れたかって?乗っていた電車を
今日くらい大人しくしてろ!と怒って
一応
それから大急ぎで走ってなんとか間に合ったが、五分前といったところか。
僕が入ることになった1-Aにたどり着く。バリアフリーのためか扉が大きい。
この中にいる人たちが、これから共にやっていくクラスメイトだ。かっちゃんや麗日さんがいるといいなあ、そんな思いを込めて扉を開けた。
「机に足をかけるな!先輩方や机の制作者に申し訳ないと思わないのか!!」
「いちいち思ってられんわ面倒くせえ!テメエ何様だコラ!」
かっちゃんがいた、飯田くんもいた。そして喧嘩になっていた。
「わあ、入りたくない……」
開けた先で繰り広げられてる口論に目を背けたくなるけど開けてしまった……というより目撃してしまった以上入らないと。じゃないとこの二人だから……、
「ぼ……俺は飯田天哉、私立聡明中学出身だ!」
「ちっ聡明っつーことはエリート様かよ……まあいいぶっ殺しがいがあるってもんだ」
「ぶっ殺しって……せめて競いがいにしてくれないか!物騒だぞ!?」
ああほら、徐々に言い争いがヒートアップしている。まずいなあ、時間もないしこのままじゃ暴れないにしても先生に喧嘩を目撃されるまで止まらないぞ。
数瞬迷ったけど仕方がないと腹をくくった僕はコソコソと忍び寄っていく。背の低い少年がなんだこいつ?みたいな顔をしてくる。ごめん今は静かにしてて。あれ収めるから。
「ヒーローを目指すものとして言わせてもらう!君のその態度は雄英に、ましてやヒーローに相応しくない!即刻改めるべきだ!」
「上から指図すんなや!どうしても改めさせてえならテメエの手で黙ら―――」
ガシッ
「あ"っ?」
わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ
「Hey Good morning Kacchan,The☆Bomber head!ほらほらどうしたのーかっちゃんってばー朝からがなっちゃってー朝ごはん足りなくてイライラしてるのー?チョコバーあるけど食べるー?鉄分バーはダメだよー血の補充に必須だからー」
わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ
気配を消して後ろから近づいた僕は、そのままかっちゃんの頭を掴み弄り倒し、声高らかに煽った。
ふふん、これぞザップさん仕込みの煽り術!…………いや、僕やレオさんが散々やられていたことを真似ているだけだけどね?でもその効果は絶大だよ?ほら、静かになったかっちゃんはゆっくりとこちらを向き…………、
いつの間にか僕を担ぎ上げバックブリーカーをかけていたたたたたたたた!!かっちゃん痛い!
怒ってるのかいつもなら手加減するのに今回は全然加減してくれてない!!だ、誰か救けて!!
「うお……流れるようにバックブリーカーに持っていったな。自然すぎて認識できなかったぞ?」
「実況どうも!でも出来れば助けて尻尾の人!」
「し、尻尾のって……、いや間違ってないけど。だけど自業自得だし助けるべきか迷うというか、何故か楽しそうにも見えるし。後俺は尾白な」
「あ、はい!僕は緑谷……っていたたたた!かっちゃん力増してる!!」
誰か救け……ダメだみんな呆れたり困惑したりで救けがこない!飯田くんは……あぁ、突然の珍事に固まってしまってる!
ごめ、ごめんかっちゃん、謝るから!謝るから力緩めて……待って、背骨が悲鳴あげだしてる!それ以上はいけない!!
「ふぅ~間一髪間に合ったよ~……ってなにこの状況!?」
「あ、麗日さんおはよう!早速で悪いけど救けて!」
「お、おはよう、じゃないよ!?ちょっとキミ!やめてあげなよ!?」
「先にやったのはこのアホだ丸顔」
「丸顔!?いやそれは置いといてそうなん緑谷君?」
「ち、ちょっとしたスキンシップを……っていだだだだ!ス、ストップかっちゃん!こうでもしないと喧嘩になりそうだったから仕方がなかったんだよ!僕に矛先が向かえば関節技決めてそれで終わりだし!それよりほら、扉の前に来た人が入りづらそうだよ!?」
「知っとるわ。向こうもなんも言わねえなら別にいいだろが」
『えっ?』
僕たちの会話でクラスのみんなが入り口に目を向けた。開いた扉には誰もいない、適当なこと言ったのかとみんな困惑しているところへのそりと一人の男が影から現れたことで本当だったと理解した。
「……気配でも察知していたか?それなりにやるようだな。だが少し遊びすぎだ。もし
そういって一人の男が現れた。寝袋に包まれて。
え、何あれ?という声が聞こえた。そりゃそうだ、ボサボサ頭で髭面の大人が寝袋姿で突然現れるなんてどう考えても不審者にしか見えない。とりあえず110番したほうがいいかな、スマホはどこだっけ?
「おい、何がしたいのかはわかるが俺はここの教師でお前らの担任だやめろ。的確に動ける奴は嫌いじゃないが少し落ち着け。
まったく……改めて、俺はお前たちの担任になる相澤消太だ、よろしくね。そして早速だが
淡々と紹介と説明を告げる担任と名乗った男性。
え?この小汚ない人もヒーローなの?いや見かけで判断するべきではない……。そうだけどホームレスと言われても納得してしまいそうな格好じゃん、とあちこちで困惑の声が漏れている。
とにかく相手が担任と言った以上言う通りに着替えよう。しかしこれから入学式なのに体操服?何が始まるんだ?
それはそうとかっちゃん。そろそろ降ろして。
◆◆◆◆◆
『個性把握テストー!?』
「入学式は?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間はないよ。雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側も然りだ」
着替えてグラウンドにやってきた僕らを待っていたのは、体力テストだった。
これから始まる入学式をやる暇はないと切り捨て、まるで通常授業がすでに始まっているかのように進んでいく。
……というか僕ら首席なんだけど入学式になにか話したりしなくていいのかな?
みんながみんな困惑しているが説明が始まったので気を取り直して集中する。どうやら普通のテストとは違い、8種目を個性ありで行うらしい。
そういえば向こうの修行はほとんど実戦だったからこういうテストは逆に新鮮だなー、なんてことを考えていると相澤先生に呼ばれる。
「爆豪、緑谷。中学の時のソフトボール、何mだった?」
「67m」
「えっと、確か35mです」
「……おいこらデク、そりゃ中二の成績じゃねーのか?」
「中三のテストはやる前にあんなことなったから仕方がないよ……」
体力テストなどをやる前に向こうの街に飛ばされてしまったからね。仮にやっていても時期的に参考にはならないけど。
今の僕が投げたら多分200は飛ぶだろう。学生どころか大人でも出していい数値じゃないなこれ。
「お前ら二人共交互に個性を使って投げてみろ。円形から出なければなにしてもいい」
そういって先生はかっちゃんにボールを投げた。軽く運動をし、準備が出来たかっちゃんは思いっきり振りかぶり、爆風を乗せて投げ飛ばした。
「死ねええぇッ!!!」
FABOOOOOOM!!!
(………………死ね?)
まるで砲撃のような勢いで飛んでいくボール。かっちゃんの掛け声にあちこちで困惑の声が流れる。大変物騒だ。
少ししてひゅるると空からボールが落下し、数値が出た。785.2m。すさまじい記録だ。
さすがかっちゃんだな。普通高校生、それもつい先日まで中学生だった少年が個性を使ったとしてもここまでの数値はそうそう出せるものじゃない。かっちゃんの才能と努力、そしてセンスが噛み合うからこそ出来る芸当だろう。
「次は緑谷だ、投げろ」
まあだからって勝ちを譲るつもりはないけど。確かにすごいけどそれとこれとは話は別だ、こんなところで敗北しては斗流の名折れ。突然師匠が現れて、汚濁程度の実力まで鍛え直すと言って地獄の修行に連れ去られてもおかしくない。だから僕は勝ちを取りに行く。
位置につくと僕は血法を発動。ちょうどいい高さにボールを固定しその後骨喰を作り構える。そして全身とカグツチの爆風の出力を用いて、思いっきり振りぬいて、
「クソ兄弟子があああぁッ!!!」
ゴッパァアアアアンッ!!
(………………クソ兄弟子??)
こちらはゴルフの要領でボールを打ち抜き、さらにカグツチによるジェット噴射の勢いを乗せて飛ばしていく。僕の掛け声にあちこちで困惑の声が流れる。あぁ、少しすっとした。
弧を描きボールが落下、数値が出た。802.8m。ひとまず面目がたった。
かっちゃんが抜かれたことに顔をしかめ、そして獰猛な顔をこちらに向けてくる。
「テメエはまた軽々と越えていきやがって……上等だやってやる。もっかい投げさせてくれや先公、こいつを完膚なきまでに投げ殺してやる……!」
「後でまた投げてもらうから話を進めさせろ。
さて、この二人に投げさせたのはこいつらは自身の個性を細かく理解しているうえで目に見えてわかりやすいのと、ついでに実技試験の首席同士だからだ。参考にも目標にもなるだろう。……自分の最大限を知る。それはヒーローの素地を形成する合理的手段だ。まずはそれをこのテストで知ってもらう」
そう説明がされると、途端周りから歓声が上がった。
「なんだこれ!すげー面白そうじゃん!」
「二人ともすごい記録ね。私も負けていられないわ」
「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」
「ていうかあの二人揃って首席とかヤベー!」
あちこちで一様に盛り上がりだす。個性を用いたテストを見て興奮する者、気合いを入れる者、僕らの記録で盛り上がる者、様々だ。
「……面白そうか。ヒーローになるための三年間、君らはそんな腹積もりで過ごすつもりでいるのかい?」
『え……?』
しかし軽い気持ちで盛り上がったのが先生の逆鱗に触れたのだろう。相澤先生の纏う雰囲気がガラリと変わり、とんでもないことを言ってきた。
「よし今決めた。このテストでトータル成績が最下位の者、ヒーローの見込みなしとして除籍処分とする」
『は……?はああああああッ!!?』
そう宣告してきた先生の目は笑っていなかった。
嗚呼……この雰囲気と目を僕は知っている……。師匠が貴様のような糞袋がどう囀ずろうが構わず行うから覚悟しろよと、お仕置きを行うときに放つ気配とまんま同じだ……。まさかこっちに来てまで師匠と似た気配を察知するとは夢にも思わなかったよ……。
やめてください相澤先生、また師匠とのトラウマがフラッシュバックしてしまああああやめてください師匠ごめんなさいごめんなさい師匠を傷つけるつもりは毛頭になかったんですただカグツチの炎圧縮に成功したのが嬉しくてつい見せたかっただけなんです調子にのって最後の最後で操作を誤って師匠を巻き込みかけたことに関してはマリアナ海溝より深く反省しているつもりです仕置きを受ける覚悟もありますがあのヌエっぽい獣のど真ん中に蹴落とすとかそれは仕置きじゃなく処刑と言うんです僕はまだ死にたくありませんお願いですから死なない地獄で許してください……!
雄英初日。トラウマと共に波乱の幕が開けたのだった。
麗「横暴です先生!緑谷君なんてショックで震えてますよ!?」
爆「ただのトラウマだからほっとけ丸顔」
緑「シショウコワイシショウコワイ」
【誤字報告】
クオーレっとさん。
誤字報告ありがとうございました。