My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
文字数が12000字超えたあたりで難航しだしたので分割していつもより少し早めの投稿。やはりネタに走ると筆の進みが早い。
本当はGW中に投稿出来たらなーなんて思ってましたがお仕事無理やり入れられて9割消滅したので無理でした。ふぁっきゅー。
「そこの君!オールマイトが雄英に就任してから周りはどんな―――!」
「オールマイトの授業は一体どのように―――!」
「ちょっといいかい!オールマイトが身近に存在するというのは―――!」
「オールマイトは普段生徒とどんな接し方を―――!」
「ずばり!オールマイトのことをどう思って―――!」
「オールマイトの食事風景とか―――!」
「うわあ……」
明けて翌日。今日も張り切って雄英へと登校をした僕だったが、学校の門前にごった返すように集まっている人たちを見て少しげんなりしていた。
手に持つはカメラにマイクに集音器、周囲には無断駐車の山。押し売りもびっくりの強引な質問攻めにもはや騒音公害とも言えるオールマイトの合唱。そう、マスコミの群れである。
なぜ彼らがこれほど雄英に集まっているのか、それは合唱でもわかる通りオールマイトが関係している。
オールマイトが雄英に教師として就任したという情報が公になり、ニュース関連はその話題で持ちきりになった。おかげで早朝からオールマイトにアポなしインタビューを、あわよくば視聴率の取れそうな生徒ならではの情報を引き出そうと躍起になっているのである。当のオールマイトは本日非番だと後で知るのだが。
もはや配慮という概念を海に捨ててきたかのような勢いをもって生徒達にマイクを向けまくる彼らは、例えるなら生麩に群がる
「あの中に行きたくないよかっちゃん」
「んじゃあ帰れや。俺からズル休みしたって言っておいてやる」
泣き言を溢すや横を歩いていたかっちゃんが即煽ってくる。いや行くけどさ、それでも少しは優しくしてくれてもいいじゃないか。
……いや、優しいかっちゃんとかかっちゃんじゃないから今のままでいいや。
「今しょうもねえこと考えただろテメエ……。ったく、こういうのにゃ慣れてねえのかよ。どうせテメエん事だから向こうじゃご当地ヒーロー様にでもなってチヤホヤされてたんだろが?」
「多少知られていたけどそんなことないよ……。今でもマスコミやパパラッチは苦手だ」
確かにあっちにいた頃は悪さをしてる奴をとっちめたり災害救助を行ったりと自主的なヒーロー活動―――正確には
ただライブラに所属する以上表に顔を出して余計なリスクを背負うわけにもいかず、取材に来るマスコミからよく逃げていたため相手をするのは別段慣れてるわけじゃない。いや、逃げることに関しては慣れているけど。
そしてパパラッチもまた厄介で、あちらはあちらで住所を特定して何日も張り込んではアレコレ情報を手に入れようとしてくる。
借りてるアパートには友達やライブラ関係者やストーカーが来ることもあるため変に深入りするとお互いいらぬ危険が降りかかりかねず、危機回避のためにも時には引っ越したりライブラ事務所やK・Kさんの家に泊まることもあった。
なおストーカーに関してはここでは割愛しておく。あまり思い出したくない。
そんなわけで僕は別段マスコミとかに慣れているわけじゃないというのをかっちゃんに説明して……知らんと返されそのまま校門へと向かっていった。ええい自分から振っておいてそれはないんじゃないかな……!?
とはいえこのままじゃ何も始まらないので僕も校門へと向かうとしよう。苦手ではあるけども撒く分には慣れているし。
「あ、そこの君達いいかな!オールマイト……ってあれ?君達もしかしてヘドロの……?」
「しかもそっちは失踪事件の?えっ!?君ら二人揃って雄英生徒!?これ面白すぎじゃない!?」
「やめろあっちいけや……!」
案の定僕らもマスコミに捕まりインタビュー攻撃を受けてしまい、しかも途中で僕らがヘドロ事件や失踪事件の当事者と気づかれるや囲まれ執拗なマイク攻めを受ける。あ、勢いのついたマイクがかっちゃんの頬に決まった。これにはかっちゃんもキレながら正論吐いてるぞ。
正論口撃にマスコミを後ずさらせており、ついでに何人かの生徒が今のうちと校門へと駆けていった。強かだな。
暢気にそんなことを考えてるとかっちゃんも校門をくぐったため今度は僕の方にマスコミが集中してきた。そりゃあ同じ当事者なら吠える獰猛な犬よりのほほんとした小型犬みたいな雰囲気を出してる僕の方が聞き出せそうと思うのは仕方がない。中身は闘犬より危険だけど。
「君!君失踪事件の子だよね!オールマイトのことと合わせてそこも詳しいことを聞かせて―――」
「
「へ?」
「
「へっ?えっと、お、オーケー?」
「
「あーごめんなさい!そろそろ他の子にもインタビューしないとー!ありがとねー!」
話を切り上げそそくさとその場から離れるリポーター達。相手にしてもまともに情報を得られないと判断してくれたようだ。
そう、これがマスコミ対策のひとつ、他国言語で適当な話題術である。僕の使える言語が日本語と英語のため両方わかる人には効果は薄いけど英会話を、それもネイティブなリスニングの早口で、ついでにコメディ番組みたいなテンションで喋るため慣れてない相手には効果大だ。
おかげで作戦はうまくいき、面倒くさい相手とわかってくれたのかマスコミは僕を避けてくれたため無事に校門をくぐることが出来たのだった。
「ん」
「あ、小大さんおはよう。マスコミ大丈夫だった?」
そして校門を同じタイミングでくぐったのか小大さんが隣にやってきて僕に話しかけてきた。せっかく会ったのだし教室まで一緒しよう。
「ん」
「あーわかる、オールマイト就任はおいしい話題ってわかるけどそれでもアポなしは酷すぎるよね。それなりの礼節を持ってほしいよ」
「ね」
「小大さんはちょっと乗り気でインタビュー受けたの?まあヒーローとしてマスコミ慣れする必要もあるし悪い事じゃないか」
「ん」
「でもノリノリで話してたのに何故かやっぱいいと言われて逃げられた?せっかく協力的なのに失礼だなその人……!?」
「ん……」
「えっ?インタビューの返答がつまらなかったのかなって?いやいや大丈夫だよ小大さんの話はしっかり伝わってると思うよ。きっとその人はいいのを撮ろうと躍起になりすぎて素人に完璧なインタビューを求めてたんだよ、だから小大さんが落ち込むことはないさ」
「ん!」
「どういたしまして。僕はあまり顔を出したくないから英語で関係ない事適当に喋って諦めさせたよ。ほら、昨日耳郎さんも言ってたゴールデンフロンティアって喫茶店、あそこのスイーツレビュー。本当に美味しいから一度みんなと行ってみてほしいな」
「だから一文字だけで理解しすぎだろ」
小大さんと登校しているとちょうど近くを通った回原君にツッコまれた。慣れだよ慣れ。君もそのうちニュアンスでわかってくるよ。
◆◆◆◆◆
無事教室についた後、みんなとマスコミの愚痴を言いあったりかっちゃん弄りをしているとチャイムが鳴り急いで着席、それと同時に相澤先生も入ってきたことでスムーズに朝のHRが始まった。
「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった。概ね予想通りの結果だったがまあ最初にしては悪くはなかった」
HRが始まる前に相澤先生から昨日の実践訓練の評価が下される。初めての本格的な訓練だったため生徒たちは緊張していたが、どうやらある程度の評価はいただけたようだ。ただしそこからアレコレと指摘されていき、何人もの生徒がガクリと項垂れていくのだけど。耳郎さんも怖がりすぎだと指摘されてしまっていて少し申し訳なく感じる。
「そして緑谷。実際の事件を体験させようとするのは悪くない……が、オールマイトから作戦の詳細を聞いたがやりすぎだ。最初から難事件を参考にするな、もう少し段階を踏みながら上げるようにしろ」
そしてやはりと言うべきか、僕も指摘された。確かに一回目は少し悪ふざけがすぎたし、二回目はビルを一つ使い物にならなくしたのだ、残念ながら当然か。
まあ事件自体は参考になるらしく、ふざけない限りは何も言わんと評価してくれたため、次はオールマイトやかっちゃん達と相談しながら作戦の引き出しを増やしていこう。とりあえず猿卓の騎士団事件とスーサイドラグビーも封印しよう。
一通り評価を終えた相澤先生は本題に入ると告げた。
「さて、それじゃあ急で悪いが君らに………学級委員長を決めてもらう」
『学校っぽいの来た―――!!!』
相澤先生の言葉に生徒一同歓声を上げる。声色に安堵の空気を感じるのは、また抜き打ちで何かをやらされるかもしれないと警戒していたからだろう。個性把握テストという前科があるため仕方がない。
「委員長やりたいです!ソレ俺!!」
「私も委員長をやりたいですぞ!」
「私もクラスのリーダーしたーい!!」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上三十cm!!」
クラスのみんなが学級委員長になるべく勢いよく手を挙げ立候補していく。普通のクラスだと委員長なんて雑務に近い存在、面倒くさがって率先してやろうとする人はあまりいないだろう。
だがしかしここはヒーロー科。他の生徒をまとめ上げる委員長という立場は、集団を導くというトップヒーローになるのに必要なスキルを鍛えるのにまさにうってつけなのだ。一部不純な動機に突き動かされてる人もいるが。
「静粛にしたまえ!!この職務は多を牽引する責任重大な仕事、周囲からの信頼あっての聖務だ!真のリーダーを決めるというのならこれは民主主義に則り、我々生徒たちの投票で決めるべき議案だ!!」
飯田君からひと際大きい声が鳴り響き、生徒たちの注目を集めるやそう提案した。みんながやりたいというのならみんなで決めるのは当然のことだろう。ここは民主主義の国なのだから。
『そびえ立ってんじゃねーか!何故発案した!?』
しかし悲しきかな、彼の右手が天に向かってそびえ立っているせいでどうにも締まらない。
「私らまだ数日の付き合いで信頼もクソもないんじゃない?」
「結局皆自分に入れるだろ?」
「だからこそここで複数票を獲ったものこそが真にふさわしい人間ということにならないか!どうでしょうか先生!」
「時間内に決めりゃ何でもいい、好きにしろ」
確かにこれほど我が強い連中が多いクラスなのだ。だからこそ複数票を手に入れた人物は自分の票を相手に与えるほど信頼出来る生徒なのだと納得出来るのもまた事実だろう。相澤先生もそれでいいと寝袋に包まりながら許可を出した。隙あらば寝溜めしてるなこの人。
ちなみに僕は辞退しました。理由としては現場ですでに経験を積んでるのと、僕自身が実働、遊撃などの一兵士として動く方が得意なためだ。それなら僕以外の誰かにやってもらってヒーローとしても指揮者としてもレベルを上げてもらった方が有意義だろう。
そうしてそれぞれ紙に書いていき投票を始める。僕が入れるのは飯田君だ。なにかと率先する真面目な性格といい先程の生徒を一喝で注目させる声量といい、統率に必要なモノを持ち合わせている。経験は積めばそのあたりはいくらでも補えるが、真面目という性格に関わるものを身に付けるのはなかなか難しいものだ。後メガネだし。
皆が投票を終え委員長が決まる。結果は……飯田君と八百万さんが2票タイになりました。飯田君が二票もいったい誰が!?と驚愕と喜びの入り混じった声を上げているが、その言い方だと君自分の票を別のところに入れたのかい……?やりたいだろうにそれでいいのか君は。
しかし一票は僕として、もう一票は誰だ?その疑問は耳郎さんがウチだねと答えたことで判明した。何でまた飯田君に?
「アンタ達気づいてないでしょうけどウチ実は入試の時二人と同じ試験場にいてさ。で、0P
どうやら彼女はあの入試の時一緒の場所にいたらしく、0P
その後八百万さんとどちらが委員長になるか、話し合いになったけど、八百万さんは「同点でも私の票は私自身の票も含まれてます。それでしたら二人分の票を得た飯田さんの方が相応しいかと」と譲ろうとして、それに飯田君が「それだと君に票を入れてくれたもう一人に失礼だ。ここは公正に決めるべきだ」と擁護し、いいから早く決めろと睨む相澤先生に急かされ、最終的にじゃんけんの末飯田君が正式に委員長になるのだった。
とまあここで終わればスッキリしたんだけど残念ながらそうはいかない。黒板を見てほしい。
飯田 T
八百万 T
緑谷 T ←
青山 ー
小森 ー
宍田 ー
……
「ちょっと誰僕に二票も入れた人?僕やらないって言ったよね?手慣れてる人に経験積ませてどうするのさ?ねえちょっと???」
何故か入れられた票に困惑を隠せず周囲に訴えかけると申し訳なさそうに麗日さんと飯田君が手を挙げた。
「あはは……ごめん、それ私だ。デク君手慣れてるしまとめるのとか得意そうだと思っちゃって……」
「す、すまない実は俺もだ。辞退しているとわかっていても、この中で上に立つのに相応しいとなるとやはり君だと思ってしまった」
ええい善意100%で反省してるとか許すしかないじゃないか……!
◆◆◆◆◆
時間は進んで昼休み。午後に向けて英気を養うべくみんなと昼食を摂りに食堂へ。昨日来た時から思ったが、あらゆる学科の生徒達が一堂に会するためか人の数がすさまじい。そんなに人が集まるというのに席を取り損ねるどころか余りあるこの食堂の広さもさらにすさまじくあるが。
今日も頼んだメニューはバーガー。もちろんランチラッシュにダイアンズ・ダイナーのバーガーを再現してもらい、食べてはどこまで再現出来ているか感想を送るためだ。再現にはまだかかるだろうけれど気長に待っていこう。向こうが善意でやってくれてるため催促する理由なんてない。
「あ、デク君今日もお昼はハンバーガーなんだ!好きなの?」
「
「アメリカのハンバーガーかー。私も一度はアメリカンサイズっていうのかな?食べてみたいなー」
「なるほど、食べながら戦えるか……。どこにいても常在戦場の心持ちを忘れない、その気骨はヒーロー活動経験者としての賜物か。やはり緑谷君が委員長にならなかったことが悔やまれる……!」
さすがに買いかぶりすぎだぞ飯田君。僕の場合お昼の食べ損ねからの二十一時間戦闘なんてことをもう二度としたくないから手づかみで食べれるものを選んでるだけで。まあバーガーにしてる理由はダイアンズ・ダイナーのバーガーが好きというのもあるけど。
それに君は僕らから信頼を勝ち取って委員長に就任したんだ。それを悔やんでたらそれこそ君が言ったように票を入れた僕らに失礼だよ。ほらそんな悩まずに前向きに自信をもって、就任祝いにポテト半分あげるから。麗日さんもどう?
「ありがとう緑谷君。そうだな、ここで駄々をこねても君たちにも、僕自身にも失礼なだけだ。信頼に応えられるよう僕も全力を尽くしていこう!」
「そうそうその意気……「僕」?」
……HRの時もそうだけど、飯田君時折一人称を僕って言うよね?もしかしてそっちが素?
「ちょっと思ってたんだけど、飯田君てもしかして坊ちゃん?」
「坊っ!?」
「切り込んだね麗日さん。後米粒ついてるよ」
もしかしてとは考えてたら麗日さんが颯爽と切り込んでいき飯田君が困惑する。逞しいというかなんというか、とりあえず口元の米粒取ろうか。違う違う下……あー待って取るから動かないで。
自分で取れるからとワタワタする麗日さんから手馴れた手つきで米粒を取る。こうしてるとK・Kさんの家に居る時を思い出すなあ。ケイン君ともこういうやり取りしたっけ。
こっちに帰ってきてから半年以上たつけどマーク君やユキトシさんも元気にしているだろうか。家族のように受け入れてくれたあの家は、僕にとって第二の実家のようなものだったから久々にあの一家に会いたいと思ってしまう。
閑話休題、視線を飯田君へ向ける。僕も少し気になったので飯田君さえ良ければ教えてもらおう。とは言っても別段隠す理由もないらしく彼の家庭を少々教えてもらった。
するとなんと飯田君の家系は代々ヒーロー一家であり飯田君はその次男坊、おまけに長男は大人気ヒーローであるインゲニウムときた!
前々から避難指示などそういうのに手馴れていたから親族にヒーローか警察がいると思っていたけどまさかそんな大物が出てくるとは。この事実を聞いて久しぶりにヒーローオタクに火が付き、早口で詳しい情報や好きな活躍などを語り、飯田君も驚きながらもお兄さんを褒められたことが嬉しいのか満面の笑みを向けている。
わかるよ、自分の憧れが称賛されるというのは我がことのように嬉しいよね。僕だってクラウスさんやレオさんがべた褒めされたらそれはもう嬉しかったりするし。
そうしてお互い終始インゲニウムのことで盛り上がり、ついでに飯田君からインゲニウムにサインを頼めたりしないかな?なんて少々邪なことを考えたときだった。
ウウ――――――――!!
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。繰り返します、セキュリティ3が―――』
「ッ!!」
突然の警報、そして雄英のセキュリティが突破されたという緊急連絡に、僕の身体は瞬時に警戒態勢に入ったのだった。
おまけ:一方ヘルサレムズ・ロットにて
「むっ!」
「んあ?どしたんすか姐さん?」
「今イズクっちが私の事考えてたわ……!」
「考えてたって……気のせいじゃないすか?」
「いーえ、今イズクっちが私のことを考えたわ!私にはわかる!だって私は!イズクっちの!
「いやマジ何言ってんすか姐さん?」
「も~イズクっちったら寂しがり屋なんだから~♪だけど駄目よイズクっち!貴方には
「……イズクの奴がいなくなってから、親バカが加速してんな姐さん」
「K・Kさんイズク君のことめっちゃ気にかけてましたしね。おまけに行き場のなくなったイズク君の分の母性がお子さん達にそのまま加算されちゃって、必要以上に構いすぎた結果親離れ始まっちゃったらしくて余計落ち込んでるのもあるらしいっすよ」
「……難儀やのー……」
【誤字報告】
大自在天さん。
誤字報告ありがとうございました。