My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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仕事納めなので第三十三話です。

お待たせしました、なんとかギリギリ今年中の更新が間に合いました。今年の年末は忙しすぎて(ひと月で三か月分の仕事入った)死ぬかと思いましたが元気です。嘘です痛み止めが手放せない日々です救けてリカバリーガール。

今回オリジナル技出ます。ご注意を。


第33話:そんなくだらない言葉で片付けるな

 相澤を説得し受け入れてもらえた緑谷は、懸念を払拭出来たおかげで心置きなく脳無と戦うことが出来ると軽い足取りで前に出る。形成した焔丸を死柄木に向け、ここから完全勝利を狙うと宣戦布告、刀を構えた。

 大胆な布告に死柄木も苛立ちを覚え殺すべく前に出、しかし先ほど当てられた気を思い出しすぐさま踏みとどまる。こちらもただの馬鹿ではないようで、本能では危険を察しているようだ。

 

 「……おい黒霧、こいつはマジでヤバイ。今のうちに叩くぞ」

 

 「落ち着いてください死柄木弔、ここは撤退すべきです。あれはヒーローとして、いえ人としても異質すぎます!時間もない以上今は何も知らないうちに相手するのでなく機を伺うべきです!」

 

 「うるさい、俺だってあんな気配出せる奴がタダのガキと思っちゃあいない。けどさあ、ロクなヒーローもいない今がチャンスだろ……!最悪イレイザーは殺れなくてもあのガキは殺るぞ。脳無さえいればこのガキを挽肉に出来る、帰るのはそれからだ」

 

 しかし死柄木は圧を受けてなお撤退でなく戦闘を選んだようだ。

 黒霧の言うことは正論である。不確定要素の塊を相手に相応の準備もなく攻めるのは愚策だ。何より時間もない。

 だが死柄木の言う事もわかる。オールマイト抹殺どころか会うこともなく追い返されるなんて間抜けな結果は残したくないし、以降厳重に対策されてしまうだけで襲撃は徒労で終わる。

 おまけに(一部自業自得ではあるが)脳無と言う戦力の秘密も看破された。丸裸というわけではないが、それでもこれ以上情報が相手に渡るのは避けたい。

 自分達は捕まっても倒されてもいない。チャンスは十分あるし、ついでになめられっぱなしで終わるのも癪であるため嫌がらせのひとつでも達成しておきたい。問題はその嫌がらせの難易度が限りなく高いことではあるが。

 

 「やれ脳無」

 

 一言発せられた瞬間脳無は勢いよく緑谷へと向かっていった。その速度は凄まじく、ブレたと思うや近くまで接近する姿は、少し離れていた相澤も途中まで捉えきれなかった。

 急接近した脳無はその剛腕をブォンッ!と、風切り音を立てて緑谷の頭部へ振り下ろす。それを緑谷は身体を軽く捻り回避。空ぶった拳は破砕音を立てて床を砕いていく。凄まじい力だ。

 

 脳無の攻撃はそれで終わらない。避けられたとわかった脳無はもう一度拳を振り、それも避けられたらもう一度と、連続で拳を放っていく。

 勢い凄まじく、ドガガガガと音を鳴らし降り注ぐそれは比喩無しで拳の雨とでも言えるものだった。

 

 「緑谷ッ!」

 

 あまりの早さと砕かれていく床を見て無事なのか不安に駆られ叫ぶ相澤。だからといって拳の雨は降り止むことなく続き、途中から飛び散るものの中に床の破片だけでなく血飛沫も混じっているのを視認できた。

 

 「はは、こりゃああのガキは挽肉決定だな。あんだけ啖呵切ったのにあっけないなあ…………おいどうした黒霧?」

 

 「いえ、殺ったにしては何故脳無は攻撃をやめないのでしょうか。さすがに死ねば攻撃もやめるはず―――」

 

 

 ザンッ

 

 

 黒霧が疑問を口にしたその時だった。戦闘の中心で肉を断つ音が鳴り、それと同時にヒュンヒュンと何かが宙を舞い、ドスンと音を立て死柄木達の近くに落ちてきた。

 予期せぬ情報に敵味方揃ってそれを凝視する。見ればそれは脳無の、それも拳のアチコチの肉が削ぎ落とされ血に塗れたボロボロの腕だった。

 

 

 「弱い」

 

 

 ポツリと、緑谷の呟きが聞こえた。

 

 「並のヒーローじゃ捉えるのも大変な動きと拳速。死体だから痛みもなく疲れない肉体。重機以上の威力を誇る圧倒的パワー。おまけに超再生という個性。なるほど、オールマイトにぶつけようとしただけある」

 

 腕を落とされた脳無だが気にせず残っている腕を振り下ろし対象を殺しにかかり、だがその腕も切り飛ばされ宙を舞った。

 

 「だけど弱い」

 

 切り落とされた脳無の両腕が隆起しボコンと音を鳴らし再生。再び緑谷を殺すべく攻撃にかかるが再び切り飛ばされた。

 

 「デルドロさんほどパワーがあるわけでもない。スピードもザップさんやツェッド君の攻撃と比べて数段劣る。おまけになにも考えない死体だからスティーブンさんやK・Kさんみたいな技術もなく論外」

 

 懲りずに腕を再生。拳を放つ、捌かれ断たれる。以下繰り返し。

 

 「何よりその拳に魂が籠ってないからクラウスさんやオールマイトのように圧を感じない」

 

 返す刃で片足を切り落とし脳無は転倒した。

 見下ろす緑谷はところどころ血がついているがそれは全て脳無の返り血であり、その姿が緒戦は緑谷の圧勝だということを物語る。

 血刀から血を払うとハァ~ッと一つ、大きなため息吐き大袈裟に肩を落とし挑発した。

 

 

 「これで対平和の象徴って本気で言ってるのならお前たち全員ミトコンドリアからやり直したほうがいいんじゃないかな?」

 

 

 「~~~~~!!!!」

 

 まだ義務教育を終わらせたばかりの子供に―――中身は今年成人する歳だが―――憐憫の篭った目を向け煽られた死柄木は殺意を覚えた。冷静な部分では挑発なのはわかっているが、それとこれとは話は別。(ヴィラン)はナメられたら終わりだ。

 

 「脳無、そいつを殺せ。早く、今すぐにだ……!」

 

 「冷静に死柄木弔!無闇に攻め立てたところで意味が―――」

 

 「うるさい、お前もだ……!早くゲートであのガキの攻撃を―――」

 

 「させると思っているのか?」

 

 「!!」

 

 黒霧も参戦させようと叫ぶ死柄木だったがそれも相澤が飛ばしてきた操縛布に水をさされる。避けようとする死柄木だったが怒りに駆られ気付くのに遅れたこともあり布は腕に命中し巻き付き捕らえた。

 

 「こんな布きれ崩せば……!」

 

 「だからさせねえつってるだろ」

 

 個性で布を潰そうと掴みにかかるが、相澤は細かく引っ張るまたは緩め動かすことで相手のバランスを崩し翻弄していく。目の前にあるのに掴めない状況に苛立ちは溜まる一方だ。

 

 「クソ、黒霧、ゲートだ。ゲートでこいつの布を切断しろ……!」

 

 「すみません、個性を封じられています……!」

 

 黒霧もまた相澤に睨まれ個性の対象に選ばれており横やりを入れれずにいる。

 相澤の個性は対象の一部でも視界に入ればいいとはいえ凝視しないといけない。つまり今この時相澤は黒霧を凝視しつつ、死柄木を布一本で誘導と妨害をしながら二人が視界に入るよう細かく位置を調整していることになる。砕かれた腕の痛みも相当だろうに決して鈍らせないその技術と根性はまさにプロヒーローと言えよう。

 

 「とはいえ抑えれてせいぜい二分がいいところだ。早めにどうにかしろ緑谷!」

 

 「了解!」

 

 相澤の声に呼応した緑谷は焔丸を腰へ添え、居合の構えから凄まじい速度で突撃した。脳無は迎撃するべく切り落とされた手足をすぐさま再生させカウンターの要領で殴りかかろうとするが、その拳が振り上げられるころには緑谷は懐へ接近を終えていた。

 

 斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう)刃身の壱焔丸(じんしんのいちほむらまる)

 

 大蛇薙(おろちなぎ)!!」

 

 居合一閃。通過と同時に放たれた無数の斬撃は、脳無の手足に切れ込みを入れ、四肢を同時に飛ばし達磨となって転がした。

 

 「無駄だ、どれだけ切り飛ばしても超再生の個性で元通りになる脳無は無敵だ!!」

 

 だが死柄木の言う通り如何な神速の技であろうと超再生の個性の前では効果は薄い。切り飛ばし地に転がった頃には個性を使用され再び再生を始めていた。その早さは血界の眷属(ブラッド・ブリード)と比べるまでもないがそれでも早く、あっという間に元通りに復元を果たし地に立った。なかなか厄介な個性である。

 こういう手合いは首を刎ね飛ばすなり七獄で焼き尽くすなりすればいいだろうが、それは相澤の指示により止められているため不可能となんとも歯がゆい。

 

 「まっだまだぁッ!!」

 

 ならばと緑谷は居合の残心から追撃。逆袈裟で、切り上げで、横薙ぎで、いくつもの目にも止まらぬ速さで脳無を切りつけその都度脳無の四肢は切り飛ばされ達磨になっては生やし、そして再び斬っては生やしのいたちごっこの攻防を続けていく。

 

 「おまけだ、これも喰らえッ!」

 

 時間にして三十秒ほど、かなりの回数(ヴィラン)の手足を切り飛ばしたと緑谷は一息つくついでと懐から兄弟子のジッポーを取り出しパチンと点火。すると刃先に火が走り、燃える刀で四肢を切り落とすやゴォッと断面から豪快に火の手が上がった。

 

 斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう)―――カグツチ―――」

 

 刃身の壱焔丸(じんしんのいちほむらまる)―――炎閃牙(えんせんが)!!」

 

 

 ―――炎閃牙(えんせんが)―――

 血刀の刃先にのみカグツチを起動し、敵の身体を切り飛ばすと同時に傷口からカグツチの炎を侵入させ燃やす技だ。

 相手を切りつけて血を侵入させるという手間がかかるが、威力も高く再生能力を持った存在なら回復を大きく削ぐことが出来る。

 内から焼くという性能上人間や異界人に使うのは躊躇ってしまうが、こういう生物兵器や血界の眷属(ブラッド・ブリード)などの手合いなら容赦なく使える技であるため、彼は向こうでもたまに使っていた。

 

 燃え盛る炎が脳無の再生を阻害する。自慢の超再生で生やそうとするがその熱量はすさまじく、脳無も個性をフル稼働させているようだが、その都度カグツチの火力は上回っていき再生は遅々として進まない。

 

 「は?……なんだよそれは……なんなんだよお前その炎は?血ぃ操る個性じゃないのか……!?複数個性持ちとかどういうことだよお前も先生の知り合いなのかチート野郎……!」

 

 「あ"っ?何がチートだテダラケシラガバエ。これ(血法)をここまで仕上げるのに師匠に何百回三途の川を渡らされたと思ってるんだ。人が生死の境を行き来して培った力を虎の頭に乗っかって威を借ってるだけの羽虫がそんなくだらない言葉で片付けるな。次くだらないこと言ったら尻から血法突っ込んでその舌引きちぎるぞ」

 

 「バ……羽む……!?くそ、クソッ!ふざけんな……!……そうだこっちだ脳無、イレイザーを殺れ」

 

 追加の挑発―――半ば素で怒ってるが――にわなわなと、それこそ地団太を踏みそうな勢いだが相澤が必死で黒霧の個性を消し死柄木自身も腕を拘束され動けず形勢はドンドンヒーロー側に傾いているためそんな暇はない。

 死柄木達も大人しく捕まる気はないため打開するべく達磨状態で燃える脳無に指示し、相澤にターゲットを変える。脳無は不完全な状態からダカダカと蜥蜴のような歩行で相澤へ向かって襲い掛かった。

 

 「気持ち悪ッ!じゃないまだそんな状態でそこまで動けるのかこいつは!そろそろいいと思うのに……!」

 

 オールマイト並の性能を豪語するだけのことはあるようで、四肢を切り飛ばされた状態であろうと不格好ながらもかなりの早さで相澤へ接近。

 しかし追いつけない速度でもなく、緑谷は素早く近づき再び切り飛ばした。徐々に生え出していた四肢がさらに短くなり脳無はバランスを崩しそのまま転がっていく。もちろん斬り飛ばした傍から傷口は燃やすのも忘れない。

 

 「ッ……今ので視界が!」

 

 しかしここで運は死柄木に味方した。脳無が床を削りながら相澤の前を勢いよく転がり過ぎていったことにより舞った瓦礫の粉塵が相澤を襲ったのだ。

 本来ならゴーグルが目を保護してくれるのだが、先ほど脳無の一撃をもらった時ゴーグルは壊れてしまい今はむき出しの状態である。腕で隠すことが出来ればいくらかマシだったが片や死柄木を抑えるのに忙しく、片や潰されて使い物にならない。結果無抵抗のまま粉塵を浴び、視界が塞がってしまったのだ。

 

 「今だ黒霧、逃げるぞ……!」

 

 死柄木はそのチャンスを見逃さなかった。目をやられている隙に操縛布を個性で崩し自由に。それと同時に個性が使えるようになった黒霧のワープを使い飛ぶべくゲートを開けてもらう。そこに入ることで緑谷達から離れ、ついで脳無を呼び寄せて共に脱出を図る。

 

 先ほどは戦うことを選んだ。しかしそれはまだ脳無がいれば勝てると思ったからだ。だがイレギュラーが生徒に紛れていた以上この状況でアレに勝つのは無理だと嫌でも察してしまう。

 このまま尻尾を撒いて逃げるのは非常に腹立たしいが判断を誤ればお縄に着く以上もはや致し方なし。今はゲートを通り急いで脱出を―――、

 

 「死っ!!っねやゴラァッ!!」

 

 「ぐぉっ!?」

 

 図る瞬間、BOOOM!!と爆発音を鳴らし勢いよく横槍が入った。黒霧は死角からの爆破を受け個性を中断。さらに追撃はそこで終わらず頭を掴んで地に押さえつけるで動きを封じられることになった。一体誰だがやったかと言えばもちろん爆豪である。

 

 「よくもまあくだらねえことしやがったなクソモヤがぁッ!!」

 

 「ちょ、ちょっとかっちゃん!どうしてこっちに来たの!?」

 

 「敵の出入り口潰すために決まってんだろ!退路断って悪いかよ!!……ってなに(ヴィラン)燃やしてんだテメエ!?」

 

 「あ、それ超再生の個性持ちだったからその対処してるところ、触らないでね。……いやそれより切島君どうしたのさ!一緒にしたはずなのにいないし!?」

 

 「向こうの船の上だ、危ねえから置いてきた。なぁに周りのクソ(ヴィラン)は全部水中で爆破してぶっ殺したから大丈夫だろ」

 

 「ダ、ダイナマイト漁みたいなのしたの?(ヴィラン)相手だからって容赦ないぞかっちゃん……!」

 

 分断時孤立しないようツーマンセル以上組めるよう手を打ったが、二人はどうやら水難ゾーンに飛ばされたらしく、そんな彼らに迫る(ヴィラン)をダイナマイト漁の要領で倒した模様。さらっと命に関わる危険な手段だがそこは爆豪らしくうまく調整をして気絶のみに抑え込んだだろうと緑谷は思うことにした。

 

 「だ、だったらこっちじゃなく他のみんなの応援に行きなって!向こう(H・L)の事件程じゃないけどそいつらも危険極まりないんだよ!」

 

 「こっちも手足りてなかったんだからいいだろが!だいたいアイツらがあんなクソ三下共に負けると思ってンのか!なめんなやッ!」

 

 「そこまで言われるほど大したことなかったのか。…………あれ?今かっちゃんクラスのみんな褒めた?」

 

 「寝言は死んでから言えッ!!」

 

 「いやなんでさ!?」

 

 「お 前 ら 集 中 し ろ」

 

 二人の会話がどんどんコント染みた会話になっていき、聞いてる相澤の眉間の皺はどんどん深くなり、ついでにここにいない切島が「お前ら揃ったらコントしないと息できないのか?」と言ったような気がする。

 

 「ぬぅ……!」

 

 「おおっと動くなよクソモヤ。少しでも動いたと俺が思ったらぶっ殺す!」

 

 「どっちが(ヴィラン)だろこれ」

 

 とはいえ二人とも口ではともかく警戒は怠っていない。緑谷は味方は増えたが逆に守らないといけない対象も増えたため咄嗟に動けるよう、爆豪も緑谷の邪魔にならぬよう(ヴィラン)を押さえ警戒をする。

 

 「出入口を押さえられた……大ピンチじゃねえか。おまけにガキも無傷だし、なんだよこのクソゲーはよ……!……脳無、まずは爆発小僧をやっつけろ。出入り口の奪還だ」

 

 せっかくのチャンスは爆豪によって潰された。だがまだ終わりじゃない。最悪なのは変わりないがだからといって諦める気はない。相手の人数は増えたが所詮ただの生徒、それも一年だ。緑谷のようなイレギュラーな存在でない限りはどうとでもなるし、むしろ生徒が緑谷たちの足かせにもなってくれるだろう。

 

 (脳無をあのガキにけしかけて黒霧を奪取、そんであいつらにもっかい特攻させて俺達だけゲートで離脱。もうそれしかないか。脳無は足止めに置いていくことになるのが痛いが仕方ない……)

 

 自分達が逃げ切れば再起は出来る。故になりふり構わず、脳無を使い捨てるつもりで指示を送った。

 しかし指示を送ったにも関わらず脳無は爆豪を襲わない。何故?と、焦燥感を抱き死柄木は脳無を見やる。そこにいたのは再生を行わず俯せのままもがく脳無の姿だった。

 

 「やっと動けなくなったか。時間がかかったけど無力化出来てよかったよ」

 

 「は?……おい、どういうことなんだよ。脳無に何かしたのかお前?」

 

 死柄木は脳無が何故個性を使わないのか、生徒を襲わないのかわからず疑問を口走り、緑谷が律儀に答えた。

 

 「強いて言うなら再生を続けさせたことさ。切り飛ばされる端から自己修復して元通りになるのは強力だけど、お前は考えなかったのか?そんな強力な個性がノーリスクで使えるものなのかって?

 知り合いに生成系の個性を持った人がいるけどその人は言っていた。この個性は条件さえ整えば何でも作れるが代わりに体内から相応分のエネルギーを消費すると。だから普段からエネルギーを蓄えることが重要だってね」

 

 誰かと言われれば八百万のことである。

 研鑽馬鹿な一面がある緑谷はクラスのみんなにも強くなってほしいと彼らの個性を聞いては自分の視点からのアドバイスを送ったりしている。その中で八百万の個性が脳無の個性と似通った部分があると推測した。

 

 「そして超再生の個性、これがもし今言った生成系個性と同じ原理で生やしていて、それを補給することなく繰り返したら体内のエネルギー……栄養はどうなると思う?」

 

 「なくなるに決まって…………!?まさか栄養不足で動けねえってのか?死体がか……?」

 

 「多分ね。コイツが無機物ならともかくフレッシュゴーレムである以上肉体の鮮度を保つべくエネルギー、たんぱく質などの栄養の保有は必要不可欠。仮に常人より多くエネルギーを蓄えることが出来てもあれだけ何回も大きな欠損と修復を続ければ遅かれ早かれエネルギー切れで動けなくなるのは決まっていたのさ。

 とはいえ確信はなかったから当たっててよかったよ。違ったらかっちゃんまで守らないといけなくなって少し大変だからね」

 

 「おいこら俺まで護衛対象に入れんじゃねえ」

 

 「そいつ今はそんなだけど本来は撲殺してくるオールマイトみたいなものだったんだけど、あしらえる?」

 

 「……………………」

 

 爆豪は自分も守られる側に扱われたことに文句を言うがオールマイトを相手どれるかと聞かれ絶対と言えず悔しそうに口をつぐむ。

 それを見届けると緑谷は脳無を焼いていた炎を消した。完全破壊を禁じられている以上これ以上再生に栄養を使わせれば身体の維持すら厳しくなる。再生せず芋虫のようにしか動けていないその姿が如実に表れていよう。

 

 「さて……詰みだけど、どうする?僕は大人しく捕まることをおすすめするよ。それでも抵抗するなら手足の三、四本失うのは覚悟してもらわないといけない」

 

 最悪達磨という度がすぎた脅しだが、嘘ではないということが言葉の節々から感じ取れ死柄木は、どうしてこうなったんだと恨み言をこぼす。

 勝率はかなり高いはずだった。オールマイトがいないことは想定外だがむしろそれは相澤達をオールマイトに邪魔されることなく倒せると思えば棚ぼたとも言えよう。

 しかし蓋を開ければどうだ。下手なプロヒーロー二十人相手取るより厄介な奴が生徒に紛れており、こちらの思惑を尽く妨害された。

 

 万事休す。黒霧は爆豪に拘束され相澤も視界が回復、応援も時間の問題だというのに頼みの綱の脳無は戦闘不能。死柄木一人で彼等を相手取るのは無茶にもほどがある。

 連れてきた他の(ヴィラン)?ほとんどやられているためけしかけても数秒持てば……いや、むしろ従わず降伏するのがオチだろう。

 

 「ふざけんなよ……こんな奴がいるなんて情報なかったぞ……!脳無も脳無だ、ドクターめ……何が傑作品だ……とんだガラクタじゃないか……!」

 

 脳無がガラクタかと言えば決してそうではない。むしろ相応の脅威を有している。ただ相手が悪かった、この一言に尽きるだろう。

 

 「忠告はした。返事がない以上制圧させてもらう」

 

 もはや刻一刻と迫る破滅に抵抗する術はなく、緑谷は空斬糸を死柄木の身体に巻きつけ、捕縛に成功。

 

 

 ―――するはずだった。

 

 

 「!?」

 

 ゾクリと、死柄木が襲撃してきた時のような……いや、それと比較にならないほどの悪寒をその身に受けた。

 不味いと、不確かだが確実に不味いことになると飛ばした空斬糸を解除し骨喰を形成。最大限警戒に入る。

 

 「おい、どうした緑―――!」

 

 「全員警戒!気を抜いたら死ぬと思って!!」

 

 相澤も途中で嫌な予感がしたのか、緑谷の叫びと同時に身構え、二人の行動に爆豪も遅れて反応する。瞬間死柄木の背後から突如黒い液体が溢れだし事態は動き出した。

 

 「ッ!相澤先生、あの液体に抹消を!」

 

 「駄目だ、使い手が見えなけりゃ効果は出ない!」

 

 相澤の個性も万能ではない。視認できなければ使えない以上この個性は反応しつつ対処しなければならない。

 いったい誰が何処からと周囲を警戒するが、悠長にしてる暇はなく、黒霧の靄から赤い線の入った雷のような触手が飛び出し緑谷達へ襲いかかった。

 

 「かっちゃんッ!!」

 

 「チィッ!」

 

 爆豪は触手を間一髪避け、緑谷は相澤を背に骨喰で捌き切る。しかし触手の本当の狙いは緑谷たちでなく黒霧だった。

 触手が黒霧に刺さるとぐおぉッとうめき声をあげ、そして靄があふれ出した。尋常じゃない量の靄に巻き込まれぬよう死柄木を除いた全員が後退を余儀なくされる。

 

 「ゲートの靄を無理矢理出した……!?まずい、このままじゃ逃げられる。先生!」

 

 「こっちもだ、さっきから使ってるが効いてない!どうなってやがる!」

 

 こちらも個性が効かないことに狼狽する。抹消が機能しないということは、つまりこの靄は黒霧でなく別の何かが行使したということになる。おそらくさきほどの触手の先にいる何かだろう。

 

 「……なのにそちらを凝視しても抹消が機能してない?個性の強制起動までが個性の使用でゲート自体が一人歩きしてる状態になっているのか……?」

 

 「……先生が手出してきたってことはもうどうしようもないってことか。わかった、負けを認めるよ……」

 

 「ッ!逃がすか!」

 

 ふいに分析に走りそうになるがそれも死柄木が逃げようとするのを見て中断する。

 緑谷は捕縛を諦めない、まだ可能性がある以上考えるのは後だと、空斬糸を形成し放った。高速で飛ぶ糸は靄を潜ろうとする死柄木よりも早く向かい、これなら絡めとり綱引きの要領で引っこ抜くかそれが出来なくても駄賃に腕一本もらっていくことは出来るだろうと確信する。

 

 「■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 しかし思わぬ邪魔が入った。なんと脳無が爆豪に向かって飛び掛かったのだ。

 先ほどまで動けなかった脳無は、四肢の再生は行わず、目をギョロギョロと、涎をまき散らし鳴き声とも思える金切り声をあげて襲いくる。いったい何がと思ったが、脳無の脳に何かを刺した痕跡があった。恐らくさっきの触手が脳無の脳を弄って暴走させたのだろうと推測する。

 そして命を削りながら動くようになった脳無は実行した。死柄木が最後に下した「爆発小僧をやっつけろ」という指示を。

 

 脳無の体当たりが爆豪へ迫る。さすがの爆豪もオールマイト並の速度に反応することが出来ない。それこそ発砲された弾丸を見てから避けるより高い難易度なのだ、普通は出来なくて当然だ。

 だが緑谷はそれが出来る。その気になればナノ速度に反応出来る動体視力と肉体を得ているのだから。

 

 「あぶないっどわぁッ!!?」

 

 砲弾の如き脳無の突撃が爆豪に命中する数瞬、緑谷は爆豪を押し出すことに成功した。しかし出来たのはそこまで、自分は避けることは能わず、脳無の突進を正面から迎えることになるのだった。

 

 言葉にすればドガアアアンであろうか。あまりの速度に音が遅れてやってき、風圧が周囲の木々をブォンとしならせ、脳無ごと建物に向かって飛んでいき壁を、建物を破壊した。

 

 「な……!?」

 

 自分のいた場所に脳無が通りすぎたことで、自分が救けられたことに気付く。いったい誰がと思うがこんな数瞬のやり取りを出来るのはこの場にはあいつしかいないと察した。

 

 「デ、デク……!!」

 

 死を連想する破壊に安否を確認するようにその名を口にする。普段では想像出来ないほど悲痛な表情と震える声は、まさしく幼馴染を心配する年相応の少年の姿をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 「―――本当に―――

 

 本当に君には頭が上がらないよ少年」

 

 

 

 ふと、半ば瓦礫と化した場所から声が聞こえてきた。粉塵により何も見えないが、声はハッキリと聞こえる。それは子供の声でなく壮年といえる大人の声だ。

 

 「だ……誰だ?……まさか、デクなのか?」

 

 「いや、僕あんな渋い声出せないよ」

 

 「どわっだあッ!!?テ、テテテメエなんでここにいんだゴラッ!?あの声誰だよ!?」

 

 気付けば自分の隣でひっくり返ってる緑谷がいたことに盛大に驚く爆豪。背後にデクーンとコミカルな文字が見えた気がするが目の錯覚だろう。

 

 「嫌な予感がして、校長のお話を振り切りやって来たよ。すごい勢いで走る飯田君を受け止めて何が起きてるのかもあらまし聞いた。

 本当に……本当に教師としても、ヒーローとしても私は己が恥ずかしい。事情があったとはいえ遅れてきたことが。子供たちを危険に晒し続けたことが。

 そして何より私が本来やるべきことを安易に任せてしまった己の無責任さがとてつもなく恥ずかしく……そして腹立たしい……!!」

 

 「かっちゃんを押し出した後さらに押し出されて救けられたよ。そしてそんなことを都合よく出来る人といったら……」

 

 煙が晴れていく。そこで目に映ったのは未だ半端な四肢を振ってもがく脳無。そしてその脳無を掴み押さえこみ、怒りの形相を露にしたヒーローがいた。

 

 「だからこそここまで戦ったみんなの頑張りに応えるべく言わせてくれたまえ。

 

 

 私が来たと!

 

 

 「あの人くらいでしょ」

 

 

 そう、我らがNo1ヒーロー、オールマイトである。

 

 

 「■■■■■■■■■!!!」

 

 金切声を上げ掴まれている腕から抜け出そうともがく脳無。しかしびくともせず、オールマイトは拳を握り引き絞る。

 

 「TEXAS(テキサス)―――」

 

 「オールマイト、そいつは脳無!肉人形(フレッシュゴーレム)の一種で人の形をしてますが既に死体です!個性はショック吸収と超再生を確認。オールマイト対策とも言える組み合わせで相性は悪い―――」

 

 

 

 SMAAAAAAAAASH(スマアアアアアアアッシュ)!!!!!」

 

 

 

 瞬間、振りぬいたオールマイトの拳を緑谷は一瞬見逃した。

 ナノ秒すら対応してみせる緑谷の目が本気を出して捉えれた豪腕の一撃は、光速に届いたのではと錯覚させる程の拳速を叩きだした。

 音も風も置き去りにやってくる、そんな人の領域を大きく逸脱した拳が脳無の腹に命中。するとどうなるかだが…………まずショック吸収の個性が発動し衝撃を吸収したのは予想通りの結果だろう。

 

 しかし予想通りだったのはそこまで。ショック吸収の個性がオールマイトの拳と拮抗したのはその一瞬だけだった。

 四肢を奪われ踏ん張れないからなのか、超再生の使いすぎで個性がうまく機能していないからなのか、はたまたその程度の個性など歯牙にもかけないほどの威力だったのか、それはわからない。

 確かなのはその一撃は脳無の個性を貫通し、その身をボッ!とソニックブームを発生させながらUSJの建物と壁を次々と突き抜け吹き飛んでいったことである。

 

 「……Kidding(マジで)?」

 

 「……マジかよ……」

 

 遅れてやってきた風圧と音をその身に受け、圧倒的とも言える一撃必殺に二人は揃って呆然と呟くのだった。

 

 「今さら来るのかよオールマイト……。おまけに個性貫通して瞬殺とかどんだけチート揃いなんだよ……。

 ……はあ、ここまでくると一周回って冷静になったな」

 

 もはや怒りすぎて逆に落ち着きを取り戻した死柄木はゲートにその身を潜らせていった。

 

 「あおいコラ手だらけ白髪野郎!このまま尻尾巻いて帰れると思って「ストップだ爆豪少年」あ"あ"っ!?」

 

 逃げようとする死柄木達を挑発する爆豪だったがオールマイトが咄嗟にそれを止める。

 

 「ストップだ。悔しいのはわかるが私は、そしておそらくあの先にいる(ヴィラン)もこれ以上ここで争うことを望んでいないはずだ。これ以上落とし所なく戦うとなると向こうも出張ってどちらかが倒れるまで戦うことになるかもしれない。そうなると私はともかく、君たち生徒をさらに危険に晒す可能性が非常に高くなる。教師としても、ヒーローとしてもそんな目にあわせるわけにはいかないのだよ」

 

 「……チッ」

 

 

 決して視線を死柄木と触手から離さず諭すオールマイトの気迫に口を紡ぐ爆豪。オールマイトがきた。他のヒーローの到着も時間の問題。なら一気に叩くべきだと逸ってしまうのもわかるがリスクを忘れてはいけない。

 オールマイトがすでに時間制限が危ういのを知らないにしても突如現れた黒い液体と謎の触手、その大本を相手取るにはあまりにも情報がなく、また重荷が多すぎる。ならば悔しいが奴らを逃がしお互い痛み分けの方が幾分かマシだろう。それを爆豪もわかっているのか、舌打ちと共に意を汲んでくれた。

 

 「今回は失敗だったけど、今度は絶対殺してやる……。オールマイトも、そしてそこのガキも……!」

 

 「F*ck off(二度とくるな)

 

 相手の捨て台詞に緑谷が中指を立てFワードで返すが反応は返ってくることなく、靄に包まれた死柄木達はその場から去った。それを見届けるや虚空から流れ出ていた液体も止まり、死線飛び交った戦場は静寂に包まれる。

 しかしオールマイトの視線は、しばらくその虚空を睨み続け、目を離さなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なおその場に取り残された下っ端(ヴィラン)は揃って緑谷へ土下座し「降参しますんで達磨は勘弁してください」と懇願。オールマイトは絶対やっちゃ駄目だよ少年!?と必死で説得を始め、緑谷はいややりませんよ!?と必死に弁明するのだった。

 




出「うう……みんなして僕をなんだと思ってるんだよブツブツ……。あ、先生。切り飛ばして出来上がってしまった脳無の手足の山どうしましょ?燃やして供養します?」
オ「ヒェ……なにこれぇ……」
相「そりゃあ悪鬼なんて言われるわ」
爆「そういうところだぞアホ」

今年一年も自分の作品を読んで頂きありがとうございました。来年も頑張ってチマチマ書きますんでよろしくお願いします。
それではよいお年を。

【誤字報告】

ミナミ・ライスエッジさん。 someyさん。 げんまいちゃーはんさん。 大自在天さん。

誤字報告ありがとうございました。
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