My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~ 作:もっぴー☆
はい、年末ですし今年最後にもう一話更新を……と思いましたがチーム選びが難航してるので再びお茶濁しの幕間、という名の「本編に入れたかったけど入れたら長々と蛇足になっちゃって削除したけど割と気に入ってるからどこかで出したい」と寝かせていたお話です。前も言ったなこれ。
時系列は45話の修行初日後のお話です。そしてお風呂回です。おら喜べよお前ら男しか出ねえがな!!
カポーンと、独特の音が広々とした空間に鳴り響き、俺たちの耳に反響していく。
「はぁ〜……いい湯だね二人とも〜……」
「今回だけはテメエに共感してやらぁ……」
右を見ればそこには蕩けた顔の緑谷がおり、左を見れば眉間の皺が幾らか取れてる爆豪がいる。そして俺は二人に挟まる形で湯に浸かっていた。
念の為言っておくが三人揃ってあの世で地獄の釜に煮られてるわけじゃないぞ。爆豪はまだ三途の川を渡ったことねえし俺はそもそも天国行きらしいし。
んじゃあどういう状況かと言われたら……まあ最初の音でわかる奴はわかるだろうが銭湯にきている。
なんで銭湯なんだと聞かれたら、緑谷が修行の後に行くつもりだったらしく、よければ一緒にと誘って来たからだ。
汗を流したかった俺は別段断る理由もないし、なんだったら修行の飴と三途の川の詫びを兼ねて奢るよと、回数券を渡してきたので遠慮なく付いて行くことにした。
ちなみに替えの服は予め持ってきている。修行で汚れるのは想定していたからな。……血まみれになりそうだったのは想定外だけど。
「うー、痛ぇ。修行の生傷が沁みる……」
「でもこの沁みる感覚もまた心地よくあるよねえ……」
「……まあ頑張ってる証拠と思えば一理あるか?
しかし回数券を出してきた時は驚いたぞ。それも何枚も。お前風呂が趣味なのか?」
「ん〜……そうとも言えるかな。昔は人並みだったんだけど、
「向こうって……ニューヨークか」
蕩けた顔でそうだよと返す緑谷。ニューヨークには俺等の知るような風呂文化はなく―――そもそも日本の風呂文化が世界から見ても稀有なんだが―――向こうはシャワーで汗や汚れを落とすのが一般的で、バスタブがあるにはあるが身体を温めるのに向いてないとのこと。ちょっとしたカルチャーショックを感じる。
「僕らの知る銭湯なんてないし、スパは温水プールやサウナとか娯楽類ばかりだし、当然水着着用義務があるし、サービス豊富だけど高いんだよね……。*1
師匠との修行時に自然に沸いた温泉が見つかれば御の字程度にしか入ることなくて、
おかけでこっちに帰ってきて我が家のお風呂に入った時は感無量だったなぁ。そうそうこれだよって思いながら長風呂してたら気付けば三時間経過してて母さんたちを心配させたり……。そんなこともあってか反動でお風呂が好きになって、スーパー銭湯にもよく行くようになっちゃったや。
しかもこの場所だけど、なんとここは湯治ヒーロー・アリーマンが経営しててね、彼の個性である源泉を駆使した、色んな効能を持ったお風呂を提供してくれるんだ。これは入るしかないでしょ。今僕らが浸かってる湯もそうで効能は切り傷、打撲、腰痛、冷え性、肺炎、結核によく効くらしく修行で出来た怪我の治療に最適なんだよね。……前半はともかく後半とんでもない効能してない?そのうち症例の少ない難病にも効く効能とか生まれて革命がおきそう。そしてよからぬ組織が悪用するべく個性誘拐とか起きたり……?こっちは思想が向こうほど過激じゃないけど、なにが化学反応を起こして世界を震撼させる怪物が生まれるかわかったもんじゃないし。……危ういバランスの中日本の年間犯罪率を六%まで抑えこむことに大きく貢献してるオールマイトもある意味時代が生み出した怪物ともいえるのかブツブツブツブツブツ…………」
「うるせえ静かに浸かれ」
外の風呂事情を話したと思えば途中からヒーローの話になり、さらに物騒なワードが所々出てきてブツブツ言い出した。当の本人は蕩けた顔で言ってるせいでイマイチ危機感が感じにくいな。つか小さくオールマイトを怪物呼ばわりしてなかったかコイツ?命知らずか?命知らずだったわ。
(……しかし……)
風呂を堪能しながらも俺は緑谷に目を向ける。
蕩けた表情を晒す緑谷だが、その身体には無駄な筋肉がなく厳のような身体をしている。理想的な戦士の肉体って言うのだろうか、これで修行前は俺以下のヒョロヒョロだったってんだから驚きだ。……まああんな修行を続ければそうならざるを得ないんだろうけどよ。
あと何がとは言わねえがデケえ。人好きにする顔しといてこんなご立派様隠し持ってるとか反則だろ。
ついでにいえば爆豪もデケえ。こっちはこっちでガタイがいいのも相まって納得の凶悪さを感じる。例えるなら緑谷がマグナムで爆豪がデザートイーグルか。
……おかしいな、俺も平均くらいあるのにすげえ肩身が狭く感じる。なんで俺コイツラの間に挟まって風呂浸かってんだろ。
「ちょっとサウナに行ってくるわ」
「サウナ行く―――あ"っ?」
何故か押し寄せる敗北感から逃げるようにサウナへ向かうべく立ち上がり―――ほぼ同時に爆豪も立ち上がっていた。お前もちょうどサウナに向かうとかタイミングバッチリかよ。ちくしょう敗北感から逃げられねえ。
ここでやっぱいいやと行って浸かり直しても爆豪が怒るだけだし、向こうも引く気はなさそうなので肩を並べてサウナに向かう。緑谷はまだ浸かるらしく、俺達二人を蕩けた表情で送り出していった。
「…………」
「…………」
それからサウナに揃って入ったんだが……やべえ、緑谷ならともかく爆豪とはあまり喋り慣れてねえから切り出し方がわからねえ。沈黙がちょっと気まずいぞ。
なあ爆豪、なんかうまく話題引き出してくれねえか?ヒーロー科ってそういうのも習うんじゃねえのか?……おい無視すんなよ。そんで俺ら以外いないからってサウナ石に水かけて湿度ガンガン上げないでくれ。熱気がすごい。
「おい隈目、テメエヒーロー科の試験受けたのか?」
「え?あ、ああ」
意図を汲んだのか、爆豪が声をかけてくれた。不意打ち気味の質問に俺は少し気の抜けた返事で肯定する。まあ個性と試験の相性が悪く、結局逃げ回ってばかりで結果を出せず落ちてしまったけどよ。
「はっ、テメエの地力じゃ相性良くてもいけたと思えねえがな」
「うっ」
爆豪の返しにイラッとするが図星だから何も言い返せねえ。確かに俺の実力じゃあのロボットに個性が効いても壊せるかと言われたら……無理かもしれねえな。ちょっと衝撃を加えたら個性が解除されちまうし。せめて緑谷みてえな実力があれば……待て待て、最低基準をアイツにするな俺。
「……あのアホの修行に付き合えてけるならワンチャンあるだろうがな」
「え?」
「せいぜい足掻けやっつったんだよ文句あるか」
そう吐き捨てると爆豪は誤魔化すようにタオルで熱気を送ってきた。とりあえずお前の発言には文句ねえが行動には文句を言わせろ。仰いで熱波送ってくるな熱い熱い。
説得したら舌打ちひとつ打ち、やめて座ってくれた。やめてくれたのは助かるがなんで舌打ちすんだよ……。
「……デクから聞いたが、テメエの個性洗脳なんだってな」
かなり暑くなったサウナ室で項垂れながら汗を流してると爆豪が再び声をかけてきた。まだコイツには教えてなかったはずだが、どうやら緑谷から又聞きしたらしい。
「なんだよ、お前もこの
「ケッ、んなもん知るか。テメエが
「……そうかよ」
そう思ってるなら、か。こんな個性だ、同級生から度々
……ただ、な。
―――すごくもったいない個性だ―――
―――強いね心操君。僕なんかよりもずっと強い―――
―――君は間違いなくヒーローになれる―――
「前はともかく最近は……あいつに関わってからは自分の個性でグチグチ考えんのも馬鹿らしくなったかな」
「……そうかよ」
あいつに真っ直ぐ言われて、真っ直ぐ受け止めてくれてから、驚くほど過去の言葉が気にならなくなった。
確かに洗脳なんてこええ、
そんでいつか言ってやるんだ。お前らがビビってた俺の個性はこんなに頼りになる、
「まっ、まずは体育祭でいい成績残さねえといけねえんだがな。そのためにもこの修行は絶対乗り切ってやる」
握る拳を見つめて改めてそう決意する。サウナとはまた違う熱が、身体に宿ったような気がした。
「チッ、あのアホデク、厄介な奴に火つけがって」
「なんだって?」
「ぶっ飛ばす奴が増えたつっただけだ」
ぶっ飛ばすって、本人の前で容赦ねえなコイツ……。修行中はあんなにフォローしてくれてるのに。
まあ普通科の俺を路傍の石じゃなく倒す相手として見てくれていると思えば悪い気はしねえ。前向きに捉えておくか。
「……おいっ」
「なんだよ?」
「テメエがどんなヒーロー目指すは知らねえし興味ねえがひとつだけ、これだけは約束しろ。
クソデクみてえなヒーローにはなろうとか参考にしようとかぜってえ思うな」
「はっ?そりゃどういうことだ?」
突然の釘刺しに顔をしかめてしまう。緑谷みたいになるなって……いやまあ拷問や処刑みてえな修行を笑顔でしてくる点は見習いたくないが、それを抜けばアイツはアイツでヒーローとして理想的な心持ちをしてると思うんだがな。参考に―――
ガシャーーーーン!!
「!?」
「おいテメエら動くな!一歩でも動いたらぶっ殺すぞ!!」
爆豪から理由を聞き出そうと口を開きかけた時、外では急展開が起き出したようだ。
◆◆◆◆◆
突如固いものが破壊される音と水が盛大に溢れる音がサウナの外から響き、ざわめきの後男の焦りと怒りが混じった声が聞こえてきた。
「チィッ男湯か。贅沢言えば女がよかったがまあいい、ここなら……!」
「ようやく追い詰めたぞ
「チッもう来たか!」
会話からしてどうやらヒーローに追われてた
「だが残念だったなヒーロー共。天は俺に味方したようだぜ!
テメエら近づくんじゃねえ!このガキの命がどうなっても知らねえぞ!」
そう言うや客の悲鳴が聞こえ、なんて卑怯なと怒気の籠った声が聞こえた。どうやら
心操は人質を取られた事態に焦りを覚える。銭湯なんて人がもっとも無防備になる場所で、しかも現場慣れしていない一般人が犇めく場所だ。追い詰められた
「おい爆豪これ不味いんじゃないか!?」
「あのアホがやらかさねえか心配だがな。クソッ、今どうなってんだ」
二人はサウナ室をそっと開け外の様子を窺った。
そこに映ったのは数人のヒーローが
その光景に爆豪は目を細め心操に話しかける。
「……おい隈目」
「どうした爆豪」
「風呂上がりに飲む牛乳なんにするか考えとけ」
「は?」
この状況で何いってんだと心操は困惑。しかしそんな心操の心情など知ったことかと爆豪は指を指し言葉を続けた。
「あのアホに奢らせる」
指を差し示す方へ顔を向ける。そこには目からハイライトを消し、これでもかと大きなため息を吐く緑谷が立っていた。
乱入してきた
さて、ここまでこの作品を読んでいる読者諸君ならもう察しただろう。この後の展開を。
「ふんっ」
「おごっ!?」
緑谷の肘鉄が
そうして抜け出した緑谷は下がった
「そぉいッ!!」
「ガボッ!!?」
力を込め一気に風呂の中に
「ガボガボガボガボガボ!!」
「はーい公衆浴場では静かに頭まで浸かりましょうねー」
「ガボガボボォッ!!?」
いや無茶なとでも言ってるのだろう、
しかし抵抗するも依然動く気配はない。そりゃあそうだ。今
しばらくすると酸素が切れたか抵抗が薄くなりだしていく。気泡もほとんど出ていない。
そしてもう数秒すれば意識を失うだろうその時、緑谷は押さえる力を弱め
「ブハァーッ!スゥーハァースゥーハァ―――……!死、死ぬ、死ぬかと思った……!」
必死で酸素を取り入れる
しかし緑谷は必死で息をする
「ちょ、ちょっと待て!まだ息継ぎさせガボガボガボガボ!?」
再び湯に沈められる
そろそろいいかなと思いだした緑谷は再び押さえる力を弱めて湯舟から開放する。再び必死で呼吸をする
「
水攻めを後十セットしてから窒息させられるのと大人しく自首して捕まるの、どっちがいい?」
天使のような、悪魔の如き笑みを向け、そう提案するのだった。
緑谷出久、割とガチ目におこである。そりゃあせっかく修行帰りにお風呂を堪能しているところを襲われ台無しにされるだけでは飽き足らず人質にされたら怒るのも仕方がない。
さらに施設が一部破壊されているから間違いなくこの後お店は臨時休業に入るだろう。
せっかく友達ときたのにこの結果はあんまりだ。だれだって怒る。クラウスでも怒ると思う。
「…………………………おなわにつきます」
こうして無事解決した
そんなんだから変な異名がつくんだぞお前。
「いいか隈目。ぜってえアイツみてえなヒーローになるなよ。これ以上お守りが増えんのはゴメンだ」
「なれねえしなりたくねえよ」
心操のクソデカ即答に爆豪は内心安堵したのは言うまでもない。よかったね。
※この後例の如く説教を受けたし慣れた所作で土下座したし手慣れすぎててヒーローが戦慄したりした。すいませんねうちの悪鬼菩薩が。
・湯治ヒーロー・アリーマン
突然湧いたオリヒーロー。名前の由来は有馬温泉から。おそらく二度と出ない。
・お風呂回なのにトガちゃんいねえぞふざけんな!!
個性でモブ男に変身して緑谷を堂々と覗き見してるから見かけねえだけさ!嘘です普通に女湯にいます。
変身しても緑谷にすぐ見破られてお説教されるだけなので大人しくしてます。結果緑谷の逆転劇を見逃してしまい頬を膨らませて拗ねてます。カァいいね。
【誤字報告】
雪森さん。 昼間から夜食さん。
誤字報告ありがとうございました。