My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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サイバーパンクエッジランナーズが素晴らしかったので第三十二話です。

今回も大変お待たせしました、案の定激遅更新です。亀更新と言ってるからいいものをそうじゃなかったら囲んで棒で叩いてネギトロ案件ですね。それもこれも書き上げる度矛盾がないかとひたすら不安になってはエンドレスで添削する作者とオーバーウォッチ2が面白いのが悪いんです。あ、石投げないでモチベはあるんです本当です。



第32話:お前のことを信じてやりたいとも思っている

 

 最初はただの救助訓練だった。自分達の力をある程度把握した生徒達に、今度はそれをどう救う力に変えていくか。俺とオールマイト、そして13号を交えてその身に叩き込んでいく。その予定だった。

 しかし状況は一変した。突然始まった(ヴィラン)共の襲撃。警報も鳴らず外部との連絡を取るも反応無し。おまけに(ヴィラン)の言葉から先日の犯行も奴らときた。ここまで状況証拠が揃えば小学生だってわかる。これは(ヴィラン)による計画的犯行だと。

 

 生徒達を逃がすべく13号へ指示を送り俺は(ヴィラン)の集団へと飛び込んだ。俺の戦い方からして合理的ではないが、(ヴィラン)共から生徒達を引き離すにはそれしか方法がない。せめてオールマイトがいれば前衛を任せれたのだが……今あの人は制限時間がギリギリのためここにいない。

 あの人は厳戒態勢の最中だというのに本当何をやってるんだ。非合理の極みだぞ。

 

 (ヴィラン)の多さに辟易しつつも本命、特にワープの個性を持つ靄の男を警戒しながら戦う。連携を乱しつつもワープを妨害する戦いは忙しなく、どこまで粘れるかわからない。

 だが突然緑谷が迫る(ヴィラン)を次々倒し背中を守ってくれたおかげで幾分か楽になった。……こっちの指示を無視どころかオールマイトと結託して制圧に参加しているため感謝と呆れがない交ぜになって素直に喜べなかったが。

 とはいえその実力はプロヒーローとして認めざるを得ない。ニューヨークで修行とヒーロー活動をしていたという情報はあながち間違いでないのだろう、動きに迷いがない。現場慣れしている証拠だ。

 

 くだらないやり取りを挟みつつ戦いの最中、一番厄介な(ヴィラン)を個性の隙間を縫って逃してしまい、緑谷は13号の援護へ向かっていった。一応そのまま逃げるよう促したがあの様子だと事が済めばすぐ戻ってくるだろう。なら俺がやるべきことは一つ。こいつらを少しでも多く片付けることだ。緑谷の援護もあって(ヴィラン)の数を減らせたおかげで疲労も問題ない。相手の脅威が減れば緑谷も少しは言うことを聞いてくれるだろう。まあ本命を危険視している以上あいつらを制圧しない限り素直に聞いてくれるかわからないが。

 

 ……ただ、正直な話をすると俺は緑谷のことをあまり信用していない。もしかしたら襲撃にこいつも関わってるのでは、とも少しながら思っている。

 もちろん俺としては一人のヒーローとして、教師として信じてやりたい。だが調べるほど怪しくなる来歴といいこんな状況でも妙に冷静なことといい、おまけに最初に(ヴィラン)を発見したのも緑谷であるしそこからも行動が早すぎる。わずかでも疑わないでいるのは難しい。

 まったく、お前は何者なんだ緑谷?

 

 「23秒」

 

 相当数の(ヴィラン)がやられたからかついに本命が攻めてきた。こちらとしては好都合だ、頭を倒せば(ヴィラン)も総崩れになるだろう。

 好機だと白髪の男に操縛布を飛ばし、しかし(ヴィラン)がそれを掴み取られ攻撃は防がれた。首魁なだけあっていい動きしやがる、だがその動きも織り込み済みであり捕まれた操縛布を操り相手の体勢を崩し、前のめりに。同時に奴に一気に近づきがら空きになった鳩尾に肘鉄をお見舞いした。

 

 「……24、20、17秒。動き回るから分かりづらいけど、髪が下がる瞬間があるな……ワンアクションごとに解除と発動を繰り返してる。そんなところか?」

 

 「チッ!」

 

 「けどそれも間隔が短くなってる。無理をするなよイレイザーヘッド」

 

 入ったと思った肘鉄は間一髪で防がれた。いやそれだけじゃない。奴に掴まれた肘に突如痛みが走り、見れば皮膚がボロボロと崩れだしている。どうやらこれがこいつの個性……触れたものを破壊する個性といった所か。厄介な個性だ!

 そこに隙ありと(ヴィラン)共が迫ってくるが逆に制圧していき本命を見据える。右手をやられたせいでこいつらを相手取るのが難しくなってきたがそれでもまだ息切れはしていない。まだ耐えれるだろう。

 

 「その個性じゃ長期決戦には向いてないだろうに、生徒に安心を与えるために無理して戦って……かっこいいなあヒーロー。……ところでいいのか?

 

 本命は俺じゃないぞ?

 

 ゾクリと、本能が今すぐそこから離れろと警鐘を鳴らしだしその場から飛びのく。瞬間床が爆ぜた。

 見れば首謀者の横にいた脳が剥き出しの(ヴィラン)が床を殴りつけていた。くそ、なんてパワーだ。あれは絶対受けてはいけない。消耗を抑えられてるおかげで避けることが出来たが何度も避けれるとは思えないと判断するやその場から離れ抹消の個性を(ヴィラン)へと使った。

 

 「逃がすな脳無」

 

 しかしそんな俺の個性を嘲笑うかのように脳無と呼ばれた(ヴィラン)は想像以上の速さでこちらへ近づき、右腕を掴むやそのまま持ち上げ振り下ろした。待て、俺の個性は一部でも見れば効くはずだ……。ならこいつのこの怪力は素の力ということになるぞ。オールマイト並のパワー持ちとかなんの冗談だ!?

 

 ズガァアンッ!!

 

 「カハッ!」

 

 「個性を消せる。素敵な個性だけど圧倒的な力の前ではただの無個性だ」

 

 焦りと急な軌道に受け身を取れず地面へと叩きつけられしまう。すさまじい勢いで俯きに叩きつけられてしまったことで顔面を強打してしまい、鼻もやられてしまったのか血が溢れ息苦しい。

 そうでなくても肺から酸素が吐き出され、視界が朦朧し判断が遅れてしまう。そこをつかれそのまま脳無に馬乗りにされ動けなくなってしまった。

 

 「死柄木弔……」

 

 「黒霧、13号は殺ったのか?」

 

 「それが……生徒達に妨害され、大半は散らせましたが一部は脱出を許してしまいました。13号も軽傷で無事、戦線復帰も時間の問題かと……」

 

 「………………ハッ??」

 

 黒霧と呼ばれた男から出た言葉に理解できないと言うような間の抜けた声が俺の耳に聞こえてくる。そうか、僅かだが脱出に成功したのか。なら希望は繋がった、散らされた生徒達にはまだ耐えてもらう必要があるが応援が来るまでの辛抱だ。無事でいてくれ。

 

 

 グ シ ャ

 

 

 「ッがああぁぁ……!!」

 

 安堵も束の間、捕まれていた右腕に力が込められ握り潰された。あまりの激痛に耐えれずうめき声が漏れてしまう。

 

 「おい黒霧、黒霧お前、なんだ?ガキ共散らしただけでロクに仕事出来てないじゃないか?お前がワープゲートじゃなけりゃ粉々にしていたぞ……」

 

 「……申し訳ありません」

 

 「申し訳ありませんじゃないだろなあ……!?

 …………はぁー……。さすがに何十人もプロ相手じゃ敵わない。……今回はゲームオーバーだ。帰るぞ黒霧」

 

 死柄木と呼ばれた男はがりがりと首を掻き滲み出る怒りを黒霧へぶつけていく。しかし死柄木は溜息ひとつ吐くとあっさり帰ると言った。

 こちらとしてはそのまま引き取り願えるなら助かるが、逆に不気味でもある。これだけ俺たちを振り回しておいてあっさり引き下がるなぞ、こちらの警戒レベルをあげるだけだというのに。何を考えてるんだコイツは?

 

 「……けどもその前に、平和の象徴の矜持とガキの心に少しでも傷をつけてやらねえとなあ……。そう思わないかイレイザー……!」

 

 だがそうは問屋が卸さないようだ。奴の怒りの矛先がこちらに向けられてるのがわかる。生徒もおらず黒霧にもその怒りをぶつけられなければ必然そうなるのだろう。

 

 「脳無、そいつを出来るだけ惨たらしくバラして飾れ」

 

 そう言うや脳無の腕が俺の両腕を掴み持ち上げた。この怪力でバラして飾るとなれば、つまり惨殺して見せしめにでもするつもりだろうオールマイトや生徒達の心に傷をつけるために。

 

 (クソ、最後にしくっちまったか……。悪い13号、生徒達のケアは任せたぞ)

 

 後輩と生徒達の身を案じ、数秒後やってくるだろう味わったことのない苦痛と死への恐怖に耐えるべく俺は歯を食い縛り覚悟を決めるのだった。

 

 

 ドゴンッ!!!

 

 

 しかしその未来は訪れなかった。一瞬の風切り音と破砕音が耳をつんざき、同時に掴んでいた力がなくなり地に落とされる。

 受け身に失敗し激痛に顔を歪めるがそれでも必死で距離を取り、同時に状況を確認するべく顔を動かした。

 

 見れば先ほどいた場所には脳無の腕が綺麗な断面を見せて地に転がっていた。

 

 「…………ハッ??」

 

 目の前の出来事に困惑が隠せないのか再び間の抜けた声が俺の耳に届いた。これには俺も似た気持ちを抱いてしまう。

 だが誰がこんなことをしたのかに関しては、抉れた地面に突き刺さる赤黒い大剣を見て察した。

 

 

 

  「先生になにしてんだこの腐肉野郎おおおおおおおッ!!!!!」

 

 

 

 急速に近づいてきた叫び声を揃って捉え、同時にズガァン!と尋常じゃない音を鳴り響く。視線の先には緑谷が、脳無の頭部にドロップキックをお見舞いしていた。

 その時の緑谷の顔は、(ヴィラン)が付けたアホな異名に納得してしまうほどの悪鬼の形相をしており……そして誰かのために怒る力強いヒーローの目をしていた。

 

 ……ったく、オールマイトの許可があるからってコイツはとことん人の命令を無視して首を突っ込んできやがるな。仮に仮免を持っていてもやっていい許容を超えているぞ?

 こんな状況だ、助けてくれたことには素直に感謝するが、やはりそれ以上に呆れを強く感じる。教師としての立場がないじゃねえかと愚痴のひとつでも溢したくなるぞ。

 

 ……俺は緑谷をあまり信用していない。むしろ(ヴィラン)じゃないのか?とも時折考えたりする。

 ただオールマイトが責任を負うと言う程信頼していること、(ヴィラン)から二つ名で呼ばれ恐れられていること、おまけにこいつの目が(ヴィラン)どころかヒーローの、それもオールマイトに近い眼差しをしていること。それらがコイツは決して悪い奴じゃないと俺の思考に訴えかけてきやがる。

 

 ああまったく、本当お前は何者なんだ緑谷?

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 ズガァンッ!と、周囲に小さな突風が吹く勢いで飛んできた緑谷は脳無の頭に向かってドロップキックを決めた。手加減なんてない、むしろ最近多用しているスリングまで使って加速したまったく容赦がない、殺意マシマシの一撃である。

 しかしそんな一撃を喰らった脳無は微動だにせず健在。怯みさえしていないことに舌打ちを溢すとそのまま頭を蹴り後退、相澤を守るように降り立った。

 

 「首を千切り飛ばす気で蹴ったのに壊れるどころか無傷か、ふざけやがって。……遅れてすみません相澤先生。怪我の具合は?」

 

 「お前どうして戻って……いや、その前に首を飛ばすって……ああくそ、言いたいことは色々あるがひとまず助かった。怪我だが右腕がやられて動かん。鼻血も止まらないが急いでなんとかする」

 

 「だったら僕に任せてください」

 

 幸い目の前にいるのは血のエキスパートとも言える斗流の使い手。師のように血法を用いた手術はまだ無理だが止血といった応急手当てなら緑谷でも出来る。

 (ヴィラン)達を視界に捉えながら素早く処置。血法を媒介に相澤の血を固めて止血し、腕もこちらの血で添え木の代わりを作って巻き付け固定、操縛布を三角巾代わりとして吊るしてもらうことで手当ては終わった。

 

 「こんなものでどうでしょうか」

 

 「技量といい早さといい十分すぎるくらいだ。助かった、おかげで戦線復帰出来る」

 

 素早い処置に謝意を伝える相澤。彼はあの街(H・L)で散々救助活動に勤しんだ結果手当ての速度は弟子三人の中でもっとも早く、師からもザトウムシの如き早さと褒められたほどである。

 

 「はは、まだやるんだヒーロー。殺されかけたってのに、ボロボロだってのにまだガキ共を守るために鞭打って前に出てきやがる。カッコいいなあ。だけどそんな身体で脳無に挑んでも数秒後には挽肉だぞ?」

 

 「増援も時間の問題だろうに随分と余裕だな……」

 

 「そりゃあそうさ。手下共はともかく俺達はノーダメージなんだぜ?」

 

 見れば先ほど蹴りを受けた脳無もピンピンとしており、これには相澤も顔をしかめる。緑谷が放った蹴りは明らかに人が出していい音ではなかった。あの一撃をもし自分が喰らえば首が飛んで即死していただろうと相澤は思う。しかし脳無はそれが効いていない。

 いやそれだけじゃない。切り落とされた脳無の腕があった部分が蠢き盛り上がり、程なくして元通りに復元した。これで死柄木の言った通りノーダメージである。

 

 「超再生かなにかの個性か!いや待て、素のパワーといい蹴りが効かないことといい、一体何の個性持ちだそいつは……!?」

 

 「はは、いい驚きだぜイレイザー。やっぱそれくらいの反応くれないとな。知りたければ教えてやろうか?大人しくバラされてくれるならだけどよ……?」

 

 「んなことで大人しくやられる奴がいるか。……緑谷、さすがにあれを抑えるのは俺達だけじゃ無理だ。このままお互い共倒れになるくらいならせめてお前だけでも早く逃げろ。俺のことはもういい」

 

 相澤は緑谷を逃がすべく残った手で操縛布を掴み再び前へ出る。確かに相澤は緑谷を怪しくは思っている。だがそれでも今は自分の大事な生徒の一人だ。それを見捨てるような真似は決してしない。

 その目は通さんという強い意思と、だが覚悟も決めたという目をしていた。非常に分の悪い戦いだ。相手はダメージのない首謀者、暫定オールマイト並のパワーを持つ脳無、ワープという厄介な個性を持った(ヴィラン)の三人。かたやボロボロの自分。もはやどうしようもない。だがそれでも緑谷を逃がすだけの時間は稼いでみせると気合を入れる。

 

 「いえ、相澤先生。あのデカブツは僕が破壊します。その間残り二人の足止めないし制圧をお願いしてよろしいでしょうか」

 

 だが緑谷は相澤の決断を無視するようにさらに前へ出た。

 

 「な……!?何を馬鹿なことを言ってるんだ緑谷!いいから逃げろと言ってるだろ何度も言わせるな!」

 

 「出来ない相談です。生徒の半数は分断されました。13号も外に出た生徒達を万が一のために守らざるを得ない。救援がしばらく来ない今あなたを一人にするなんて死なせるようなものです!それに先生を殺した後散らされた生徒達に向かうかもしれない。そうなるとさらに被害は広がり雄英の、ついてはヒーローの敗北となり確実に後手に回ります。ならば僕の除籍覚悟であのデカブツをとっとと破壊してあいつらを逮捕した方が被害は最小限に抑えられる!」

 

 「馬鹿を言うな!わかっているのか?お前が倒すと言ってるあいつはオールマイト並のパワーを持ってるのだぞ!この腕を見ろ!受けた俺だからわかる、あれは事実だ!」

 

 「だとしたらなおさら貴方一人に任せるわけにはいかないでしょ!だいたいその怪我は僕が貴方に負担を強いてしまった結果です!だというのに挽回の機会も捨てて見殺せと言うのですか!そんなの何がヒーローだ!!」

 

 「冷静になれ緑谷!お前らしくない、何をそんなに苛立っている!この傷は俺のミスだ、15のガキが生意気なこと言うな!ニューヨークでヒーロー活動を経験したからって思いあがるなよ、相手との力量を図り間違えれば死に直結するんだ!!」

 

 

 「苛立って当然です!あんな冒涜甚だしい死体人形なんて見せられて、平気でいられるほど僕の心は擦れていない!!」

 

 

 一歩も引かず理屈を並べて怒鳴りあう二人。しかしそれも緑谷の発言で相澤は言葉を失った。

 

 「―――死体人形、だと?緑谷、どういうことだ?」

 

 「あのデカブツのことですよ。最初はまさかと思いましたが間近で見て確信しました。……あれは肉人形(フレッシュゴーレム)です。本来高い医学的知識と高度な死霊術(ネクロマンシー)が揃わないと作れない動く死体の類なのですが……どうやらこっちじゃ死霊術に替わる個性でもあったのでしょう。どちらにしてもこんなのを作り上げるとは大した技術力です」

 

 「……動く死体だと?お前なんでそんなことがわかる?」

 

 「向こう(H・L)にいたころ散々な程お目にかかりまして、おかげである程度なら見分けがつくようになってしまいました。何より肉人形(フレッシュゴーレム)はちょっとした因縁があるんですよ僕」

 

 「……また例の転移事件の時か」

 

 またかと、どんどん厄ネタが積みあがっていく緑谷へどれだけ秘密を引っ提げてやがるんだお前はと悪態を吐きたくなる。しかしパチパチとあまり響かないやる気のない拍手をする死柄木が視界に入り、ひとまずそれは後だと切り替えた。

 

 「ハハハすげえじゃん。お前さっき部下に変な名前で呼ばれてたガキだよな?これ(脳無)がなんなのかよくわかったな……。……せっかく当てたんだ。冥土の土産にちょーっとだけサービスしてやるよ。お前の言う通り脳無はなあ、対平和の象徴用に複数の個性を組み込んで調整された改造人間なんだよ。オールマイトと同等のパワー、スピード、タフネス。さらに持っている個性はショック吸収に超再生とオールマイトの100%にも耐えられる特製(ヴィラン)だ」

 

 「し、死柄木弔。そう易々と情報を出すべきでは」

 

 「どうせコイツらはここでゲームオーバーなんだ、ちょっとくらいなら教えてもいいだろ」

 

 もはや驚きすぎて感覚が麻痺しそうになる相澤。死体人形というだけでも衝撃の事実だというのにさらに複数の個性持ちでオールマイトを殺すべく作られた改造人間ときた。おそらくその言葉に偽りはないだろう、そうなるとあの力を振るわれれば数分と持たず為すすべなく殺されてしまう。やはりどうにかして逃がさないとと、最悪の中の最善を考え始めた。

 

 

 「胸糞悪い」

 

 

 一言、冷たさを纏った声が響いた。決して大きな声ではないがしかし、聞き洩らした者はこの場に一人としていなかっただろう。

 

 「大した技術だよ本当に……それと同時に、ああ胸糞が悪い……!そんなくだらない物を作り上げるまでにどれだけの試行錯誤を……人の命を、人生を弄んだんだお前たちは……!!」

 

 瞬間、ゴォッと、緑谷から怒気が放たれた。

 緑谷は肉人形(フレッシュゴーレム)のことを知っている。少なくともあの街(H・L)では作るのに一定の鮮度以上の死体が必要で、さらに死体を弄りまわし既存の術式(死霊術)を刻むことで偽りの命を与える、それなりに手間のかかる術だということを。

 

 だからわかる。わかってしまう。死霊術のノウハウがないだろうこの世界でこれほどの肉人形(フレッシュゴーレム)を完成させるのがどれだけ難しく、時間と材料が湯水のごとく消費されたかということを。そう、新鮮な材料(死体)をだ。それを考えるとあまりにも冒涜的で、虫唾が走る。

 

 (ヴィラン)達は怒気の込められた圧に当てられた。相澤は受けることはなかったが、それでもなお緑谷から放たれる尋常じゃない気配に身を強張らせてしまう。

 死柄木達はというと……ゾクリと寒気を感じると同時に体中から汗が吹き出し、その場から飛び退いた。まるで今そこに立っていたら一片の慈悲なく殺されると、そう錯覚して。そして部下たちはその尽くが腰砕けになり戦意を喪失していた。

 当然だろう、師の地獄の修行を完遂し心身共に鍛え上げられ、さらに二年以上世界の危機の中心という弩級の死線を潜り抜けてきた(戦士)が放つ容赦のない怒気だ。未だ師に遠く及ばないにせよ、チンピラと大差ない(ヴィラン)程度が耐えられるシロモノではない。

 

 「相澤先生。これが終わった後、先生が僕にどのような結論を出そうともそれを甘んじて受け入れます。だからどうかコイツを僕にやらせてください。アレは世界の均衡を崩すこの世にあってはいけない存在です」

 

 「緑谷―――」

 

 「僕のことは信じれないかもしれません。ですが僕を信頼しているオールマイトの事を信じて、今は任せてください。お願いします」

 

 「……」

 

 まるで懇願のような頼み方をする緑谷に相澤は瞑目する。もはや相澤は緑谷をタダのヒーロー科生徒として見ることは出来ない。躊躇なく脳無を殺しにかかり、その存在をすぐさま暴き、おまけに尋常じゃない圧を放つ15の子供を、怪しむことなく将来有望な生徒だ!なんて言ってしまえるほど平和ボケしていないのだ。

 

 「……緑谷、俺がお前のことをまだ信用していないのはテストの事を考えればわかっているよな」

 

 「はい」

 

 「あれが死体と分かっていても首を吹き飛ばすなんて物騒なこと躊躇いなく出来る奴を全面的に擁護するのは無理な話で、おまけにお前の怪しい来歴とこの襲撃が余計疑いの種になってしまってる。お前も俺の立場だったらそう思うだろ」

 

 「……はい」

 

 「……だがな、同時に危険を顧みず他の生徒や俺を守るために前に出るお前のことを信じてやりたいとも思っている」

 

 「……ッ!」

 

 「だから条件を二つ出す。一つは脳無の無力化。ただ徹底破壊だけはやめろ。そいつの身柄の特定に必要だし訳の分からん死体でも元が人間なら最低限の供養くらい必要になる。

 そしてもう一つ、これが終わったら全部話せ。空白の半年と、オールマイトとの関係を。そんでお前が(ヴィラン)側の存在じゃないってことを証明してみせろ。結論を出すのはそれからだ」

 

 だが相澤は静かに口を開き、そう答えた。理屈じゃない、感情を優先した愚かな選択かもしれない。だがそれでも己が命を賭けて誰かのために怒り、誰かの命を救うため前へ前へと進もうとするその輝きを教師として、ヒーローとして信じてやりたいとも思った。

 

 「……はい!」

 

 「いい返事だ。あれだけ啖呵を切ったんだ、失望、はともかく死ぬんじゃないぞ。俺もこんな状態だから長くは持たんが二人を抑え込む」

 

 そしてその思いは緑谷にとっても嬉しかった。受け入れてもらえたことならオールマイトという前例もある。だが彼もまた緑谷と同じ明かせぬ力を持つもの。どうしても似た者同士のところがある。だからこの世界の理から外れていない彼に、成長を見届けてくれる師の立場の人間にこの世界に非ざる異端の力、異端の思考、異端である己を一時的にでも信じて受け入れてもらえたのはとても嬉しかった。

 

 「せっかくもらったチャンスだ。お前たちには悪い……とは思わないし、脳無も破壊させてもらう。覚悟しろ、ここから狙うのは完全勝利だ。この襲撃計画、悉くを打ち砕かれると思え」

 

 故に彼は戦う。その思いに報いるために。

 

 「斗流血法―――推して参る―――」

 

 (ヴィラン)連合に対する宣戦布告と共に右手に焔丸を形成。霞の構えを取り首謀者との戦いに突入するのだった。

 

 




切「おいおいおい」
爆「死ぬわあのアホ共」
緑「いや殺さないからね?多分

【誤字報告】

hungさん。 三六号さん。 ╰( U ・ᴥ・)m狗神丸さん。 N.jpさん。 ユウれいさん。 someyさん。

誤字報告ありがとうございました。
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