My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
お待たせしました。ギリッギリですが今年中に一話上げることが出来ました!年末に仕事だらけの地獄に見舞われましたが今回はなんとか有言実行出来ました。ただし忙しすぎたせいで年末の大掃除がまだ終わりませんが。決して掃除中に古い漫画を複数発掘して読みまくったのが原因じゃありませんからね(震え声)
個人的に悪魔狩りとカフスとスウィート三国志は見てほしい(自白)
それと今更ですがトガちゃんの失踪期間が二年だと時系列的に矛盾があったので一年に書き直しました。ほとんど気にしないで結構です。
パラリラパラリラとスロットマシンの軽快な音が鳴り響くアリリンの研究室。そこで行われていたあまりにもあんまりな光景に私の沈んだ気持ちは一瞬で吹き飛びました。
デク君がアリリンに酷い目に合わされてることに驚きを隠せませんが、同時に今は生首だけですがちゃんと生きていたことにちょっぴり安心します。
ですがキメラガチャなんておだやかじゃないです。何故こんな凶行に走ったのかアリリンを問い詰めました。そしたら理由は簡単、デク君が私を投げ飛ばしちゃったことがアリリンを怒らせてしまったようです。
私はアリリンのマブで、同時にアリリンのモノでもあるらしくて、それをキズものにされかけたからこれくらいの報復は当然なんだとか。相当お冠のようです。私のことでここまで怒ってくれるとは、悪い気はしません。でも私はアリリンのモノじゃないですよ。アリリンのマブとは胸を張って言えますが!
「これでも~かなり有情なのよ~。だって~しばらくガチャってキメラにして~、飼って~、自分の立場を教え込むだけなんだし~。
アンタが~ヒ~ちゃんの惚れたガキじゃなかったら~、今ごろ脳みそ以外廃棄して適当に放置コ~スだったわよ~」
「
聞けば一月ほど首から下を別の生物と入れ換えるだけらしいのです。そのために身体も残してるのだとか。
見ればデク君の首から下のルーレットが二つ回ってます。なるほど、スロットマシンですからこれでランダムで三つ絵柄を揃えるのですね。そして選ばれたボディでキメラデク君に新生させるわけですか。
凝ってて少し面白そうですがそれとこれとは話は別です。私はデク君を救けるべくアリリンに対峙する道を選びます!
「怒ってくれるのは嬉しいけどこんなこと私望んでません。お願いですアリリン、デク君を解放してください!」
精神は肉体に引っ張られるなんていいますし、一月も珍獣のままにしたら元の姿に戻っても元の精神という保証はありません。珍獣ムーブするデク君とかあまり見たくないです。
「ヒ~ちゃんのお願いでも聞けないわね~。こういうナメたことするガキは~立場を
「
「うっそ~よりにもよってこれ当てちゃう~?受けるんだけど~!」
が、ダメです。取りつく島もありません。無情にもボタンは押されジャキーンと音を鳴らしてスロットがひとつ止まりました。
止まったのは下半身の方。選ばれたのが異界三大キモ生物のボュォモーでした。よりにもよってこれを引き当てるとかデク君もしかして厄日かなにかですか?アリリンはお腹に抱えて大笑いしてます。アリリンが楽しそうで何よりですが私はちょっとだけ引いちゃいました。
不味いです。このままじゃ本当にキメラ合体して語尾に変な鳴き声つけた八足歩行デク君とか爆誕してしまいます。
いやそれならまだマシなほうですが。だってガチャの選択肢に見え隠れしてる珍獣が明らかにヤバイのだらけですから。ポポロパッペロが無性に気になります。
あれと合体した日には精神が病んじゃって恋人どころじゃないのでここで引くわけには行きません。私もデク君の恋人候補!こうなったらデク君のために切り札を切ってでも立ち向かいます!身体を張る私を見ていてくださいデク君!
「ア、アリリン!もう一度言います、デク君を解放してください!じゃないと最後の手段に出ます!」
「は~っ?最後の手段~?何する気よヒ~ちゃん~?」
「か、解放しないと、アリリンのこと…………
き、嫌いになります!絶交です!!」
「…………………………」
「
ぷくりと頬を膨らませて私は決死の抵抗に乗り出しました!……が、二人は揃って呆れてます。え、なんで?
「あ~うん~。ヒ~ちゃん~……それアンタのほうが圧倒的にダメ~ジでかいの気付いてる~?」
「わ、わかってます……」
「あ、わかってはいるのね~……」
「
私の返事にアリリン大呆れです。生暖かいジト目で見てきます。デク君も苦笑いしながらツッコミを入れてます。デク君のために身体を張ってるのに。解せません。
ええそうです。言っといてなんですがとても捨て身の選択です。しかも私不利です。
だけどアリリンにとって通用する切り札であるのは確かです。残念ながら二度通用するか怪しいですが一度目は効くはずです。だって私たちマブだから。
というか効いてください。もしここでアリリンにそれでもいいよって言われたらショックで寝込む自信あります。
「そんな泣きそうな顔しないの~。……あ~も~~~興が削がれたわ~。わかったわよ~、今回はヒ~ちゃんの顔に免じて~キメラガチャは許したげる~」
「本当ですか!」
必死の祈りは無事届きました。捨て身の脅しが効いたのかアリリンはおっきな溜息ひとつ吐くとさっきまでの剣呑な雰囲気はなくなり渋々ながら承諾してくれました。やりました、愛の勝利です!
「言っとくけど~キメラガチャ取り消しなだけで~もじゃ毛に罰は受けてもらうわよ~。アタシ怒らせてな~んもなしとか~沽券に関わるし~」
「それでもありがとアリリーーーン!!」
「ぐえ~」
おお負けに負けてあげるけどと吐き捨てるアリリンに私は抱きつきました。感謝のハグです。
離れなさ~いって口では嫌がってますが一切抵抗してないあたり、悪い気はしないようです。私は離れるどころかぎゅーってさらに抱きしめました。あ、苦しかったのかさすがに引きはがしにきました。えへへ、やりすぎちゃいました。
「
「がぼがぼうっさいもじゃ毛~。アンタは~後で財布に別れのキスでもすること考えときなさ~い。ほらヒ~ちゃんも~、アンタが止めさせたんだから~アンタがこのガキの身体持ってきてこれにぶちこみなさいよ~」
「
そう言うとアリリンはスロットマシンを止めてデク君を元に戻す準備に取りかかってます。空っぽの培養槽をひとつデク君の首の下にセット。あそこにデク君ボディを入れればいいのですね。私はデク君の無事とデク君を救けれた喜びを胸にウキウキとデク君のボディを引っ張りに来たのでした。
「おお~これがデク君ボディで…………!?」
そう、引っ張りに来たんです。
「…………ア、アリリンアリリン。ちょっと聞きたいんだけど、これ見てください」
「なによ~、もじゃ毛ボディがどうかしたの~?」
「あ、あのね、私パパのしか見たことないからわからないんだけど……こ、これってやっぱり……おっきいんです?」
「ん?……あ~あ~なるほどそれね~。クッソ生意気よね~、素でこのサイズって相当よ~。身長にいく養分~こっちに吸われてるんじゃないかしら~?」
「!!や、やっぱりおっきいんです……!?」
「マグナムって言っちゃえばわかるかしら~?」
「!!!?こ、これが噂の……マグナムさん……!?」
「そうよ~これがマグナムさんよ~。あ、気ぃ~つけなさいよヒ~ちゃん~。仮にこいつとやることやるなら~ちゃんと準備しないと~軽く死ねるわよ~。こ~いう陰キャに限って~ベッドヤクザだったりするだろうし~」
「デク君がベ、ベッドヤクザ……!!?…………あ、でもデク君になら乱暴にされてもバッチオーケーです……♡」
「ヒ~ちゃんも好きね~。あ、もじゃ毛~。言っとくけど~怪我になるような跡付けたら~今度は害虫縛りでキメラガチャ強行するわよ~」
「
「あ、泣いちゃった」
培養槽の中で泣くとかとても器用です。
◆◆◆◆◆
少しして、身体を繋いで服も着て、羞恥心にダメージを受けた以外無事元通りになったデク君と改めて謝罪とお話しをしました。
私が血を啜るとその人に変身できる
この五年間折り合いをつけて全然我慢出来てたけど、デク君の告白の刺激が強すぎて暴走しちゃったのは本当失敗です。おかげでデク君の笑顔がとってもぎこちないです。また一から関係の築きなおしです。
そして私の好きの表し方ですが、デク君は危なっかしくはあるけど君自身を象る立派な個性だから否定することは決してないって言ってくれました。良かったです。襲って嫌われたと思ってとっても不安でしたが悪い人じゃないのは触れあって知ってるからそれはないとのことです。信頼度マックスです。頑張ってアタックしたのは無駄じゃありませんでした。
ただ私の好きを知らなかったことで傷つける結果になってしまったから出来れば早めに教えてほしかったとも言われました。これは忘れてた私が完全に悪いです。猛省します。
一方デク君からはちうちうと相性がすこぶる悪い体質という事実を突きつけられました。
デク君の修めるなんとか血法は血に属性を付与してて取り込むと相手を属性に沿って攻撃しちゃうらしいです。
おまけにデク君自身も同じく
私としてはデク君の細胞が私を取って代わろうとする感覚がとっても気持ちよくて興奮するのですが……当のデク君が命の危険があるから本当にやめてって真顔で懇願してきたため非常に残念ですがちうちうはお預けです。
意図してなくても私を傷つけたってアリリンが判断したら今度こそキメラガチャですし仕方ありません。ちうちうが私にとって最大の愛情表現なんだけど、体質上危険なら残念ですがちょっと自重します。
……けれどちうちうが出来ないなら代わりのスキンシップをたくさんして好きって伝えさせていただきます!
もちろんノーとは言わせません。ちうちうの代替手段でもありますからこれを拒絶するイコール私を象る個性の否定です。私の個性を決して否定しないって言ったんです、男に二言はありませんよね!暴論?いいじゃないですか、デク君も綺麗なお姉さんとイチャイチャ出来るんですよ!!
今まで手を握るくらいしかしてきませんでしたがこれからは遠慮なくイチャイチャさせてもらいます!ハグやキスはもちろん、お触りや一夜の過ちなんかもあるかもしれません!ビバピンク色の生活です!
……ネタバレしますと一度も過ちなんて起きませんでした。何度も誘惑したり夜這いしましたがどれもこれも顔を真っ赤にして逃げ出してボロボロになりながら朝帰り、なんてことになります。
そういう時は決まって朝のニュースに悪人がたくさん逮捕されたり悪い組織が壊滅したってお話しが流れます。これ絶対デク君の仕業ですよね?性欲を運動で発散してますよね?私としてはボロボロのデクを鑑賞出来るので全く問題ありませんが!
「とりあえず今回のことで~ヒ~ちゃんを毛嫌いしないことと~、泣かさないことと~。これから毎月アタシ達に~スイ~ツ献上してもらうわよ~。拒否権はな~し。これで駄々こねるなら~ヒ~ちゃんには悪いけど脳ミソオンリ~コ~スよ~」
アリリンがデク君に下した罰は私を無下にしないこととスイーツパラダイスでした。月一スイーツです。期限はアリリンと私が満足するまでとのことです。とってもカァいい罰です。これにはデク君も瞬で承諾して早速とアリリンがとっても高くて美味しそうなお店に連れていってくれました。
「オ会計2122ゼーロニナリマス」
「え"っ」
……前言撤回です。全然カァいい罰じゃありません。蓋を開ければデク君の財布どころか預金もなくなるほどのスイーツパラダイスをするという恐ろしい所業でした。おまけに次回からデク君に探させるし評価が低かったらお仕置き付きです。デク君もこれには胃を押さえちゃってます。金欠は本当に恐ろしいので加減してあげてくださいアリリン。
「な~によ~、これヒ~ちゃんにも利点あるわよ~。もじゃ毛が金欠で~明日のご飯も儘ならないところに~、アンタがお弁当を差し入れすれば~、と~っても感謝するじゃない~?好感度爆上がりで~おまけに胃袋掴んでヒ~ちゃん色に染めれて~一石二鳥よ~」
「…………なるほどナイスアイデアです!さすがアリリン、策士です!さすアリです!」
「それほどでもないわ~。まあ今考えたんだけど」
「普通本人の前でそれ話します?」
デク君も愛妻弁当が食べられてWin-Winでいいじゃないですか。デク君の笑顔のためならいくらでも作りますよ!
◆◆◆◆◆
デク君と私たちの月一スイーツパーティーが日常の一つになって二年。本日もこの街は変わらず霧
今日はなにをしようかな。腕に抱きついたりハグするのもありかな?なんて考えてながらアプリを起動して位置情報を取得!今日もイチャつきましょう!
……ですがいつまで経っても受信せずシグナルがロストしてます。むー、これでは見つかりません。
あ、シグナルロスト自体はたまになります。例えばデク君の周囲で電波が妨害されたり、異空間に収納されたり、後は単純に距離が離れすぎたりしたらロストします。アリリン印の発信器でもさすがに距離という弱点はあるようです。あの発信器じゃヘルサレムズ・ロット内が限度らしいです。
で、いつまで経っても受信されない時は決まって街の外に修行に出ています。たまにですがデク君のお師匠さんが突然現れては修行だと
しかしそうなると困りました。修業に出ると一月近く帰ってきません。幸い月一スイーツは先日やりましたのでアリリンが怒ることはないけどしばらくデク君はお預けです。その分空いた時間はアリリンと楽しく過ごしまくるので寂しくはありませんが、せめて連絡のひとつはほしいです。
それからアリリンや他の友達と遊んではや一月。問題が発生です。なんとデク君まだ帰ってきません。
おかしいです。最初は遅いなって思ったけど月一スイーツの日なのに一向に連絡もなく帰ってくる気配がありません。こんなこと初めてです。おかげでアリリンが培養槽の点検に入ってます。落ち着いてアリリン。もしかしたらもうすぐ来るかもしれないから。
でもでもこのままじゃデク君の命の危機です。ひとまず街に出てデク君のことを知ってる人になにか知らないか聞くべく奔走。知り合いに聞き込みをしました。
「えっ!?デク君帰ったんですか!?」
「お、おう。……やっべこいつらのこと忘れてた……。あのアホなんつー置き土産残していきやがった……!」
聞き込み中ちょうどいいところにお猿さん、じゃなくてザップ君を見つけたので聞いてみると驚きの事実を知らされました。なんでも唐突の帰還になっちゃったらしく一部の人しかお別れの挨拶ができなかったらしいです。いくらデク君でも彼女に一言もなく帰るのは酷いです!ぷんぷん丸です!これは抗議しにいかないと行けませんね!
「待て待て仕方ねえことだったんだよ。あいつ元々
「え!?デク君も異世界人だったんですか!?」
「も?」
「はい、私も異世界人です!」
「…………はっ???」
私の言葉にザップ君が変顔で驚いてます。私も驚いてます。まさかデク君も異世界人だったなんて。こんな偶然あるものなので―――
…………待ってください。今私の中でなにかに気付きました。デク君は異世界人で、さらにヒーロー活動をしてますよね?さらにさらに特異体質だって言ってましたね?え、これってもしかして……!
「ザップ君!」
「お、おうなんだ?」
「デク君が異世界のお話する時オールマイトとかヒーロービルボードとか言ってなかった!?」
「あ?ああなんかそんな名前のおっさんのファンだとか言ってたな……っておいなんでそれ知って……まさか!?」
瞬間、私の中であらゆる歯車がガッチリと嵌まったような気がします。
ヒーロー活動、
そうです、デク君が私と同じ世界の人間なら納得できる要素です!なんという偶然でしょう、別世界で好きになった人が同じ世界の人間なんて。ここまでくるともう偶然なんかじゃありません必然です!私たちが出会うのは運命だったのです!現実は小説より奇なりです!!
こうしちゃいられません、デク君に会いに今すぐ向かわないと!あ、アリリン。デク君の居場所がわかりました。なんと私の元いた世界です!そうです私たち同じ世界の人間だったのです!まさにデスティニーです!私のヒロインアカデミアです!!え、最後よくわかんない?私も勢いで言ったのでよくわかりません。
さて、居場所さえわかれば後は行くだけです!待っててねデク君、今会いに行きます!!
「…………グッドラック、イズク。テメエの
間抜け顔で呟くザップ君をその場において私は全力疾走するのでした。
◆◆◆◆◆
「そうしてアリリンと合流した私はどこ〇もドアでこちらに帰ってきて発信器を追って来たのでした!以上です。ご清聴ありがとうございました!」
「わ~パチパチ~。お疲れヒ~ちゃん~。……ほら~アンタらも拍手しなさいよ~」
失踪当時のトガさんの話を聞き終わった僕たちは、アリギュラにせっつかされまばらな拍手を送り出した。見れば全員から疲れた表情が見え隠れしている。
最初はまあよかった。一人の少女の恋が成就しなかったほろ苦くも救いのあるいい話だった。が、
アリギュラに捕まった時は本当絶望しかなかったなあ……。シュラウド会の交信は寸でのところで阻止に成功したからよかったけど、事情を説明して大急ぎで謝罪に向かおうと外に出たら出待ちしてたアリギュラからヤクザキックをもらってそのままどこ〇もドアに引きずられていくことになるし。その後変な機械で意識を保ったまま首チョンパされて培養槽に突っ込まれて現世異界問わず二百五十五種類の生物のキメラガチャ……。投げてしまったことは猛省してますがそれでも問答無用でこれは酷すぎません?恨み言の一つや十二個は吐いても許されますよね。まあ言ったらどうなるかわからないんですけどねハハハ…………あれ、なんか目から水が出てきたぞ?
「アタシはカウンセリングもやってるから本当にしんどい時は気にせず来なさいよ」
あ、はい。まだ大丈夫ですが本当にキツいときは遠慮せず保健室に来させてもらいます。
「念のため聞くが彼女達を訴える気はなかったのかい?ストーカー規制法に略取誘拐罪。強要罪とほかにも調べれば出てきそうだが」
「代わりに世界が滅びますよ?」
冗談じゃありませんからね。疑うのでしたら彼女の手で
幸い彼女は堕落王みたいにお遊びで厄災を振りまかない―――デルドロさん絡みで相当な被害は出てますが―――ですし、今ここにいるのも僕の金でスイーツパーティーするのが目的なので放置が安定なんです。
トガさんも僕がいれば大人しいですし、ただでさえオールフォーワンでこれから大変だろうにこれ以上余計な厄ネタを抱え込むのはよしときましょう。じゃないと胃が死にます。……え、僕も心労のひとつ?あ、はい、
「ちょっとアンタ達~。ヒ~ちゃんのお話し終わったんだし~もういいわよね~。いい加減限界なんだけど~」
本当に限界なのかイラつきを隠さずなにやらリモコンを取り出し手の中で遊ばせているアリギュラ。押したら大量の食人機械が天井から湧いたりしませんよね?
「……そう、だね。聴取もだいたい済んだし、君が二人の話通りの存在で下手に刺激しなければ安全ならここが限界か。むしろここまで待ってもらえただけ僥倖だと感謝するべきだね。聴取はここまでとしよう。
それと、連絡先を渡しておくから渡我君は終わったら私に連絡をしてくれ。親御さんに発見報告をしないといけないからね。……緑谷君、その間に口裏合わせをお願いしていいかな?」
お互い矛盾を突かれて余計な痛手を負いたくないですし、そもそも最初からやるつもりで話をしていたので任せてください。……そのせいで異界バレして余計な苦労をおかけすることになりましたが。
「おら~行くわよもじゃ毛~。どっかいい場所知ってるんでしょ~ね~」
「デク君とスイーツ♪スイーツ♪」
待ちくたびれたアリギュラは僕の脛に蹴りを入れつつ催促してくる。幸いお勧めできる店があるのでそこに連れて行けばなんとか今月の分はしのげるだろう。後日先生方やみんなにおすすめのお店がないか聞いてみないと。
ただその前に着替えだけでも……って待ってくださいそのいかにもなボタン押そうとしないでください!ただでさえ土埃で汚れてるんです汚い男とお店に入るなんて嫌でしょう!四十秒で支度しますので待っててください!
「ふう…………なんともまあ濃い事情聴取になってしまったよ。オールフォーワンだけでも大変なのに異界の
「だ、大丈夫かい塚内君。すまない、ただの聴取で終わるはずがこんなに爆弾を抱えることになってしまって」
「いいさ、オールフォーワンとの戦いでそういうのには慣れてるよ。……ただ、落ち着いたら一度飲みに付き合ってくれないか?ちょっと愚痴になるかもしれないが」
「なーに言ってんだい藪から棒に!私なんかでよければいっくらでも聞こうじゃないか!あ、お三方もどうですかな!」
「せっかくだし私も参加させてもらおうかな。たまには平和のために最前線で働く君たちを労わないと罰が当たるさ!」
「俺は遠慮しておきます。酒は特段好きでもありませんし。代わりにあいつらがやらかさないようしっかり見ておきます」
「私も歳だからね、遠慮させていただくわ。代わりに胃薬と二日酔いのお薬出しておくから今のうちに持っていきなさい」
後ろから微かに聞こえる青色吐息の会話に申し訳なさを感じつつ、僕は急いで着替えに向かうのだった。
◆◆◆◆◆
あの後学校は休校になった。クソ
原因はもちろん
せっかくの基礎学をクソ
クソ髪は他の奴らの救援に向かおうと言うがこんな三下に負ける奴らじゃねえだろと一蹴。それよりもクソモヤを締めとかねえといけねえ。あれさえぶっ殺せれば奴らはワープが使えず袋の鼠だ。
急行すればちょうどクソ共が逃げ出そうとしていたからクソモヤに爆破をぶち込んで奴の個性を中断。俺の奇襲に手だらけ野郎が不快な顔をしていたのをみて俺の考えは間違いじゃなかったと確信し、少し優越感を得た。実際介入がなければコイツらはここでお陀仏だっただろう。そう、介入がなければだ。
デクが気を抜いたら死ぬと叫ぶと同時に謎の存在が介入。触手みてえなのが襲ってきたと思えばクソモヤの個性を無理やり使わせ逃走を図った。だれか知らねえが部外者がしゃしゃり出てくんなと叫びたかったが、言う暇を奴らは与えなかった。脳みそ野郎が俺に向かって特攻をしてきたのだ。
ほとんど見えなかった。狂った奇声を挙げ俺に向かってくる姿を捉えるころには巨体は目の前に迫ってきていて、やべえと、死んだと、本能が恐怖した。
―――あぶないっどわぁッ!!?―――
が、脳みそ野郎とぶつかる寸前に俺は押し出され、突撃から逃れることが出来た。その代わり押し出される瞬間……俺を突き飛ばすデクが視界に移った。
ふざけんなと思った。俺なんかを救けるためにテメエの命を粗末にするデクに。
ふざけんなと思った。あの程度見えなかったテメエの実力に。……助かったことに一瞬でも安堵したテメエに。
オールマイトの救援が間に合ったおかげで無事だったが、そんなの慰めにならねえ。結局テメエの未熟でデクを危険に晒した事実に、アイツに実力で置いていかれてる事実にどうしても苛立ちを覚えてしまう。……どうせこれをアイツに吐き出したところでいちいち気にしすぎとかほざくんだろうな。テメエの価値を考えろやクソが……。
「ちょっと走り込みしてくる」
「え?何言ってんの勝己!今日くらい大人しくなさい!」
「うっせえ俺の勝手だろうがババア!……少しスッキリしてえんだよ」
「お母さんって言いなさい!…………はぁ、わかったわよ。でも遅くならないようにね。あ、牛乳切らしてるからついでに買ってきてちょうだい」
「ちゃっかりおつかい頼むなや……!!」
考えれば考えるほど苛立ちが募ってきた俺は走り込みに外へ出た。身体を動かしてる間は余計なことを考えなくていいし、疲れりゃ少しはスッキリするだろうと思いとにかく走った。
速度を落とすことなく一定のリズムで走り続ける。とにかく疲れるか、日が落ちるまで。……だがデクとの鍛練の影響もあってか去年と比べて体力がさらに増してしまいなかなか疲れない。おかげで商店街どころか駅前まで休むことなく来れてしまった。贅沢なことだが今だけは自分のタフネスが腹立たしく思う。
(……はぁ、なにやってんだ俺。くだらねえことやってねえでシャキッとしろや…………あっ?)
テメエのみみっちさに情けなく思いつつも、落ち着いてきた俺はとっとと言われたモン買って帰るかと踵を返し……ひとつの店が視界に入った。
ゴールデンフロンティア。駅前にあるお高いスイーツ店だ。カフェも併設されててその場で茶をすることも出来るらしい。甘いもんが好きじゃねえ俺は入ったことはねえがお袋が親父や引子おばさんたちとたまに行ってるのは知っている。後は俺代わりにデクを何度か連れてってる時もあったか。
……思えば昔から告げ口する機会があったろうに俺がいじめてること一度も言わなかったんだなあいつ。一度でも吐き出しちまえば俺の居場所を奪えたろうに……。ああクソ思考がテメエらしくない方に向かっちまう。
まあそういう店で、辛党の俺にとっちゃ全然興味のねえ店なんだが、俺の目に入った。
厳密に言えば店の前でコソコソしてる知り合いが―――中学まで一緒だったダチの二人が目に入った。
「不審者丸出しでなにやってんだかテメエら」
「おっカツキじゃん。珍しいなこんなところで会うなんて。私服だし」
「うるせえ色々あんだよ」
「なに?緑谷になんかやって停学になった?」
「むしろやらかす側はアイツで俺は振り回される側だわ!次ふざけたことぬかすと尻七つに割るぞッ!!」
久々に会うや遠慮のねえ軽口が飛んできたので吠え返す。暴力反対と軽く返してくるがテメエら本気じゃないにしても言葉を選べや。こちとら近所のヒーローに見張るよう言われてんだぞ。テメエらもやってみるか?気苦労が絶えねえぞクソが。
それよりもこいつらだ。まじでなにやってんだ、不審すぎてヒーローに通報されても俺は知らんぞ。
「そうそう、あれ見てみろよカツキ!」
ダチが指差した方に目を向けると、そこには楽しそうに談笑する男女三人組がいた。片や可愛い寄りの大人の女で、片や妙なマスクをつけたゴスロリの女。どちらも整った顔つきをしてるが、それだけなら別段興味なぞねえ。ねえが、残り一人が知り合いだった場合話は変わる。
「……なにやってんだデクの奴」
女二人の対面に座ってる男は間違いなくデクだった。立ち位置の都合ほとんど後ろ姿しか見えねえがこの辺で
念のため言っておくが羨ましいという感情はねえ。今のところそういう事を考える暇があったら研鑽を積む方が有意義だ。じゃねえとデクに追いつけるとは到底思えねえ。
だがそれでもデクが、クソナードだったアイツが見知らぬ大人の女性二人と洒落た店で楽しくお喋りしてるという事実に驚かない理由にはならない。つーかなにがどうなって女二人とこんなたけえ店に?ナンパか?いやアイツの柄じゃねえ。じゃあ逆ナンか?んでホイホイついてったのか?仮にそうだったらやっぱアイツ年上趣味じゃねえのか?
考えが明後日の方向に向かいだしたあたりで、結局はデク個人の出来事で俺達が首を突っ込むようなことじゃねえとくだらねえ思考を切り捨てる。だが同時に俺の知ってるあのクソナードは、出久は遠くに行ったんだなと一抹の寂しさを覚えた。
「なあなあ、あの二人緑谷とどういう関係なんだ?偶然を装って会って聞いてみるか?」
「んなくだらねえことしてねえで帰れや。気になんなら後でメールで聞きゃいいだろ」
「で、でもよー、カツキも気になんねえか?」
「どうでもいいわ。俺はもう―――」
行くぞと、こいつらと一緒に不審者入りしたくないから置いていこうとした瞬間だった。デクの顔が視界に入った。ほんの一瞬だったが、優しく微笑んでる姿が目に映った。
ただし、目のハイライトが完全に消えていた。
それどころか黒一色に染まっていた。
おかしい、アイツの目は緑色だったよな?目の錯覚かと目を擦り、改めて顔を確認する。突然黙った俺を二人は怪訝な顔で見てくるが無視しておく。
睨むように見つめているともう一度デクの顔をもう一度確認することが出来た。出来たが……、
その時のデクの顔は、異世界でテメエを鍛えぬいた
ただただ「救けを求める顔」が、そこにあった。
「よしお前ら、退散するぞ」
「え、なんで?」
「いいから今すぐ離れるぞ。それと今日ここで見たことは忘れろ。ダチの死に目を見るようなことになるのは御免だ」
「なんかいきなり命の保証がなくなったんだけど!コエーよ!?」
俺は瞬でデクを見捨てることを選択。言っておくがデクに意地悪してるわけじゃねえ。むしろこの馬鹿共が余計なことしねえようにそっとしておく選択を取ってるつもりだ。
考えてみろ。最近のデクがあそこまで死んだ目してる時はだいたいあいつの師匠や修行のようなガチトラウマを思い出してる時だ。つまりあの女共は
なにをどうやってそんなやべえ女共に目を付けられたんだとツッコミたくもあるが、今はとにかくダチをここから遠ざけた方がいいだろう。おいコラ駄々こねるなあそこにあるのは俺らじゃどうしようもねえ面倒事だ。アイツもいっぱいいっぱいだろうからそっとしといてやれマジで頼むから。
早口で頼み込んだことに驚愕するダチ二人を引きずり、うらぶれてるデクを置いてその場を後にするのだった。すまねえ出久。見捨てた俺を恨んでくれ。
「……牛乳、買って帰るか」
デク君のデク君はどれだけ盛っても許される風潮。あると思います。
※ところで2112ゼーロっていくらくらい?
参考になりそうなゼーロの詳細が1期5巻のネジのバーガーくらいしかないのでそれで参考にすると、
・チェーン店のジャック&ロケッツバーガーをマク〇ドナルド扱いするならチーズバーガーが2.39ドル。切りよく2.4ドルにすると今の日本円で375円くらい
・ネジの買ったチーズバーガーが4個で64ゼーロ。相場の4倍らしいので本来は4個で16ゼーロ。
・割ると1個4ゼーロ=375円。さらに1ゼーロまで割ると93.75円に。
ここに2112をかけると=198000円になる。
毎月20万円弱むしり取るアリギュラの鬼畜さに嘆くべきかそれだけのスイーツが身体のどこに消えてるのかと戦慄するべきか。
※追記
感想でジャックアンドロケッツバーガープラントの元ネタを教えていただき調べたところ、いくつかの該当しそうなバーガーの間を取ったら8.4ドルくらいになりました。8.4ドル=1320円くらいで計算しなおすと1ゼーロ330円に。
ここに2112をかけると=696960円に。本当にカァいくないぞこの罰!?
【誤字報告】
サギィさん。 slothful-somaさん。 エビ+Cさん。 ちはやしふうさん。
誤字報告ありがとうございました。