My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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ネギトロのネギが葱じゃなく中落ちの身を「ネギり(削ぎ)取る」、が語源と最近知ったので第三十六話です。

大変お待たせしました。ちょっとトガちゃんロスでモチベが死んだり異世界サムライ布教してました。そしてかっちゃんスマイルで復活しました。
けれどまだしばらく話し合い回です。は、話が、話が進まねえ……!


第36話:うんそうだね

 今僕らのいる備品室は非常に気まずい空気に包まれている。理由は簡単、僕が自身の秘密をうっかり暴露してしまったからだ。

 僕の盛大なやらかしに相澤先生は重苦しい溜息を吐き、オールマイトは頭を腕を組んでなにやら考え中、塚内警部は頭上に?を作り、トガさんはあーあと言って僕のジャケットを脱がしだし、アリギュラはどうでもよさそうに賭けス○ブラに戻った。後半自由すぎない?

 

 「おい緑谷、お前さっきまでの警戒心はどうした……!」 

 

 「す、すみません、本当すみません相澤先生。心から反省してます……!」

 

 本当に反省してますのでその、圧をかけるのはやめてください。あなたの圧はなんていうか、師匠を思い出してかなりキツイんです。いやアイアンクローがない分全然優しいですけど。

 

 一応弁明させてもらうと僕だってこんな凡ミス普段ならまずしない。ただ今回はアリギュラたちという核弾頭の出現に、警察の登場とトガさんの爆弾発言。さらに地雷を踏みながらバックストーリーの肉付け、真胎蛋(ツェンタイダン)という爆弾投下と忙しなくて処理しきれなかったんだ。誰か爆発物処理班呼んで来て。

 

 ここにライブラの誰かがいればカバーしてもらえたけれど、いない以上こうなるのはきっと必然だったんだ。ちくしょう(Fu*k)……。

 

 「異世界に次元渡航なんて言葉……コミックのような話だが三人の狼狽ぶりからしてまさか本当なのか?」

 

 嗚呼、バッチリ怪しんでいらっしゃる。むしろここまで喋ってて警官が疑いを持たなかったらどうかと思うけど。

 だけどどうする?人の口に戸は立てられぬなんて諺があるくらいだ。仮に話したとして、後で警察に共有されたりどこかに情報が漏れてしまっては困る。

 

 もう一度言うけどあの世界……特にヘルサレムズ・ロットの存在を知られることはとても危険だ。確かに向こうの住人が関わってくる可能性なんて天文学的確率だろうけど、その天文学的確率を度々発生させてくるのがあの街だ。その確率の中でもさらにトップレベルのレアケースが後ろでス◯ブラしてるし。

 

 そうでなくてもこちら側で異界の存在が知られれば、異界の技術や品物などに……特に世界を一変しうるモノに興味を持たれるはずだ。例として世界崩壊幇助器具などの超級の危険物が挙げられる。

 国なら軍事力として手にして出し抜こうと、(ヴィラン)なら悪の頂点を目指す道具にと、異界との干渉手段を模索してもおかしくない。人間なんかに扱いきれる代物でないのにだ。

 そんな厄ネタ極まりない情報をイタズラに増やすわけにはいかない。広まれば個性誘拐などが間違いなく増える。

 

 「……いっそ首をこう、斜め四十五度で叩いて気絶させれば有耶無耶に出来ないかな?」

 

 「君たまに危険な思考になるよね。そこは早急に改善していこうか。

 ……もうここまで察せられたなら誤魔化しても心証を悪くするだけだし、それなら思いきって話してみたらどうだい。なに、塚内君は私の秘密をいくつも共有している人間だ。驚きはすれど表に出たら不味い内容とわかれば胸の内に留めてくれるだろう。なんだったら私からも秘密にするよう頼み込むからさ」

 

 ああっと、余裕がなくなったせいで思考が過激的になってしまった。これは反省しないと、先生が揃って呆れている。

 

 「えーと、オールマイト。仮に今の会話が全部本当だったら、彼が行方不明だったのはその、所謂異世界転移とかいう、なんだ?一昔前に流行ったって言う創作物の事象によって違う世界に…………ああいやすまない、馬鹿なことを言った。さっきのやり取りもあれだな、ノリでやったんだよな。ハハッ」

 

 「あー、塚内君、……残念だが大正解なんだよ」

 

 「いやいや、無理に話に乗らなくて……………………………相澤君、彼の話は本当なのか?」

 

 「俺も先ほど聞いたばかりなんで断言は出来ませんが、おそらく本当です」

 

 相澤先生の言葉がトドメとなったのか、自分の考えが当たってたことに顔を手で覆い、そりゃあ見つからないよと深く肩を落とす塚内さん。

 この世界にいないんじゃあ必死で探してもどうしようもないですよね……。なんていうか、ごめんなさい。

 

 「オールマイト、とりあえずどこまで話しましょうか……?」

 

 「それなんだが……すまない少年。ひとつ君に頼みがある」

 

 「頼み、ですか?」

 

 「ああ。君の秘密なんだが…………出来れば校長達にも共有出来ないだろうか」

 

 「……へあっ?」

 

 突如オールマイトから発せられた校長達への秘密共有要請。これに対し変な声を出して顔を強張らせてしまったのは仕方がないことだろう。

 うん、何言ってんだアンタと言いたい。言いたいけれどオールマイトも理由があって明かしてほしいと言っているのはその真剣な目を見ればわかる。

 ……まずは説明してもらおう。塚内警部はもう仕方ないにしても、何故追加で僕の秘密をバラせというのか。その理由を。

 

 「君の言いたい事はよくわかる。だがそれを飲み込んで話してほしいんだ。それだけの理由が出来てしまったんだよ。

 ……なにせさっきの戦いで、最悪な(ヴィラン)を見つけてしまったからね」

 

 オールマイトは僕の心配を理解する上で明かしてくれと、依然真剣な表情で頼む。

 ……口ぶりからしてどうやら襲撃した(ヴィラン)と謎の泥が相当危険な存在らしい。それこそ……僕が隠し事をしてる余裕がなくなるほどの。

 

 「その(ヴィラン)とは一体?」

 

 「ああ、だがその前に…………相澤君、ここから先は相当踏み込んだ、聞いてしまうと嫌でも厄介事に首を突っ込んでしまう内容だ。聞きたくないなら少しの間ここから離れてもらうことになるのだが……」

 

 「いえ、聞きます。ただごとではないのは今のやり取りで理解できましたし、放置するのは合理的じゃありません。……それに今なら、こいつの滅茶苦茶な話を聞いた後ですから大抵のことは落ち着いて受け止めれます」

 

 警告を発するも相澤先生は即了承。ここまで危機感を煽っておいて蚊帳の外に追いやるのは無茶ですよ。

 

 「ありがとう。そして配慮が足りなくてすまない。だが少年の事情を知る私たちに塚内くんもいる今がちょうどいいと思ってね、急いてしまった」

 

 「逆を言えばそれくらいの事態なんですよね。オールマイトが急くほどの、隠し事を躊躇うほどの事態です。今なら世界の危機と言われても納得出来ますが……いや、もしかして?」

 

 「……さすが世界の危機を何度も救った男だぜ、勘が良い。

 ああそうだ、世界の危機かもしれないのだ。なにせあの吹き出ていた泥から、この傷をつけたアイツの気配を感じたからね」

 

 そう言うやオールマイトは服をめくり上げ、抉られた腹の傷を晒す。傷を見た僕らは痛々しい傷に眉間を寄せ……、

 

 「そ、その傷をつけた奴って……待てオールマイト!まさかアイツが!?」

 

 塚内さんだけ驚愕のあまり椅子から立ち上がり、血相を変えてオールマイトに問いただした。

 ……なるほど、さっき色んな事情を知ってるだの秘密を共有していると言っている意味がよくわかる。なにせその傷は六年前の、決して表に出ることのない巨悪との決戦で負った傷なのだから。それを知り得ないとこんな慌てかたをしないだろう。

 

 「そのまさかだ塚内君、わずかな対峙だったが確信はある。あのどす黒い邪悪を凝縮した気配を私は決して忘れはしない。

 

 奴が……六年前に討ち倒したと思っていた我が宿敵オールフォーワンが生きていたのだ……!」

 

 「嘘だろオイ……!?」

 

 同時に、二人のやり取りにより、世界の危機に繋がる事態だということをハッキリと理解させられる。

 オールマイトはその目に悔しさと怒りを滲ませ、殺したはずの宿敵が生きていたことをハッキリと告げると、塚内さんは目を見開きその顔から血の気が一気に引いた。

 

 ……オールフォーワン。それが宿敵と言われた(ヴィラン)の名前か。オールマイトの個性と対を為す名前なあたり、その関わりの強さがよくわかる。

 

 「宿敵であり師の仇でもある奴との因縁はあの死闘の末断ち切れたと思ったんだが、どうやらあの状態でも生きていたようだ………………ねえ二人とも、思ったより反応薄いけど大丈夫?塚内君みたいにもう少し驚いてみない?」

 

 「いえ、かなり驚いています。ただ前述の通りコイツから頭が痛くなるような話を聞いた後なんでまだすんなりと受け止めることができました」

 

 「僕に至っては以前聞いていたので、それほどの存在なら一回二回復活するかもなーなんて片隅に考えてましたので納得の方が勝ってしまってます」

 

 哀しきかなあの街(H・L)には血界の眷属(ブラッド・ブリード)を筆頭に復活する存在には事欠かさない。

 細胞ひとつ残ってたらそこから完全復活する扁形動物(ドクター・プラナリア)や、月末のルッダールダ定期召喚時のみ市民の身体を奪って儀式を始める霊魂とか。

 次元怪盗も生きてるのか依然万物を斬ったりしてるのでいちいちオーバーアクションを取ってたらキリがないんです。

 

 そんな発言に相澤先生からはおっかなびっくり情報を整理するこっちの身にもなれと睨まれ、オールマイトは大して驚かれない宿敵に何故か同情し、塚内さんは聞き覚えのない単語のオンパレードに終始困惑していた。

 

 「と、とにかく!奴が生きて暗躍しているとわかった以上、間違いなく世界の危機に発展するだろう。だが今の私はもはや全盛期の半分も力を出すことが出来ない。だからこそ常に世界の危機という特級の死線を相手取り、我々にない力を持って世界を救い続けた少年にも手を貸してもらいたいのだ。

 

 ……とはいえ手を借りる場合どうしても君の不確かな経歴が足を引っ張ってしまう。

 君が(ヴィラン)どころかすでに一流以上のヒーローだと私は確信を持って言えるし、出来る限り君の尊厳を守りたいが……それも限界はある。

 だが塚内君のようなルール側の人間や校長のような実績のある人が君の人となりを保証してくれれば君を十全に守れるはずだ。そのためにも君の空白の半年間を明かしてほしい。

 

 正直この話は君へのメリットは多少の身の安全程度と対して多くない。それどころか校長達がNOと言えばリスクが増えるだけの話だが……そのうえでもどうか頼む緑谷少年、いやヒーローデク。次の時代に負債を残してしまった不甲斐ない私を、世界を救けると思って手を貸してほしい」

 

 そう言って頭を下げるオールマイト。なるほど、話は理解出来た。僕も向こう(H・L)でコキ使われていた時、目こぼし以外にも僕やその周りをつけ狙う(ヴィラン)や悪質なマスコミが確認されれば注意を促してくれたり、場合によっては守ってくれたこともある。

 そんなWin-Winの関係をこちらでも築こうってことだろう。そのためにも多少はこちらの身を社会的にも守れるよう関係者たちに素性を明かし、(ヴィラン)側でないことを知ってもらいたいと。

 

 ……正直にあちらの秘密を開示するのは避けたいところだけれど、現状ハッキリとしている世界の危機案件を前にして、僕の我儘で滞らせている場合ではないのもまた事実であり、なによりオールマイトを通じて信用できる味方を増やすことが出来るメリットはこちらとしてもありがたい。だからって快諾出来るわけじゃないけど。

 

 「………これ以上は難しいですか。わかりました、話しましょう」

 

 「承諾は嬉しいが、渋い顔してるね。……まあ気持ちはわからなくはないが」

 

 「あの街の危険性と狂気は本来知らなくていい話ですし、なによりそれを知るということは相手によっては宝の地図の断片に早変わりしますからね。

 ……けれども世界の均衡を崩せる怪物がすぐ側で暗躍しているのを知ってしまった以上、ヒーローとしても、ライブラの一員としても放置は決して出来ません。

 それに擁護してくれる人がいないと、いざ免許もなしでオールフォーワン相手に本気で戦いでもしたら確実に危険視されて良くて(ヴィラン)予備軍、悪くて超敵(スーパーヴィラン)認定とか目に見えてます。仮に逃げられでもしたら間違いなくそこを突いて社会的報復をしてくるでしょう。そうなったらまともに身動きが取れなくなって僕は終わりです。

 それを考えたらリスクを承知で開示して味方を増やすのも悪い選択肢ではありません。勿論最初は話す内容をある程度は絞らせてもらいますが。時間も信用も足りてないのに全て話しても警戒されるだけですし」

 

 「わかった、無理を言っているのはこっちだし、情報に関してはそれで構わない。私も最初は全てを教えてもらったわけじゃないしね。勿論そのうえで私も最大限フォローさせてもらうよ。塚内君も今はそれで頼めるかい?」

 

 「私としても謎に包まれてる彼の情報を得る機会だし、事情をよく知るオールマイトに任せることにするよ。……気分はすでに腹八分目だけどね」

 

 言質は取った。オールマイトが味方してくれるなら僕も少しは安心して話せると思う。

 

 ……けれど、考えて決めたことだが、それでも明かしていいのかなと考えてしまう。

 オールマイトの言うことも理解できるし自分でも納得のいく理由にたどり着いたが、それでもなおあの世界は知らないほうがいい。誰かが危険な目に遇うのもそうだが、僕みたいな危険人物を野放しにしていることでオールマイト達が糾弾される可能性もあるし………………ああもう考えれば考えるほどネガティブな方向に考えてしまう。ウジウジしてしまう自分が腹立たしい。

 

 「デク君デク君、何かお悩みですか?」

 

 自分の選択にげんなりしていると、ペシペシと肩を叩かれ声を掛けられた。振り向くと僕のジャケットを羽織ったトガさんが見つめており………、

 

 「いや何で羽織ってるのさ?」

 

 「彼ジャケだよ!デク君に包まれてるみたいでとっても落ち着くよ!でも血がにがにがのまずまずだよ……」

 

 「なにやってんのさ……。その血僕のじゃなくて脳無……さっき戦ったフレッシュゴーレムの血だと思うから腐ってるんじゃない?」

 

 「うえー、最悪です。お口直しにデク君のちうちうさせて!」

 

 「いや前から言ってるけど僕の血吸血に向かないからね?」

 

 「むー、いけずです」

 

 血の摂取を拒否するや不満げに頬を膨らますトガさん。拒絶は申し訳なく思うけど君の健康を本気で思って言っているのはわかってほしい。

 

 僕の、というか血闘術師の血は武器みたいなものだ。接触程度ならともかく摂取しちゃうと属性に由来するダメージを負いかねない。血界の眷属(ブラッド・ブリード)すらダメージを与えれる血がどれだけ危険かわかるだろう。

 おまけに僕の個性である再構築(リビルド)は取り込んだ物だけでなく他者に取り込まれた場合も機能する。ザップさん達に聞いたところ少量程度ならピリッとする程度で済むらしいが、多く摂ればそれだけ個性が侵食を行うのか痛みが走るらしい。おそらく僕の細胞に都合よく作り替えようと個性が働いているのだろう。

 そんな相手にどんな悪影響が出るかわからない個性入りの血のため、例え血法が使えなくても僕の血を輸血や摂取するのは決してお勧め出来ない。

 

 しかし彼女はそれをわかったうえで僕の血を吸おうとしてくる。曰く、吸血行為が彼女特有の愛情表現らしいのだ。

 いつか僕の血を吸って病院に搬送されないか心配になる。君が人の手で倒れでもしたら確実にアリギュラが報復にくるし、内容によっては世界の危機に発展しかねない。そうなったら僕の命ひとつで済むかわからないし、済まなかったら死んでも死にきれない。

 

 って思考が明後日に飛びすぎだ僕。ひとまずトガさんにどうしたのか聞かないと。

 まさかアリギュラが我慢の限界を迎え―――「くぉ~ら屋根ゴミ~!せっかく勝ってたのに~メテオで無理矢理五分とか~な~めてんの~!?」うん、アリギュラは文句を垂れてくるまで放置でいいや。

 

 「そうでした。デク君がうんうん唸っていたので気になったのです。考え事?」

 

 「ちょっとね。今回の決断で生じるリスクについて女々しく悩んでるだけだから気にしないでいいよ」

 

 「うんうん、つまりいつものことだね。全然大丈夫そうでよかったよ!」

 

 「いつものことて」

 

 いやいや、簡単に言うけど向こう(H・L)と違ってこっちじゃ縛りが多くて大変なんだぞ?免許なしのヒーロー活動は犯罪だし、倫理観もガチガチだから正当防衛だろうと殺人はご法度。(ヴィラン)を殴り倒しても称賛より先に呆れられる。僕が例外なんだろうけど。

 だから安易に大丈夫と言われても逆に不安になってしまい、ちゃんと考えて言ってるのかと思ってしまう。そこのとこどうなのさ?

 

 「そっちも失礼だよデク君。私はちゃんと考えて言ってます。むしろ私から見たらデク君が悩んでるのが甘々です。グラブジャムンです!」

 

 こちらの悩みと抗議をトガさんは甘いと一蹴し、ふふんといい顔で僕を見つめる。グラブジャムンって……世界一甘いお菓子並とかそこまで言うかな?

 

 「だって私のデク君は正義感が誰よりも強くて、救けを求められたらどんな怪我をしてでも救ってみせちゃうお節介ヒーローです!私はずっと見てきたからそれをよく知ってます!

 そうですね……。例えばデク君。以前女の子を苛めたヤクザに怒ってクラウスくんと一緒に懲らしめにいったの覚えてます?」

 

 「え?……ああメイヴィちゃんのことかな。でもあれって懲らしめたというか暴れたというか……」

 

 向こう(H・L)にいた頃、休憩中に立派な植物園を見つけたことがあり、何気なしに立ち寄った時そこの管理人のキリシマさんとその義娘のメイヴィちゃんと知り合った。

 メイヴィちゃんはかつて目の前で実の両親を失い、キリシマさんにすんでの所を救けられ、その後養子になったらしい。それから親という拠り所を失った彼女は極度の人見知り状態になってしまったのだが、僕含めキリシマさんや園芸サークルの皆さんと接していき、今ではかつての悲劇を乗り越えようとするようにみんなと花を育てる程度に心を開いてくれた。僕としても頭を撫でても逃げないくらいに信頼を勝ち取れて嬉しかったのを今でも覚えている。

 余談だけどそこの園芸サークルの人に挨拶していたらなんかクラウスさんがいた。二度見した。

 

 それから少しして、あるヤクザの抗争で出現した怪物の正体を追い……そこから色々あった結果何故か九頭見(くずみ)会なるヤクザ組織に攫われたメイヴィちゃんを救けるべくクラウスさんと一緒に事務所へカチコミ。二人してブチキレながら壊滅させました。

 まあいたいけな少女(メイヴィちゃん)をなぶろうとした屑共だったし、当然の報いだよね。うん。

 

 「あの時のデク君は女の子のために本気で怒って、ボロボロになってまで救けました!

 他にも私がデク君のところのお猿(ザップ)さんに連れていかれた時もそうです!絶対無事だってわかってても私のことを心配して救けにきて、お猿(ザップ)さんの要望にも最低限応えてから連れ帰ってくれました!」

 

 ああ、拳客のエデンパート2のことだね。つい数時間前にもバスの中で話したよ。

 

 何を隠そうあの時ザップさんに拉致(笑)されたのはトガさんだ。「ボロボロ姿の彼ピッピが見れるかもよ?」と囁いたら爆釣だったとか。おいこら兄弟子(ロクデナシ)

 

 とはいえザップさんはクズだが外道ではないし、アリギュラと言う名のセコムもあるから万が一はないとはわかっていた。が、それでも心配はしたので渋々ながら参加して最低限の義理を果たし、トガさんと(ヴィラン)達を引きずってとっとと退散。

 その後反省も兼ねてしばらく冷たくしたけど、思いっきりへこむ姿にこっちが申し訳なくなり、三日足らずで許しました。甘すぎるぞ僕。

 

 「あの時のデク君もとってもかっこよくて私はますますデク君が好きになりました!そんな優しくて律儀で頑張り屋さんで、どんな時でもたくさんの人を守るデク君を知ってくれれば(ヴィラン)と思う人は絶対いないよ!だから小さなことは気にせずいきましょう!

 大丈夫!本当にデク君が危なくなったらアリリンに頭を下げて向こうに連れて行ってもらえば解決です!その時は私も協力するよ!」

 

 「……うん」

 

 彼女の口から掛け値なしの、僕への賛辞が送られる。私のといい、ますます好きといい、本当この人は僕に対する愛がブレないな。こっちは自身の保身と他者への危険の板挟みで悩んでいるっていうのに。

 だいたい買い被りすぎだ。確かに人々を守るべく全力を以て挑むけれど、それでも守れなかった命は数えきれない程……それこそ吐き気を覚えるほどある。

 

 ……とはいえここまで普段と変わらない笑みを向け、僕を心から信じる彼女の正直さを前にして、肩の力が抜けて少し気持ちが楽になった。現金だとは思うけど、あっちの世界で必死で人助けをしていた僕の姿を見てきた彼女の言葉だからこそ、その言葉が僕の心によく沁みる。

 狙ってるのか素なのかわからないが、おかげで沈んでた気分が回復したのは確かだ。

 彼女といいザップさんといい、なんだかんだで我が道を行く性格の人には何度も助けられてるな僕。

 

 「はぁ……トガさんは気楽だよね。……でもありがとう、少し気が紛れたよ」

 

 「えへへ、どういたしまして!」

 

 感謝の意を込めて彼女の頭を優しく撫でる。それが嬉しかったのか目を細め、撫でる手に頭を擦り付けてきた。僕より年上なのにまるで人慣れした子猫と接してる気分になる。自由気ままなところとか特にそれっぽいし。

 

 ……そうだな。もう決めてしまった以上彼女の言う通りいつまでも気にしてたら始まらない。ここまで信頼してくれてる友達を失望させるなと、気持ちを切り替えるべく深呼吸ひとつ、気持ちを一度リセットして気合いを入れ直した。

 頑張れ僕。ここで日和ったらクラウスさんに顔向け出来ないし、師匠に十八回くらい殺されるぞ。

 

 

 

 

 「あ、そんなことより大変な事に気付いたのデク君!」

 

 「そんなこと」

 

 

 

 

 と、気合いを入れたのもつかの間、唐突にトガさんが今の空気をぶったぎって別の話題を持ち出した。

 ……そんなこと。そんなことかぁー……。いやまあ彼女からしたらそうなんだろうけど…………人が悩んでたことをそんなこと扱いかぁ……。

 

 

 解せぬ。

 

 

 「あのねあのねデク君、ここはあの雄英高校だよね!」

 

 「うんそうだね。国立雄英高等学校だね」

 

 「じゃあじゃあ、ここにランチラッシュってヒーローがいるよね!」

 

 「うんそうだね。うち(雄英)の大食堂の主だね」

 

 「その人の作る料理はとっても美味しいって昔雑誌で見ました!」

 

 「うんそうだね。あの人の料理は一流だし言えばなんでも作ってくれるね」

 

 「本当?実は一度食べてみたかったんです!だから今から食べに行こ!」

 

 「うんそうだね。でも今食べたらお腹が膨れてスイーツが入らないよね?」

 

 「またもや甘々ですデク君。甘いものは別腹って言葉があります!」

 

 「うんそうだね。ところでそれ優先するべき話?」

 

 「はい!!」

 

 

 おい力強く肯定したぞこの人。こっちの状況と僕の懐事情を一切考慮せず連れ出そうとしてるし。入れた気合いが全て霧散したんだけど。返して僕の気合い。

 

 はあ、とため息ひとつ、ブレないトガさんにひとまず財布を渡し、まだ時間がかかるから行くなら悪いけど僕抜きでお願いと言っておく。受け取ったトガさんは残念がりながらもはーいと返事をしアリギュラを誘った。賭けスマ○ラは休憩中のようだ。

 

 「え~学食でしょ~?そんなの全然~期待出来ないんだけど~」

 

 「それがですね、ランチラッシュってヒーローは数多の美食家の舌を唸らせるすっごいコックだって昔見た雑誌に載ってたの!きっとアリリンも気に入ると思うよ!」

 

 「ふ~ん。ま~ヒ~ちゃんが~そこまで言うなら~付き合ってあげる~」

 

 「やったー!ランチラッシュのご飯楽しみです!」

 

 ウキウキのトガさんはアリギュラの手を握り、仲良く部屋から出ていこうとする。それを見送……ろうとしたら相澤先生が待ったをかけた。

 

 「いや待て、当然のように向かおうとしてるがお前ら場所……いや、そもそも入校許可取ってるのか?」

 

 「直接ここに来たから~取ってないわよ~?そんな面倒なの~」

 

 「Oops.(おおっと)君たち不法侵入かよ!?先日それで騒動になってるしバレたら非常に不味い。ちょっと歩き回る前に入校申請を済ませようか二人とも。なに、私がついていけばすぐだからさ!」

 

 「はーい!」

 

 「ちょっとヒ~ちゃん~。こ~んなオッサンの言う事~わざわざ聞かなくていいじゃない~」

 

 「でもでも!バレたら追い出されて食べられないかもしれないよ!それは嫌です!」

 

 「そうそう、周りを気にせず食事を楽しめるよう規則に則ってくれたまえ!なんだったらランチラッシュのところまでエスコートしてあげるからさ!

 そういうわけで少し離れるよ三人とも。あ、ついでに今回の事件をある程度纏めておいてくれないかな?ほら私最後の方しかいなかったから事件発生時とかはわからないからその辺り共有したいんだ。校長も来るしね!」

 

 ……そういえばそこを見落としていたな。そうだよな、彼女達ならこの程度のセキュリティをすり抜けるなんて朝飯前だよな。向こう(H・L)でも突然現れる二人だからもはや気にしていなかったよ。

 

 さすがに不法侵入は不味いので、オールマイトが彼女達を管理室まで案内することに。どうせ校長に話を通さないといけないしちょうどいいのだろう。代わりに事件の概要をまとめてほしいと言ってきたが、そこは主犯と戦った僕らが適任なので問題ないと承諾する。

 しかしあの二人を相手にさらっとエスコート出来るとは……。紳士的なのもそうだけど、凄まじい勇気の持ち主だなと改めて敬意を抱く。さすがNo.1ヒーロー。

 

 ……ただ今更だけど、アリギュラをランチラッシュのところに連れて行かせてよかったのかな……。一筋縄ではいかない相手を向かわせてしまったことに本気で申し訳なく感じてしまう。

 なにせアリギュラはヘルサレムズ・ロットでも有数の超高級レストラン、モルツォ・グァッツァの常連なのだから。ソースは何度かそこで奢らされてる僕。

 

 「……深く考えないでおこう。多分大丈夫だよ、うん」

 

 無関係なところで巻き込んでしまったことを申し訳なく思うも、今はランチラッシュの腕前を信じて三人を見送るのだった。

 

 




早く日常回を書きたい。


おまけ

ト「ところでデク君身長伸びたね!ついに追い抜かれちゃったよ!」
緑「え?あ、うん、そうなんだよ。やっと身長伸びてくれたんだよ。わかる?」
ト「うんうん!161.3cmだったころもカッコかぁいかったけど165.6cmのデク君も目線が上がって素敵だよ!」
緑「高精度スキャン機能搭載乙女(ストーカー)こっっっっっわッ」


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