My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
今回も大変お待たせしました、案の定激遅更新です。亀更新と言ってるからいいものをそうじゃなかったら囲んで棒で叩いてネギトロ案件ですね。それもこれも書き上げる度矛盾がないかとひたすら不安になってはエンドレスで添削する作者とオーバーウォッチ2が面白いのが悪いんです。あ、石投げないでモチベはあるんです本当です。
最初はただの救助訓練だった。自分達の力をある程度把握した生徒達に、今度はそれをどう救う力に変えていくか。俺とオールマイト、そして13号を交えてその身に叩き込んでいく。その予定だった。
しかし状況は一変した。突然始まった
生徒達を逃がすべく13号へ指示を送り俺は
あの人は厳戒態勢の最中だというのに本当何をやってるんだ。非合理の極みだぞ。
だが突然緑谷が迫る
とはいえその実力はプロヒーローとして認めざるを得ない。ニューヨークで修行とヒーロー活動をしていたという情報はあながち間違いでないのだろう、動きに迷いがない。現場慣れしている証拠だ。
くだらないやり取りを挟みつつ戦いの最中、一番厄介な
……ただ、正直な話をすると俺は緑谷のことをあまり信用していない。もしかしたら襲撃にこいつも関わってるのでは、とも少しながら思っている。
もちろん俺としては一人のヒーローとして、教師として信じてやりたい。だが調べるほど怪しくなる来歴といいこんな状況でも妙に冷静なことといい、おまけに最初に
まったく、お前は何者なんだ緑谷?
「23秒」
相当数の
好機だと白髪の男に操縛布を飛ばし、しかし
「……24、20、17秒。動き回るから分かりづらいけど、髪が下がる瞬間があるな……ワンアクションごとに解除と発動を繰り返してる。そんなところか?」
「チッ!」
「けどそれも間隔が短くなってる。無理をするなよイレイザーヘッド」
入ったと思った肘鉄は間一髪で防がれた。いやそれだけじゃない。奴に掴まれた肘に突如痛みが走り、見れば皮膚がボロボロと崩れだしている。どうやらこれがこいつの個性……触れたものを破壊する個性といった所か。厄介な個性だ!
そこに隙ありと
「その個性じゃ長期決戦には向いてないだろうに、生徒に安心を与えるために無理して戦って……かっこいいなあヒーロー。……ところでいいのか?
本命は俺じゃないぞ?」
ゾクリと、本能が今すぐそこから離れろと警鐘を鳴らしだしその場から飛びのく。瞬間床が爆ぜた。
見れば首謀者の横にいた脳が剥き出しの
「逃がすな脳無」
しかしそんな俺の個性を嘲笑うかのように脳無と呼ばれた
ズガァアンッ!!
「カハッ!」
「個性を消せる。素敵な個性だけど圧倒的な力の前ではただの無個性だ」
焦りと急な軌道に受け身を取れず地面へと叩きつけられしまう。すさまじい勢いで俯きに叩きつけられてしまったことで顔面を強打してしまい、鼻もやられてしまったのか血が溢れ息苦しい。
そうでなくても肺から酸素が吐き出され、視界が朦朧し判断が遅れてしまう。そこをつかれそのまま脳無に馬乗りにされ動けなくなってしまった。
「死柄木弔……」
「黒霧、13号は殺ったのか?」
「それが……生徒達に妨害され、大半は散らせましたが一部は脱出を許してしまいました。13号も軽傷で無事、戦線復帰も時間の問題かと……」
「………………ハッ??」
黒霧と呼ばれた男から出た言葉に理解できないと言うような間の抜けた声が俺の耳に聞こえてくる。そうか、僅かだが脱出に成功したのか。なら希望は繋がった、散らされた生徒達にはまだ耐えてもらう必要があるが応援が来るまでの辛抱だ。無事でいてくれ。
グ シ ャ
「ッがああぁぁ……!!」
安堵も束の間、捕まれていた右腕に力が込められ握り潰された。あまりの激痛に耐えれずうめき声が漏れてしまう。
「おい黒霧、黒霧お前、なんだ?ガキ共散らしただけでロクに仕事出来てないじゃないか?お前がワープゲートじゃなけりゃ粉々にしていたぞ……」
「……申し訳ありません」
「申し訳ありませんじゃないだろなあ……!?
…………はぁー……。さすがに何十人もプロ相手じゃ敵わない。……今回はゲームオーバーだ。帰るぞ黒霧」
死柄木と呼ばれた男はがりがりと首を掻き滲み出る怒りを黒霧へぶつけていく。しかし死柄木は溜息ひとつ吐くとあっさり帰ると言った。
こちらとしてはそのまま引き取り願えるなら助かるが、逆に不気味でもある。これだけ俺たちを振り回しておいてあっさり引き下がるなぞ、こちらの警戒レベルをあげるだけだというのに。何を考えてるんだコイツは?
「……けどもその前に、平和の象徴の矜持とガキの心に少しでも傷をつけてやらねえとなあ……。そう思わないかイレイザー……!」
だがそうは問屋が卸さないようだ。奴の怒りの矛先がこちらに向けられてるのがわかる。生徒もおらず黒霧にもその怒りをぶつけられなければ必然そうなるのだろう。
「脳無、そいつを出来るだけ惨たらしくバラして飾れ」
そう言うや脳無の腕が俺の両腕を掴み持ち上げた。この怪力でバラして飾るとなれば、つまり惨殺して見せしめにでもするつもりだろうオールマイトや生徒達の心に傷をつけるために。
(クソ、最後にしくっちまったか……。悪い13号、生徒達のケアは任せたぞ)
後輩と生徒達の身を案じ、数秒後やってくるだろう味わったことのない苦痛と死への恐怖に耐えるべく俺は歯を食い縛り覚悟を決めるのだった。
ドゴンッ!!!
しかしその未来は訪れなかった。一瞬の風切り音と破砕音が耳をつんざき、同時に掴んでいた力がなくなり地に落とされる。
受け身に失敗し激痛に顔を歪めるがそれでも必死で距離を取り、同時に状況を確認するべく顔を動かした。
見れば先ほどいた場所には脳無の腕が綺麗な断面を見せて地に転がっていた。
「…………ハッ??」
目の前の出来事に困惑が隠せないのか再び間の抜けた声が俺の耳に届いた。これには俺も似た気持ちを抱いてしまう。
だが誰がこんなことをしたのかに関しては、抉れた地面に突き刺さる赤黒い大剣を見て察した。
「先生になにしてんだこの腐肉野郎おおおおおおおッ!!!!!」
急速に近づいてきた叫び声を揃って捉え、同時にズガァン!と尋常じゃない音を鳴り響く。視線の先には緑谷が、脳無の頭部にドロップキックをお見舞いしていた。
その時の緑谷の顔は、
……ったく、オールマイトの許可があるからってコイツはとことん人の命令を無視して首を突っ込んできやがるな。仮に仮免を持っていてもやっていい許容を超えているぞ?
こんな状況だ、助けてくれたことには素直に感謝するが、やはりそれ以上に呆れを強く感じる。教師としての立場がないじゃねえかと愚痴のひとつでも溢したくなるぞ。
……俺は緑谷をあまり信用していない。むしろ
ただオールマイトが責任を負うと言う程信頼していること、
ああまったく、本当お前は何者なんだ緑谷?
◆◆◆◆◆
ズガァンッ!と、周囲に小さな突風が吹く勢いで飛んできた緑谷は脳無の頭に向かってドロップキックを決めた。手加減なんてない、むしろ最近多用しているスリングまで使って加速したまったく容赦がない、殺意マシマシの一撃である。
しかしそんな一撃を喰らった脳無は微動だにせず健在。怯みさえしていないことに舌打ちを溢すとそのまま頭を蹴り後退、相澤を守るように降り立った。
「首を千切り飛ばす気で蹴ったのに壊れるどころか無傷か、ふざけやがって。……遅れてすみません相澤先生。怪我の具合は?」
「お前どうして戻って……いや、その前に首を飛ばすって……ああくそ、言いたいことは色々あるがひとまず助かった。怪我だが右腕がやられて動かん。鼻血も止まらないが急いでなんとかする」
「だったら僕に任せてください」
幸い目の前にいるのは血のエキスパートとも言える斗流の使い手。師のように血法を用いた手術はまだ無理だが止血といった応急手当てなら緑谷でも出来る。
「こんなものでどうでしょうか」
「技量といい早さといい十分すぎるくらいだ。助かった、おかげで戦線復帰出来る」
素早い処置に謝意を伝える相澤。彼は
「はは、まだやるんだヒーロー。殺されかけたってのに、ボロボロだってのにまだガキ共を守るために鞭打って前に出てきやがる。カッコいいなあ。だけどそんな身体で脳無に挑んでも数秒後には挽肉だぞ?」
「増援も時間の問題だろうに随分と余裕だな……」
「そりゃあそうさ。手下共はともかく俺達はノーダメージなんだぜ?」
見れば先ほど蹴りを受けた脳無もピンピンとしており、これには相澤も顔をしかめる。緑谷が放った蹴りは明らかに人が出していい音ではなかった。あの一撃をもし自分が喰らえば首が飛んで即死していただろうと相澤は思う。しかし脳無はそれが効いていない。
いやそれだけじゃない。切り落とされた脳無の腕があった部分が蠢き盛り上がり、程なくして元通りに復元した。これで死柄木の言った通りノーダメージである。
「超再生かなにかの個性か!いや待て、素のパワーといい蹴りが効かないことといい、一体何の個性持ちだそいつは……!?」
「はは、いい驚きだぜイレイザー。やっぱそれくらいの反応くれないとな。知りたければ教えてやろうか?大人しくバラされてくれるならだけどよ……?」
「んなことで大人しくやられる奴がいるか。……緑谷、さすがにあれを抑えるのは俺達だけじゃ無理だ。このままお互い共倒れになるくらいならせめてお前だけでも早く逃げろ。俺のことはもういい」
相澤は緑谷を逃がすべく残った手で操縛布を掴み再び前へ出る。確かに相澤は緑谷を怪しくは思っている。だがそれでも今は自分の大事な生徒の一人だ。それを見捨てるような真似は決してしない。
その目は通さんという強い意思と、だが覚悟も決めたという目をしていた。非常に分の悪い戦いだ。相手はダメージのない首謀者、暫定オールマイト並のパワーを持つ脳無、ワープという厄介な個性を持った
「いえ、相澤先生。あのデカブツは僕が破壊します。その間残り二人の足止めないし制圧をお願いしてよろしいでしょうか」
だが緑谷は相澤の決断を無視するようにさらに前へ出た。
「な……!?何を馬鹿なことを言ってるんだ緑谷!いいから逃げろと言ってるだろ何度も言わせるな!」
「出来ない相談です。生徒の半数は分断されました。13号も外に出た生徒達を万が一のために守らざるを得ない。救援がしばらく来ない今あなたを一人にするなんて死なせるようなものです!それに先生を殺した後散らされた生徒達に向かうかもしれない。そうなるとさらに被害は広がり雄英の、ついてはヒーローの敗北となり確実に後手に回ります。ならば僕の除籍覚悟であのデカブツをとっとと破壊してあいつらを逮捕した方が被害は最小限に抑えられる!」
「馬鹿を言うな!わかっているのか?お前が倒すと言ってるあいつはオールマイト並のパワーを持ってるのだぞ!この腕を見ろ!受けた俺だからわかる、あれは事実だ!」
「だとしたらなおさら貴方一人に任せるわけにはいかないでしょ!だいたいその怪我は僕が貴方に負担を強いてしまった結果です!だというのに挽回の機会も捨てて見殺せと言うのですか!そんなの何がヒーローだ!!」
「冷静になれ緑谷!お前らしくない、何をそんなに苛立っている!この傷は俺のミスだ、15のガキが生意気なこと言うな!ニューヨークでヒーロー活動を経験したからって思いあがるなよ、相手との力量を図り間違えれば死に直結するんだ!!」
「苛立って当然です!あんな冒涜甚だしい死体人形なんて見せられて、平気でいられるほど僕の心は擦れていない!!」
一歩も引かず理屈を並べて怒鳴りあう二人。しかしそれも緑谷の発言で相澤は言葉を失った。
「―――死体人形、だと?緑谷、どういうことだ?」
「あのデカブツのことですよ。最初はまさかと思いましたが間近で見て確信しました。……あれは
「……動く死体だと?お前なんでそんなことがわかる?」
「
「……また例の転移事件の時か」
またかと、どんどん厄ネタが積みあがっていく緑谷へどれだけ秘密を引っ提げてやがるんだお前はと悪態を吐きたくなる。しかしパチパチとあまり響かないやる気のない拍手をする死柄木が視界に入り、ひとまずそれは後だと切り替えた。
「ハハハすげえじゃん。お前さっき部下に変な名前で呼ばれてたガキだよな?
「し、死柄木弔。そう易々と情報を出すべきでは」
「どうせコイツらはここでゲームオーバーなんだ、ちょっとくらいなら教えてもいいだろ」
もはや驚きすぎて感覚が麻痺しそうになる相澤。死体人形というだけでも衝撃の事実だというのにさらに複数の個性持ちでオールマイトを殺すべく作られた改造人間ときた。おそらくその言葉に偽りはないだろう、そうなるとあの力を振るわれれば数分と持たず為すすべなく殺されてしまう。やはりどうにかして逃がさないとと、最悪の中の最善を考え始めた。
「胸糞悪い」
一言、冷たさを纏った声が響いた。決して大きな声ではないがしかし、聞き洩らした者はこの場に一人としていなかっただろう。
「大した技術だよ本当に……それと同時に、ああ胸糞が悪い……!そんなくだらない物を作り上げるまでにどれだけの試行錯誤を……人の命を、人生を弄んだんだお前たちは……!!」
瞬間、ゴォッと、緑谷から怒気が放たれた。
緑谷は
だからわかる。わかってしまう。死霊術のノウハウがないだろうこの世界でこれほどの
死柄木達はというと……ゾクリと寒気を感じると同時に体中から汗が吹き出し、その場から飛び退いた。まるで今そこに立っていたら一片の慈悲なく殺されると、そう錯覚して。そして部下たちはその尽くが腰砕けになり戦意を喪失していた。
当然だろう、師の地獄の修行を完遂し心身共に鍛え上げられ、さらに二年以上世界の危機の中心という弩級の死線を潜り抜けてきた
「相澤先生。これが終わった後、先生が僕にどのような結論を出そうともそれを甘んじて受け入れます。だからどうかコイツを僕にやらせてください。アレは世界の均衡を崩すこの世にあってはいけない存在です」
「緑谷―――」
「僕のことは信じれないかもしれません。ですが僕を信頼しているオールマイトの事を信じて、今は任せてください。お願いします」
「……」
まるで懇願のような頼み方をする緑谷に相澤は瞑目する。もはや相澤は緑谷をタダのヒーロー科生徒として見ることは出来ない。躊躇なく脳無を殺しにかかり、その存在をすぐさま暴き、おまけに尋常じゃない圧を放つ15の子供を、怪しむことなく将来有望な生徒だ!なんて言ってしまえるほど平和ボケしていないのだ。
「……緑谷、俺がお前のことをまだ信用していないのはテストの事を考えればわかっているよな」
「はい」
「あれが死体と分かっていても首を吹き飛ばすなんて物騒なこと躊躇いなく出来る奴を全面的に擁護するのは無理な話で、おまけにお前の怪しい来歴とこの襲撃が余計疑いの種になってしまってる。お前も俺の立場だったらそう思うだろ」
「……はい」
「……だがな、同時に危険を顧みず他の生徒や俺を守るために前に出るお前のことを信じてやりたいとも思っている」
「……ッ!」
「だから条件を二つ出す。一つは脳無の無力化。ただ徹底破壊だけはやめろ。そいつの身柄の特定に必要だし訳の分からん死体でも元が人間なら最低限の供養くらい必要になる。
そしてもう一つ、これが終わったら全部話せ。空白の半年と、オールマイトとの関係を。そんでお前が
だが相澤は静かに口を開き、そう答えた。理屈じゃない、感情を優先した愚かな選択かもしれない。だがそれでも己が命を賭けて誰かのために怒り、誰かの命を救うため前へ前へと進もうとするその輝きを教師として、ヒーローとして信じてやりたいとも思った。
「……はい!」
「いい返事だ。あれだけ啖呵を切ったんだ、失望、はともかく死ぬんじゃないぞ。俺もこんな状態だから長くは持たんが二人を抑え込む」
そしてその思いは緑谷にとっても嬉しかった。受け入れてもらえたことならオールマイトという前例もある。だが彼もまた緑谷と同じ明かせぬ力を持つもの。どうしても似た者同士のところがある。だからこの世界の理から外れていない彼に、成長を見届けてくれる師の立場の人間にこの世界に非ざる異端の力、異端の思考、異端である己を一時的にでも信じて受け入れてもらえたのはとても嬉しかった。
「せっかくもらったチャンスだ。お前たちには悪い……とは思わないし、脳無も破壊させてもらう。覚悟しろ、ここから狙うのは完全勝利だ。この襲撃計画、悉くを打ち砕かれると思え」
故に彼は戦う。その思いに報いるために。
「斗流血法―――推して参る―――」
切「おいおいおい」
爆「死ぬわあのアホ共」
緑「いや殺さないからね?多分」
【誤字報告】
hungさん。 三六号さん。 ╰( U ・ᴥ・)m狗神丸さん。 N.jpさん。 ユウれいさん。 someyさん。
誤字報告ありがとうございました。