My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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マーベルライバルズが楽しいので第四十二話です。

えー、結構遅れてしまいました申し訳ありません。一応モンハンに向けてPC買い換えたとか引っ越しでドタバタしているとかあるんですがまあそれ以上にダイスがしょうもないところで荒ぶりまして。

具体的にどういうことかと言いますと、


出たんです。


クリティカルが。


二回。





※一部キャラ崩壊あります。ご注意ください。


第42話:ゲルマン民族の血は流れてません

 USJ襲撃事件。

 

 日本で最高峰とされるヒーロー養成学校である雄英高校に(ヴィラン)連合なる組織が侵入。ヒーロー科の生徒に危害を加えるという前代未聞の事件は世間を騒がせた。

 幸いというべきか負傷者はいても死者はなし。オールマイトや生徒一同の活躍もあり(ヴィラン)のほとんどが逮捕された。ただ主犯は逃走し、残念ながら完全勝利には至らなかった。

 一年生でありながら数に勝る(ヴィラン)を前に怖気ず立ち向かい撃退した若き有望株たち。オールマイトがいながら主犯を取り逃がした失態。その他諸々と、内容が内容なためメディアは連日面白おかしく報道しており、目に入る度にどこの国や世界もやることは変わらないなと辟易してしまう。

 

 (ヴィラン)襲撃から臨時休校を挟み、改めて学校は再開したけど一部の生徒は気は休まらなかったようで、未だ表情に疲れが見え隠れする者もいる。僕ら以外の生徒も自分たちの学び舎に(ヴィラン)が押し寄せた事実に一抹の不安を覚えているだろう。

 かくいう僕も例外じゃない。戦いのさ中、(ヴィラン)連合の背後にオールフォーワンなる世界の均衡を崩す存在がいることを知らされたのだ。慣れているとはいえ唐突に世界の危機が訪れるのは精神的負担が大きく、心がまいってしまった僕は……、

 

 

 「おはよー。あれ、どうしたのみんな、デク君のとこ集まって―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チ――――――――――――ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「デク君死んでるーーー!?」

 

 「麗日で十人目よ。似た反応するの」

 

 

 現在教室の机に突っ伏してダウン。みんなが心配して集まってきてるのだった。

 

 …………ごめんなさい、少し噓をつきました。精神が参ってる原因のほとんどはオールフォーワンじゃなくアリギュラたちです

 あれから駅前のゴールデンフロンティアに連れて行ってスイーツ尽くしのひと時でしたが無断で帰還したことに腹を立てていたのか問答無用の全メニュー注文周回。その間二人の、特にアリギュラの機嫌を損ねぬよう必死で話を聞きわざとらしくない程度におだて、トガさんのスキンシップもギリギリセーフまで受け入れたりと本当大変だった。

 

 幸い評価を得られたので(1d100:73)許してもらえたが、これからまた月一で続くのかと考えると取れる疲れも全然取れずこのザマである。見てよこの長ったらしい領収書。三十万超えてるけど大きな買い物をしたわけじゃなく、全部スイーツ代なんだこれ。ははは。

 

 嗚呼、(ヴィラン)連合が千回襲撃してくる方が気が楽だ……!

 

 「大丈夫緑谷。ホラー映画の死体みたいな突っ伏し方してるわよ」

 

 「顔色もー悪いけどー、先生に言ってー早退させてもらうー?」

 

 「だ、大丈夫。心配しないで二人とも。…………ごめん凡戸君。本当に申し訳ないんだけど君の喋り方が今一番ダメージ受けそうだからそっとしておいて……」

 

 「僕ーなんかやっちゃいーましたー……?」

 

 ごめん、本当ごめん。決して君が悪いわけじゃない。むしろ勝手にダメージを受けてる僕が悪いんです。さらに責任転嫁するなら君と似た間延びした喋り方をする知り合い(アリギュラ)が悪い。だからしょんぼりしないで。心が痛い。

 申し訳なさでさらに落ち込む僕は、もはや机を貫通するんじゃないかと思うほど沈むのだった。

 

 「緑谷氏、本当に辛いなら私たちを頼ってほしいですぞ!」

 

 「そうです。私たちA組はあの場を共に潜り抜け、本当の意味で仲間になったと私は思ってますわ。だからこそ仲間が目の前で苦しんでるのを見て見ぬふりをするのはヒーローとしても、ひとりのご友人としても見過ごせません!」

 

 「そうだぜ!力になれるかわからねえが少しでも辛い気持ちを吐き出せば少しは楽になるはずだ!」

 

 あまりにも痛々しかったのか一同居ても立っても居られず必死に励ましてくれる。曇りなき(まなこ)と言葉がとても眩しく、純度百%のみんなの優しさがボロボロの精神に染み渡る。

 ……そうだね。どうせこれから何度もアリギュラの相手をすることになるんだ。いちいちダウンしていたら身が持たない。一時の休暇が終わったと思って切り替えていこう。

 

 「ありがとうみんな。心配かけちゃって。個人的なくだらない事情で疲れてただけだから気にしないで」

 

 「なら良いのですが……。しかし本当に辛かったら何でも言ってほしいですぞ!力を合わせてこそのヒーローですぞ!」

 

 少し活力が蘇った僕に安堵しながらも心配してくれる宍田君。優しさといい若干心配症なところがまるであの人に、クラウスさんに似ているな。

 

 

 

 ……むしろちょっと似すぎなような?

 

 

 

 「宍田君、ちょっとお願いがあるんだけどこういうポーズ取ってくれないかな?」

 

 「む、ポーズを?構いませぬが…………こうでいいですかな?」

 

 「そうそうそんな感じ。それでそのポーズのまま二十代後半の拳闘が得意な野獣紳士みたいな声質で「ブレングリード流血闘術、推して参る」って言ってみて」

 

 「や、やたら細かいですぞ!?」

 

 「いいから、お願い」

 

 「う、うむ……えっと、ブレン……?」

 

 「ブレングリード流血闘術」

 

 「えーっごほん……ブ、ブレングリード流血闘術、推して参る」

 

 「あ、推して参るのところは昂らせるようにお願い」

 

 「わ、わかりましたぞ。んんっ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ブレングリード流血闘術―――

 

 

 

 

 

 

―――推して参るッ!―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「宍田君。両親のどちらかがドイツ人だったりしない?」

 

 「私にゲルマン民族の血は流れてませんぞ!?」

 

 突然なにをと驚く宍田君。あまりにも堂の入った宍田君のモノマネを見て一瞬クラウスさんを幻視した僕は、もしかしたらラインヘルツって家名の親戚がいるのではと尋ねてみた。当然返事はNOだったけど。

 でも彼を見てほしい。紳士で一人称が私。下牙を生やした野性味あふれる容姿でとても善人。さらにいいところの坊ちゃんでフォーマルな服もよく着るらしい。声種は違いがあれどバリトン系で、普段の落ち着きある雰囲気がまさにクラウスさんのそれだ。ポーズも様になりすぎている。これで髪が赤かったら若いころのクラウスさんって言われても納得してしまう。……ねえ、やっぱり親戚にドイツの人いたりしない?いないか。残念。

 

 ……どうしよう、クラウスさんのことを思い出したら寂寥感に襲われて涙が出てきた。もしかしてホームシック?そうだとしたらあの危険だらけの街も今となっては僕の第二のホームなのだろう。……久々にライブラのみんなに会いたいな。ザップさんの幼稚な罵声が恋しい。

 

 「ねえ爆豪君、デク君ほんとにどうしたんか知らない?」

 

 「知らん、疲れてるだけだろ」

 

 「本当に?デク君がここまで壊れるのって相当だと思うんだけど。もしかしてたまにああなるとか?」

 

 「知らんつってるだろ。今はほっといたれやわりと切実に」

 

 (多分これ知ってるやつだ)

 

 麗日さんとかっちゃんがなにやらコソコソしている。そういえば珍しくかっちゃんが絡んでこないな。こういう時うぜえからとっとと起きろアホ~とか言って蹴りの一発でも入れてきそうだけど。いや蹴られないならそれに越したことはないけどさ。

 さて、そろそろ気持ちを切り替えよう。言ってる間にホームルームも近くなってきた。

 

 「……緑谷、ひとついいか」

 

 「え、どうしたの常闇君?」

 

 と、身体を起こすや今度は常闇君から声をかけられた。彼と話すことは少なかったから少し珍しいな、どうしたんだろ?

 

 「ブレングリード流血闘術、それはどういった代物だ?」

 

 「え、そりゃあ血液操作を駆使した戦闘術だけど……………………あ、もしかしてだけど、名前の響きが気に入ったとか?」

 

 「…………………いや、やはり気にするな」

 

 こちらの返答を素っ気なく返し話を打ち切る常闇君。だけど僕は見逃さなかった。彼が流派を口にした時少しソワソワしていたのを。なるほど図星だな。でもわかるよ、僕も好きだもん。

 

 「わかるよ、かっこいいよねブレングリード流血闘術。僕も最初聞いた時ワクワクしたし、レオさんもかっこいいって言ってたし」

 

 「……違う」

 

 「そもそもドイツ語自体かっこいいし血とか闘とか思春期に刺さる単語との合わせ技だし」

 

 「……ち、違う」

 

 「ほかにもエスメラルダ式血凍道とか954(ナインファイブフォー)血弾格闘技(ブラッドバレットアーツ)なんてのもあるし。あ、もちろん僕は斗流血法を推すよ。自分のところの流派だからね」

 

 「……スペイン語の流派だと?」

 

 口では頑なに否定していたところに他の流派を口にしたら常闇君は再び反応した。なんか面白いな彼。ちょっとサービスしてあげたくなってしまう。

 

 「……111式、十字型殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)

 

 「ッ……!」

 

 「絶対零度の剣(エスパーダデルセロアブソルート)

 

 「ッッ……!!」

 

 「Electrigger (エレクトリッガー)1.25(ワンポイントトゥウェンティファイブ)GW(ジゴワット)

 

 「ぬぬぅ……ッ!!」

 

 技を口にする度に琴線にふれまくってるのか常闇君が目にみえてすっごいソワソワしている。それどころか周囲の生徒も技名を聞いてワクワクしていた。ふふ、みんな血闘術の虜だね。技術原理を教えるわけにはいかないのがちょっと歯がゆく感じるよ。

 

 「緑谷、今の技群はすべて実在するのか……?」

 

 「するよ。111式は血で出来た巨大な十字架でー……あ、絵にしてみようか?」

 

 「是非。……骸纏いし断罪の十字架……ッ!」

 

 せっかくなのでと絵に起こしたら見事我慢できなくなった常闇君が釣れました。一際楽しそうに独特な反応をくれた。

 普段通りの表情を保とうとしてるけどおめめがキラッキラだ。今だけ青山君よりキラめいてる気がする。

 

 「みんなー!そろそろ朝のホームルームが始まるから席に着きたまえー!!」

 

 宍田君のモノマネと常闇君の反応、さらに他のみんなも技を聞いて楽しそうに質問してきて、気がつけばホームルームの時間が迫ってきていた。飯田君の指示でみんなが解散するころには沈んだ気持ちは霧散していた。ありがとうみんな、やっぱり仲間って大事だね。

 

 「はいおはよう」

 

 みんなが席につくと同時にガラッと扉が開き相澤先生が入室。まだ腕に包帯を巻いて三角巾はかけているけど、先日の戦いで負った傷は粗方治ったのか普段と変わらない姿と動きを見せており生徒一同安堵の表情を溢した。

 

 「先生無事だったのですね!腕は大丈夫でしょうか!!」

 

 「これ(三角巾)はリカバリーガールが念のためってやってるだけだ、気にすんな。そんなことより……まだ戦いは終わってねえぞ」

 

 よかった。脳無との戦闘で腕を潰されていたため後遺症などが心配だったけど杞憂のようだ。リハビリは必要だろう怪我だったろうに関係なく完治させるとは、リカバリーガールの個性様々だ。

 しかし戦いはまだ終わっていないだって……?どういうことだ、まさかまだ学校内に(ヴィラン)が潜伏して―――

 

 

 「雄英体育祭が迫っている」

 

 

 「クソ学校っぽいの来たあああああ!!!」

 

 

 ああなるほど、確かに戦いだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 雄英体育祭。それは雄英高校で行われる学校行事にして日本を大いに沸かすビッグイベントの一つ。簡単に言えば個性使用可能の体育祭なのであるが、たかが体育祭と侮ってはいけない。

 雄英という最難関高校に入学(集結)した生徒たちは、謂わば上澄みも上澄み。そのうえヒーロー科の生徒と言えばプロヒーローは確約されたようなもので、さらに未来のトップヒーローともいえる存在でもある。そんな彼らが繰り広げるぶつかり合いは圧巻の一言。その姿はなんとテレビに放送され全国のお茶の間を熱狂させるほどで、視聴率ももちろん凄まじく、かつてスポーツの祭典として世界を賑わせたオリンピックに代わるほどだ。

 

 とはいえ向こう(H・L)でオリンピックを観る機会があった僕からしたらあっちも負けてないが。形骸化する前のオリンピックも熱意と勢いが凄まじく、テレビ越しなのに世界中の興奮がありありと伝わってきた。今でもお互い甲乙つけがたく思っている。

 あの時は自宅で、スマホで、家電品店などテレビのある店先で、色んな場所でサポーターや祭り好きが盛り上がったっけ。誰が金メダルを取るかトトカルチョが開かれたり、異界(ビヨンド)の連中が俺たちの方がすげえと同じことをやって暴れてHLPD(警察)のお世話になったりとそれはもうお祭り騒ぎである。

 

 もちろん僕もライブラのみんなやトガさんと一緒にテレビの前で盛り上がった。お互い自国の選手を応援しては一喜一憂して仕事に身が入らなかったり、ドイツが決勝に進出した時クラウスさんが半休を取って応援グッズ片手にテレビの前にいた姿をスティーブンさん共々微笑ましそうに見ていた。

 

 あとザップさんが珍しくトトカルチョに勝って大儲けしていた。豪遊するのは構いませんが先に貸した五百ゼーロ返してください。

 

 閑話休題(それは置いといて)。とにかくオリンピックに取って代わる一大イベント、その開催が決まったのだ。聞いた瞬間みんな盛り上がり、同時に心配もしていた。

 

 「待ってノコ!(ヴィラン)に侵入されたばっかりなのに開催して大丈夫ノコ?」

 

 「逆に開催することで雄英の危機管理体制は盤石だと外様に示す考えらしい。それに警備は例年の五倍に増やす。それを見れば暴れる気も失せるだろ。仮にいても目的のもの字も達成することなく留置所行きだ。

 何より……雄英(うち)の体育祭は将来への最大のチャンスでもある。(ヴィラン)ごときで中止していい催しじゃねえ」

 

 そう。このイベントの最大の利点は全国からプロヒーローが集まることだ。

 この催しは個性ありの競い合いのため、必然的に個性慣れしているヒーロー科生徒が活躍するようになっている。そのため現役のプロヒーロー達が自分の個性と相性のいい生徒はいないかとスカウトするべく大勢やってくるのだ。生徒側もここで活躍して注目を集めることが出来れば今後の進路で有利になるし、個性に目をつけたメディアといった別方面からも覚えがよくなる。卒業後スカウトしてくれたヒーローの所へサイドキック入りして独立を目指すのが定石と言われているとか。

 

 「名のあるヒーローに指名されて事務所入りできれば必然他と一線を画す経験値と話題性が手に入る。時間は有限、プロに見込まれればそれだけで将来は拓かれる。お前ら気張って行けよ」

 

 思い描く最高の未来を勝ち取ることが出来るかもしれない。年に一回、計三回しかないチャンス。これをそうそう中止になんて出来るわけがないのだと伝え、ホームルームは締めくくられたのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 時間が経過し昼休み。相澤先生の激励により一同気を引き締めると同時に、来たるイベントに向けて盛り上がりをみせていた。活躍して目立てば必然プロへの一歩を大きく踏み出せるのだ、それを知って期待に胸を膨らませないヒーロー科生徒はいないだろう。

 あっちもこっちも体育祭の話題。ぜってえ活躍してやると声を挙げる生徒や早速過去の競技を参考に対策しだす生徒など、十人十色の意気込みを見せている。飯田君もキュッと絞るような変な……独特な動きで燃えていた。

 もちろん僕も結構燃えていたりする。ライブラの一員としてテレビに映るのは違うんじゃないかと思う反面、あの雄英体育祭の参加者側になれることに興奮を覚えている。

 

 「デク君、飯田君……」

 

 「どうしたの麗日さ―――」

 

 「頑張ろうね体育祭」

 

 「麗らかさが皆無!?」

 

 「どうしたのだ麗日君!気迫が凄まじいぞ!?」

 

 「みんな!私!!頑張る!!!」

 

 そしてここに真剣すぎておかしくなってる子が一名。キャラが違うぞ麗日さん。

 拳を天に挙げて気迫をみんなに向かって吐き出す姿に、みんなも呼応するように拳を挙げるが一変した麗日さんにみなタジタジになっている。

 このまま放置してたら正気に戻った時気まずいだろう。ひとしきり気迫を振りまいて落ち着きを取り戻したところを狙いお昼に誘う形で回収。さっさと食堂へ向かうことにした。

 

 「ご、ごめんね、ヒーローになるチャンスをモノに出来るかもって思ったら気合入っちゃって……」

 

 「驚きはしたけどクラスのみんなも真剣に考えてる行事だし、麗日さんもヒーローを目指すならそれくらい燃え上がってもいいんじゃないかな?ね、かっちゃん」

 

 「なんでテメエらさらっと並んで普通に話しかけてきてんだよ……!」

 

 「どうせ食堂に行くんだし一緒でもいいじゃん。前に出たらどうせまた噛みついてくるんだし」

 

 「いいじゃんじゃねえ別ルート行くかせめて後ろ歩けやッ!!」

 

 食堂へ向かうかっちゃんと切島君がいたのでせっかくだからと合流。かっちゃん普段は一人か切島君と二人でご飯食べてるしたまには大所帯もいいじゃないか。

 

 「相変わらず仲いいなお前ら」

 

 「最近喧嘩するほど仲が良いという言葉は彼らのためにあるように思えてきたよ」

 

 「そこうるせぇ……!……つか丸顔、テメエ教室でアホしてた時からなに焦ってんだ」

 

 「うぇっ!?」

 

 「あ、やっぱかっちゃんも思った?」

 

 「うえぇっ!!?」

 

 そうなんだよなあ。麗日さんのさっきの気迫はなんていうか……絶対ヒーローになるぞー!っていう燃え方じゃなくて、ヒーローにならないと!っていう焦りを覚えてるようにみえて、そこが少し妙に思ってしまう。なにか理由があるのだろうか、出来れば一友人として聞かせてほしいな。

 

 「うっ……二人ともなんでそういうところ鋭いのかな……。……その、私ヒーローになりたい理由がちょっとしょうもないことなんだけどね……」

 

 図星だったのか肩を縮めてしまった麗日さんは、ポツリポツリと理由を説明してくれた。

 

 彼女のヒーローになる理由は、究極的に言えばお金が欲しいからとのこと。

 なんでも実家が建設会社をやっているらしく、けれどなかなか仕事を得られず業績が芳しくないらしい。そんな中、麗日さんの発現した個性が無重力という、まさに建設業にうってつけの個性だった。これさえあれば両親の仕事を手伝って少しは楽させられると、そう思い将来両親の会社に就職すると伝えた。

 

 けれど両親は自分たちの利でなく、麗日さんが叶えたい、ヒーローになるという彼女の夢を優先してくれた。彼女の個性を使えば生活が楽になるというのに、逆に自身の身を削って雄英という学校に通わせてくれた。

 だからこそ彼女は、麗日お茶子という少女は、例えお金のためという不純な動機であっても必死でヒーローを目指す。ヒーローになって、愛する両親の生活を支えたいがために。

 それが彼女のヒーローとしての原点(オリジン)である。

 

 聞き終えた僕らは素直に彼女を称賛した。飯田君も切島君も、ただただそのまっすぐな理由に拍手を送る。

 

 「ブラボー!なにがしょうもないだ麗日君!これほど(たっと)く高潔な理由なんてそうそうないぞ!」

 

 「そ、そんなことないって!言ってることは結局お金欲しいだけだし……」

 

 「いいじゃねえか。家族を楽させたいためにヒーローになってお金を稼ぐ。その一念で雄英に挑んで受かってんだ!熱い話じゃねえか!」

 

 「憧れだけじゃない、ちゃんと経済という現実を見据えたうえでの選択という点も評価できるよ」

 

 「三人ともべた褒めしすぎや……!」

 

 三人揃って高評価を送られる事態に麗日さんは顔を赤らめ蹲ってしまう。自信を持てばいいのに。僕らの周りにはもっと不純な動機の人がいるんだしさ。峰田君とかモテたいがためだよ。

 

 「ば、爆豪君もなんか言ってよ!絶対爆豪君ならこういうときくだらねえ~とか勝手に頑張ってろとか言って貶すと思うんやけど!」

 

 「言うかゴラァッ!テメエは俺の事なんだと思っとるんだ!」

 

 「狂犬バク公」

 

 「テメエには聞いてねえしハチ公みてえな言い方すんな!!」

 

 僕の煽りに僕の回答に爆破が飛んでくる。が、軸をズラして回避。また右の大振りが出てるよ。その癖直さないと。

 避けられたことに歯噛みするもこれ以上やっても無駄と判断したのか大きな舌打ちひとつ鳴らしてズンズンと一人先に進んでいった。

 

 「だいたいテメエがガキの頃から決めたことを外野が口出しすることじゃねえだろが。……むしろずっとブレてねえ分俺より立派だわ」

 

 麗日さんへそう返しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……えっ、中三の頃ヒーローになって高額納税者ランキングに名を刻むって意気揚々と豪語してたあのかっちゃんが麗日さんを自分より立派って言った……!?どうしたのかっちゃん。甘い物食べた!?」

 

 「さらっと人の黒歴史暴露すんなやしまいにゃマジで殺すぞッ!!後!オールマイトを越えるって部分!!削んな!!!」

 

 かっちゃんが突然麗日さんを褒めるという衝撃的すぎる出来事に驚き、うっかり中三の時の痛い発言を掘り起こしてしまう。え、本当どうしたのかっちゃん。しおらしいかっちゃんなんて見ててもキモいだけだぞ。

 僕の煽りが効きすぎたのかかっちゃんは爆速で踵を返し、そのまま卍固めをキメてきたのだった痛い痛い痛い痛い痛いッ!

 

 うん、かっちゃんはこれくらい傍若無人なほうが落ち着くな。痛いけど!

 

 「おお、緑谷少年がーーーってなにこの状況!!?」

 

 廊下の角からオールマイトがすごい勢いで飛び出してきた……が、卍固めを決められてる僕を見て盛大に驚いていた。ちょうど間接技を決められたタイミングだから仕方ない。

 

 「あ痛ッ、自業自得なので痛ッお気になさ痛ッらず。今日は痛ッどうしましたオールマイト痛ッ

 

 「この状況で普通に会話に入った!?ちょっと技を解いてあげなさい爆豪少年!なんか変な音出てるよ!」

 

 「言っとくが!十割コイツが悪いからなッ!!」

 

 さすがにオールマイトの前で間接技を続けるわけにもいかず最後に締め上げてから技を解き、そう吐き捨てるや今度こそ食堂へと向かっていった。切島君も黒歴史はさすがにやめとけよと苦言を呈した後かっちゃんについて去っていったのだった。

 

 「えっと、大丈夫かい緑谷少年?」

 

 「痛かったですがお気になさらず。それでなんでしょうか?」

 

 「なぁに個人的なことさ!……ご飯、一緒に食べよ?」

 

 「乙女や!!」

 

 改めてオールマイトに用件を聞くと突然モジモジしだし、体格に見合わない可愛らしいお弁当を取り出してお昼に誘ってきた。乙女なギャップに麗日さんは吹き出した。

 わざわざ僕を指名して誘う以上なにかあるのだろう。少々不自然ではあるがオールマイトらしい誘い方だ。

 

 「あ、すみません。先約がありますのでまたの次回にお願いします」

 

 「私振られちゃったぁ!?」

 

 が、先約があるのでもうしわけありませんがお断りさせていただきます。さすがに誘った二人を放り出すのはどうかと思うし。

 

 「あ、いや、ちょっと話したいこともあるんだけど~……」

 

 「すみませんランチラッシュの安否も気になるので。お昼を取り次第向かいますのでお待ちください」

 

 「あ、はい」

 

 なによりもランチラッシュの様子が気になるのです。トガさんは好評だったがアリギュラが手厳しい評価を下していたし、手痛い言葉をぶつけられて折れてないか心配だ。

 故に彼の安否を優先。それではと僕は謝辞を述べるやスタスタと去るのだった。

 

 「い、行っちゃった。……トガ君のことで伝えなきゃいけないことがあったんだけど…………大丈夫かな師匠」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 オールマイトと別れ食堂に向かう僕たち。二人は気にせず一緒にご飯にすればよかったのにと告げてくるが、さっきも言った通りランチラッシュが無事か気になるので気にしないでと返した。

 

 「ランチラッシュの無事とはいったい……?ま、まさか(ヴィラン)連合が食堂にも!?」

 

 「いや違うんだ。実は襲撃の日に向こう(H・L)の知り合いがランチラッシュのご飯を食べに来てて、その人から辛口評価を受けてしまって心配というか……」

 

 「あの時そんなことあったんだ……」

 

 あの日のちょっとした小話を聞いて食堂も違う意味で戦場だったんだと二人は苦笑い。そうこうしているうちに僕らは食堂に着いた。

 今日も今日とで生徒でごった返し、その生徒たち全員を食わせるべく熱気に包まれた台所では食材と調理器具が激しくぶつかり合っている。

 さてランチラッシュは大丈夫か確認しないと。ぱっと見台所の士気は衰えていないあたり大丈夫かもしれないが……。

 

 ……いや、衰えるどころか普段以上に熱気がすごいような。むしろ狂気すら感じる。いったいどこから―――

 

 

 

 「けおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

 

 「な、なんだ今日のランチラッシュ。残像が見えるぞ……!」

 

 「ランチラッシュ!特製グレートカツ丼追加です!」

 

 「完成、持って行って!」

 

 「バカな……早すぎる……!?」

 

 「本当にちゃんと出来て……な、なんだこれは!口の中で味が四回変化して……味のデパート……!?う、うんまああああああいッ!!」

 

 「あの自称雄英一のグルメ君が雄たけびを上げたですって……!?」

 

 「すげえぜランチラッシュ!こりゃ俺達もウカウカしてられねえ!」

 

 「みんな、全力でついていくわよ!」

 

 『おーーーーーー!!!』

 

 

 

 

 

 なんかランチラッシュが修羅と化してるんだけど。え、どういうこと?

 

 注文が入るやほぼノータイムで作り上げ配膳。あまりの速さに訝しげながらも食べた生徒たちはみな一様にオーバーリアクションを取っていく。

 ある生徒は拍手一発、ある生徒は目と口から光を放射、ある生徒は服が盛大に破損、ある生徒はイージス艦に変化していた。最後なんで?

 

 「デク君。落ち込むどころかすごいことになってない?」

 

 すごいどころじゃないような。こんなの予想出来るわけもなく生徒達も呆然としている。あの、ランチラッシュ。あなたそんなキャラじゃなかったですよね?他の調理師も疑問に思わないの?君たち熱気に脳みそやられてない?

 

 「ああ、緑谷君かいらっしゃい。……僕はね、自分がどれだけ己の腕に驕り高ぶっていたのか、あの日痛感させられたのさ……」

 

 突然語りだしたランチラッシュ。その間も手は止まることなく、次々と料理が出来上がっては生徒に届けられていく。

 

 「オールマイトが連れてきた女性に自慢の一品を出したら二口程食べて……こんなもんかって言われてね。一人の料理人として聞き捨てならなくて理由を聞いたらこれでもかと、それこそ自身が甘えていた部分すら見事に指摘されたのさ」

 

 目を背けていた部分すら赤裸々に暴かれたのだろう。ランチラッシュの背中が煤けるくらい落ち込んでいるのがよくわかる。多分アリギュラとしてもトガさんが期待して連れて行った分失望もひとしおだった可能性もあり、結果これでもかと指摘したのかな。お労しやランチラッシュ。

 

 「悔しかったよ、ここまで積み上げてきた技術を一蹴されたのもそうだけど……なにより、自分がぬるま湯に浸かることに慣れてしまっていたことが……!」

 

 ギリッと歯を食いしばる音が鳴り、自分の未熟さを痛々しく語るランチラッシュ。しかし気配は弱まるどころか徐々に強くなっていき……なにやら紫色の、殺意すら感じる波動のようなもの身から漏れ出した……って待って何が起きてるの?

 

 「故に僕は己の甘さを捨て、鬼になることを選んだ!!数多の料理の屍を築き、その頂点に君臨する……料理の鬼にッッ!!!

 

 「何を言ってるんです???」

 

 本当に何を言ってるんだこの人は。おいアリギュラ、あんたランチラッシュに何した。

 

 どこからともなく、いや知んないわよと返された気がした。

 

 「ランチラッシュ!特製注文ラッシュ第二ウェーブ来ました!特A四、赤煮三、牛テリーヌ一、豚シャル二、松鼠一です!」

 

 「刮目せよッ!あの日、クックヒーローランチラッシュは死んだ!今ここにいるのは料理の波動に目覚めた、新たなる一人の料理の鬼哉ッ!!」

 

 そう叫ぶや注文の材料を所狭しに並べて包丁二刀を手に持ち―――、

 

 

 

「 (いっ) (しゅん) (せん) (めし) ! 」

 

 

 

 阿吽像めいたポージングを取るランチラッシュ。その背後から調理器具を持った千手を幻視し―――世界が暗転。

 

 

 閃光の度にわずかに(まみ)える無数の拳により料理が次々と成され、

 

 

 世界に光が戻った瞬間、目の前には注文された料理が並び、

 

 

 ランチラッシュの背中には、禍々しい気を発したの一文字が浮かび上がっていた。

 

 

 

 「我こそ―――(はん)を極めし者!!」

 

 帰ってきてくださいランチラッシュ(治って脳の病)!!」

 

 「タイガーッ!?」

 

 

 これ以上収拾がつかなくなるよりマシだと、僕は申し訳ない気持ちを拳に込めて荒療治(アッパーカット)を施すのであった。アリギュラあんた本当に何したんだ。

 

 どこからともなく、だから知んないわよと返ってきた気がした。

 




Q:ランチラッシュどうしてこうなったし。
A:それもこれも全部ダイスが悪いんです。
以下振ったダイス。

アリギュラの評価を受けたランチラッシュは?
1:特にダメージはなく
2:一料理人として評価を重く受け止める
3:己を鍛え直すため休職
4:ちょっと心折れて休職
5:アリギュラ「【1D100:7】点~」
6:特にダメージはなく
7:一料理人として評価を重く受け止める
8:己を鍛え直すため休職
9:ちょっと心折れて休職
10:【1D2:1】(1.クリティカル 2.ファンブル)
【1D10:10】←デデドン

作者:う わ つ い に で た

こんなところでクリティカルってなんだよ!?
1:モルツォ・グァッツァの料理を食べる機会を得た
2:秘伝のスパイスを完成させる
3:安い食材で三ツ星レベルの料理を作り上げた
4:わずか一日で実力が上がった
5:ア「モルツォ・グァッツァの料理長が指南してあげるって」ラ「えっ?」
6:モルツォ・グァッツァの料理を食べる機会を得た
7:秘伝のスパイスを完成させる
8:安い食材で三ツ星レベルの料理を作り上げた
9:わずか一日で実力が上がった
10:【1D2:1】(1.クリティカル 2.ファンブル)
【1D10:9】

作者:あっぶえクリってたら全乗せするしかなかったぞこれ……!


鍛えなおしたランチラッシュの料理の実力(評価値):42+【1D58:58】←デデーン


作者:加 減 し ろ 馬 鹿




みんな。安易にダイスを振って内容を決めるのは、ダイスに振り回される覚悟がある時だけにしようね。いや本当に。じゃないとエネル顔になっちゃうし更新遅れるし話も進まないし最悪プロット死ぬ可能性もあるよ。

Q:なんで豪〇?
A:引っ越しの整理中に発掘したリュウファイナル読んだから。

Q:ランチラッシュずっとこうなるん?
A:次回には戻ってるのでご安心を。


【誤字報告】

エビ+Cさん。 slothful-somaさん。 zzzzさん。

誤字報告ありがとうございました。
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