My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
今回もお待たせしました。体調悪かったり太閤立志伝5DXやってたらこんな時間でした。いつものことです。10年ぶりにやった斎藤龍興プレイは楽しかった。
前回12000文字超えそうだからと区切ったくせにいざ次投稿したら14000字超えするという文字配分の下手くそさに悩む日々。書いてると出したいネタが追随してきて出来るだけ全部出したいなーなんて贅沢な考えしてるのが悪いんですが。
平穏な昼休みに突如警報が鳴り響き、非常事態とわかるや僕は警戒態勢へ切り替えた。セキュリティ3を突破とは、つまり部外者が侵入してきたわけだが、3はもしかしなくても結構内側になるのか?近くにいた先輩と思われる生徒を捕まえて何か知っているか聞きだしてみる。
「すみません先輩方!セキュリティ3ってどういう事ですか!?」
「えっ!?えーっと、たしか校舎に入ったあたりか、そこまで誰か侵入してきたってことだよ!この三年間で3どころか1すらを抜かれたことなんてないのに!」
それより早く逃げろと急いで避難していく先輩から最低限の情報は聞き出すことができたけど、校舎ということはもう目と鼻の先じゃないか。ここじゃそんなこともよく起きるのか?いや、三年間で初めてと先輩は言っていた。つまり早々に起きることじゃない、本当に非常事態であり最悪戦闘も視野に入れるべきか考える。
「痛っ!急に何が起きたの!?」
ああくそ、他にも情報は欲しいけど今はそれどころじゃない。なにせこの警報を聞いた生徒達が出口に向かって殺到しだしたせいで今僕らは人の波に飲まれかけてしまっているのだから。
「
「
このまま人の波に飲まれるのは危険なので血法を発動。瞬時に二人に血糸を巻きつけ波から逃れるべく天井まで引き上げた。僕もそれに続くように飛び上がり同じくぶら下がる。
「二人とも大丈夫!」
「うわわっ!う、うん大丈夫!デク君ありがとう!」
「すまない、巻き込まれずに済んだ!」
救助に感謝する二人だけど、これで助かったのかと言えばそうではない。警報は未だ鳴り響き下では避難と言う名の人の津波が起きているのだから。
一斉に避難する生徒たちを見て飯田君がさすが危機への対応も迅速だと感心しているが、もはや迅速を通り越してパニックに発展している。下を見れば食堂に来ていたクラスの仲間、かっちゃんや切島君も人の波に流されており、他にもそこから無理に抜け出そうとして、だけど押されてバランスを崩し転倒する人たちが……って転倒はまずい!?
「危ないッ!」
急いで血糸を飛ばし、二人の生徒が人波に呑まれる前に吊り上げ救助する。波から外れて落ち着くのも手だけど、転んでそのまま踏まれるようなことになっては冗談じゃ済まされない。良くて打撲や骨折、悪いと圧死なんてあり得る。そうなったら目も当てられない。
「君たち大丈夫?怪我はない!?」
「あ、ああ。悪い助かった。」
「ありがとう!ごめんセキュリティ3が突破されたって言ってるけど何が起きてるか知ってる?」
「校舎内に侵入者が現れたらしい!
パニックも問題だが何が侵入してきたかがわからないのも問題だ。出来れば外に出て確認したいけど、出入口はごった返して出るに出られない。後は窓だが、残念ながら開かない仕様のため破るしか方法はなく、そんなことをしてもパニックと被害を加速させるだけだ。
そもそも今の僕はヒーロー科在籍と言えど所詮なんのヒーロー権限も持たない一般生徒。仮に侵入者が
「!!みんなあれ見て!」
どうするべきか悩んでいると麗日さんが慌てて指を指し、揃ってそちらに視線を向けると窓の向こうで雄英敷地内に突撃している大群が目に映った。
「あれは……報道陣?なにかと思えばただのマスコミじゃないか!」
「それじゃあなんだ。ひとまず
どうやら侵入者はマスコミらしく、無理矢理雄英敷地内に入ってきたらしい。それを知って飯田君達は微かに安堵する。あれくらいなら先生達が警察でも呼んで追い返してくれるだろう。……だけど何故マスコミ程度がここまで?
気にはなるがそれよりもこの状況をどうにかするのが先だ。マスコミだとわかれば話は早い、みんなにそれを告げれば落ち着いてくれるだろう。
「皆さん落ち着いてください!侵入者はただのマスコミで「いってぇッ!」「ちょっと待って倒れちゃう!?」「そこ無理に押しのけようとしてんじゃねえ危ねえだろがクソがッ!!」」
収拾するべく声を上げるがパニックに陥ってしまってるうえ悲鳴と怒号に呑まれてしまって上手くいかない。後最後のひと際大きい叫び声、あれ間違いなくかっちゃんだな。こちらの声がかき消されてしまったが明らかに正論を言ってるようなので文句を言うに言えない。
ええいどうすればいい、そうこうしているうちにまた誰か倒れでもしたら―――、
「麗日君!俺を浮かせてくれ!緑谷君は俺が浮いたら個性の解除を頼む!」
「えっ?う、うん!」
「!わかった!」
悩んでいると飯田君が叫ぶや麗日さんに触れた。何かいい手を考えたのだろう、個性が発動して浮き出した飯田君の言う通りにするべく血法を解除する。すると飯田君は個性を発動し、すごい勢いで回転しながら飛んでいった。
「ヌオオオオオオッ!!?」
「「飯田君!?」」
「おい飛んでったぞ!?」
「えっ!?あれ大丈夫なの!?」
滅茶苦茶に飛んでいく飯田君に、一同予想出来ず驚き戸惑う。だけど何がしたいのかは彼の飛んでいった先―――食堂の出口上部だとわかった時理解した。
大声で叫べども適当な場所じゃ効果は薄いのはさっきの僕がいい例だ。ならばどうすればいいか?簡単だ、視線が行きやすく、かつ目立つ場所で大声を出せばいい。それなら自ずと効果は出る。そして何処がいいかと言えば先ほど言った通り食堂の出入口だ。皆そこに向かっている以上視線もそちらに集中する。彼の行動は最善といえよう。
ただあのままじゃ壁に激突してしまうな。ひとまず突龍槍を形成して投擲、彼を追い抜くや血のクッションに作り直し包むことで激突の衝撃を殺しておく。後ろでアレ追い抜くの!?と声が聞こえたけど聞き流しておく。
飯田君は覚悟していた痛みに襲われないことに戸惑うものの僕の仕業とわかったのかただこちらに向かって頷き、そして叫んだ。
「大丈―――――――夫!!皆さん、ただのマスコミです!パニックになるようなことではありません!大丈夫です!!!」
大声で叫ぶ飯田君は僕の声よりよく通り、パニックに陥っていた生徒達が前へと視線と耳を向けた。すると内容を理解した何人かの生徒が窓際からマスコミを確認して周囲に伝播、徐々に落ち着きを取り戻していく。これには僕も舌を巻いた。
すごいな飯田君。ヒーロー一家という環境もあり、場面場面でどうするかなど聞かされたこともあるだろう。それでも機転を利かせてほぼ満点の結果を出したのはひとえに彼の才能といえる。思えば入試の時でも受験者を避難をさせるのに彼の声量に助けられていた。
やはり彼を委員長に選んで正解だ。君は僕の方が相応しいと思っているだろうけど、今の君を見たらみんな君こそが相応しいと言ってくれるはずだ。それだけの力を発揮したのだから。
飯田君のおかげで生徒達も落ち着きを取り戻し、安全が確保された。後は警察かヒーローがやって来てお騒がせなマスコミを追い返すだけで無事騒動に決着がつくだろう。
……ただ疑問も残る。マスコミ達によるアポなし取材はこの際百歩譲ろう。僕だって
いや、そもそも何故マスコミが侵入なんて出来たのか?雄英ほどの学校ならセキュリティも相当だ、それを超えるとなると最悪法にいくつも触れて、ヒーローや警察のお世話になる可能性だってある。彼らを敵に回すのは向こうだって不味いのはわかっていよう。
……どうしてこうなったのかはわからない。だけど
(今日はオールマイトの術式付与の予定があるしちょうどいい、一緒に相談してみよう)
心に一抹の不安を残し、昼休みの続きが始まるのだった。
◆◆◆◆◆
あれからすぐに警察が到着、マスコミを退去させたことでこの一件は落着と相成った。生徒達も無事終わったことで緊張が切れたのか各々マスコミに対して人騒がせだ、飯が台無しだと愚痴をこぼし始める。警察の到着でもう降ろしても問題ないと判断した後みんなを降ろしていき各々が身体を伸ばし一息つく。僕も麗日さんに飯田君の回収をお願いすることでようやく人心地を付けるのだった。
「ふー、マスコミはどこの国でも厄介だな……それより大丈夫?えーっと……」
「助けてくれてありがとね。私は拳藤一佳、ヒーロー科1年Bクラスの生徒だよ。
まったく参ったよ、あんなパニックになるなんて。みんな全然聞く耳持ってくれないし、むしろ押し流されて倒れちゃうし」
「あれは仕方がないよ、多分先生がいても大変だったはずだ。僕は緑谷出久。ヒーロー科の1年Aクラス。よろしく」
救けた生徒の一人は同じヒーロー科の同級生だった。どうやら彼女も最初は収拾をつけようと躍起になっていたようだけど、能わずそのまま流されたようだ。
まああれを無理にでも止めるとなるとそれこそ力技になる。例えばクラウスさんみたいにその場にいる全員に怒気を当てて強制的にビビらせて鎮めるとか。後はオールマイトみたいなトップヒーローなら難なく収めれそうだけど……いや、オールマイトが来たら別の理由で収拾つかなくなるか?
「さっきの二人も同じヒーロー科?さっきの彼すごかったね。個性を活かしたのもそうだけどあんな無茶苦茶な動きじゃ受け身も取れないで激突するだろうに度胸あんじゃん。そこを緑谷が咄嗟に補ったのも上手かったし、息ピッタリだね三人とも」
「その称賛は向こうの二人、麗日さんと飯田君に。僕はヒーロー活動経験があるから出来たことだよ」
「謙虚だね……っていうかヒーロー活動経験者なの?」
「うん、去年
「ニューヨーク……ああ、緑谷ってもしかして去年の失踪事件の?」
「あ、はい。やっぱ気づいちゃう?」
「ニューヨークて言っちゃったらね。あの事件は有名だし、同い年の失踪だったから印象に残ってるよ。他にもヘドロ事件の乱入動画とかも上がっててそれも合わせて、ってのもあるけど」
ヘドロも合わせて有名なのか……。そりゃああの時失踪してた少年が突然帰ってきて友達を助け、さらにはオールマイトも参戦して天候を変え、最後に僕がヒーローに土下座をかまして呆れさせたのだ。印象も大きければ面白映像として使えなくもない。ライブラの一員としては顔が売れるのはちょっと抵抗があるけど。
余談だけど関連動画の中に僕が
「……ヒーロー科か」
拳藤さんと話してると救けたもう一人の生徒がやってきた。ムスっとしているのは無視しているように感じたからかな……?
「ご、ごめん無視してるみたいになっちゃって。怒っちゃった?怪我はない?」
「いや別に怒ってねえけどよ。えっと、助かった。俺は心操人使……1年C組、普通科だ」
助けた少年、心操君が慌てて自己紹介をしてくれた。これに僕と拳藤さんも改めて名前とクラスを告げるとまた眉間に皺を寄せている。な、なんか負のオーラみたいなのを感じるというか……、け、拳藤さん、僕なにかやっちゃいました?え、別にしてない?じゃあ何故?
唐突に不機嫌になった心操君にどうすればいいのかわからず焦ってしまう。が、向こうも故意じゃなかったのか訂正してくる。
「あー、すまねえ悪気はねぇんだ、ちょっとな。……お前らあの試験に合格したんだなって」
「試験……って雄英の試験のこと?」
「まあ私らヒーロー科にいるから受かってるけど、ってことはそっちも試験に?」
「……俺は実技で落ちたがな。言い訳になるが、個性の相性が悪かった。……お前はいいな、恵まれた個性を持ってて。その個性なら他にも色々出来んだろ?」
心操君は僕の個性、というより血法を見て汎用性が高いとわかったのか羨ましがる。まあ本当の個性はピーキーで、直接戦闘能力もないんだけど。
ただ血法は色々出来るけれどそこに至るまでが地獄だよ。コンマ単位での形成とか最初のころは全然できなかったし、維持も操作も大変で途中で崩しては血を無駄にして何度貧血で倒れたことか。
同強度の武器形成をし続ける修行とかよくさせられたものだ。あれ最初のころはすぐに精神が参るしわずかでも比重を崩すと師匠のアイアンクローが飛んできて今度は肉体が参るという負の連鎖に嵌るし…………やめてください師匠締め付けられたら余計集中が出来な痛あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!
「え、ちょっと大丈夫?すごい顔してるよ?」
「うへッ!?あ、いや大丈夫気にしないで、思い出し萎縮だから!そ、それより相性が悪かったっていうけど心操君はどんな個性を持ってるんだい?」
またもや修行時代を思い出し、トラウマを再発しかけたところを拳藤さんに呼び戻される。あ、危ない危ない。
気を取り直した僕は誤魔化すべく会話の続きをと心操君の個性を聞いて……再び眉間に皺を寄せられてしまう。Oh……、もしかしなくても地雷踏んでるぞ僕。何をやっても裏目に出てるな今回……。
「……洗脳」
「えっ?」
「俺の個性は洗脳だよ。標的へ問いかけて、相手がそれに返事すると洗脳出来て操れる。……あの試験内容じゃ役には立たなかったけどな」
目を逸らし、苦虫を噛んだような、辛そうな表情でそう説明をした心操君。
洗脳……それも聞いた感じ条件も緩くかなり容易に相手を操れる。そして入試で役に立たなかったということは機械には効かず、人ないし生物特化といったところか。なるほど……。
「ヒーロー科を落ちたのがすごくもったいない個性だ」
「だね」
「は?」
僕らの反応が予想外だったのか素っ頓狂な声を出す心操君。僕としては逆に何故そんな反応になるのかわからないぞ。
「だってそうでしょ?問いかけと応答だけでお手軽に洗脳出来るんだよ?例えばある日銀行強盗が発生、
「例えにしても盛りすぎじゃねえか?」
「……
「例えはともかく、
「隠し通路やアジトへの道案内、ちょっとした囮や騙し討ち同士討ち、偽情報と合わせて協力関係にある
これダニエル警部補が聞いたら使える権限なんでも使って囲えお前らー!って部署総出で勧誘してきそうだな。……万が一の
しかし挙げていけばドンドン利点が出てくるな彼の個性。勿論内容の中に出来ないものがいくつもあるだろうけど、それでも僕の個性より圧倒的に便利で優秀だ。
僕の
それに比べて彼の個性は初見ならトップヒーローでも完封出来る可能性がある。もちろん二回目はないだろうけどその一回がどれだけ大きいかはわかるはずだ。
僕らの評価を聞いた心操君はポカンとした表情を浮かべる。特に変なことは言ってないはずだから問題ない、はず。さっきから何度も会話が裏目に出てるから今はその表情やめてほしいな……。
「……俺の個性聞いてそこまで考えて褒められたのが初めてで、ちょっと驚いただけだ。普通洗脳なんて個性、悪い事し放題だって言われるからよ」
ああ、なるほど。彼のあの苦虫を噛んだような表情の理由がわかった。
確かに他者を操るなんて個性、一般から見たらまるで
「じゃあ一つ聞くけど、君はその個性を悪用したことや、しようと思ったことある?」
「したことねえしする気もねえよ。こんな個性でもヒーローになりてえ夢はまだ見てんだ。なんだと思ってるんだ俺のこと」
だけど彼は悪用したこともする気もないと即答した。その気になれば完全犯罪も可能なほどの潜在能力も備わっている個性を持ってるのにだ。洗脳という個性を発現させて十余年、その仄暗い魅力に負けず己の矜持を貫くことがどれだけ難しいことか。
僕なんか四歳で挫折を覚え、あの街で夢を折りかけ、だけどみんなに支えられてようやく持ち直したというのに、彼は一人でここまで耐え抜いたのだ。
「そっか。……強いな君は。それこそ、僕よりも」
「何だよいきなり?世辞はいらねえぞ」
「お世辞なんかじゃない、事実だ心操君。確かに身体に関しては強いと言えないけど、君の未だ折れず前を見てる心の強さは間違いなく僕より強い。その強さは身の強さの何倍も重要なことで、簡単には備わらないことを僕は知っている。
その心の強さを持って今なおヒーローを目指す限り―――君は間違いなくヒーローになれる」
「……!」
「だから自信を持って心操君、僕は君を応援するよ」
彼を見てるとレオさんを思い出す。絶望に打ちひしがれてなお光に向かって足掻き続け、友を、妹を、果ては世界も救ってみせた、僕の後輩にして尊敬する
……ただ身体は今すぐにでも鍛えた方がいいけどね。確かに彼はヒーローになれるだろうけど、それでもそのヒョロい身体のまま目指せるほど甘くはない。僕の鍛錬に少し付き合わせてみるか?
僕の言葉に心操君は驚いたような、呆れてるような、照れてるような……複雑な表情を見せ、と思えば頭を掻いて顔をそむけた。拳藤さんも僕を見てなにやら感心しているようで、そんな二人の反応を見て少々気恥ずかしくなる。
「初対面によくそんな真顔で恥ずかしいこと言えるなお前……」
「まあそこは正当な評価をしただけというか……恥ずかしいこと言ってる自覚はあるのでそこはつつかないでくれると助かります、はい」
「なんだそりゃ。……けどなんて言うか、嬉しいっつーか、元気出たわ。あんがとよ」
応援が効いたのか、少し嬉しそうに顔を綻ばせ、目に力が入ったのがわかる。彼のような心が強い子がやる気に満ちてくれるというのはいくらでも化ける可能性があるし、なにより未来の頼もしいヒーローが生まれるかもと思うと喜ばしい限りだ。僕も負けてられないなと気合いが入る。
「しかしそこまで高く評価してもらえるとはね。試験合格者の余裕ってやつか?」
「合格者と言っても所詮ルールありきだからそこまで誇れるものでもないよ。実戦よろしくなんでもありなら僕も足元を掬われた可能性もあるし、そうなると僕も普通科にいたかもしれない。そうなると今年の首席も例年通り一人だったはずだよ」
「あ、そっか。今年首席が二人もいるんだよね―――っていうかその口ぶりからして緑谷が首席の一人?」
「うん。かっちゃん共々今年の一年首席をやらせてもらってるよ」
「いやかっちゃんって誰さ」
うっかりあだ名で呼んでしまいツッコミをもらったため言い直しておく。ついでに幼馴染と言ったら心操君に現実は小説よりもなんとやらかと驚かれた。拳藤さんがちょっと戦力偏りすぎじゃない?と少々不満を漏らしていたが、そこは先生方の話し合いの結果だろうから僕にはどうしようもないよ。というかかっちゃんを僕から離したらお守りが大変だよ?
「おいコラアホデク、素でかっちゃん言ってんじゃねえ」
「あいたっ」
後ろからゴリッと蹴りが入り、振り向くとそこには案の定かっちゃんがおり、続くように麗日さん達もやって来た。
「あ、いたんだかっちゃん。てっきりさっきの波に押されて食堂の外に流れていったと思ったけど」
「あんなもんで流されるか踏ん張って耐え切ったわゴラァッ!!」
「お待たせーデク君。ちょっと戻るのに時間かかっちゃった」
「お疲れ様、時間かかってたけど何かあったの?」
「スルーしてんじゃねえ!!」
あんな騒動の後ながらこれだけキレが良ければ心配はいらないな。流したのが気に入らなかったのか関節技をかけようと掴みかかってくるけどヒョイと避ける。さっき僕の背中蹴ったんだしおあいこだよおあいこ。
はいはいムキになって掴もうとしてるあたりまだまだ甘いぞかっちゃん。そのフェイントは詰めが甘いし目線で軌道が丸見えだ。
「私はちょっと寄り道しただけ。私より飯田君のほうが先輩たちにもみくちゃにされてて大変だったよ。」
「収めたことに感謝を述べられていてな。皆の役に立てたのは嬉しく思うが、そのせいで二人を待たせてしまうことになったのはすまない。しかし俺だけでなく麗日君や緑谷君も褒められるべきだ。なにせ麗日君がいなければあの作戦は実行できず、緑谷君がいなければ壁の衝突で怪我を負っていたかもしれないのだからな!」
かっちゃんとじゃれ合いつつも理由を教えてもらう。結構時間がかかってしまったのはどうやら他の生徒たちに感謝されていたからのようだ。
本来なら他の先輩方、特にヒーロー科の上級生が先にアレコレ対処して落ち着かせるべきだろうそれを真っ先に機転を利かせて収めたのだ。きっと覚えがよくなったことだろう。ただ飛んで行ったのは明らかに危ないから、次回は事前に話してほしいところだ。毎回あんなにうまく守れるとは限らないからね。
……師匠が聞いたらこの程度寸分違わずやれぬ貴様の稚拙な技にもはや憐憫すら感じる、なんて言って罵りそうだな。あらゆる姿勢からの投擲精度を高める鍛錬もしておくか。
師匠のありがたい罵倒を想像して肩を落としている横で麗日さんと飯田君も二人に挨拶をはじめ、ヒーロー科の密度が倍になったからか心操君が肩身を狭そうにしている。頑張れ心操君、飯田君は真面目に話を聞いてくれるし麗日さんも全力で応援してくれるいい子達だからきっと君の理解者になってくれるぞ。かっちゃん?雑に煽ったり脅したりと教育に悪いのでまだやめておこうか。
なお当のかっちゃんはもういいわクソがッ!と叫んで関節をキメるのを諦めた模様。ふふん僕の勝ちだ。
「あ、そうだ!三人ともご飯大丈夫だった?」
麗日さんのその一言に三人揃って「あっ」と声を上げる。そういえば今お昼ご飯の真っ最中だった。とはいえあのパニックだったせいかあちこちで昼食が散乱しており、僕らのご飯も例に漏れずひっくり返って溢れていた。
ああ、せっかく再現してもらったバーガーが……ほとんど食べてないのに。注文しても食べる時間もなさそうだし、今日のお昼はお預けかな。お願いだからここから21時間戦闘になるような事態とか起こらないでくれよ……!
「よかった、買っておいて正解だったね!」
ハイこれ!と、そういって麗日さんは持っていた袋からパンを取り出して僕らに渡してきた。どうやらこの騒動でご飯がダメになってるかもと思い、購買部に寄っていたらしい。麗日さんの寄り道というのはそういうことか。こうなることを見越してわざわざ買って来てくれるなんて、なんて気配りが出来るいい子なんだ。
「天使かな?」
「て、天使って大袈裟だよ!?それにこれ爆豪君がどうせ飯駄目になってるだろうから買っといてやれって言って買ったものだし、お金も爆豪君からもらってるんよ」
…………え?あのかっちゃんがまたそんな気配りを?しかも代金まで払ってる!?どういうことかっちゃん!ヘドロについに浸食された?もしくはレオさんやデルドロさんがたまにザップさんに言ってた所謂デレ期とかいう奴なのか!?
「何考えてるかはこの際無視するが昨日のコーヒー代代わりだクソが……!!」
今にも噛み殺してきそうな形相でそう答えて、そういえば昨日もらってなかったなと納得。これ以上は藪蛇になるので話を切り上げ感謝を述べて頂くことにする。僕がもらったのはホットドッグ……いや、これはチリドッグかな?ビニールで簡単に包んでいるそれはどうやら雄英の手作りパンらしく、おまけにランチラッシュ監修とここでしか味わえない一品らしい。これには味が期待できる。
改めて頂きますと一口かぶりつく。うん、ソーセージの歯ごたえの良いジューシーさにスパイスがピリリと舌を刺激するが、辛さの奥に確かな旨味があって美味しい。さすがはランチラッシュ監修だ。
ただ些か辛すぎるような気がするのは気のせい…………、
「……じゃない、思ってるより辛い―――通り越して痛いんだけど!?水、水ー!」
「ふぇあっ!?だ、大丈夫デク君!?」
「み、水、出来れば牛乳……!なにこのかっちゃん専用チリドッグみたいなの!?」
「その爆豪君がデクの野郎火使うからか辛いの好きで買うならそれ買ってやれって言ってたから買ったんやけど……」
「
抗議しようと叫ぶもそこにいたはずのかっちゃんは忽然と姿を消していた。ええい最近露骨にみみっちいぞかっちゃん、ザップさんじゃないんだから!せめて食べ物でいたずらするならフォローのひとつでも用意してよ。僕だってかっちゃんのデスソースを入れ替えようとしてるけどお詫び用にちょっといい激辛ソースを今取り寄せている最中だって言うのに!
あたりを探してみるとちょうど食堂を後にするところだった。ちょっとかっちゃあああん!!と叫びながら走りだす僕に困惑する一同。麗日さんに至っては申し訳なさそうに謝っていたけど、大丈夫悪いのは全部バカっちゃんだから。
しかしなんてもの売ってるんだ雄英。明らかに劇物の類だぞコレ、買う人いるのか?え、人気商品?
「はは……あれが今年のヒーロー科首席達って、もうちょい憧れ抱かせてくれよ」
「確かに、あんなヘンテコなやり取り見てると幻滅とまではいかないけど、あんなのに負けたのかって思っちゃうね」
後ろからそんな会話が聞こえてくる。まあ首席二人がこんなチャランポランなやり取りをしていたら呆れてしまうのも仕方がない。
「……それでもアイツが俺にヒーローになれるって言ってくれたとき、ほんとに嬉しくなっちまったがな」
「うん、あの時の緑谷の目、あれマジだったね。あんな目であそこまで言われたら横で聞いてた私だって火がついちゃうってもんよ」
「だな……まだまだ先は長いだろうけど、ぜってえヒーロー科に入ってやる」
「私も、A組に負けないんだから」
……次に僕の応援が思ったより効果があったことがわかるような会話が聞こえ、締まらないながらも奮起してくれたことに少し嬉しく思う。二人がこれからどう成長し、僕らに立ちはだかってくのか、共にヒーローを目指すライバルとして少し楽しみだ。
まあそれはそうとして
◆◆◆◆◆
午後はかっちゃんをチキンウィングフェイスロックで締め上げたこと以外これといったこともなく無事学校が終わり、オールマイトの家にやってきた。昼の相談もあるけど、斗流の術式付与や朝のHRで指摘された部分の相談も兼ねている。
前も言ったが血液の操作や変換には術式が必要で、もっとも効率よく操作するなら心臓と丹田に直接術式を刻み込むのが最適だ。ただ直接身体に刻むそれは負担も大きく激痛を伴うためオールマイトの体調に合わせて行っていかなければならず、進みが遅かった。
「そんな術式付与もようやく今日で終わりそうですね。これまでは刻んだ術式を慣らすために精神統一と軽い運動だけでしたがこれからは血流操作をメインにした修行に移行できます。疑似臓器を形成できる日も近いですよ」
「そうだね痛ッ私としても胃が作れるようになればうれしいよ痛ッ。まああのメニューをこれからやらないといけないと思うと師匠との修行を思い痛ッ出して震えがなかなか止まらないけどね!倒れかけるまで血を出して痛ッそれを体内に戻すって命の危険を感じるんだけど?痛ッところで緑谷少年、もう少し優しく出来ないかな痛ッ」
「僕の時はそこから常に武器の形成、維持、分解、体内に戻すって工程をひたすらやってましたよ。師の制裁と罵倒付きで。
それと直接術式を刻み込む激痛を「痛ッ」程度で済ませてるあなたを見て痛覚がちゃんと機能してるのか疑問を感じるんですが。骸骨みたいな見た目してますし実は死んでます?」
「辛辣ゥッ!」
髪ほどの細い血針を体内に刺して内部に直接術式を刻むそれは体内に針が動き回るため激痛を伴い、大の大人でも泣き出してしまう。おまけに麻酔を使うと効果が悪くなるため使うことも出来ない。控えめに言っても地獄である。
無論僕も個性に頼りきらず師匠に施してもらったが、激痛で気絶と覚醒を繰り返したそれは、
おまけに僕が施された時は時間がもったいないからと複数の血針を駆使して一度に全て刻みこまれて、泣き叫んでは泡吹いて発狂もして……二カ月半の修行のおかげで施術に耐えれる肉体だったから死ぬようなことはなかったけど、それでも師匠に罵倒されながら針が体内を蠢き続けるそれは珍しく恨み言のひとつも出かけて……あーやばい思い出したらお腹痛くなってきた。
とはいえこの付与があったおかげで土台の大切さを文字通り身に刻めたし、オールマイトにも同じように付与が出来るため決して無駄ではない。
……そしてそんな施術を悲鳴どころが普通に会話する余裕があるのはさすがNo1ヒーローというべきか、痛覚生きてるのかと思うべきか。なんで僕の周りにはこうタフネスお化けの類が多いんだろ。クラウスさん然りかっちゃん然り。
「君の師匠も鬼だけど君も大概だよね?なんか私に対する扱いも雑というか、君一応私のファンだよね?」
「もちろん今でも僕はオールマイトのファンですし尊敬もしていますよ。まあ遠慮がなくなった自覚はありますが。ただそこはこちらが斗流を教えてる立場というのもあるといいますか、弟子に容赦しないのが斗流の流儀といいますか。
……それに最近は馴れが過ぎてNo1ヒーローというよりも、近所のやたらフレンドリーなご当地ヒーローって印象が強くなってしまったというのもあります。……よし、これで終わりです」
「う~ん遠慮なく付き合えることはいいことなんだけどちょっと複雑あ痛ッ!」
最後の一刺しで大きい痛みが伴ったのか軽く吐血し体を強張らすオールマイト。血針を抜き取り残る痛みを落ち着かせると、次第に収まり息も整いだした。
「はい、これでようやく術式完成です。お疲れ様でしたオールマイト」
「あ、ああ、少年もお疲れ……ようやくこの痛みから解放されるのか。活動時間を延ばすためにやり始めたはずが、これのせいで寿命ごと縮んでるような気がして内心ビクビクしてたんだよね私」
やはり気遣ってはいたけど回数を重ねる都合それはそれで何度も行われる拷問のような施術に恐怖していたらしい。だからといって弱ってる身体に一気にやろうものなら耐えきれず死にかねないので仕方のないことだけど。
「さて、術式が身体に馴染むのにまだ時間がかかりますし、休憩に入りますが……少しいいですかオールマイト?」
「どうしたんだい?」
実はと、昼に起きた騒動を話した。マスコミが雄英に侵入してきたこと、生徒曰くそんなこと三年間一度もなかったことなど。
ただそれだけならよかったけれど、昼以降も先生方が警戒していたこともあり、ただ事じゃないのが理解できた。そこでオールマイトに今までの経験で似たような出来事はなかったか尋ねてみる。それを聞くやオールマイトは少々悩みつつも、真剣な表情でこちらを見て答えた。
「……本当は一生徒である今の君に頼むべきか悩んでいたんだが、そこまで勘付いてるなら隠しだてするのは野暮か。……ここからは先生と生徒じゃなく、ヒーローとして話を……出来れば手を貸してほしい」
瞬間、意識が切り替わる。彼は僕を一人のヒーローとして接することはあってもヒーローとして手を貸してほしいと言ったことは一度もない。未だヒーロー免許を取得してないためそこは問題ないが、今オールマイトは免許の有無関係なく僕に頼ろうとしている。となると一人ではカバーしきれない、もしくは秘密裏に動いてほしいということか……?やはり昼の騒動はただ事じゃなかったようだ。
「わかりました、続きをどうぞオールマイト」
了承した僕にありがとう、ちょっと待っててと言うと少し席を離れ、ノートパソコンを持って戻ってきた。
「早速だけどこれを見てくれ。さっき雄英から送られてきた画像だ」
「ッ!……これは……?」
パソコンからいくつかの画像を開いてこちらに見せてきた。そこに写っているのは毎朝通る雄英の校門だったが、普段見る門と違う点を挙げるとすれば、幾重もの防御壁が降りており……その尽くが粉砕されているのである。
「雄英の防御セキュリティ、世間からは雄英バリアなんて言われている防御門……その残骸さ。最初にマスコミの話をされたとき、私目当てに無理矢理押し掛けて来たと思ったのだがどうやら単純な話じゃないようでね。校長からこの画像を持ち出された時、
「……」
「おそらく近いうちに他にもトラブルが、大きな事件が起きるかもしれない。もちろん警察や我々プロヒーロー達で対処可能ならなにもしないで構わない。だがそうじゃない時もあるだろう。例えば近くにヒーローがいなかったり、我々だけじゃ手が足りず、生徒達に被害が及びかねない時とかね。
……そこで君にはしばらくの間自分含め生徒達が危機的状況に陥ったとき、君の判断で動いて対処してほしい。その際発生する責任は出来る限り私が被ろう」
どうか頼めないかと告げる彼の言葉に、案の定ただのお騒がせで終わらなかったかと、まるで些細な出来事が芋づる式で凶悪犯罪や世界の危機へと発展していく
迷うことなく承諾する僕に感謝すると頭を下げようとしてきたが止めておく。近所のご当地ヒーローみたいとは言ったがそれでも目の前にいるのはNo.1ヒーロー、そう易々と頭を下げるべきではないし僕は下げられるほど出来た人間でもない。貴方は出来る手を全て打ってるだけですし、僕は一人のヒーロー―――まだ無免許だけど―――として協力するだけです。
なによりせっかくの学校生活を
「師の務めか……ふふ、とても頼もしいよ。ありがとう緑谷少年。……では、プロヒーローオールマイトの名に於いて、これから一定期間生徒たち及び君の生命に関わる危機的状況下限定で、君に個性使用による自由戦闘を許可する。どうかよろしく頼みます、お師匠さん」
「承知しました。全力で応えさせていただきます、愛弟子さん」
そんなやり取りにクスリと笑みを浮かべ、握手を交わし合意する。今回の一件、出来れば杞憂で済めばいいがそんな希望的観測はまず無理だろう。むしろ最悪を想定して動くべきだ。
さあ久々の秘密裏での活動だ。気を引き締めていくぞヒーローデク。
最初は普通に飯田君が頑張って終わらせるだけだったのが内なるダークもっぴ☆が拳藤ちゃん出そうぜ!って言ってきて、そこから内なるライトもっぴ☆が心操君も出してあわよくば強化フラグ立てようぜ!ってなって、欲望丸出しだな内なる俺と思いつつあれこれ書きなおしてた結果執筆メッチャ遅れたという事実。個人的には出久にクサい台詞言わせれたし満足してます。
【誤字報告】
灰虎さん。 御影鈴さん。 癒月るなさん。 タイガージョーさん。
誤字報告ありがとうございました。