My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
その度誤字脱字があったらと気になり読み直しては加筆修正して更新が遅れる負の連鎖。
徐々に増える評価とお気に入りと感想に感謝の念が絶えません。皆様ありがとうございます。
僕、緑谷出久は混乱していた。それもそうだ、今僕の手から血が紐状になって飛び出して、それが人に巻き付いているのだから。
いや、人に巻き付いてることに関してはこの際かまわない。命の関わる緊急事態にこの血紐によって二人の命が救われたのだから。
問題は、何故僕が血を動かせているのかだ。
多分これは斗流血法の技術に近いと思う。ザップさんの扱う流派は血を操り形作る技術。武器を作るだけじゃなく、糸のように細く伸ばす、結界を張る、手足や臓器の代用を作るなど汎用性が限りなく高い。そのうえ彼は自分の血に火の属性を付与し、それに関する技も扱える。
しかしだからといってその流派を習えば簡単に操作できるわけじゃない。ザップさんでも自在に形どるのに一年以上かかったと言われる。あの感覚の天才ともいえるザップさんがだ。属性にしてもある程度適正も必要で、なければこの技の真骨頂に辿り着けない。
ちなみにスティーブンさんやK・Kさんの血闘術は適正だけじゃなく血自体にも特殊な施工が必須で、血液に
そしてクラウスさんの滅獄の血に至ってはかなり厳しい使用条件があり(内容は極秘機密と言われ教えてもらえなかった)それを十全以上に扱えるクラウスさんという存在は、直感で石油を掘り当てるという天文学的レベルと同じ扱いをされているとかなんとか。
そして僕には血法の適正はあれど低かった。属性の適正もなく、血液操作は出来るとしても十年以上かかると言われた。異界人故に身体の構造が多少違うという理由もあるだろうけどそれはないだろと、僕はそこでも絶望した。
しかしどうだ?今僕は血液操作が出来ている。とは言っても冷静になってからはどうやればいいかわからず、今は動かすことが出来ずに二人に巻き付いたままだけど。
一応突然変異や実はものすごい適正があったとか、そんな都合のいいことも考えられるだろう。なにせここは
ただここひと月の間に僕は身体に異常をきたしてないし、輸血するような事態になってもいない。だからこの可能性はおそらくゼロだと思う。
じゃあいったい何なのか……そう考えだした時、一つの可能性を思い浮かぶ。
「……もしかして、個性の発現……?」
一つの可能性にたどり着いたが、大量のフレッシュゴーレムが押し寄せてきたことによってそこで思考は中断される。
しまった、ザップさんがこっちに来たことで穴を埋めるのがK・Kさんだけになっていたのだった。よく見れば警察も半壊状態。K・Kさんも後退してきており、このままじゃ今度はここが戦場となる。
でも先ほどより恐怖はない。ザップさんとK・Kさんが近くにいるからだけじゃない。あの二人も到着したのだから。
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二つの影が現れた刹那。ゴーレム達は複数の小さな血の十字架と氷槍を纏った蹴りに貫かれ機能を停止した。
それに続くように斬撃と銃弾の嵐が殺到し、こちらに迫っていたゴーレム達は瞬く間に一掃される。
「すまない三人とも、遅れてしまったようだ」
「さきほど警察の応援も到着した。一息ついたら我々も反攻に加わるぞ」
「ちょっとスティーブン遅れすぎじゃないかしら?私やザップっちはともかく、イズクっちはただの子供なのよ。もうすっごいボロボロになっちゃってるじゃない」
「いやしょうがないだろK・K。あちこちで同じようなテロが起こっていたんだ。僕らも急いでたんだぞ?」
先ほど現れた影はクラウスさんとスティーブンさんだった。どうやら予想通り同時多発テロだったらしくそれらを虱潰しに鎮圧していったらここが最後になってしまったらしい。最後まで救援が遅れたのは偶然かザップさん達がいたからか。なんにせよ合流出来て安堵する。
「まあそれはそれとしてだ……少年!」
「は、はいっ!」
「その人たちの救助に戻ったんだろうが、それは君が無理をしてでもやるべきことじゃなかったはずだ。揃ってザップに助けられたようだし、これに懲りて後先考えず走り回るのは控えてくれ。
君が死ぬとクラウスも悲しむ。それだけは忘れてくれるな」
K・Kさんとの話を中断して淡々と僕を叱るスティーブンさん。ザップさんからも似たことを言われてるし、誰から見ても僕は猪突猛進なところがあるのだろう。
ただ一つだけ訂正するべきところがある……けれどそれはザップさんが先に告げてくれた。
「すんませんスターフェイズさん。一つ訂正があるっす。……その血糸、俺じゃなくてそいつが出してんすよ」
「はあ?…………………………はあっ!?」
ザップさんに告げられ血糸を辿り、そして僕の手のひらから出てきているのを確認するや否やスティーブンさんは驚愕に目を見開いた。
「ま、待ちたまえ少年、それじゃあなんだ?君は、練習もなしにぶっつけ本番で血液操作を行ったというのか!?火事場の馬鹿力?いやそんなものですぐに操作できるものじゃないぞ!?」
「ぼ、僕もなぜこうなったのかよくわからないのですが……可能性があるとすれば……突然個性が発現したとかでしょうか……?」
「個性……か。確か君の世界で幼年期に発現すると言われた特異体質か……。何故今それが発現したのかわからないが、とりあえずその話は後だ。君は急いでその人たちと一緒に保護してもらいに……」
僕関係で問題が増えたことに頭を抱えたそうにしているスティーブンさんが指示を送る。だがその指示を遮るようにクラウスさんは手を出して、僕の下へ来て、膝を折った。そして僕と親子を交互に見つめ、口を開いた。
「イズク君。本来ならば早くあの地獄のような場所から離れたいというのに我々の到着が遅れたことを謝罪をしたい。すまなかった。
……ただ気になることもまたある。君は何故、あの時戦場へ戻ったんだね?死ぬかもしれないとわかっていただろうに」
僕に頭を下げるクラウスさん。そして頭をあげて、今度は質問を投げかけてきた。
確かに疑問に思っても仕方がない。僕も最初はわからなかった。だが落ち着いた今。拙いながらも答えは出ている。
「自分でも最初はわかりませんでした……。殺されかけて、ザップさんに自分の無力を諭されて、心がぐちゃぐちゃになって……」
嫌というほど喪失感を味わった。抵抗を覚えながらも無理矢理に身体を動かして必死で逃げた。そしてこの親子を……見捨てようともした……。
「でも……この子の顔を……救けを求める顔を見て……。
そしたら今まで心の中で渦巻いていた何もかもどうでもよくなって……考えるよりも先に救けに向かっていました……」
そして走りだして、自問自答して、思い出した。
オールマイトのように涙を流し苦しむ顔を笑顔にする。そんな最高のヒーローになりたい。僕の
クラウスさんは僕の答えに目を見開いたかと思えば瞑目し、そっと口を開いた。
「イズク君。皆の言う通り、本来なら君がその二人を助けるために向かったところで、助けるどころか二次被害を生みだしていた可能性もある。君の行いは蛮勇であり。決して褒められたものではない」
「はい……」
「……だがそれと同時に、誰もが己の命を守ることで精一杯のこの戦場で、ただこの子を救うべく死地にすら飛び込んだ君の優しさと勇気は、人間にとって決して失ってはいけない魂の輝きだ」
「……え?」
クラウスさんからも叱責を受ける。そう思っていた僕にとって、クラウスさんのこの言葉は予想外だった。
「イズク君、一つ改めたまえ。君は無力なんかじゃない。誰かのために死地を横断し、己の秘められし力を引き出す奇跡を掴み取り、果てにはかけがえなき二人の命を救ってみせた。そしてその行いは、私という人間の心を焦がし、魂を震わせた」
「………ッ!!」
「胸を張りたまえイズク君。君の高潔なる優しさと勇気に、私は心から敬意を送りたい」
生まれて初めてだった。
怖がりながらも誰かを助けようとする僕に対する周囲の声は、呆れと嘲笑で塗り潰されてきた。
幼いころから掲げていた夢は、涙と謝罪で濁されてきた。
だからこそ今正面から放たれた、裏のない純粋な賛辞は、僕の奥深くにまで染み渡り、黒く沈んでいた心に光が差し込むように感じた。
嬉しかった。自分の行いが報われたことに。
救われた。この人の心からの賛辞に。
僕の両目から涙が溢れてくる。だけどその涙は心を蝕む痛みの涙ではなく、澱んでいた心を洗い流すように、とても心地よい涙だった。
「ありがとう……ござい、ます……!」
「感謝するのはこちらの方なのだよイズク君。
……さて、そろそろあれをどうにかせねばならないな」
立ち上がり振り返ったクラウスさんの視線の先には、応援の警察と無限沸きかと思わせるほどの大量のフレッシュゴーレムが激突している。
こちらはと見ればみんな十分に休憩を取ったからか、調子は万全のようだ。
みんながこれから反攻に出ようとするなか、クラウスさんは僕にひとつ提案を出した。
「イズク君。君の発現したその個性とやらは、世界の均衡を守る戦いに大いに役立つやもしれない。我々の戦いは命の危険が常に隣り合わせにあり、いつその命を落としてもおかしくなく、また友や守りたい人を失うことも珍しくないほど過酷だ。
……しかし、その困難に屈することなく光に向かって歩み続け、君が人々を、果ては世界を救わんとするなら―――我々は君が強くなるための力になろう。だからどうか我々にも、君の力を貸してはくれぬだろうか?」
優しくも力強く、そして真摯に語りかける言葉に僕の心は熱くなる。僕のためにここまで言ってくれたんだ、答えなんて決まっている。
「今の僕は弱いです。それこそすぐ死んでも全然おかしくない程……。それでも僕は守られるだけのままでいたくない……!例えどんなに厳しくても、どんなに耐えがたい苦しみでも構いません。僕は仲間を、みんなを、世界を守れるヒーローになりたい!
だからお願いするのは僕の方です。必ず強くなってみせます。僕に力を貸してください……!」
「承諾した。改めて、ようこそライブラへ。我々は君を『同胞』として歓迎しよう」
同胞―――その言葉はもはや僕を保護対象としてでなく、一介の構成員として認めてくれたという証だ。また心の底から何かがこみ上げてくる。しかし今はその感傷に浸る暇はない。
「さて、早速で悪いがイズク君は私とチームアップだ。これから我々はあのゴーレムを生み出す元凶を討ちに行く。役割は元凶を穿つ矛としてスティーブン、ザップ、K・Kを。奴らの一切を通さぬ盾として私が抑える。
そして君はまず、私の後ろでこの戦いの行く末を見届けてくれたまえ」
「わかっ……いや、待て待てクラウス!確かに君の技は守りにも強いがそうするくらいなら少年たちを保護してから突撃すればいいだろ!なぜわざわざ一人で防衛をするんだ!?」
作戦、とも言えないことを淡々と告げるクラウスさんに案の定スティーブンさんが抗議する。ザップさんもK・Kさんもこれには呆れている。
「新人を現場の空気に慣れさせるのは必要ではないかスティーブン?それに一人じゃない。私の背中はイズク君に守ってもらうさ。
それに、今の私はすこぶる調子がいい。16分40秒、それだけ保たせてみせる。その間に元凶を斃してくれ」
「…………もしかしてあの時の10倍かい?まったく君って奴は、気にするなとは言わないがいちいち考えるべきじゃないぞ……。
少年!君は本当に運がいい。君は向こう1000秒間、この世界でもっとも安全で盤石を約束された持ち場へ配置だ。今はそこで彼を見守りながら現場の空気に慣れたまえ!」
呆れたような、諦めたような、でも嬉しそうな顔をしたスティーブンさんはそう言うと準備を始める。僕もクラウスさんについていこうとするとザップさんがこちらに向かってきて、僕の血を操作して母子に絡みつく血糸を解いた。
「ほれ、とっととそいつらを警察に保護してもらえ」
「え、あ、ありがとうございます」
「早くしろ、俺らはすぐにでも突撃すんぞ。
……まだ納得はしてねえがあんな啖呵切って組織に入ったんだ。無様な姿晒して旦那を危険に晒すんじゃねえぞ」
「……ッ!もちろんです!クラウスさんの背中はぼ、僕が守ってみせましゅ!!」
「噛まなきゃもうちょい様になったが、まあ見れた顔になったから良しとしてやるよ」
ニヤリと笑ったザップさんはそのまま元気よく突撃していく。あんなに酷い怪我をしていたのにもう元気に動き回ってる。本当に軽傷だったのかそれとも怪我を忘れてるのか?そんな余計なことを考える程度には心に余裕が出来たことを認識出来た。
親子を警察へ保護してもらい、今度はそのままクラウスさんに背負われ戦場へと向かう。
……間もなくあの凄惨な現場の前線に僕は出るだろう。恐いのは変わらない。でもそれとは別に安心感もある。
「ところでイズク君。先ほどの君の言葉だが、一つ訂正するべきだ」
今僕はもっとも揺るがない要塞のような背に、守られているのだから。
「君はヒーローになりたいと言ったが、それは違う。―――君はすでに、あの親子にとっても、私にとってもヒーローなのだから。
挫折を乗り越え諦観と決別し、君は止めていた足を再び光に向かい動かし始めた。その決意は正に、絶望を打ち破り突き進む
……ああ、あなたは僕のことを高潔だと言うが、高潔なのはあなたの方だ。なにせこの人は言葉一つで僕の心に何年も巣くっていた闇を打ち砕き、光を照らしてくれたのだから。
僕たちは目的の激戦区へ出た。クラウスさんは真っ先に周囲へなだれ込むゴーレム達を防壁を築き誘導。戦いになるや殴り潰そうとする一撃を逆にひき潰し、複数で迫れば小さな十字架をばらまき穿ち、一体も通すことなく打ち倒していった。
ただひたすら迫り来るゴーレムを通さぬよう倒し続けていくと、突然すべてのゴーレムが動きを止め、塵になって消滅を始めた。消滅するゴーレム達の向こうから3人が歩いてくる。元凶を討ち、召喚を止めたのだろう。
16分耐えるといった戦いは、突撃してから10分も経たずに終わったのだった。
クラウスの言い回し考えるの超難しい……難しくない?
【誤字報告】
怪猫蜜佳さん。ザルバさん。ちはやしふうさん。猫びいきさん。
誤字報告ありがとうございました。
ここに来て大量の誤字報告……俺だったら見逃しちゃうね……!と誤魔化しつつも感謝致します。