My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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面倒な内容のお仕事終わってやったーと思ったらおかわりが4件来て血尿出そうなので第二十三話です。書く暇をください。

皆様のおかげでこの作品もめでたく30万UAを突破しました。当初はエタるまでに2、3万UAくらいついたら御の字かな~なんて思ってましたがまさか10倍を超えるとは思ってもいませんでした。感謝……圧倒的感謝……!

これからも皆様の反応にワクワクビクビクしながら頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。

【追記11/20】
耳郎周りで一部大幅改編入れました。既読済みの方はご注意ください。


第23話:勇者かな

 「さーて講評の時間なんだけど……その前に緑谷少年、角取少女、二人に言うことあるよね」

 

 「この度は善良な生徒である二人を泣かせるような真似をしてしまい大変申し訳ありませんでした。実際の事件を体験させて現場での(ヴィラン)の怖さを掴ませようという善意での行いでしたが、やるにしてももっと訓練とわかるものか別の内容で行うべきだったと深く反省しております」

 

 「ベリーベリーソーリーデス……。アイディアに乗ってロールプレイ楽しんだ私も同罪デス」

 

 僕らの訓練が終わり、先ほど同様講評の時間に入ったのだが、その前に行ったのは謝罪だった。

 対戦相手だった二人に角取さんと揃って正座し謝罪。苦笑いする尾白くんは許してくれたけど、耳郎さんは椅子に座ってジト目で睨んでくる。その視線は胸に刺さって心苦しいです、勘弁してください。

 

 後回原君、コイツ謝り慣れてるなとか言わないで。

 

 「確かに私はロールプレイは推奨したしそこもちゃんと評価するがやりすぎだ緑谷少年。大怪我はしていないが心の傷を作るようなことはするものじゃないぞ」

 

 「ハイ、誠慚愧の念が絶えません……」

 

 「そこまで申し訳なく思うならせめて相談をだね……、ただ今回は確認や注意を怠った私にも責任はある。尾白少年に耳郎少女、止めるのが遅れてすまなかった」

 

 「いやそんな、オールマイト先生が謝ることじゃないですよ」

 

 「そうですよ。悪いのは全部緑谷ですし。ねえみんな」

 

 オールマイトは二人に向かって謝罪するが悪くないと擁護する。確かに止め時を逃して怖い目に遭わせてしまったがオールマイトは就任したての新米だ、教師としてどこまで許容するべきかの判断基準をまだ持ち合わせていない。仮に今回の訓練が最後まで通すべき内容だったかもしれなかったら止めるのは野暮であり、そう考えればオールマイトは責めるべきじゃないだろう。

 まあ僕はどう言い繕っても怒られる結果は変わらないが。みんなの仕方ないよねという視線が痛い。ああ、麗日さんもさすがに擁護できないかなと言いたげな顔している。針のむしろに罪悪感が刺激されちょっとお腹が痛くなってきた。

 かっちゃん救けて、こういう時こそ君の出番だ!……目を合わせたらジト目で首掻っ切ってサムズダウンしてきた。自業自得だけどそれはないんじゃないかな。

 

 「緑谷、ちょっといい?」

 

 そんな心苦しい空気を砕く一筋の光が差し込んだ。柳さんが僕に声をかけてきたのだ。きっとこの悪い空気を払拭するために彼女はきっかけを作ってくれるのだろう。ありがとう柳さん。あなたは正しくヒーローの卵だ。

 

 「さっきのホラー映画みたいなロールプレイ実際の事件を参考にしてるって本当?どんな事件だったの?本当はどんな化物出たの?どんな怖がらせ方したの?場所はビルだった?それとも夜の学校とか?」

 

 あ、違う。この子ただホラーが好きなだけだ。だって質問してくる時の彼女の目、輝いてるもん。

 

 「えーっと、さっきのロールプレイは向こう(H・L)で実際にあった事件を参考にコンパクトにしたものだから本当だよ。……というよりも僕もこの事件に関わったし」

 

 「待って何それ詳しく聞きたい。聞かせて、早く」

 

 「圧が強いです柳さん。話すから落ち着いて」

 

 迫る柳さんを落ち着かせると説明に入った。

 今回行ったロールプレイの元となったのは「グリム・ホラーミュージアム事件」。ヘルサレムズ・ロット内にあるメテオポリタン美術館がある日、丸っとお化け屋敷に改造される事態が起きた。最初は一体なんだと警察も慌てたが、当時の館長が改造したグリム一座の団長であるグリム・(ホラー)・オルケストラ氏と共に説明のため出頭。博物館を盛り上げるべく立てたイベント企画で、ちゃんと話し合って許可を出したと契約書まで持ち出されたら何も言えず、ちゃんと人と美術品の安全面に気を付けろと注意だけ行い落ち着いた。

 

 その後開催されたイベントの内容はというと、博物館を舞台に飾られた美術品の由来をヒントに謎解きをしながら迫りくる殺人鬼役から逃げるリアル脱出ゲームだった。

 この街にいるのは超常慣れしている連中ばかりだが、それでも恐怖を娯楽として楽しむのはまた別で、若者を中心に人種問わず人気が出て連日お客が絶えなかったそうな。

 中に入るや扉が閉まり血だらけの手形がつく演出や人型だけじゃなくムカデ型やヌルボ型など個性豊かな殺人鬼が現れたりとかなり怖く、僕も気になっていつものメンバーで遊びに行った。

 レオさんは絶叫しながら逃げまわり、僕もビビって悲鳴をあげたし、ザップさんやツェッド君も結構面白かったと好評だった。

 

 そんなわけで今回のロールプレイもその殺人鬼や演出を参考にしたのだ。

 化物の雰囲気を出すため半裸で裸足、血法で形作った大きいマスクを被り、血瘤を背負う。浮遊する骨は角取さんの射出した角に血法を纏わせる形で作り上げた。ちなみに角取さんは背中の血瘤の中に入って四本の角を操ることに集中してもらった。つまりあの時の僕は角取さんをおんぶしながら二人に襲い掛かっていたのだ。

 

 なおホラーマスクが猪の骨な(師匠の被り物に似てる)のに理由は決してない。ないったらない。

 

 その説明をすると尾白君は飛ぶ骨の原理に納得し、耳郎さんはそんなもの再現するなと恨みがましく呟いていた。本当反省してるんでそろそろ許して……。

 

 「すっごい面白そうねそのイベント。日本にもその一座来ないかしら。私最低でも全殺人鬼コンプリートするまで行くわよ。……でもそれがなんで事件になったの?」

 

 「それはえっと…………実はその館長偽物で本物と入れ替わり団長ともグル、許可証も偽造で本当は無許可で企画を通して勝手に改造したりしていたんだ。それでイベントの収益を丸っと奪い、おまけに改造中に一部美術品も贋作と挿げ替えられていて企画終わりと同時に全て特殊な手段で持ち逃げする予定だったとか。今まで何度もそうやって気付かれずに盗んでいたらしいんだけどその時ついにバレてそのままヒーローたちによって偽館長と団長が逮捕。本物の館長と品物も無事確保され事件は収束。団員も大量に逮捕されて一座は解体されたとか」

 

 そうこれ、何から何まで無許可で行われておりイベントを隠れ蓑にした犯罪だったのだ。僕らも半ば巻き込まれ、事態に気付いた後事件解決に尽力した。イベントが終わる前に潰せたからよかったけど気付かずに終わってしまったら大きな損失が出ていただろう。

 

 ……と、ここまでが表向き説明用に考えた内容だ。真実はもっとえげつない。

 

 真実はというとまず館長と入れ替わったのは事実だが館長は死んでいるし当時の警備員もすべて首から上を物理的に挿げ替えられている。おまけに目的は金銭じゃなく人命及びその魂が目的だった。

 彼ら一座は演劇なども行うが、団長の名前にオルケストラとあるように音楽を奏でるのが本職だったりする。そしてそんな彼らの楽器は……人の悲鳴である。

 曰く、命を奪われるその瞬間に上がる絶望なる悲鳴。けっして同じ音にならない数多の音色で形作られた悲鳴の連鎖はあらゆる偶然というピースが絡み合い、名曲へと昇華される。

 そして今回の目的は恐怖に染まった幾千の魂を触媒に恐怖を司る邪神を召喚、恐怖による大量殺戮を行い悲鳴を集め、歴史に名を残す最高の楽曲を作るためだとかなんとか。

 そのためにまずは生け贄に相応しい悲鳴をあげる客を選別、お眼鏡にかなった客は別ルートから本当の殺戮部屋へ連れていかれそこで惨たらしく殺し恐怖に塗れた魂を回収、邪神の供物として溜め込んでいたのだ。

 

 端的に言って狂ってる。

 

 そしてこの事件が発覚した最大の要因はレオさんが選ばれて連れてかれてしまったからだ。レオさんは泣いていい。いや泣いていたけど。

 

 三人で探してたところをレオさんの視界連動で緊急要請、急いで突入して追っていた殺人鬼を兄弟弟子のスリープラトンで撃沈させライブラと警察に緊急連絡、逮捕もしくは殲滅すべくそのまま戦闘に突入したのだ。美術品を破損させないよう慎重に戦わないといけないのが大変だったっけ。

 

 その後団長を追い詰めるも我が夢破れたり、ならばせめて最期に私のために悲鳴のレクイエムを奏でてくれたまえと、いつもの死なば諸ともで己を触媒に邪神を不完全召喚。邪神像に匹敵する巨体が消滅するまでの二時間ひたすら足止めし続けたのだった。

 

 なおこの足止めにもっとも貢献したのはギガ・ギガフトマシフ伯爵だったりする。あの人が押さえつけてくれなかったらもっと被害は拡大していただろう。ありがとう伯爵。でもなんで怪獣映画みたいなことになってるんだろこの事件。

 

 「忌々しいわねそいつら……せっかく面白そうだったのに犯罪の隠れ蓑でしかないとか……!」

 

 閑話休題。せっかく好みの内容だったのに犯罪に使われたことにご立腹なのか怒りを露にする柳さん。幸い事件は解決したためこれ以上同じことは起きないはずだとフォローしておく。

 そんな話をしていると耳郎さんのイヤホンにつっつかれた。うぅ、説明に集中してて忘れられたと思われたかな……。本当に反省してますんで許してください、オールマイトもそろそろどうにかしたいのか諭しにかかってるし。

 

 「はあー……まあウチも鬼じゃないし緑谷も反省してるならそろそろ許してあげるよ」

 

 「ありがとうございます……。これからは耳郎さんにホラーを見せないよう努力を務めます」

 

 「ただし罰として駅前のゴールデンフロンティアのマーベラスシャングリラ・パフェ奢れ」

 

 「はい、それで許してくれるなら……」

 

 「ウチだけじゃなく尾白にもね」

 

 「はい……」

 

 「ついでにウチらだけとかズルいし女子全員にもね」

 

 「はい、え?」

 

 罰を甘んじて受け入れるべく内容を聞いてると最後にちゃっかりとんでもないことを言われた。

 駅前のゴールデンフロンティアはスイーツ店で、出されるスイーツはどれも絶品、紅茶やコーヒーもとても美味しいという有名店で、僕も母さんたちと何回か行ったことがある。噂ではゴールドディップスインペリアルやカイザーティベリウスオニキスといった幻とも言われる銘柄の茶葉や珈琲豆を淹れることもあるとかなんとか。

 ただし値段も相応に高く、マーベラスシャングリラ・パフェも例に漏れずお高い人気スイーツで、それを含め女子全員+尾白君の分?

 

 「あの、耳郎さん。確かあのパフェって僕の記憶じゃ2000円は吹き飛ぶお高めのスイーツなんだけ「だからなに?」あ、いえ、何でもないです」

 

 耳郎さんの圧に押し負けた僕は思わず頷いてしまう。幸いライブラで働いていた時の蓄えを帰ってくる時にギルベルトさんが私物と一緒に包んでくれたため、ある程度のお金が手元にあるがそれでも手痛い出費だぞ。

 

 「ストーップ!耳郎少女!いくらなんでもそれはヒーロー以前に人としてどうかと思うよ!」

 

 「そうだぞ耳郎!全員分っていくらかかんだよ!?」

 

 オールマイトもこれにはさすがに看過できず諭しにかかり、男子組も抗議してくれる。

 

 「いや待ってみんな、今回は僕が悪いし頷いちゃった以上ここはちゃんと筋を通さないと!幸い蓄えはあるし!」

 

 「なんでテメエが庇ってんだよボケ」

 

 おっとまさかのかっちゃんまで抗議側についてくれている。僕を救けようとしてくれるのはありがたいけどそれならもっと早く救けてほしかった。事件説明前とか。

 

 「ブフォッ!」

 

 そうして僕と耳郎さん対オールマイトとA組というおかしな構図になりつつある空間に突如吹き出す声が聞こえた。見れば耳郎さんが口を押さえて笑っている。

 

 「あ、あの、耳郎さん?どうしたの?口抑えて震えて」

 

 「ぷっ……くくく……!いやちょっと、緑谷が何故かウチ側についてるのがおかしくって……。あーもーごめん、冗談よ。ちょっとしたいたずら心、いくらなんでもそんな高いの奢らせるなんて出来るわけないでしょ」

 

 耳郎さんがそういって降参のポーズを取る。どうやら冗談だったようだ。

 

 「僕としては別に問題ないんだけど」

 

 「いや、そんな高いのウチが遠慮するから……。ウチもちょっと悪ふざけしすぎたよ。ごめん緑谷」

 

 「いやいや元はといえば怖がらせた僕が悪かったわけだし……ごめんなさい耳郎さん」

 

 「だからもう……あーわかった。んじゃあ訓練が終わったらジュースかなにか奢って。それでこの話は終わり!」

 

 謝罪合戦になりそうだったが耳郎さんが妥協案を出してきてくれた。それくらいなら全然問題ないので手打ちにしてもらう。

 ついでに女子全員にも奢っておく。みんな遠慮しているが一度承諾した手前有言実行しておかないと僕の方がこう、もにょる。

 

 そして僕の意を汲む形で向こうも承諾してくれた。女子達は棚ぼたに申し訳なく思いながらもなんだかんだで喜んでいるようなので何よりだ。

 もちろん尾白君の分も、と言ったら俺は気にしなくていいから耳郎さん達だけ奢ってあげてと辞退した。いい人だらけだな雄英。

 

 「これで一件落着のようだね!原因は緑谷少年だけど耳郎少女もやりすぎないように!」

 

 「すみません、ウチも以後気を付けます」

 

 そういって耳郎さんもオールマイトに謝罪し騒ぎは鎮火、こうして僕は無事許されることになり、講評に入るのだった。

 

 「テメエ緑谷奢ることで合法的に女の園に入る機会得やがってえぇ……!」

 

 そして君は本当ブレないな峰田君。勇者かな?

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 改めて講評が終わり次の対戦へと移った。あの後僕はもう少し相談するようにと、角取さんはノリに流されてしまってると、尾白君は自己犠牲は素晴らしいが後が続かないと、耳郎さんは苦手な攻め方をされたとはいえ混乱するのが早いと辛口評価を頂いた、八百万さんから。

 オールマイトは言いたいことを殆ど言われてしまったのか困っていて頑張って内容をひねり出していたのが微笑ましかった。

 

 そんなわけで気を取り直してお次は麗日、柳ペア対常闇、凡戸ペア。麗日さんがヒーロー側だ。

 開始と同時に麗日さんが色んな物を無重力にして柳さんが操作。外から二人がいる部屋に奇襲する手を使いそれが成功。当初は凡戸君が慌てて迎撃が遅れたが常闇君が一人と個性で二人を必死に足止め、持ち直した凡戸君が個性で柳さんの操る物をまとめて固着して常闇君が柳さんを捕縛する挽回をみせたが、その隙をついた麗日さんが自分を浮かせて確保に成功。ヒーロー側の勝利となった。

 

 「テーブルや棚が直接飛んでくるとか割りと悪夢だよね。それでも辛勝に持ち込んだ辺り(ヴィラン)側の二人も頑張って正解を掴んでいったのは良かったよ」

 

 「核ある部屋に物騒な攻撃すんなアホ、爆発したら地獄どころじゃねえぞ。糊野郎も窓に個性使って防御固めて警戒するかブラフ作れ」

 

 

 

 続いて青山、回原ペア対飯田、小大ペア。飯田君は(ヴィラン)側だ。

 二人の個性のシナジーは低いが個としては十分強い。まず小大さんが核を個性で小さくしてポケットに隠し持った。これで核の取得は困難になっただろう。

 次に飯田くんが壁や床を蹴り砕き出来た瓦礫を小大さんが個性で大きくしていくつも道を塞ぎ進路妨害を行った。これで足止めを続け焦ったヒーロー側が(ヴィラン)を抑えるより急いで核を見つけたほうが早いと判断させれば見つけられず勝てるだろう。

 だがそうは問屋が卸さない。悲しきかな相手はビームと旋回のペア、進路上の瓦礫を尽く砕いていき、予想よりもはるかに早く接敵。迎撃準備に遅れた(ヴィラン)側は防戦に陥ることに。

 その後個性を活かして攻防を繰り返したが、青山君のビームが小大さんに命中。飯田君がそちらに意識を向けたところを回原君に押さえ込まれ捕縛。小大さんもそのまま捕まりヒーロー側の勝利となった。

 

 「作戦は上手かったけど個性相性が出ちゃったね。少ない準備時間で作った妨害をあっさり突破されたら動揺しちゃうのも仕方ないか?」

 

 「だとしてもイチイチ動揺してんじゃねえわクソ眼鏡と無口女、すぐ切り替える努力くらいしろ。それと味方の立ち位置は把握してろ何度か流れ弾に当たりかけてたぞ」

 

 

 

 そしてラストは轟、吹出ペアと小森、峰田ペアだ。峰田君は(ヴィラン)だ。

 (ヴィラン)側は明らかに近接が苦手そうなペアでどうなるか不安だったが、二人の個性はそんなこと気にならないくらいえげつなかった。

 まず小森さんの個性がビル全てをキノコで覆いつくした。ただそれだけだがこれがなかなか厄介だ。まず内部の雰囲気ががらっと変わるため見慣れない光景に方向感覚が掴みづらい。多分四辻のど真ん中で回転すれば迷ってしまうだろう。

 そしてキノコは地面にもみっしり生えているせいで機動力が削がれる。さすがにあれだけあれば踏ん張りが効かず体力もじわじわと奪われるだろう。おまけにキノコで扉を覆いつくして見つけ辛くしている。

 そしてそんなキノコの中に隠れ潜む凶悪な一手、峰田君の個性のボールだ。

 粘着力のあるボールをキノコの山に仕込んでおけば無理に通ろうとした途端ボールに触れてしまい動けなくなりそのまま(ヴィラン)側のタイムアップ勝ちになるのは確実だ。パワー不足を補う見事な連係プレイだろう。

 

 ただ如何せん、相手がまた悪すぎた。

 

 かっちゃんの時は地力で食い破ったがこちらは個性で食い破る事に。見事なトラップハウスを作ったというのに轟君が全て台無しにしてみせた。

 訓練開始と同時にビルの壁を触れ個性を発動。するとビル全体が凍り付いた。これには僕も驚いた。威力や精度はスティーブンさんに遠く及ばないが瞬間的範囲ならこちらに軍配があがるかもしれない。これには来れるもんなら来てみろと言わんばかりに息巻いてた二人も凍てついて呆然としている。

 その後凍ったキノコやボールを砕いて悠々と核を確保することでヒーロー側の勝利となった。

 

 「もうなんていうか、可哀想としか言いようが……僕からみても面倒な作戦だったっていうのにこんな結果とかもう……」

 

 「マンガ野郎なんもしてねえじゃねえか」

 

 「「仲いいなお前ら」」

 

 我慢できなかったのか切島君と回原君が揃ってツッコんできた。否定はしない。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「みんなお疲れさん!初めての戦闘訓練だったがみんな大きな怪我もせず真摯にやりきって上出来だったぜ!」

 

 雄英初めての戦闘訓練が無事終了を迎えた。多少のハプニングや残念な結果はあれど、みんなコスチュームを纏い戦ったことで自分がヒーローを目指す一人の若者だと自覚してくれたことだろう。僕も今日のこの授業を糧にヒーローを目指すべく励んでいかないと。

 

 「さて、本当ならキッチリ時間を使いきって授業を終わりにしたかったが……思ったより時間が余っちゃったね。時間管理失敗しちゃったがまあ自由がウリの雄英、新米教師のミスも自由と思って許してくれ!」

 

 なんて思ってたらHAHAHAと笑い誤魔化してそんなことを言うオールマイト。貴方自身時間制限だらけの身体なんですからもう少し管理をしっかりしましょうよ。そんな思いを込めてジト目で見つめると眉をへの字に曲げ目をそらされた。申し訳ない自覚はあるようで。

 

 「せ、せっかくだし余った時間は無駄にせず有効活用をしようか!というわけで今からエキシビションマッチでもしないかい!?」

 

 「エキシビション?」

 

 「そう!余っている時間はだいたい一試合ちょい、今回組んだペアでこのチームとの対戦が見たい、あいつらと戦いたいってあっただろう。その要望をひとつ叶えようって訳だ!自薦他薦問わない。誰かやりたい人がいたら手をあげよう!ハイ!」

 

 説明を聞いたA組のみんなは理解すると同時になにそれいいじゃんと一斉に手を上げだした。アイツとやってみたい。不完全燃焼だからやりたい。デスマッチさせろと盛り上がりを見せる。なお僕はみんなの成長のために後ろで見守るに留めておく。

 またオールマイトが聖徳太子と苦しみのたまっている。そうなることはわかっていたでしょうに。

 かっちゃんを筆頭に好戦的な人は戦いたいと自分を、それなりに訓練を行った人は耳郎さんや小森さんなどまともに戦えてない人を推薦していく。そうやって誰が戦うか、多数決で決めようかという話に変わりかけたその時だった。

 

 「オールマイト先生ー。僕は出来ればー、首席や推薦の戦いとか見てみたいですー」

 

 「ん」

 

 凡戸君が何気なく発した言葉と小大さんの相槌がみんなの耳にすんなり入った。

 

 「……おお、確かにそうでありますな。首席といえばあの入試を一位で突破した実績を持っているのだ、そんな相手の戦いは必ずや参考になるでありますぞ!」

 

 「緑谷はギャー!って怖がらせたりヒョイヒョイ避けただけでわかりにくかったしやっぱ気になるよな!」

 

 あれ?なにやら話が僕のペアとかっちゃんのペアで戦う流れになってきているぞ。おかしいな、僕みんなの戦いを見守るべく隠れるように隅に寄ってたのにいつのまにか話の中心にいるぞ?

 

 「どうするデク君、みんな戦いを見たがっているよ?」

 

 「えぇ!?いや、あ、あのー、僕らよりもほら、推薦された二人の方が色々と参考になると思うんだけど……」

 

 「いや、俺はお前の実力を見ておきたいからいい」

 

 「わたくしもダメージがまだ残っておりますので参考に出来るかどうかわかりませんし、今回は辞退しますわ……」

 

 「えっ。……あ!つ、角取さんと切島君が疲れてるかもしれないし、そっちは―――」

 

 「俺は最初のほうだったし大した怪我もねえからいけるぜ!」

 

 「私も緑谷クンに背負ってもらってたデスから全然大丈夫デス!」

 

 Oh shit.(ちくしょう、)数少ない逃げ道は全部塞がれた。推薦組がそんな消極的でいいのか?轟君に至ってはなんか睨んでるように見えるし……いや、もしかしたら素かもしれないけど。クラウスさんとか素で睨んでるような顔してるし。

 まあ喚くのはこれくらいにしていい加減切り替えよう。相方はやる気満々で戦うというのなら僕も応えてあげないと。相手もかっちゃんのおかげでどこまで力を出していいかわかる分いくらか気持ちは楽だし。切島君は気を付けないといけないけど。

 

 「わかりました。そういう流れになってますしやらせていただきます」

 

 「う、うむ。あまり乗り気じゃなさそうだが大丈夫かい?」

 

 「いえそんなことはないです。ただせっかくの実践経験を積む機会ですし他に譲ってあげたいといいますか。僕はかっちゃんとよく手合わせしてますし、先に向こうで色々経験してますし。……世界の危機とか

 

 「(聞こえてるぞ少年)なに、君たちの戦いは必ず参考になるはずだ、期待してるぜ!……でもロールプレイは程々にお願いね?」

 

 「そこはかっちゃんとご相談お願いします」

 

 申し訳ないけどかっちゃんのことだから加減したらぶっ殺すとか言いそうなのでそれは確約できません。まあ本気でやると殺意高くなるし切島君が危ないので厭らしい手で留めておくけど。血の沼地獄とか。

 

 「ちっ、おいアホデク。クソ髪でも戦えるの出してやれ」

 

 「ほら、かっちゃんも本気で……って?え、今なんて?」

 

 「他の野郎にも経験積ませたいんだろが、だったら段階踏ませたれって言ってんだよわかんねえのか」

 

 「え?」

 

 え?

 

 え???

 

 えええええええ!!?

 

 なんと!かっちゃんが!あのかっちゃんが相方を気遣った!?「あのゲス煮込み定食独尊マシマシみたいな性格のかっちゃんが気遣うなんて今度こそ古代自立機構兵団モグルプドゥスが起動する前兆か!?」

 

 「途中から声に出とるわクソが!いつまでそのネタ引っ張んだッ!!」

 

 うっかり声に出してしまった僕にかっちゃんは卍固めを決めてきた痛い痛い痛い痛いやめてかっちゃんこれから僕ら対戦だよ!?ほらみんなもまたかよって顔してるし!ちょっとオールマイト止めてください!

 

 結局自力で抜け出すまで技は決められっぱなしでした。訓練前からダメージを与えるなんて卑怯だぞかっちゃん。




事件とか考えてたら話が全然進まない不思議。一応言っておくとメテオポリタン美術館はニューヨークに存在する某美術館とは一切関係ありませんし誤字でもありません。

※兄弟弟子のスリープラトン図
(縦列に並んで)
緑「Yeah!!」(バックドロップ)
ツ「Wow!!」(バックドロップ)
ザ「HyperBomb!!」(パワーボム)
レ「楽しそうだなあんたら!!」

前書きでUA30万突破とか言いましたし何か記念にそれっぽいの書くべきなんでしょうけど年末まで忙殺&そういうの書いたことない(そもそもこの作品が人生初書き)から思い浮かばないという哀しみ。ネタが……ネタが欲しい……!

【誤字報告】

めそひげさん。

誤字報告ありがとうございました。

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