My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
ドキドキしながらの第二話です。
―――その日、僕は現実に打ちのめされた。
僕、緑谷出久の生まれた世界は世界総人口の約8割が「個性」という超常の体質を身に着けてる世界だ。
個性は人によって千差万別。日常で便利なものから一歩違えば危険な物事へと繋がるものまで様々である。
そして個性が人々に宿るに伴い、それを悪用し犯罪を犯す者「
昔はともかく今は法律も定まり、仮に使用すれば注意や罰則などが発生するが、それでも悪用する者は後を絶たない。
そして悪用する者もいれば正しく使う者も現れる。個性を使い秩序を守る者達「ヒーロー」の存在が生まれたのは必然だろう。
この超人社会、ヒーローは最も人気な職業になっていた。まるでコミックから飛び出てきた夢のような存在、市民を守り賞賛を受ける立派な公職、公的に個性の使用も出来、さらには人気を得ればメディア展開で富と名声も思いのままとまさに勝ち組の職業である。人気が出るのも当然であり、おかげで世間の子供たちの大半は将来ヒーローになって活躍すると夢想するほどだった。
そしてそれは僕、緑谷出久も例外じゃなかった。
幼いころ何度も観たNo1ヒーロー、オールマイトの動画。とある大災害の中一人で何百もの人を救う姿に僕は心を奪われた。
それから僕はオールマイトのようなヒーローになることを夢見た。いつか発現した自分の個性を使って人々を救い、悪者を成敗する未来を信じて。
しかし、その夢は叶わぬことを、齢4歳の僕に突きつけられたのだった。
―――無個性―――それが僕の個性だった。
この世界の総人口の約8割は個性を持っている。
逆に言えば、残り2割は個性を持っていない。
僕はその2割に属する持たざる人間だった。
そして個性がなければヒーローになれない。
僕は最初から、ヒーローになるための土俵に立つことを許されなかったのだ。
◆◆◆◆◆
時が流れ中学三年になった僕は、未だヒーローを諦めきれずにいた。
その日は進路の話があり、かっちゃん―――本名は爆豪勝己で僕の幼馴染だ―――と同じ雄英高校を志望した事を暴露され散々な目にあった。
将来のためにと書いているヒーロー分析ノートを爆破され、捨てられ、脅迫され、しまいには自殺教唆まがいのことを言われ……。
かっちゃんはほんとにヒーローになる気があるのか疑問に思える発言だよねこれ……ヒーローどころか人としてどうなの?
とにかくそんな目にあった帰りに僕はヘドロ状の
そいつはどうやら僕の身体を乗っ取るつもりで、僕の中に入り込もうとしていた。抵抗もロクに出来ず、息が出来なくて苦しくて、このまま乗っ取られてしまうのかと恐怖し、意識を失いかけたその時、
「もう大丈夫だ少年。私が来た!!」
僕の憧れにしてNo1ヒーロー、オールマイトが助けてくれた。
その後目を覚ました僕にオールマイトがヘドロ
サインもいつの間にか書いてくれていて嬉しかったがそれとは別に僕はオールマイトに聞きたいことがあり、飛んでいくオールマイトにしがみついて無理やりついてきてしまった。空を飛ぶなんて体験そうそう出来るものじゃなかったけど、あんな風に飛ぶのは二度とごめんこうむる。
建物の屋上で降ろしてもらった僕はオールマイトに聞いた。無個性でもヒーローになれるか。オールマイトみたいになれるかと。
幼馴染に馬鹿にされ、周囲から呆れられ、母さんにも謝られた。それでも僕は諦めきれなかった。リップサービスだろうとかまわない。オールマイトが「なれるさ」と言ってくれれば、その言葉を胸に僕はまた歩き出せる。そう思ったから。
……しかしそうはならなかった。
返事を待つ僕を前に、オールマイトは突然萎み、骨のような姿を晒した。
それだけでもすごい衝撃を受けたのに、オールマイトはついでと言わんばかりに服をめくり、その凄惨な傷跡を僕に見せた。
それはとある
「キツいことを言ってしまうが、プロはいつだって命懸けだ。見ての通り、私でもこんな大怪我をしてしまうのだ。
「夢を見ることは決して悪いことじゃない。だが相応に現実も見なくてはいけない。もし人を助けるということに憧れているのなら、まだ警察官という道もある。
「酷いことを言ってしまったが、どうかここで腐らずに立派な大人になってくれたまえ少年」
……そう否定の言葉を告げてオールマイトは去って行った。
僕は失意の中帰路にいた。今にも泣きだしそうな顔を俯き隠しながら。
「泣くなよ僕……わかってただろ?これが現実だって……あの時からずっと……」
僕がヒーローになれないのは自分が一番よく知っている。4歳の時にその現実を突きつけられたのだから。
ヒーローは確かに人気職だがそれと同時に危険な職業でもある。死亡率も高く、ふとしたことで大怪我だってしてしまうのだ。あのオールマイトだって例外じゃない。あの人の身体に出来た痛々しい傷痕、骨のような顔を僕に見せて、どれだけ危険なのか伝えてくれた。
そんな職業に
全部理解している。理解してるけど……それでも僕は……。
そこでふと、今日かっちゃんに言われた言葉を思い出した。
"来世は個性が宿ると信じて屋上からのワンチャンダイブ!"
(……いやいや、さすがにそれは駄目だ!いくらショックを受けてるからってそれだけは駄目だ。自分を、両親を不幸にするようなことをやっていいものじゃない。なによりヒーローを目指してるのにそんな一時の気持ちでそんなことするもんじゃ……)
何考えてるんだろう僕は……僕がヒーローになんて、なれるわけ――――――
ピシリッ
「……え?」
独り言を言って落ち込んでるその時だった。突然自分の周囲で軋むような音が聞こえた。一体なんだと思い見回してみると、僕の周囲だけ謎の雷音が鳴り響き、紫電が迸っている。
なんだこれ?と状況が理解できず、混乱しているうちに音はビシリッバリバリと強まり、そしてヴォンッ!と音がしたと思えば自分を包むように空間に出来上がって黒く巨大な渦が中心に生まれた。
それを見た僕は呆然と渦を見ていた。しかし同時に嫌な予感というものを直感で感じて、そしてそういう時の予感というものは得てして当たるものだ。
「あれ、もしかしてこれ……引っ張られてる!?」
そう気づいた僕は急いで離れようとする。しかし包むように出来た空間は僕を外に出してくれず、渦の引き寄せる力も強まり距離をとるどころか引きづりこまれていく。
「ま、待って、何が起きてるのこれ!?個性事故かなにか?なんで?今日だけで色々ありすぎだよ!!?」
今日一日で
もはやキャパオーバーでロクに思考が回らないがそれでも逃げようと身体を動かす。
「う、うわああああああああああああああ!!?」
しかしその努力空しく、僕は謎の渦に呑まれてしまい、同時に渦も消えたのだった。
後には最初から何もなかったような静けさと、一冊のノートだけが落ちていた。
◆◆◆◆◆
「―――――――――?」
声が聞こえる……誰かが僕を呼んでる……?
「ゲ―――――ボ――?」
ペシッペシッと頬に少し衝撃が走る。誰か僕の頬を叩いている……?。
「ゲ――ア――ッキ―!」
うっすら目を開けた。そこには褐色銀髪の男性が僕に向かって声を荒げだしている……でもまだ意識がもうろうとしていてよくわからないや……
そう考えた僕はまた目を閉じ意識を手放そうとして……
「
ゴンッ!!
突然の叫びと同時に、盛大に頭を殴られた。
「っいっだあー!!?」
「
「えっ、何?なんで僕突然殴られてるの?ってえ?英語?なんで!?」
本当に何が起きてるの!?突然渦に巻き込まれたと思ったら如何にもガラの悪そうな人に殴られて、もう何が何だかわからないよ!?僕の不運今日で使い切る勢いじゃないですか神様!?
「
「
ってまた増えた!?こっちはまだ落ち着き払ってて話は出来そうだけど……威圧感を感じてしまうというか……顔の傷も相まって一般人には見えない。しかもその後ろから赤毛の巨漢がこっちを見降ろしてるし……お願いですから睨むのはやめてください。その、チビりそうです……。
恐怖に震える中、今度は顔に傷のある人が話しかけてきた。さっきの褐色の人と違って友好的だけど何故かこっちの方が怖く感じる。……だけど今の状況をなんとか把握しないといけない以上会話を試みるべきだ。
そう考え意を決して、気付いた。
「
……どうしよう、英語がわからない……
そりゃそうだ。僕は日本人。英語なんて義務教育でかじったくらいしかわからない。雄英受験に向けて勉強はしているけどそれでも英会話なんてそう簡単に出来るものじゃない。
焦りだした僕はがふと顔を見上げると、顔に傷のある人と赤毛の人が首を傾げ、褐色の人が手から赤い刀みたいなのを作り出して……って刃物!?刃物ナンデ!?斬られるの?もしかして判断を間違えたら斬られるの僕!?
ああああああ駄目だこのままじゃ本当に僕の命が危ない!とにかく会話を、生き延びるす可能性を掴み取るんだ僕!!
「え、えーっと……そ、そーりー!あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!……えっと、すぴーくじゃぱにーずおんりー?」
拙いながら必死で自分が日本語しか喋れないことを伝える。お願い伝わって!そして出来れば日本語わかる人来てください!!
「
「え?あ、ハイ、大丈夫です?」
目の前にいたよ!神様ありがとう!これでダメならジェスチャーや絵で必死で意思疎通も考えていたけど杞憂に終わって本当によかった!
「だからなんで疑問形……。まあいい、怖がらせてすまなかったね。僕はスティーブン。君は?」
「は、はい!緑谷出久と言います!えっと、日本人で15歳!好きな食べ物はかつ丼!個性は無個性!好きなヒーローはオールマイトで、それから―――」
「待て待て落ち着きたまえ少年そこまで聞いてないから。なんでいきなり自分のプライベートを暴露してるんだい。後無個性と言うが君は十分個性的すぎるぞ?」
「ああああああああす、すみまべぶ!!?」
何を言ってるんだよ僕。展開が早すぎて混乱してるのはわかってるがなんでこんなどうでもいいこと話してるんだ恥ずかしい!なんてことを考えて慌てていると褐色の人におもいっきり踏んづけられた。
「おいこら陰毛頭。本当は問答無用でたたっ切る予定だったのを旦那と番頭が止めたから今テメエは生きてるんだぞ?せっかく拾った命なんだ死にたくなけりゃ言われた事だけ喋りやがれってんだ」
「ま、待ってください!今僕がどんな状況なのかわからないんです!突然変な渦が現れたと思ったら吸い込まれて気絶して、そして起きたら知らない場所で貴方たちがいて!」
背中を踏んづけて赤い刃物で頬をグリグリしてくる褐色の人に弁明をする。い、いくらなんでも陰毛頭は酷くないかな!?
「待てザップ。彼のこの狼狽え様からして本当に何も知らないようだ。……えっと、イズク・ミドリヤ君でいいのかな?ひとまず君の今の状況を教えておこう。まず今君がいる場所はヘルサレムズ・ロットだ」
「へ、へるされむず・ろっと?」
「ああ、君も知ってるだろう?三か月前世間を騒がせた大事件。かつて
「ニ、ニューヨーク!?しかも三か月前に崩壊したって、初めて聞きましたよ!?」
「えぇ……?君、もしかしてあまりニュースとか見ないタイプかい?」
「い、いえ、僕も日本でヒーローを目指していて、ニュースはよく見ますけど……それでもそういう話は聞いたことはないです」
「ヒーローを目指す?」
「はい!あのオールマイトのように人々を助け、
「オールマイト?
「え、オールマイトを知らない?本場アメリカでもあの人に憧れてヒーローに就職するっていう人が今も昔もたくさんいるのに?」
「いや、今も昔もヒーローなんて職業はないからね?」
「え?」
「え?」
……あれ?なにかおかしいぞ?個性の意味合いも何か違ってるし、どういうことだ?あの褐色の人……ザップさんだっけ?が血で刀を作ってたからおそらく血液を操作する個性で作ってるのだろう。なのに個性の意味合いが理解されないのはなんでだ?……もしかしてアメリカでは個性と呼ばないのか?ゲーム風に言うとSkillとかPerkとかそんな風に言われてたりする?それだったら納得出来る。しかしヒーローという職業が存在しないのは何故?
話に引っかかりを感じ整理していると、後方にいた赤毛の人がこちらに向かってきて話し出した。
「すまない、ミスターイズク・ミドリヤ。どうやら我々の間で何かが、お互いの常識というものが食い違っているようだ。それはおそらくカルチャーショックのようなものでなく、もっと根本的な何かだろう。一度共に情報を整理してみないか?」
赤毛の人―――名前を聞いたらクラウス・V・ラインヘルツと名乗ってくれた―――は静かにそう伝えてきた。確かにそうだ、明らかにお互いの常識に差異がある。ヒーローはいないという彼らにニューヨークの崩壊を知らない僕。そして僕をここに引き寄せたあの謎の渦。もしかしたらここは僕の知ってる時代じゃなく過去、もしくは未来の世界なのかもしれない。それなら話がお互い噛み合わないのも理解できる。ここはラインヘルツさんの言う通り情報を共有して光明を見出すべきだ。そうして僕は3人の男性に囲まれながら自分の知る世間一般の常識を伝えるのだった。
◆◆◆◆◆
結論から言えば、時代どころか世界線すら違ってました。僕は崩れ落ちた。
曰く、この世界は個性どころか個性因子のこの字もないから僕の知る超常は存在しない。しかし念導力といった前時代の超能力や、魔導という神秘など僕の世界にはないものが存在する。ザップという人が出してる血の剣もそれらを軸にした技術らしい。
そしてこちらには僕の世界とは違うベクトルで、それ以上に恐ろしい超常が跋扈する街が存在、というより今僕たちがいる街が正にそうらしく、さらにそこでは頻繁に世界の危機が迫ってくるという。
……もうどんな反応をすればいいのかわからないよ。笑えばいいのかな?ハハハ……。
今日だけで幼馴染の苛め、
項垂れ、これから早いうちに起こるだろう死の未来に悲観する僕の肩に手が置かれた。見上げるとラインヘルツさんがこちらを見つめ、そして膝を折り頭を下げた。
「すまなかった、ミドリヤ君。今回の君の転移は、我々が彼らの計画阻止に時間がかかってしまったことが原因だ。今回の件は本来あちらで歩むはずだった君の人生を奪ってしまったに等しい。謝って済む話ではないのは分かっている。だが、それでも謝罪をさせてほしい」
そう言ってラインヘルツさんは本当に、心から申し訳ないとわかる程の落ち込みようで謝罪をしてきた。しかしそれは見当違いだと思う。確かに僕はこの事件の被害者だ。だけどもそれは
「ありがとう。君のその言葉は、不甲斐ない私の心を慰める何よりの優しい言葉だ。だからこそ私は君に提案したい。……キミが良ければだが、元の世界に戻る方法が見つかるまで我々の元に身を寄せてはどうだろうか?無論その場合多少の雑事を請け負ってもらうことになるが、それでも何もない状態でこの街に放り出されるより遥かにマシなはずだ」
!?それはつまり、この人たちが僕を保護してくれるということでいいんだよね?突然の申し出だから驚いたけれど、もしそうならそれこそ渡りに船だ。多少の雑事というがおそらく身の回りの世話とかだろう。話を聞く限り世界の危機を回避するために忙しい日々を送っているというのが伝わってくる。
ただこの提案はこの人の独断だ。それを聞いた二人は驚き、そして考え直すよう諫めだした。
「待つんだクラウス!確かにその少年は今回の転移被害者だ、同情の余地も多々ある。だがしかし、我々の組織にどういう存在かわからない者を、そんな子犬を拾うような感覚で連れていくにはリスクが大きすぎる!第一まだ我々の組織は設立して間もない。地盤は固まりはしたがまだ完全に安定しているわけでも―――」
「スティーブン」
スティーブンさんの言い分はもっともだ。まだ僕が無害な存在だと確信しきれない以上手元に置くのは危険だ。実際さっきまでヘドロ
だがその諫言はラインヘルツさんの一言で止まった。大きな声ではなかったがしかし、決して退かないという意志を感じさせる声だった。じっと瞳を見つめる、それだけで諫めていたスティーブンさんは口を噤み、目を閉じ悩み、ハァ~ッと諦めたように長い溜息を吐きだした。
「……わかったよクラウス。リーダーである君がそう判断したのなら僕もそれを尊重しよう。ザップはどうする?」
「……旦那と番頭が決めたことなら俺に文句はねえっすよ」
「すまない二人とも。それでミドリヤ君はどうする?私としてはこの街を出る手段も生活する基盤もない以上、身を寄せるのをお勧めするが」
こういうのを鶴の一声というのだろうか。スティーブンさんの意見を覆し、身を寄せる場所を提示してくれた。もちろん僕は了承した。僕一人じゃ今日を生きるのも難しい以上これが最善であるのは確かだ。
でもそれ以上に僕は嬉しかった。僕という異物を監視するためかもしれない。個性の知識についてなにか考えてるかもしれない。それでもこの人は僕のために己の地位を使ってまで反対意見を抑え込んで居場所を作ってくれたのだ。その思いを裏切るようなことはしたくない。
「お世話になりますラインヘルツさん……絶対、このご恩はお返しさせていただきます……!」
「クラウスで構わない。巻き込んだのはこちらである以上、礼を言われる筋合いはないよミドリヤ君。……では、ようこそライブラへ、我々が君を保護しよう」
泣きそうになりながらも差し伸べられた大きな手を両手で握り握手をする。
こうして僕は秘密結社「ライブラ」に身を寄せることになったのだった。
◆◆◆◆◆
「すまないスティーブン。苦労をかけるのはわかっているが放っておけなくて」
異界と交わったこの街は、三ヶ月と言う短い月日の間に多種多様な犯罪組織の乱立。数々の超常による世界の均衡を崩す厄災、我らが不俱戴天の仇、
我々もこれに対抗すべく、牙狩り本部から派生、H・Lを中心に世界の危機に対応していくための組織ライブラを設立。心強い味方達とともに世界の均衡を守り続けている。そして今回もそういった世界の危機を砕く戦いであった。
始まりは小規模の術式サークルだった。彼らが新たに開発した次元交換術式による別次元との強制接続を計画しているとの情報を手にした我々は、術式行使前に制圧に乗り出した。結果としては強襲は成功、しかし術式の阻止は失敗してしまった。
首謀者は強襲をしかけた我々を見て慌てて逃亡、その際組み立て中の術式プログラムを持ったまま逃亡していた対象を倒すことには成功したが、死に際に未完成の術式を起動されてしまう。それは未完成にも関わらず、本来の想定とは遥かに小さく、不安定ではあったが成功してしまい、小さいながら転異空間が開いてしまった。
路地裏の、周囲に何もない場所だったとはいえ、それでも何が起きるかわからない。あちら側の転移をされてしまった場所から何が現れても対処できるよう身構える。しかし不安定だった転移空間は勝手に閉塞されていった。一人の少年をこの地に置いて。
気を失ったその少年を起こし話を聞くうちに、少年はこことは異なる次元の地球から来た少年だということを知った。その後落ち込んだ少年に私は謝罪をした。我々がもっと早く対処出来ていれば彼は独りこの世界に迷い込むことはなかっただろう。しかし少年は我々に対して責任を追及せず、むしろこちらの行いに賞賛した。
彼は本当に心の優しい少年なんだろう。だからこそ私はこの少年に償わねばならない。偶然とはいえこちらも間接的に加害者だ。これは事実であり我々が、ひいては組織の長である私が彼に行うべき責務だ。
「いいさクラウス。諫めはしたがあの少年をこちらで保護するのは悪い判断じゃない。個性因子なんて不確定要素とそれにより得ることになる個性という超常体質。彼は自分を無個性でそれらを持たないと言っているが、大掛かりな組織や十三王からしたらこの少年の存在は興味深い。知られたら研究目的に拐かされるのは間違いないだろう……だが、おそらくそれだけじゃないんだろ?あの時少年を見る君の目は、別のモノも映してたように見えるが」
「……」
「まあ、言いたくないなら今は言わなくてもいい。だが、いつか話してくれよ?」
「……すまないスティーブン」
「いいさ、そんな君だからこそ僕たちは慕い、ついていくんだから」
私が彼を保護した理由をもっとも占めるもの。それはあまりにも私情を挟んでいるため言うことが出来なかった。
だが彼がいつか、元の世界に帰れたその時、私はその内を明かそう。私を慕う、信頼する友に。
なお英文はほぼグーグル翻訳の模様。
【誤字報告】
赤土 かりゅさん。たかたかたかたかさん。タイガージョーさん。
誤字報告ありがとうございました。