My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

38 / 52
ああ、落ち着いてください。焦ることはありません。あなたにお話がありますいいですか?どうか落ち着いて。
あなたはずっと投稿をサボっている状態だった。……ええ、ええ、わかってます。どれくらいの長さか?
あなたがサボっていたのは……約9カ月です。
……まずい!ノソコマ!ノソコマ!ナース!
大丈夫、大丈夫。落ち着いて……落ち着いて……。そう、大丈夫です。

それともう一つ、これが今週のジャンプ。ヒロアカの最新話です。実際に見てください。
遅かれ早かれ、いつかは受け入れないと……。
気持ちはわかります。ですが今週のヒロアカを、自分の目で確かめてください。

(2024年36・37合併号拝読中)

\あぁ…あぁあッ……!/(ヒロアカ最終話読了)

ノソコマ!ノソコマ!落ち着いてください、落ち着いて!落ち着きましょう大丈夫です、大丈夫。
大丈夫……ですね?そう、大丈夫…。


という茶番が脳内で行われたので37話です。長らくお待たせしました。
完成はしていたのですが読み直すにつれこれで本当にいいのかと投稿する勇気と気力が削がれていってしまった結果いつの間にかヒロアカが終わっちゃってました……。メンタルよわよわ投稿者でごめんなさい。
でもヒロアカ最終話で勇気をもらったので頑張って投稿です。それでもあまり進んでませんが。


第37話:乳繰り合ってるわけじゃない

 オールマイトが二人を食堂へ送りに行ってしばらく、その間に僕らは事情聴取を受けることになった。とはいえ必要な情報は既に得ていたのか質問も簡単な確認程度で終わり、後は世間話をする程度で堅苦しい雰囲気はなく、オールマイトを待つ間の時間つぶしが主な内容となった。

 

 「なるほど、電波妨害の個性持ちは地中に隠れていたのですか。よく捕まえられましたね」

 

 「生徒を奇襲して人質に取っていたところをスナイプが制圧したのさ。襲わず隠れられてたらもう少し手間取っていたかもしれないよ」

 

 「怪我の功名、と言っていいのかな。しかし遠隔妨害が得意な(ヴィラン)は厄介ですね。僕が向こう(H・L)にいた頃も隠れて空間を入れ換えてくる(ヴィラン)がいましたがあっちはドローンで逐一確認を取らないといけなかったので発見できましたがこっちはシンプルに隠れてるだけでいいからいやらしい。回原君あたりがいないとわかっても追い詰められないな。

 

 ……え、僕ならどうするか?僕ならレオさん……千里眼みたいな個性持ちの仲間がいまして、その人と協力して位置を割り出した後にその周辺を(カグツチ)で炙りながら降伏勧告でしょうか?

 …………いや引かないでください毎回こんなことしてるわけじゃないですから。だいたいそれを言ったらオールマイトだって(ヴィラン)一人に天候変えるような風巻き起こしたりしてますよ?比較対象がおかしい?ごもっともです」

 

 「わ~た~し~が!戻ってきた!!いやー待たせたねみんな!」

 

 余計なこと言って居心地が悪くなってきたところでオールマイトが元気よく帰ってきてくれた。ナイスタイミングです。

 ただ少し、本当に少しだけど笑みに影が射しているような。……アリギュラあたりがなにかやりましたね?

 

 「おいおい私のわずかな表情すら読み取るとか私のこと好きすぎじゃないかなぁもーっ!……少年、アリギュラ君の恐ろしさがよくわかったよ。ここの入校許可証ガッチガチのプロテクトかかったICチップが組み込まれてるって聞いてるんだけど彼女に渡してから食堂に送る間に二人分の許可証複製されたんだけど。しかも問題なく機能してるし。どういうこと13王こっわっ……」

 

 「理解してくれましたか。神性存在すら(もてあそ)べる超級存在の危険性と面倒くささを……」

 

 案の定アリギュラだった。確かに雄英のプロテクトも凄まじいですが、それでもそっちの分野であの超天才マッドサイエンティストを相手にするのは分が悪いどころじゃない。ライブラの一流どころも何度泣かされたことか。

 なお今の会話を聞いた塚内さんが公文書偽造!?と声をあげて驚いている。そういえばこの人にはまだ何も話してなかったな。本当すみません向こう(H・L)知り合い(怪物)が。

 

 「ちょいと後ろつっかえてるよ。早く入りなさいオールマイト」

 

 「おおっと失礼!どうぞお二方」

 

 「やあやあ二人とも無事で何より!塚内君もさっき振りだね!」

 

 そんなやり取りをしているとオールマイトの背後から一人と一匹……否、二人の人物が現れた。

 片や僕らもよく知る保健室の主であるリカバリーガール。

 片やネズミの姿をした……否、生物学上本当にネズミ目ネズミ科であり雄英を束ねる校長、根津校長だ。

 

 「御足労をおかけします根津校長」

 

 「Yes!ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は―――校長さ!よく私のことがわかったね。Aクラスは入学式の時いなかったし君とはまだ会ったことないはずだけど?」

 

 「自分の通う高校ですし、どんな教員がいるのか調べてまして、そこで知りました。

 なにより根津校長は世界でも類を見ない動物が個性を発現させた稀有な例であり、また個性道徳教育を中心に調べれば調べるほど出てくる世界的貢献の程は一人の人間として心から敬意を持っております」

 

 「ハッハッハッ!そう褒めてもなにも出ないよ!…………オールマイト、彼いい子だね、次代の象徴に選ぶのもわかるよ。僕としては君の個性を継がせるならミリオ君を推したいけど君が強く願うのなら彼でも吝かじゃないしもっと強く推しなさいな。なんなら私秘蔵の最高級クッキー缶あるけど賄賂に使う?

 

 僕の返答に笑ったかと思ったらオールマイトの耳元でコソコソと話を始めた。が、聞こえてますよ。

 気を良くしたのはいいですが簡単に絆されないでください、あなた仮にも校長なんですから。ほらオールマイトも困ってますよ。いやこのやり取りもわざとで場を和ませようとしてるだけかもしれないけど。

 

 そして聞く限り校長もオールマイトの個性を把握済みで、かつ僕に個性を教えたことも知っているようだ。まあ雄英のトップでオールマイトとも深く関わりを持っているし、納得である。

 

 「二人とも、そっちも大事でしょうけど本題は別でしょ。ほら、さっきの事件とその子の事情説明をなさい」

 

 話が逸れてしまったところをリカバリーガールがペシペシと杖で叩き軌道を修正してくれた。口ぶりからしてリカバリーガールもオールマイトの個性を知っているのだろう、身体の事もあるし当然か。

 

 「んんっ!……今回の襲撃ですが、(ヴィラン)連合の裏に非常に不味い存在がいることがわかりました。まずはその情報をお二人にも共有しておきたいのです」

 

 「……君の口から不味いなんて言葉が出るってことは今回の襲撃は我々の思う以上に深刻なようだね。続けてくれたまえ」

 

 「話が早くて助かります。二人とも、すまないが事件の詳細を頼めるかい?」

 

 オールマイトがそう促してきたため説明を始める。

 僕らが集まっているところに仕掛けてきた襲撃。カリキュラム奪取という先日の事件との関係。そして死柄木たち主犯の特徴などなど。お互いの擦り合わせた情報を開示していく。

 途中塚内さんから「折寺の悪鬼菩薩って君のことだったのか」と返されダメージを受けた。そのやり取りに再び場が少々和む。け、警察にもその異名知られてるのか……。それ封印でお願いします。

 

 しかしその和んだ空気も脳無の情報を出した途端張り詰めた。

 それもそうだろう。(ヴィラン)の一人が人の手で作り替えられた動く死体で、しかもソレを作る過程で幾人もの犠牲者が出ているのはほぼ間違いないのだから。

 皆一様に表情が険しくなる。この部屋にいる人達の中で今の話を聞いてなんとも思わない人間はいない。医者であるリカバリーガールに至ってはその所業が如何に冒涜の極みなのかよくわかるためか、眉間に皺を寄せ静かに憤っている。

 

 「……腸が煮えくり返りそうな思いだよ。こんな外法に手を出した奴らもそうだが、知る術がなかったとはいえ被害者ともいえる存在を殴り飛ばした自身にも……!

 ……だがおかげで納得も出来た。こんな人の心のない所業、奴なら……オールフォーワンなら手ずからなり手駒を使うなりして躊躇いなく出来るだろう。まるで玩具で遊ぶように……!」

 

 先の戦闘では説明も途中だったこともあり、その原理を知らなかったオールマイトは中身を知るや怒りを露に拳を握りしめる。

 ……向こうでも肉人形(フレッシュゴーレム)は存在していたし何度も目にした。とはいえ技術自体は何百年も前に完成していたものであり、今更僕が口を出すことではない。使う(ヴィラン)に拳をお見舞いするだけだ。

 だけど脳無は違う。弱いとは言ったがそれでもテロなどに使われれば向こう(H・L)でも全然通用するレベルの完成された技術だ。だというのに今の今まで表に出なかったということは、これがつい最近確立された技術だということがわかってしまう。個々の命がとても重い今の時代にだ。それだけに悍ましく、非常に胸糞悪い。

 

 「……オールフォーワン。三銃士に出てくる台詞だけど話から察するに人名……(ヴィラン)ネーム、それが今回裏にいる存在かな?」

 

 「はい。奴は私の……我々(ワンフォーオール)の不倶戴天の敵にして、私の腹に穴を開けた張本人です」

 

 オールマイトは説明を始める。己の個性の成り立ち、知りうる限りの歴代とAFOとの因縁、先代の死という辛酸の日、アメリカで経験を積み、帰国後AFOを討つべく戦ったことなど。

 

 それらの話を終えた時、部屋の中の空気はさらに重苦しくなった。塚内さんに至っては頭を抑えて項垂れてる。そりゃあオールマイトが相討つ形で倒せた巨悪が生き延びてたんだ。僕だって頭が痛くなる。

 

 「また厄介な話が挙がったわね。私も個性黎明期を支配した超敵(スーパーヴィラン)の話は聞いたことはあるけど、まさか未だ生きてるなんて」

 

 「当事者たる私も奴のしぶとさを甘く見てました。まさか頭蓋を砕いたというのに生き残って今度は(ヴィラン)連合という組織を隠れ蓑に暗躍を始めていたなんて。

 ……しかし不幸中の幸いと言えましょうか、どこまでが奴のシナリオかはわかりませんがここまで早く存在がバレるのは向こうも想定外のはず。これも相澤君や生徒達が(ヴィラン)を制圧してくれたおかげです」

 

 今日のオールマイトの活動時間はギリギリだった。仮にあのままオールマイトが戦う状況になっていれば勝てても本人になんらかの支障が出てたし、負けてしまったらそれこそ平和の象徴の喪失という大惨事だ。けれど僕らの活躍で最初の一撃以外無理をすることなく最小限に抑えられた。最悪のタイミングだった分この勝利は大きい。

 

 オールマイトの言葉に頷きふむ、と考える根津校長。 

 

 「そうなってくるとますます気になってくるのはその子だね。話からその脳無はオールマイトに匹敵するパワーを持ち、さらに相性の有利を押し付けてきた(ヴィラン)だという。

 しかし彼はそんな相手に圧勝した。ただでさえ空白の半年間で怪しいのにさらに飛び抜けた実力。……もしかして彼はそのオールフォーワンの関係者だったりするのかい?」

 

 「幸か不幸か、彼の力に関しては奴とは無関係ですのでご安心を。むしろ奴を打倒するための強力な助っ人でもあります。

 ……ただそれ以上に厄介な秘密を持ってはいるのは確かですが。すまない少年、説明をしてもらっていいかな?」

 

 「わかりました。では改めて自己紹介から」

 

 僕が一体何者なのか。その説明を改めて集まったみんなに話していく。とはいえ相澤先生に話した内容と違ってある程度ボカさせてもらったけれど。さすがに人を殺してるなんて簡単に話すものではない。

 あらかじめ考えていた内容を説明していき、説明が終わるころには三人とも一言も発することなく僕を見つめていた。でも塚内さんだけ頭から煙が出ている幻覚が見える。大丈夫かな、そろそろキャパオーバーしそうだけど。

 

 「……なるほど、空想の産物である異世界が私達の世界の隣に存在していて、そっちでは大崩落という事件以降常に世界に危機が訪れていると。恐ろしい話だ」

 

 「それに世界中の(ヴィラン)の集積地みたいな都市が出来上がって、あらゆる犯罪がご近所さんの挨拶みたいに発生する。そこで仲間と一緒に(ヴィラン)と戦い続けたと。まだ年端も行かない子供だったっていうのによく頑張ったわね……。月並だけど、アンタの行いはきっとみんなに勇気を与えたよ。本当に素晴らしいことだわ。だけど自分を大事にしなさい。大切な人を泣かせてまで無理するものじゃないよ」

 

 しばらくして口を開いた校長達は思ったよりも落ち着いていた。なんだったら労いと戒めの言葉すらあった。自分で言っておいてなんですがもう少し疑わないのでしょうか?

 

 「我々教育者を甘くみちゃいけないよ!長年教育の場で嘘をついている子なんてそれこそ星の数ほど見てきたさ!」

 

 「その点で言えばアンタはちょっと素直すぎるくらいよ。律儀で、そして真摯に向き合ってる。まあ嘘はついてない代わりに色々隠し事はしてるわね」

 

 長年の経験からくる判断か。馬鹿に出来ない要素だ。僕だって経験則で動く時もあるからよくわかる。

 特にこの二人は長年教育者として、それも雄英という最高峰の教育の場で数多の生徒を見てきた謂わば育成のエキスパート達だ。年季が違う。

 

 年季といえば師匠もそうだろう。二百を越える臨死体験をしてなお五体満足で修行を完遂出来たのは己の長年の経験を活かしてくれてるからだ。トラウマはたくさん出来たけど。

 

 「ううむ……、お二人には悪いが私はまだにわかに信じられないな。緑谷君、なにか証拠になりそうなものはないのかい?」

 

 ただ塚内さんは信じきれないようだ。いやまあこれが普通の反応だしむしろ警察がこっちの言い分をあっさり信じたら大丈夫かと不安になるからいいんだけど。

 

 しかし証拠になりそうなものか。それだったら僕の携帯に入っている画像や動画がちょうどいいかもしれないな。となるとわかりやすい場所がいいけど……いいのあったかな?

 

 エンパイアステートビルがあった場所は永遠の虚になってるから逆に信じにくい。タイムズスクエアはわかりやすいけどインパクト不足……不足かな?虫とかヤクザとか尻とか飛んでるし?

 

 うーんうーんと捻りながら漁っていると……ああ、そういえばこれがあったなと一つの動画を思い出す。

 とある人―――まあトガさんなんだけど―――から送られてきた動画でインパクトもあるしこれを見せるか。……気は進まないけど。

 

 ちょっとした世界の危機と戦ってた時の動画がありましたのでそれを見せますと、携帯から目的の動画を探す。日付はハロウィン前だから……あった。

 はい、とスマホの画面を全員に見えるように向け、揃って興味津々な表情で携帯を覗き込む。

 そしてそこに映っていたのは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『わースゴイです。赤鬼さんと魔女さんが落ちながら戦ってます!……あ、デク君いた!おーいデクくーん!頑張れファイトー!』

 

 『え?……いやトガさんなんでここにいるの!?今ここ危険地帯なんだから動画撮ってないで避難してよ!』

 

 『でもでも、デク君が今からすっごい活躍するんだよ?だったらデク君のカッコイイところ撮らないと!あ、ザップくんが呼んでるよ』

 

 『くぉーら陰毛一号!サボってテメエの(スケ)と乳繰り合ってんじゃねえぞ!化けタヌキのフグリぶつけたろか!』

 

 『やめんか兄弟子(バカ)!ただの友達だし乳繰り合ってるわけじゃないから投げつけようとしない!!ほらもう行くからトガさんも早く避難して!……いや頬膨らませない!』

 

 『デク君いけずです。そろそろお嫁さんでいいから認知してほしいです。でもそんな頑ななデク君も好きです!』

 

 『最低ラインがッ!重いッッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 ニューヨーク五番街にて僕やザップさんといったライブラのメンバーが妖怪やら幽霊といったファンタジーな連中とドンパチやってる動画だった。

 

 ドカーンドカーンと音が鳴る度に瓦礫が、怪物が、警察が、たまにレオさんが宙を舞い、ついでにアリギュラがポップコーン片手にやってきてトガさんと駄弁りだし、最後は光の柱が現れ周囲の幽霊や妖怪をみんなで放り込んでいく光景が流れる。

 その後トガさんの『今日のデク君もすごかったです。アーサーさんを投げ飛ばした姿は今月のデク君ベストバウトだね!』と言う言葉を最後に終わるのだった。結局彼女最後まで逃げず楽しそうに撮ってたんだよね。そのうえ嬉々とこの動画送ってきたし。神経図太すぎない?

 

 動画を視聴した塚内さんは背中に宇宙を抱えた表情をしていた。私は今何を見せられたのだと、いくつものハテナが彼の頭上でドッグファイトしているのが僕には見える。

 逆に校長とリカバリーガールは面白そうに観ている。こちらも負けず劣らず神経が太い。

 オールマイト?吐血してます。

 

 「……一応聞くけど、CGって可能性は?」

 

 「CGだったらどれだけ気が楽だったでしょうか……」

 

 「その哀愁、現実なんだね……。……ところでこの動画はどんな状況なんだい?」

 

 「とある馬鹿が本物の妖怪達を封じた百鬼夜行絵巻の封印を解きまして、その尻拭いに追われてるところです。おまけにハロウィンと重なったせいでワイルドハントの連中まで現界術式に干渉してしまい結果このドンチャン騒ぎです。事件名もまんま百鬼夜行VSワイルドハントになりました」

 

 「ひゃっきやこう」

 

 「わいるどはんと」

 

 聞いたら聞いたで仲良く混乱したオールマイトと塚内さん。なんかすみません向こう(H・L)魔境(日常)が。

 

 百鬼夜行VSワイルドハント。

 ある日日本に存在する百鬼夜行絵巻のひとつが盗難にあう事件があった。それだけでも重要文化財の盗難という大事件ではあったのだがなんとその絵巻、数ある絵巻の中でもとある高名な陰陽師が妖怪たちを封じたガチもんの呪物だったのだ。

 そしてそんな絵巻は当然のようにヘルサレムズ・ロットにやってきて、当然のように封じられていた妖怪が解放。ライブラやLHOS(術士協会)の面々はファンタジーが表に出てくるな!と叫びつつ、陰陽師達の手を借りて即興の隔離術式をプログラミングするハメになるのだった。

 その間僕らはヘルサレムズ・ロットどころか世界が魑魅魍魎で溢れかねない規模で無限湧きする妖怪をひたすらボコり倒すことに。百鬼どころじゃない数に揃って辟易した。

 

 そんなとんでもない事態だがそこでは終わらないのがヘルサレムズ・ロットの事件。なんとここで西洋の百鬼夜行ことワイルドハントが突然の参戦。

 なんでもハロウィンが近づき今年の狩場を選定したところヘルサレムズ・ロットが選ばれたことがエクソシストやゴーストバスターズ経由で齎され、ワイルドハント達が来H・Lしたところ偶然百鬼夜行解放の余波がワイルドハントにまで及んだのだった。

 

 本来なら彼らは幽世(かくりよ)に存在しており、狩りもそちらで行われるはずなのだが……術式のせいでその身が現世に解放されてしまい、百鬼夜行とエンカウントするという奇跡が発生してしまった。

 妖怪相手に狩猟本能を盛大に刺激されたワイルドハントは一足早いハロウィンを開催。人類と妖怪と狩人による三つ巴の乱闘が始まったのだった。ライブラやLHOS(術士協会)の面々もスーパース○ッシュブロス!(大乱闘ス○ッシュブラザーズ)としょうもない雄叫びを挙げ、エクソシスト達も交え即興で同時隔離術式の再構築をするハメに。

 

 最後はぬらりひょんとアーサーが死合っているところに即興で完成させた強制封印術式を百鬼夜行絵巻を媒介に起動。みんなで連中を術式へと飛ばして封印に成功したのだった。

 ただ絵巻は百鬼どころか二百鬼くらいに増え、おまけに内容が東西チームデスマッチのような様相を呈したけど……上も下もいい加減面倒になったのかそのまま多重封印し、元の場所に返還したのでした。

 

 休憩があったとはいえ増え続ける相手に対する防衛戦は本当に堪えた。まあ数日後に休憩無しで二十一時間戦闘をしてすぐに第二次大崩落が起きかけてもっと堪えるんだけど。

 

 「これ後で調べたら案の定といいますか、弱小召喚師サークルが一発逆転の戦力ほしさに盗ませたらしいんですよね。……僕の時といい本当召喚関係の連中ってクソです。短絡的に放出して悪さするクソもいれば雑に神性存在を出して世界の危機に直結させるクソもいますし。本当死ねばいいのにアイツら。いや今回の主犯は召喚の矢先に妖怪に頭潰されて死んだけど」

 

 「あんた本当に苦労したのね」

 

 イライラしてきた僕の頭をよしよしとリカバリーガールが撫でて励ましてくれる。その細やかな優しさに僕の心は落ち着きを取り戻した。

 

 「……君の言ったことは真実のようだね。こんな埒外の現実を見せられたら理解はともかく納得は出来てしまうよ。わかった信じよう。

 そうなるとオールマイト、彼についてはさっき言った通り?」

 

 「ああ、出来るなら奴とのケリは私達だけでつけたい……が、場合によっては彼も頼るかもしれない。そして少年を頼ったらその実力と特異性で良くも悪くも注目が集まるだろう。言っちゃあなんだが緑谷少年の苛烈さは下手な自警団(ヴィジランテ)も引く時あるからね。奴はその悪目立ちした部分を狙ってくるはずだ」

 

 聞けばAFOは精神攻撃が好きで、場合によっては刹那の愉悦のために時間をかけて入念に準備して嫌がらせを行うこともあるらしい。今回も自分を討つだけじゃなく、生徒の心に深い傷を負わせるのも目的だったかもしれないと告げた。まったく嫌な(ヴィラン)だ。僕は分析は得意だけど(はかりごと)とかは苦手だし、そういうのはスティーブンさん達の分野だ。そっちにやってくれ。無理だけど。

 

 「……わかった。迷いがないと言えば嘘になるが奴が暗躍している以上我々も手を打っていかねばならない。私はどうすればいい?」

 

 「塚内君には(ヴィラン)連合の情報を集めて出来るだけ彼にも共有してもらいたい。もちろん直接でなく私にワンクッション挟んでね」

 

 「上にはどう報告する?」

 

 「出来れば総監あたりには伝えたいが……奴の目が何処にあるかわからないからしばらくは伝えずにおいておこう。……すまない、君には負担を強いることになる」

 

 「六年前の奴との暗闘と比べたらまだマシさ。ただ私はいいのだが……お三方はどうでしょうか?」

 

 チラリと先生たちに目を向ける塚内さんに対し三人は……。

 

 「駄目。と言いたいけど、この子の生きた年月を言えばもうすぐ大人さね。ちゃんと判断した上で手を貸すというのなら強くは言えないよ。ただし無茶だけは厳禁。私の治癒も万能じゃないんだから。手助けはいくらでもしてあげるからそれは守って頂戴」

 

 「同じく、俺も問題有りません。」

 

 「言いたいこと大体言われちゃったね!勿論私もOKだ。雄英の長として生徒を守らないという選択肢は有り得ないよ!」

 

 警部だけでなく校長達も悩む様子もなく僕の擁護に賛成。僕としてはトントン拍子に進む内容に困惑すら覚えてしまう。

 ……皆さんあっさりと決めすぎではないですか?特に相澤先生には僕の来歴を全て伝えたはずなのに即答ですし。自分で言うのもなんですがちょっとした凶悪犯でもあるんですよ?

 

 「なんだ、不服そうだな」

 

 顔に出てたのか相澤先生が僕に話しかけてきた。こちらとしては庇っていただけるのは大変嬉しいのですが、僕に対する危機感が些か足りないような……。

 

 「はぁ……緑谷、言っておくがお前のことは試験の時からずっと警戒していた。ヒーローになるための大事な場面でも人助けするヒーローに必要な心優しさを備えた一方、機械とはいえ(ヴィラン)を鉄くずに変えるほど苛烈な戦い方。こいつ自警団(ヴィジランテ)か何かかと考えた」

 

 「ぐうの音も出ません」

 

 本当なら行動不能にすればいいだけなのに分解(バラ)して燃やしたんだ。あの時ライブラの思考に寄ってたとはいえやりすぎたのは自覚してます。

 

 「まあそれもお前の話を聞いて理解したがな。向こう(H・L)の在り方を考えれば自警団(ヴィジランテ)だと思っても仕方ねえ。むしろそうしないと世界を何度も救えなかったというのもな。

 ……だからこそ、今はお前を守ってやりたいと思っている」

 

 「えっ?」

 

 「襲撃の時お前は俺を救けにきた。あれがなけりゃ俺は死体として晒されたし生徒にも被害が出ていたはずだ。だがお前のおかげでそうならなかった、お前が脳無を抑えてくれたからだ。己の保身を投げ捨ててな。

 ……なによりお前はその脳無をも被害者の一人として見て怒りを露にした。そんな優しいお前だからこそ信じてやりたいし救けてやりたいと思っている」

 

 「ッ……」

 

 「いざというときは庇ってやるし、仮に(ヴィラン)に堕ちたら、その時は俺の命を引き換えにしてでも止めてやる。だから今は気にせず守られてろ。ただしこっちの世界の道徳を徹底的に叩き込ませてもらうぞ。変な渾名を付けられるくらい暴れてるあたり担任として頭が痛い話なんだ。

 ……まあなんだ。少なくとも一端のヒーロー学を身に付けるまでお前を除籍するつもりはないから覚悟しておけよ」

 

 その偽りない言葉に胸が熱くなる。ああ、この人はまだ僕のことを、世界を救うという免罪符を盾に人を殺したこともある僕のことを庇ってくれるのか。

 この人は本当に師匠によく似ている。威圧感もだが、ストイックで厳しくて、でもなんだかんだで教え子を大切にしてくれる慈悲深いところも、師匠みたいだ。そう思うと釘指しすら心地よく感じる。

 

 嬉しさで頬が緩み目頭が熱くなる。俯く僕を見てオールマイトは大丈夫かいと背中を擦ってきた。大丈夫です、ただちょっとヒーローとして情けない顔になってるだけなので。

 

 「……ああもう改めて僕は贅沢者です。これほどの人たちが僕なんかのために立場を使ってまで守ってくれるんですから。本当恵まれすぎてます」

 

 「フフッ何言ってんだい。みんなが君のために動いてくれるのは君の今までの頑張りの賜物さ。決して自分を卑下することはない」

 

 ポンッと、頭に置かれたその細い手は暖かく、その温もりに僕は再び笑みをこぼすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バ―――ン!!

 

「たっだいまデクくーん!」 

 

 「あ、おかえり(うわでた)

 

 と、ここで終わればどれだけいい話だったか。けれどそうなることはない。

 理由は簡単。勢いよくドアが開けられ、アリギュラ(爆弾一号)トガさん(爆弾二号)が帰ってきたからだ。

 

 「もう終わったんでしょうね~もじゃ毛~」

 

 「も、もう少しで終わるのでお待ちを……。それよりランチラッシュのご飯はどうだったかな?」

 

 正直聞きたくないが聞かないといけない。主にランチラッシュの生死確認のために。

 

 「あ~、まあ四十四点~?学食であれなら~まあ悪くないけど~、お米に執着してるのと~ハングリ~精神が~いまいち足りないのが~マイナス~。まあ発破はかけたから~後は本人次第ね~」

 

 「そうかな?私はとっても美味しかったです!さすがランチラッシュ!って感じがしたよ!九十点です!」

 

 よかった、生きてはいるようだ。ただアリギュラの発破がなんなのか心配である。後日病んでたり武者修行の旅に出てないか確認しておかないと。すみません向こう(H・L)問題児(怪物)が。

 

 「えっと、すみません。これ以上この子(核弾頭)達を待たせるとちょっと不都合があるので、一度お開きでよろしいでしょうか?」

 

 「なんだいアンタ達この子の彼女かい?まったく両手に華だね。話もまとまったし呼び止めるのも無粋かね」

 

 「はい!!彼女です!!!!!」

 

 「ハッ?解剖(バラ)すわよ?」

 

 「二人とも元気ね。でもこんな老骨開いたところでなーんも出やしないよ。出汁にもならないし無駄なことはやめときなさい」

 

 リカバリーガールの発言にトガさんが満面の笑みで肯定し、アリギュラが嫌そうな顔で脅した。が、それを飄々とかわす。いや本当強いなこの人。

 

 ……あれ、今さらっとトガさんに外堀埋められた?怖ッ。

 

 「あー、終わろうとしてるところすまない。私はまだ用が残ってるんだ。あ、緑谷君じゃなくそちらの女性……渡我被身子君に」

 

 「私です?」

 

 と、ここで塚内さんが待ったをかける。今度は僕でなくトガさんだ。

 ああそういえば彼女も僕同様ヘルサレムズ・ロットに行っていて行方不明なんだった。それも僕より長く向こうにいたというしそりゃあ聴取しないといけないよね。

 

 「ああ。去年君が失踪してから捜索願が出されてるんだよ。今まで情報が全くなかったのに偶然にも君を発見出来たんだ。君の親御さんに急いで報告しないといけないし事情聴取もしなければいけない。……彼の話でお腹いっぱいではあるけど」

 

 「は~~~????な~んでアタシらがあんた達の~事情に合わせないと~いけないのよ~??」

 

 まずい、このままグダグダしたらアリギュラ(暴君)が暴れかねない。雄英ロボのプログラムを書き換えて破壊兵器にされたり食人ロボを召喚されても困る。ここはなんとか塚内さんを説得して追々にしてもらわないと死人が出る。

 

 「まあ僕も少し気になるけどさ」ボソリ

 

 「え、デク君気になるの?だったら教えます!!」

 

 「へあッ!?」

 

 「ヒ~ちゃん!?」

 

 僕の何気ない呟きをトガさんは拾い上げてしまった。待ってトガさんこれじゃあ僕の鶴の一声で延長戦突入ってことになってしまうんだけど!?やめて胃が痛い!今度はブレイクダンス始めちゃう!

 ほらアリギュラもトガさんの判断に額の目を見開いて困惑してるよ!あのアリギュラがだよ!

 

 「ちょっとちょっとヒ~ちゃん、なんか今日の~アタシの扱い~雑じゃないかしら~!マブダチだからって蔑ろにして~いいってわけじゃ~ないわよ~!アタシそんなに我慢強くないの~知ってるでしょ~!」

 

 「ごめんねアリリン!私もアリリンの優しさに甘えてるのはわかってるよ。だからアリリンがとても怒るのも当たり前だよね。でもでも、このままほったらかしてもパパやママに余計な心配をかけるしお巡りさんに催促されてちゃゆっくりスイーツが食べられません。だったら面倒だけど話を済ませたほうが気にせずみんなと楽しくスイーツを食べれると思うの!それに心も癒えましたし傷心旅行も一度切り上げてパパとママに顔を見せるいい機会です。なにより……」

 

 「なにより?」

 

 「デク君が私のことに興味を持ってくれたんです!これはデク君のお嫁さんになる大きな一歩でもあります!これを逃すのは恋する乙女としてありえません!あれです、偉い人が言ってました。「拙速は巧遅に勝つ」って!今こそその時です!だからもう少しだけお願いアリリン!」

 

 「……なるほどね!」

 

 今こそ無理矢理でも僕に攻勢を仕掛けて距離を近づけるべきだと、某兵法家の教訓を引用して力説するトガさん。一理あったのかアリギュラも彼女の力説に頷いた。でもそれ本人の前で言うかな普通。

 

 「仕方ないわね~、わかったわよヒ~ちゃん~。チャチャっとそのオッサンに話して~スイ~ツ食べに行くわよ~」

 

 「ごめんね、ありがとアリリン!」

 

 数秒後、ため息と共にアリギュラはトガさんのお願いを承諾。その返答にトガさんは嬉しそうにハグをして感謝を述べた。友達の恋路を応援する良き友情が育まれてる光景を横目に、僕は通り魔的厄災が無事回避されたことに安堵の息をこぼす。まあそれはそれとしてアリギュラの機嫌を少しでも取らないと。時間を取らせてしまってすみません。肩でも揉みましょうかと、下手に出てる時のザップさんみたいな事をしておく。

 

 「お黙りうざもじゃ~。アンタは財布の中身確認して~おきなさいよ~」

 

 そう言って彼女はスマホを此方に向けてくる。そこにはテレビや雑誌に何度も載ってるお高いうなぎ店が映し出されていた。……あ、この店都心部の駅にある高級デパートにあったんだな、知らなか……って、え、まさか?

 

 「あの、アリギュラさん。もしかしなくても今日はここに寄るということで?」

 

 「ここ()よ」

 

 「……あの、こういう店の料理って三人で行けば相応の価格になりまして、合算した場合僕のなけなしの諭吉さんが何人お亡くなりになるかわからないのですg「で?」あ、いえ、なんでもありません」

 

 あ、やばい。これ通り魔的厄災は僕一人に集中しただけだ。

 容赦なく僕の財布を蹂躙する気だと、そう察した瞬間バッと、相澤先生に顔を向け必死の形相でアイコンタクトを取った。

 

 ―――なるべく値段を抑える努力をします。ですから半額だけても補填して頂けないでしょうか?それが無理ならバイトの許可をください本当切実にじゃないと後々世界の危機に繋がりかねませんッッッ!―――

 

 僕の視線を受けた相澤先生はため息を一つ、チラリと根津校長へ向ける。

 

 ―――わかった、わかったからそんな必死でこっち見るな。だがそういうのは俺じゃなく校長へ直接伝えろ―――

 

 相澤先生の疲れを見せる視線を受けた校長はコクリと頷いた。

 

 ―――安心しなさい。詳しい事情はわからないけどこっちで全額補填してあげるし、ついでに相澤君を救けてくれたささやかな礼も兼ねて君も好きに食べてきなさいな。遠慮はいらないよ!―――

 

 校長のウィンクに僕は深く頭を下げて感謝の気持ちを現す。ありがとうございます、おかげで首の皮が何枚も繋がりました。

 

 「ではお話しましょう!まずどこから話します?」

 

 「ひとまず失踪の経緯だね。中学校の卒業式にいなくなったそうだがなにがあったんだい?」

 

 あぁっと、頼み込んでる間に話が進みだしている。少しでも話を聞き逃したらアリギュラが怒りかねない。

 僕の態度から始まる世界の危機なんて始まってほしくない。姿勢を正し改めて話を聞くのだった。

 

 




ランチラッシュ評価点はいつもの1D100のダイス。ただしトガちゃんは1D50+固定値50。振ったら44と40というニアピン数値を叩き出した。仲良しか仲良しだわ。

思い浮かぶも即却下した百鬼夜行VSワイルドハント不採用ネタ。
1ぬらりひょんはぬらりひょんでも孫の方。
2百鬼夜行は百鬼夜行でも連合学園の方
3アーサーはアーサーでも青い方。
4ワイルドハントはワイルドハントでもウィッチャーの方。
5祭りと聞いて我慢できずに駆けつけたアンドリューW.K。

最後のは何故出たか自分でも知らん。

【誤字報告】

nicom@n@さん。 四日市三太郎さん。 ちはやしふうさん。 タイガージョーさん。

誤字報告ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。