My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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知り合いが「オープンでやりごたえあってキャラクリ出来る、ぶっちゃけエルデンリングしてみてえ」と呟いてたからエルデン沼に嵌れとゲーム投げつけたら困惑してたので第三十話です。

最近アニメヒロアカの資料欲しさにネットフリックスに登録。これでアニオリ回とかも見れて話の構成に使えそうだと思いつつも、ずっとスプリガンとウィッチャーばっか見てます。なんでさ。


第30話:私まだ死にたくないッ!!

 

 「で、なにか弁明はありますかオールマイト?」

 

 「ごめんなさい」

 

 

 ハロー、スティーブンさん。元気ですか?僕は元気です。

 時刻は昼休み、現在僕は仮眠室にいるオールマイトとお話しています。

 

 オールマイトから限定的な戦闘許可を頂いてから数日が経過しました。先生達は平時通りを装っていますが生徒達に悟られないよう警戒はまだ続けており、視線だけをあちらこちらへ向けているのを時折見かけます。

 一方生徒達はと言えばマスコミの件は人騒がせな大人達、反面教師のいい例など悪し様に言い放ちちょっとしたイベント程度の扱いで済んだようです。もしかしたら上級生たちはそうじゃないかもしれないですが、そちらは先生に任せて僕は一年の守りに集中。こういうとき情報を集めてくれるライブラの後方支援組のありがたみを実感します。

 ただかっちゃんが何か察知したのか何かあったんかと聞いてきた時は少々焦りました。向こうの癖で警戒しちゃってるだけだから気にしないでと誤魔化したら引いてくれましたが、それも半信半疑といったところでしょう。

 

 そんなこんなで翌日には雄英でテロでも起きるかもしれないと思い最悪の想定をいくつもしていましたがそんなこともなく、今のところは平和な学校生活を送れています。オールマイトも無理をするような事態にならないためか調子が良さそうです。

 

 「ただ調子がいいからってなんでも首突っ込むのはどうかと思いますオールマイト。通勤がてらの(ヴィラン)退治で他のヒーローの仕事を取ってしまうのもそうですけど、制限時間ギリギリまで活動するとか頭に詰まってるのは筋肉ですか?上部僧帽筋に脳みそ浸食されましたか?」

 

 「そ、僧帽筋はタイムリーすぎるからやめてくれるとありがたいのだが。でもほら、お節介はヒーローの基本だしそれを忘れちゃあNo1ヒーローの名が廃るというものだよ?」

 

 「なるほど確かにそうですね、その考えは素晴らしいですさすがNo1。本業である教師のお仕事を疎かにして先生達に迷惑をかけてでも勤しむその姿はまさにヒーローですね、感動しました」

 

 「ごめんなさい」

 

 毒を吐く僕の言葉にゴフリと吐血し申し訳なさそうに謝るオールマイト。……まあ仕事の横取りに関しては僕も言えた立場じゃないのですが。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 何故オールマイトが緑谷に説教を受けているのか、少々時間を戻して説明しよう。

 時刻は七時。市民達が起床し通勤通学を行う時間帯。平和な街の一角で(ヴィラン)犯罪が起きた。

 相手は指名手配(ヴィラン)である「僧帽ヘッドギア」。連続強盗殺人犯として界隈で名が知られており、涙を流した市民は数知れず。そんな(ヴィラン)が今朝発見され逮捕するべく折寺のヒーロー達がすぐさま接敵。(ヴィラン)側としては対応の早さに驚いたが自分もまた名のある(ヴィラン)、そんじょそこらのプロヒーローに後れを取る気はないと内心息巻いた。

 

 「ウルシ鎖牢!今だMt.レディ!」

 

 「オーケー喰らいなさい!キャニオンカノンッ!!」

 

 「おぶぱっ!?」

 

 だがその考えは早急に裏切られることとなった。

 最初に対峙した相手はMt.レディとシンリンカムイ。去年デビューしたてのヒーロー達だ。(ヴィラン)もこの程度のヒーローなら何度も返り討ちにして逃げおおせており、今回も容易に逃げれると考えていた。

 しかしヒーロー達は(ヴィラン)を確認するや問答無用と言わんばかりに、鬼気迫る勢いで(ヴィラン)へ必殺技―――Mt.レディは個性不使用のためただの飛び蹴りだが―――を放つという予想外の行動をとった。前口上もへったくれもない、開幕全力全開だ。これには(ヴィラン)も困惑を隠せない。

 

 「て、テメエら警告すらなしでいきなり技使うとかヒーローとしてどうなんだ!?」

 

 「つまらぬことを、貴様らのような指名手配に至った(ヴィラン)がハイわかりましたと言ってお縄につくなどと思っておらん!」

 

 「確かにそうだがそれでもこうなんだ、ヒーローの流儀っつーもんがあるだろ!?ヒーロー見参!みたいなのがよ!?」

 

 「うっさい!いいからこのまま逮捕されなさい!あんたみたいタフそうなのがしぶとく逃げられちゃまーたあのモジャっ子に手柄を取られかねないのよ!」

 

 「なんか理不尽じゃねえか!?」

 

 訳の分からない理由にツッコミを入れる(ヴィラン)。ここ折寺では少年……緑谷に手柄を奪われるという珍事が度々相次いでいるのだが、別の街や県から流れてきた(ヴィラン)である彼にそんなローカル珍事なぞわかるはずがない。

 無論緑谷の行いがわざとではないのはわかっているが、それでも結果的に手柄を頻繁に奪われているのは事実で、特に懸賞金のついた指名手配(ヴィラン)も数名横取りされているためヒーロー側のショックは大きい。

 

 そうして手柄を奪われることになりやすい折寺のプロヒーロー達は、一部ではドンマイと同情され、一部では珍事に笑いを誘い、そして極一部では子供に後れを取るヒーローと嘲りを受けていた。これに折寺のヒーロー達は名誉挽回するべく、意地でもあの少年が関わるよりも早く(ヴィラン)事件を解決していくぞと躍起になり、それが巡り巡ってヒーローたちの戦闘力の底上げと連携の強化に繋がっているのは皮肉だろう。

 

 ヒーローと(ヴィラン)が口論している間にも追加のヒーローが参戦し、一斉に(ヴィラン)に襲い掛かる。その気迫に名のある(ヴィラン)と言えど後ずさってしまうが、負ければ逮捕され刑務所行きのため必死で抵抗する。

 しかし折寺のヒーローたちの連携の方が何枚も上手だった。こちらの攻撃は次々防がれ、しかし向こうの攻撃は防ぎきれずダメージが蓄積される。発達した筋肉がある程度を守ってくれるが、ジリ貧なのに変わりはない。このままでは成すすべなくやられてしまうだろう。

 しかし天は(ヴィラン)に味方した。ちょうど逃げていた先に子供連れの親子がいたからだ。しめたと、その幸運に感謝し親子を人質に取った。

 

 「それ以上近づくんじゃねえヒーロー共!この裕福そうな家族ブッ壊されてもいいのか!」

 

 「ええいなんて卑怯な!」

 

 時間をかけすぎてしまったせいで(ヴィラン)に好機を与えることになってしまい狼狽するヒーロー達。さすがに人質を取られてはそう易々と攻めることが出来ず悪態を吐きだす。……ただかのモジャっ子(緑谷)が人質になった時ほど嘆いてはいないのは如何と思うが。

 

 助けてと叫ぶ家族を締め上げヒーロー達から後退を続ける。人質は十全に機能し、このまま逃げおおせてやると希望を持ち出した。

 

 

 しかし彼の幸運もここまでだった。

 

 

 「もう大丈夫だファミリー」

 

 どこからかドドドドと地鳴りが起き、

 

 MISSOURI SMASH!!(ミズーリースマッシュ)

 

 「アバッ!?」

 

 一陣の風とともに一人のヒーローの手刀が(ヴィラン)の延髄を一閃。カーンという音が響き(ヴィラン)、僧帽ヘッドギアは地に沈んだ。

 

 「何故なら私が、通勤がてら来た!」

 

 現れたのは我らがNo1ヒーロー、オールマイト。彼の登場により歓声が沸き起こり、同時に指名手配(ヴィラン)の逮捕劇は終幕するのだった。

 

 

 「ありがたいけど……」

 

 「我ら廃業してしまう……」

 

 

 余談だがその日、朝から地元ヒーローたちの涙声と民衆のドンマイコールが響き渡るのだった。ドンマイ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 とまあそんなことが今朝方あったらしく、おまけにその後ひき逃げ、コンビニ強盗、集団恐喝、ネコ探し、人質立てこもり、(ヴィラン)同士の抗争、etc……と隣町をも股にかけて解決していった結果大遅刻だけじゃ飽きたらず本日の制限時間もほとんど使い果たしてしまったというわけだ。……二時間ちょいの活動時間をほとんど使い切るとか馬鹿かと言われても反論できませんよ?相澤先生が聞いたらどんな反応をするやら。

 

 「誰かのために身を投げうつその自己犠牲精神は称賛に値しますけど、教師としては失格もいいところです。あなた前に自分以外のヒーローもたくさんいるっていったでしょうに、なのにそちらに任せずなんでもかんでも自分がでしゃばるのはどうなんですか?おまけに体力に余裕がないせいで今日の修行はお休みしないとダメですし―――」

 

 「で、出来ればそろそろ勘弁してくれないかな。本当に悪く思ってるし、君の声の圧が他のお師さんを思い出して半端なく怖いっていうか……」

 

 二十にも満たない子に説教されるのが大分堪えているのかオールマイト(馬鹿弟子)が弱々しく懇願してくるが無視。そもそもあなた警戒してる状況で制限時間を削ってる行為がどれだけ周囲に迷惑をかけているのかわかっているんですか?いざとなったら僕が動くからってそれに甘えてません?快諾しましたがそれに甘えるんでしたらこっちもあなたの許可フル活用してバリバリヒーロー活動しますよ?

 

 「……いや、それだと僕もヒーロー達に迷惑をかけてしまうからやるべきじゃないか。いやまて、そもそも制限時間があるのが悪いんだ。それさえなければいつでも戦えるんだし。なら今は根本的原因であるそれを解消するのが先か?とするとどうするか……いっそオールマイトが何回か死ぬのを覚悟で師匠式の集中鍛練ツアーでもやらせてみるか?アレの完遂後の成長はすさまじいしうまくいけば半年以内に臓器形成だけじゃなくなんちゃって血法も可能かもしれないオールマイトなら何度も地獄や生死の境を彷徨ってるだろうし向こう(三途の川)に行っても懸衣翁さん達に僕の名前だせば保護してくれそうってあれあっちとこっちのあの世は一緒なのかなそれの確認も兼ねて一回か十二回程オールマイトに死ぬ鍛練をつけてみるのも手かも僕も師匠に二百以上臨死体験させられては生き返らされてる手前どうやったら蘇生するか身をもってわかってるしブツブツブツブツブツ……

 

 「本当に悪かったから帰ってきて少年!私まだ死にたくないッ!!」

 

 あれこれ考え込んでいると悲鳴をあげるオールマイトが目に移った。おっと考えてるうちに熱くなりすぎた。

 見ると座っているソファが揺れ動くほどガクガクと震えており、いっぱいいっぱいなのがわかる。さすがに脅しすぎたかとちょっと反省しつつ、溜飲も下がったので説教の締めに入った。

 

 「すみませんちょっとやりすぎました。口走っていた修行は行うつもりはないので安心してください。だいたいオールマイトにヒーロー活動を止めさせるのは至難の技でしょうし。……なによりそんなお節介焼きで分け隔てなく救おうとするオールマイトだからこそ僕は憧れて、ヒーローを目指したんです。止めるのは吝かでしょう。生徒としても師としても言いたいことも言いましたし説教はこれで終わりにしておきます」

 

 「しょ、少年……!」

 

 「だけど制限時間いっぱいまでヒーロー活動を行うのはやめてください。緊急に備えて三十分は余裕を持たせるように。次同じことやりましたら『私はヒーロー活動にかまけて教職を疎かにしました』って札を首からぶら下げて登校時間の雄英正門で正座してもらいますから」

 

 「ア、ハイ」

 

 許しはすれど容赦ない警告にオールマイトは委縮しつつ返答した。

 僕だって好きでここまで怒ってるわけじゃないのは理解してほしい。普段なら怒れど無茶をしないでと諫める程度で終わります。ただ僕の手まで借りてる時期に最高戦力が役立たずになってるというのが悪いんです。そこだけはわかってください。

 

 「ひとまず警戒を続けておきますんで今は休んで回復に勤めてください。変身できず午後の授業に出なかったせいで追加で相澤先生達に怒られるなんて嫌でしょう」

 

 「私も泣きっ面に蜂は嫌だからね、授業の終わりだけでも顔を出せるよう頑張るよ」

 

 昼休みも終わりに近づき最後に軽いやり取りをした後仮眠室から退出する。全く手のかかる御人だと呆れるが、おかげで色んな人が救われたのだと考えればまあ良いかとプラスに考えておく。師としても手のかかる弟子は何だかんだで可愛く思えるしね。まあオールマイトは可愛いじゃなくカッコいいだけど。

 ……きっと師匠も僕をしごく時はこんな気持ちだったんだろうな。

 

 でも次の修行はちょっと可愛がらせてもらう。とはいってもしびれ薬を静脈注射して全身に回ってダウンする前に分離して排出してもらうだけだ。失敗してもしばらく立てなくなるだけだし師匠みたいに罵倒もしない、致死性の毒を使わないとかいやー優しいなー僕!

 

 すっごい悪寒が!?という悲鳴を背中で聞きながら予鈴前に教室に戻るのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 キーンコーンと本鈴のチャイムが鳴り響き、それと同時に相澤先生が教室にやってきた。生徒達もすでに慣れたのか着席を済ませており、問題ないことを確認した後早速とばかりに話に入る。

 

 「さて、今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人入れて三人で見ることになった」

 

 その言葉を聞いて僕は内心苦笑いしてしまう。おそらく警戒のため複数のヒーローを置いて不安要素を取り除く手筈なのだろうけど……肝心のオールマイト(最大戦力)が都合来れないため二人で見張らないといけない先生の未来に少し同情してしまう。

 

 「先生、今日は何をするんです?」

 

 「今回は戦闘とは打って変わって救けること、災害水難なんでもごされの救助(レスキュー)訓練だ」

 

 そういってRESCUEと書かれた札をこちらに向けてきた。救助(レスキュー)訓練と聞いた生徒達一同はヒーローの本分だ!頑張るぞー!、俺岩場ならつええぞ、高いところならお任せと盛り上がりアレコレ話し出す。それもすぐさま先生がどすの聞いた声で静めたけど。

 

 その後軽い説明の後専用の建物へ向かうべく、戦闘服(コスチューム)に着替えた後移動の送迎バスへ。飯田君が委員長らしく規則正しく番号順に乗せていくが、見ればセミクロスシートだったせいで空回りする羽目に。ここは引率経験を得たと考えて割り切ろう。

 

 バスも動きだし目的地に付くまでみんなで楽しく雑談タイムが始まった。日常的な会話もあればどんな訓練をするのか、自分の個性でどこまで出来るかなど様々だ。僕らもお互いの個性の強みや派手さをアピールするように話していく。

 

 「俺の硬化は対人じゃ強えけど如何せん地味だかんなー、もっと派手に使えたらいいんだけどなあ」

 

 「そう?切島君の個性も使い方次第だと思うけど。硬化なんて限界定義が曖昧な個性となれば限界を決めるのはそれこそ自分次第だからいくらでも硬くなれるだろうし、極めれば兵器の弾雨を正面から突破するなんてことも出来るんじゃないかな?」

 

 「おお……まるで映画のワンシーンだな……確かにそれなら派手だし、限界は自分次第ってわかりやすい根性論もいいな緑谷!」

 

 「派手さと強さなら僕も負けないよ☆」

 

 「青山すぐお腹下すけどねー」

 

 みんなと一緒に和気藹々と派手な個性地味な個性と他愛のない話をしていく。青山君も対抗して自分の個性の派手さを伝えるけれども、弱点を指摘されて黙ってしまった。やっぱりお腹を下すデメリットは痛すぎる。向こう(H・L)ならエステヴェスさんを紹介してどうにか出来たかもしれないが、さすがにないものねだりだし、一緒に腹痛対策を考えてあげようか。

 

 「派手で強いと言いましたら緑谷氏と爆豪氏、それに轟氏ですな。実力も高く、人気も出そうですぞ!」

 

 「でも爆豪はいつもキレてばっかで恨めしいし人気出なさそうよね」

 

 「ざけんな人気出るわゴラァッ!つかなんだ恨めしいって!誰をいつ恨んだんだ俺が!!」

 

 「ほらね」

 

 「いやどうだろ?かっちゃんは絶対ニッチなファンが付くと思うけど」

 

 かっちゃんって所謂俺様系だから人気次第ではこう、キャーバクゴー様ー罵ってー、みたいな感じの黄色い声援が送られそうではある。そしてうるせえって罵声を浴びせてありがとうございます!って返されたり。

 そう言うとクラスの半数がなんとなく想像できると頷き、かっちゃんはやらんわふざけんなとまたキレ、峰田くんは美女の罵倒だったらありだなと真顔で呟いた。ぶれないな君。

 

 「そういえばさ~、緑谷ってニューヨークでヒーロー活動してたんだよね~?人気とかどうだったの~?」

 

 「あ、気になる気になる!外国人ヒーローだから目立ちそうだしどうだったの?」

 

 人気の有無で気になったのか凡戸君と小森さんがヒーロー活動経験者としてどうだったのかと少し痛いところを聞いてきた。残念ながら二人が求めるような話はないよ。

 

 「えーっと……上司たちがアングラ系でメディアへの露出を嫌ってて、僕もそれに倣って避けてたから知名度は大してなかったり……助けたことがある人達ならともかく、他は野次が少し多かったかな?ごめん、参考にならないね」

 

 「ありゃ、実はアングラ系とかちょっと意外だね。向こうでテレビとかによく写ってるって思ってた」

 

 「だよね~。僕も握手とかサインとか~よくお願いされてると思ったよ~」

 

 同級生がニューヨーク(H・L)でヒーロー活動をしていたとか気になるのも仕方がないが、如何せん向こう(異世界)にこちらのようなヒーロー人気アンケートなどあるはずもなく、僕に関しても救助者や知り合いの口コミとかでしか評価のしようがない。後は周囲がどういう反応をしてくれるかだが……一般市民なら手を振って挨拶してくれたりたまに子供たちがサインをねだってくるけれど、少し柄が悪い人になれば何がヒーローだと野次を飛ばしてくる。

 なお実際の反応だが声援3、野次5、闇討ち2である。一時期でかい組織に恨まれて昼夜問わず闇討ちしてきては返り討ちにして、HLPDに届ける毎日を送ってたっけ。

 連日フラフラになりながらチンピラから凶悪犯まで連れてくるものだからダニエルさん達がガキが一人で無理してんじゃねえ。お仲間さんでも俺らでも頼れる奴は頼れと、呆れながらドーナツを差し入れてくれたのは今となってはいい思い出だ。

 あの時食べたドーナツはとても優しい味で、ちょっぴりしょっぱかった。

 

 「じゃあさじゃあさ!緑谷ってニューヨークでヒーロー活動をしてたんだよね!どんな事件に立ち会ったり解決したりしたのか教えてよ!」

 

 「おっそれ気になるな!よく言ってる上司とかと一緒に戦ったりしたのか?」

 

 「ドワワー!って大変な事件とかあったりしたの?」

 

 「怖い事件とかあったりした?」

 

 「笑える事件とかは~?」

 

 「エロい事件とかねえのか?」

 

 人気話が不発に終わったからか今度は記憶に残る事件はないかと話を切り替え、それにクラスのみんなが釣れて期待の視線を向けてくる。大変なのは勿論怖いのも笑えるのもたくさんあるし……エロいのもまああったけど軒並み個性じゃ誤魔化せない面倒な事件なのでそうそう言うわけにはいかない。だけどなにか言わないと引いてくれないだろう。

 うーんと少し悩み、あの話ならこちら風に弄っても違和感がないかと出してみる。

 

 「えーっと、面白い事件となるのかな?ちょっとした大捕物ならあったよ。事件名は拳客の楽園(エデン)パート2」

 

 「「パート1は???」」

 

 僕の発言に尾白君と回原君のツッコミがハモる。仲いいな君たち。

 

 拳客の楽園(エデン)

 ある日ザップさんが裏格闘場の連中に捕まり、解放を条件にクラウスさんがステゴロ(素手喧嘩)による勝ち抜き戦に参加することに。

 最終的にクラウスさんはチャンピオンとオーナーを殴り倒した―――オーナーに関しては実は血界の眷属(ブラッド・ブリード)が寄生しており、こちらを一蹴した後いつの間にか去っていたため半ば無効試合だが―――ことでザップさんを助けるだけでなく格闘場のオーナー権利も手に入れたが、これを放棄。しばらくの間宙に浮いた権利をどうするかで荒れることになったのだった。ここまでがパート1となる。

 

 なお当のザップさんはというと、実際は捕まるどころかむしろ結託しており、借金の帳消しと仲介料目当てでクラウスさんを売ったというオチだった。偶然とはいえ組織の長が丸腰で血界の眷属(ブラッド・ブリード)と接触してしまったこともあり、さすがに笑って済ませられないのでスティーブンさんに報告することに。後日チワワみたいになってるザップさんがそこにいた。

 

 閑話休題。それから少しして当時のチャンピオンがオーナーとして担ぎ上げられることで新たに裏格闘場が開場。それと同時に次チャンピオンを決めるべくトーナメントを開かれたのだった。これがパート2になる。

 そう、開かれた。開かれたんだけど…………何故か僕はそれに参加することになった。原因は言わずもがな兄弟子(あのアホ)だ。

 

 お灸を据えたのに性懲りもなくクラウスさんを大会に出場させて賭けで荒稼ぎしようと画策しており、しかしスティーブンさんがそれを察知し釘を刺して出鼻がくじかれることに。

 ザップさんとしては稼げないしライブラからも出すと宣伝してる以上引くことも出来ず、結果次に釣れそうな僕に白羽の矢が。無論拒否をしたけど友人を人質に取って、出なければコイツを出すと脅してきたため渋々出ることになったのである。

 なおその友人もグルでした。拗ねてしばらく冷たくしたのはいい思い出です。

 

 といった具合の事件をヤバい部分は隠すかうまく曲げて概要を教える。最初はやっぱそういう施設ってあるんだな、ステゴロ最強わかる~という声がチラホラ聞こえたが、ここまでの話を聞き終えるやみんなして同情の視線を僕に向けてきた。

 

 「おめえの兄弟子クズすぎねえか……?」

 

 「……悪い人ではないん(暴君)です」

 

 「お、おう……。だ、だけどよ、それって事件ってより大会に強制参加させられただけに聞こえんだが、実際なんかあったのか?」

 

 「……参加者の半数はネームド(ヴィラン)で、おまけに僕が参加してるとわかった瞬間兄貴の仇ーだとか美しく死んでくれーだとかオマエマルカジリだとか言って暴走して、結果予選ルールが急遽バトルロイヤルに変更されてしまって、そいつら全員殴り倒してしょっ引く大捕物になっちゃったんだ。アイロンガイ・ババラバとか闘鬼ドゥームフィストとか壊し屋ラモンとかあんな殺意満々な(ヴィラン)を同時に相手するとかしばらくしたくないって心底思ったよ……」

 

 「ちゃっかりネームドを捕まえてる!?」

 

 「もうどこまで実話なんだよそれ!そこまで無双してるとさすがに嘘なんじゃねえかって思えるぞ!?」

 

 激しいツッコミが飛び交うが、残念ながら意図的に隠してる所以外実話です。しかし無双したかといえばそんなこともない。ネームド(ヴィラン)の連中もとても強かったが、バトルロイヤル中油断ならない相手はたくさんおり、彼らの手もあって無事切り抜けれたところもある。

 ボハメド・アリの再来と言われその道で名を馳せたハオランさん。ノーガード主義の喧嘩師ドボギガさん。暗殺拳を活人拳へと昇華させたリュウケンさん。紅一点にしてそよ風拳伝承者ジャニファーさん。誰も彼も一筋縄ではいかない相手だったろう。

 

 

 まあ彼らとは戦わずじまいなんだけど。理由は予選終了後倒したネームド(ヴィラン)達をHLPDに引き渡すために棄権したからだ。

 これには観客だけでなくザップさんもふざけんなと怒ってたけど、バトルロイヤルで一応の義理は果たしたしもうザップさんが出て稼いでくださいと友達も回収して帰還。翌日ギルベルトさんみたいに包帯顔のザップさんがオメーのせいで出禁になったから詫びに飯奢れと集ってきましたが無視。最終的に寂しいだろうがようと泣きながらウザ絡みしてきたところで許しました。

 

 「お前らもう着くぞ、いい加減にしとけ」

 

 「「「ハイッ!!」」」

 

 そんなこんなで話がひと段落ついたところで先生に演習場に着くと注意を受け、声をそろえて返事を返した。あちらでは救助(レスキュー)訓練なんてなく実践あるのみだったため、雄英ではいったいどんなことをするのか少し楽しみだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「皆さん、お待ちしていましたよ!」

 

 「おお、スペースヒーロー13号だ!」

 

 「私好きなの13号!」

 

 注意を受けて間もなく、演習場に到着した僕らを出迎えてくれたのはスペースヒーロー13号だった。なるほど、彼女の個性は災害救助なら応用がよく効き相性が良いため、今回の訓練担当には持ってこいだ。麗日さんもどうやら彼女が好きらしく、嬉しそうにしている。

 ひとまず話は入ってからということで、よろしくお願いしますと挨拶をして早速入場したのだった。

 

 「「「すっげー!!USJかよー!?」」」

 

 扉を開け一歩踏み入れた先に映ったのは、あたり一面に広がるテーマパークのような光景。アトラクションのような地形と各演習場に生徒一同が驚きの声を上げ、まるでU(ユニバースで)S(スタジオな)J(日本)みたいだと興奮している。

 

 「水難事故、土砂災害、火事、暴風、etc.……あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も……U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)!です!

 

 (((本当にUSJだった……)))

 

 作り上げた自分の演習場を自慢するかのように大きく名前を叫ぶ13号。おまけにポージングまでバッチリだ。しかし本当に名前がUSJとは……大丈夫?鳥頭のマスコットに怒られない?

 どうでもいい一抹の不安を感じていると相澤先生が周囲を見回し13号の元へ向かって耳打ちをしだした。あれはおそらくオールマイトを探しているのだろう。耳を澄ませるとどうやら当たりのようで、オールマイトが仮眠室で休んでると知るや不合理の極みだなと呆れていた。

 待っていてもしょうがないと早速始めるべく相澤先生は13号に内容説明を促す。これは後で説教ルートかな……頑張ってくださいオールマイト。

 

 「えーでは始める前にお小言を一つ……二つ…………三つ―――」

 

 ど、どんどん増えていく……。五つ六つと増える小言にクラスのみんなもげんなりしだしており、師匠の小言という名の罵詈雑言で慣れている僕でも、増えていくそれは気持ち疲れる。

 

 「皆さんご存じの通り僕の個性はブラックホール。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

 「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

 

 僕のその答えに呼応するように麗日さんも激しく頷いている。残像が見えるほど頷いているあたり、本当に好きなんだな。

 

 「ええ……しかし簡単に人を殺せる力です……みんなの中にも、そういう個性の人がいるでしょう。

 超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立ってように見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください」

 

 ―――人を殺せる―――。その言葉が出てきた途端、多くの生徒が固まった。

 ブラックホール。巻き込んだものをチリにするその力は瓦礫などを撤去し、また吸引力を応用すれば落下していく救助者を引っ張り上げ救いだすことが出来るだろう。だがそれと同時に、巻き込んだものをチリに還すそれは、容易に人の命を奪うこともできる。それこそ威力次第じゃすぐさまこの世から髪の毛一本残さず消すことも可能なはずだ。彼女もそれを理解しているのだろう、口から出てくる言葉に重みが乗っている。

 

 説明を聞くにつれ生徒たちは真剣な顔つきになっていく。もしかしたら自分の個性で人を、なんて考えている生徒もいるかもしれない。僕だってそうだ、個性はともかく、斗流(ひきつぼしりゅう)が如何に危険な技術であるのか十全以上に知っている。

 斗流は不倶戴天の敵である血界の眷属(ブラッド・ブリード)に対抗、滅殺するべく作り出された技術のひとつだ。かの存在は人界の兵器程度じゃまともなダメージを与えることすら能わず、彼奴等にとって糧である血を攻撃手段に転じた技でもない限り滅殺は愚か撃退すら難しい。そしてそれらの技は総じて殺傷力が高く、容易に他者の命を奪うことが出来る。

 

 斗流も例に漏れず……いや、むしろ殺傷力としては上の方にくるだろう。なにせ向こうの……ヘルサレムズ・ロットの建造物は外界と比べると異界の技術が組み込まれており格段に強度が高いのだが、それすらバターのように切り裂き、氷のように砕き、灰にしてしまえるのだから。

 おまけに火と風属性の合わせ技である七獄天羽鞴(しちごく・あまのはぶき)なんかは局地的なプラズマを発生させる。一万度の温度による焼却技なんて、血界の眷属(ブラッド・ブリード)でもない限り一瞬で、それこそ魂まで灰にしてしまうだろう。

 

 そしてその危険性を理解したうえで僕は力を振るい、人々を、世界を救うために………何人もの(ヴィラン)を殺めてきた。無論この選択に後悔はない。幾千、幾万もの無辜の命を救うためにその力を振るったのだから。だがそれでも時折罪の意識に苛まれることはある。

 

 幸いこの世界は向こう程血生臭くはない。クラスのみんなにはいつか来るかもしれないその時まではその(個性)を人々の笑顔のために、使い方を誤らないように心がけ鍛え上げ成長していってほしい。

 

 特にかっちゃんは使い方だけじゃなく加減も間違えないで。君たまにツッコミ代わりの爆破で僕の髪をアフロにしてくるでしょ?あれしばらくチリチリになるせいで余計陰毛みたいになってしまって困るんだよ。

 

 「―――救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。以上!ご清聴ありがとうございました!」

 

 「ステキー!」

 

 「ブラボー!ブラーボー!」

 

 少し考え事をしながらも13号の演説を聞き終わり、周囲から拍手と歓声が上がった。僕もそれに続くように拍手を鳴らす。

 

 「よし、そんじゃあまずは―――」

 

 演説が終わり興奮冷めやまぬ中相澤先生が授業を進めはじめ―――

 

 

 

 

 

 ゾグッ

 

 

 

 

 

 「―――ッ!!」

 

 突如悪寒が……身体の芯を刃物で撫でられるような、殺気に近い悪寒を感じた。

 危険を感じた僕はいつでも戦えるよう警戒に入り、それと同時に周囲の電灯から一斉に光が消え、正面に見える噴水から突然黒い(もや)が生じ、一人の男が這い出るように現れる。

 

 「先生!!」

 

 「ッ!?全員ひと固まりになって動くなッ!!13号、生徒を守れ!緑谷も―――!?」

 

 突然現れた男を視認するや叫び、相澤先生の返事を待つ前に突龍槍を形成、靄から出てくる男へ向かって勢いよく投擲した。周囲の生徒はまだ靄に気づいておらず突然の行動に驚いている。

 一条の線となって飛んだ槍は空間の前で空斬糸へと展開、投網状に組み上げ空間から這い出てきた男を捕獲した。続くように相澤先生がすぐさま13号へ指示を飛ばし臨戦態勢に入る。

 

 「へ?なんだアリャ?もしかしてまた入試の時みたいなもう始まってるパターンか?」

 

 ほとんどの生徒はまだわかってないようだが、一部の生徒はこれが異常事態だと察したのか構えて警戒に入る。

 

 「あぁ……なんだこの網はよぉ……?せっかくコッソリ来たってのに出待ちされてるとかどういうこった黒霧……?」

 

 血網にかかった男がそう言って網を掴む。残念だがそう簡単に千切れるものじゃないぞと思うも、そうは問屋がおろさなかった。

 掴まれた血網は突然ボロリと崩れだし、そのまま粉々になって消滅したのだ。それを見た僕は一筋縄ではいかないと警戒心をさらにあげ、そしてそれは最後に出てきた(ヴィラン)を見て正解だと確信した。

 

 「どうやら寸前で察知されてしまっていたようですが、13号にイレイザーヘッド……見た限り彼らの個性じゃない、となると生徒の誰かがやったようですね。

 しかし先日いただいたカリキュラムではオールマイトもここにいるはずなのですがどちらへ……?」

 

 「はぁ?なんだよ……せっかくこんなに大衆を引き連れてきたってのにさ……オールマイトがいないなんてよお…………なあ、」

 

 「お前ら動くな!あれは……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ガキ共を殺せば来るのかな?」

 

 (ヴィラン)だ……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 ハロー、ライブラのみんな、元気ですか?僕は元気です。

 これから救助(レスキュー)訓練を行う予定だったのですが、急遽変更となりました。なんと(ヴィラン)が雄英内に現れたのです。

 これがよく見かける計画性のない、ただの愉快犯による犯行ならまだよかったのですが、どうやらそうはいかないようで……。

 

 「あれって……肉人形(フレッシュゴーレム)……?」

 

 こちらに帰ってきて半年強、向こう(H・L)を思い出させるような悪意の塊が、僕らの前に立ちはだかりました。

 




おまけ:なんとなく考えた拳客のエデンに出した格闘家たちの軽い説明!

・ハオラン
()ハメド・アリの再来と言われた元プロボクサー。H・Lで鍛えられたジャブの連打はもはや渾身のストレートの嵐と遜色ない。
最近裸足でレゴブロックを踏んで悶絶した。

・ドボギガ
ストリートで名を馳せる異界人にして喧嘩師。防御は甘えを座右の銘とし、肉体の頑丈さをフルに活かしたノーガードカウンターが得意。
最近裸足でレゴブロックを踏んで悶絶した。

・リュウケン
古代暗殺拳を誰かのために活かしたいとして何年もかけて活人拳へと昇華させた男。命を奪うのではなく戦意を奪うことを重きを置いている。
最近裸足でレゴブロックを踏んで悶絶した。

・ジェニファー
大会の紅一点。闘気でそよ風の嵐を巻き起こすそよ風拳伝承者。外見はまんまオールマイトを三つ編みツインテにした感じ。
最近裸足でレゴブロックを踏んで悶絶した。

【誤字報告】

zzzzさん。

誤字報告ありがとうございました。
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