My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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知らないうちに総合日刊ランキング12位に入っている事実にUA1万突破の喜びが吹き飛んだので第六話です。
まさか自分の稚作がこんなに評価を頂けると思っていませんでした。皆様本当にありがとうございます。


第6話:何ですかポポロパッペロって!?

 拝啓、母さんへ。元気にしていますか?僕は今日も必死に生きてます。

 先日の事件は僕の心に一生残る一件でした。死にかけたり個性が発現したり賛辞を受けたり戦場に突撃したり……名も知らない誰かの命を救ったり。

 

 母さん、僕はもう迷いません。今度こそヒーローを目指します。

 個性が発現したからじゃない。あの戦場で人の命を救ったあの時、僕はクラウスさんに言われたんだ。君は既にヒーローだと。あの言葉は10年間鬱屈していた僕の心を救ってくれた。

 今までロクに鍛えてこなかったからまだ力はないけど、それに関してはアテが出来たので問題はありません。長く苦しい修行になるけれどそれでも僕はなってみせるよ。オールマイトみたいなみんなを笑顔にする、クラウスさんみたいな高潔な魂を持ったヒーローに。

 

 さて、そんなわけで気持ちを新たにした僕ですが、今どこにいるかといいますと―――

 

 

 ギャアーッ!ギャアーッ!

 

 アオォーン!

 

 ぐるるるるるるぅ……

 

 ポポロパッペロオオォォォォッ!

 

 「おーい陰毛あーたまー、はーやく来ねーと置いてくぞー」

 

 「待ってくださいザップさん!ここで置いてかれたら秒で食べられちゃいますよおおおおおお!!!?」

 

 

 某所の奥地も奥地、秘境どころか魔境とも呼べそうな場所に足を踏み入れていました。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 遡ること一週間前。あの戦いの後、僕はスティーブンさん達に連れられ身体の検査をしていた。そして数日して僕の個性について判明したことがあるらしく、皆に知らせるため会議室に集まったのだった。

 

 「あれから少年の身体を調べてみて驚くべきことがわかった。これを見てくれ。この遺伝子は我々の中には存在しない、彼の身体の細胞にのみある所謂個性因子と言うやつだ」

 

 そう言って映し出されたのは電子顕微鏡の拡大図。その中で映し出された僕の個性因子と言われた塩基配列だった。

 ……本当に僕の中に個性因子があったのだ……これがどれだけ嬉しいことか、この拡大図を見せられただけ涙が出てくる。本当にすぐ泣きそうになるな僕。この泣き癖も直していかないと……。

 

 「少年、泣きそうなところ悪いが続けるぞ。まあそんなわけで少年から個性因子というものが突然……いや、個性因子自体は元からあったのかもしれないらしい。

 仮説でしかないが、個性因子というのは個性発現前はほかの遺伝子と似た姿をしていて見分けがつかないが、本来君たちはみな個性因子を保有しており、4歳頃になると自分の定義が確立され、細胞内の個性因子が活性化、本来の姿に変化し過去の遺伝子情報の精査を始める。それに合わせるように因子はさらに形を変え個性が発現される。その場合差異はあれどだいたいは親から受け継いだ遺伝子を元にした個性が出るだろうし、時たま先祖返りなんかもあるかもしれない。

 そして少年の言う無個性と言われる人たちは活性化するための個性因子が極端に少なく、それが原因で個性が形作られることがなかった。要はアルビノと同じだ。メラニン色素がなくて白くなる、その遠戚とでも思ってくれ。

 

 そして発現しない場合無個性になるのではなく個性が決まっていないだけで個性因子自体は休眠状態であり、活性化するのを待ち続けている。そのうえで君はこの世界に転移する時に未完成だった術式の魔力に充てられそれが偶然にも因子が活性化、個性が発現する土台が出来上がったが、過去の遺伝子情報を参照するにも突然の環境の急変や活性にまでの十年以上の経過時間、魔力という未知の情報のせいでどういう個性を発現するべきかわからない状態になり、そこへ少年は同時多発死霊術事件でなんらかのきっかけを得て個性が発現した。それも少年の親と何ら関係しない個性がね。

 

 とまあ長々と話したが結局これは全てただの仮説だ。本当にその結果発現したかも、とか変に考えるなよ?サンプルが彼しかいない以上情報を集めるのにも限度があるし、なによりここはH・L(ヘルサレムズ・ロット)だ、それこそどんなことが起きても不思議じゃないんだ。

 さて脱線してしまったな、話を戻すぞ。そんなわけで彼はめでたく個性を発現したのだが……これがまた恐ろしい事が判明してしまってな」

 

 「恐ろしい事っすか?」

 

 「ああ。みんなも知っての通り彼は異界人だ。姿形は同じだが中身が違うからかわからんが血法に対する適正が低く、どう頑張っても実用的な行使は何十年も修行しないと無理だと判断された。なのに今彼は出し入れ程度の操作なら出来るようになっている。……最初は発現した個性がそういう能力だったと思ったんだが……この血にある事が確認されてからそれは違うとわかった」

 

 「ある事?」

 

 「ああ―――

 

 

  少年の血液に火属性が付与されていたのだ」

 

 「「「!?」」」

 

 瞬間、部屋にいるみんなの顔が驚愕一色になる。普段からリアクションが大きいザップさんはともかく、チェインさんやK・Kさんもここまで驚くのは相当のことだろう。クラウスさんは……驚いてない。多分先に報告は受けてるのだろう。

 しばらく沈黙が続き、確認を取るようにチェインさんが口を開いた。

 

 「彼は今血を操れるだけじゃなく、この銀猿のように火も扱えるってことですよね?」

 

 「まあそうなるな」

 

 「おいこらいちいち罵らねえと喋れねえのかメス犬」

 

 「血液操作に火属性、これが先の戦いで発現。そしてこの猿がミドリヤをかばって負傷したり彼の救助行動。……ちょっと話が出来すぎてますが操作能力のきっかけはこの猿が?」

 

 「大方正解だ。今度はこれを見てくれ。彼の細胞を用いた実験映像だ」

 

 今度は細胞の映像が映される。ザップさんは無視されたからか拗ねてるが放っておく。

 次に映像の外から別の細胞組織が現れる。すると僕の細胞が別の細胞に近づき取り込んでしまった。ここまでなら細胞として当然の動きだが驚いたのはその後だった。

 なんとすぐさま変異を始め、瞬く間に別の細胞になったのだ。

 

 え!?細胞って普通こんなに早く変異するものなの!?驚いていると他にも映像が映される。

 あるものは自分より小さな組織をまるで食い荒らすかのように次々と取り込み、またあるものは自分より大きな組織を時間をかけて取り込んでいき、他にも複数同時、むしろ先に取り込もうとする組織すら取り込み一様にすぐさま変異していった。

 

 「さて、今のは適当な動物の細胞、毒素の強い植物、少年とは違う型の血液、癌細胞などを少年の細胞と混ぜたものだ。それらを取り込んだ細胞はすぐさま変異、作り替えた。動物ならおそらくその特性の一部を、毒素は耐性をつけ、違う型の血液は何事もなく取り込み、癌細胞に至ってはなんと増殖で上回り逆に押しつぶすように取り込んだ。

 そのうえで彼の細胞への拒絶反応などといった悪影響は……ゼロだ」

 

 ゼロ。普通細胞を取り込んだら何かしら悪影響が及ぶものもある。特に今回は毒草や癌細胞といったちょっとシャレにならないものまである。だがそんな危ないものまで取り込んだというのに細胞がやられるどころか逆に喰らって耐性を付けている。あまりにも僕に都合よく作られるこれが……僕の個性……。

 

 「わかった者もいるだろう、少年の個性は取り込んだものを侵食し、自分の都合のいいように作り替え適合させる個性……名前を付けるなら「適合」か「進化」と言ったところか。

 血の操作が出来たのはザップの血を取り込んだことによって斗流の火属性術式が彼の身体に適合するべく変異した副産物だろう。恐ろしい個性だよまったく」

 

 「確かに恐ろしい力っすね……そりゃあ俺のとこの流派(斗流)は修行次第では誰でも会得可能って言われてるっすけど、それでも操作は年単位、属性付与に至っては適性がなけりゃどうにもならねえ。それがこうも簡単にされるとずるいっつーかなんつーか」

 

 「違うわザップっち。確かにイズクっちの個性っていう能力はそのあたりの過程をすっ飛ばせる分とてつもないアドバンテージでしょうけど、本当に恐ろしいのは彼の因子よ。

 考えてみなさい、数日の調査だから詳しくはわかんないでしょうけど、もしこの個性因子の情報が流出、因子保有者のイズクっちを誘拐して実験。その結果個性因子の抽出、移植技術なんてものでも出来ちゃったらどうする?」

 

 「……どこまで出来っかわからねえけど、毒も効かねえその気になれば極地でも生存可能、まがい物でも簡易的に血法が使える人造人間……いや、うまくいけば好きな力を発現させる、なんてことも可能になってくるかもしれねえってことか?」

 

 「ご名答。それも究極的には血界の眷属(ブラッド・ブリード)もしくはそれに近い力なんか発現した日には目も当てられないわ」

 

 ごくりと、誰かの喉から音が鳴った。

 血界の眷属(ブラッド・ブリード)。古くから伝承で知られる吸血鬼にしてライブラとその母体である牙狩りにとって殲滅すべき不倶戴天の敵。その力は強大で上位の存在は完全な滅殺はほぼ不可能で、クラウスさん達でも撃退することが精々らしい。もしもそんな規格外な存在が簡単に増えるような事態になったら、あっという間に世界は不可逆の混沌に陥るだろう。いや、仮にその血界の眷属(ブラッド・ブリード)達が統率を持って動き出すようなことになったらどうなる?例えば軍のように精鋭部隊みたいな感じで……そうか血界の眷属(ブラッド・ブリード)を兵として量産する計画なんて可能性も考えられるのかそうなると軍事バランスは瞬く間に崩れてしまう下手したらそこを起点に第三次世界大戦なんてこともあり得るのかそうなるとやっぱり僕自身捕まるようなヘマをしないように鍛えなければならないのかどんどん強くならないといけない理由が増えてくるなでも僕自身が原因で増えるのは勘弁してほしいようひぃーブツブツブツブツブツブツ……

 

 「イズクっちー、また声に出てるわよー」

 

 「ブツブツうるせーぞ帰ってこいいんもー」

 

 ハッ!?またいつもの癖が!?スティーブンさんには分析に必要な癖なら無理に矯正しないほうがいいとは言われてるけどいい加減この癖どうにかしないと……。

 

 「ま、これに関しては本人の強化と秘匿が課題だな。採取した細胞も処分したし、向こうにも口止めはしておいた。みんなもこの話は徹底して秘匿してくれたまえ。さて、ひとまず個性の話はここまでだ。今度は少年のこれからの話をしよう」

 

 ぱんっと手を合わせて話を進める。ここからは僕がライブラの戦闘員として、そしてヒーローを目指すための計画。 

 実はこれに関してはすでにクラウスさんたちと話し合って決めてある。後は承諾を得るだけだ。

 

 「まあこれに関してはすでに決まっている。ザップ。お前の出番だ」

 

 「え?俺?もしかして俺が教えろって?いやいや待ってくださいよスターフェイズさん。俺がこいつに血法教えるなんてそんなの無理っすよ。絶対俺のやり方と合わないですし何より」

 

 「少年をお前の師匠のところに連れていって紹介してやってくれ」

 

 「後継者に選ばれたからって師匠が――――――は?」

 

 スティーブンさんが内容を告げた瞬間グダグダと言い訳をしていたザップさんはフリーズした。

 

 「牙狩り本部がある血界の眷属(ブラッド・ブリード)を追っていたんだが調査員の一人がなんと君の師匠と偶然接触出来たという情報が入った。とある秘境で血界の眷属(ブラッド・ブリード)の滅殺後もそこで鍛練を始めたというから今向かえば会えるかもしれないぞ。いやー実に運がいいなあ少年!君の個性にうってつけの相手とこんなに早く出会えるなんて日頃の行いの賜物ってやつかな!」

 

 ハッハッハーと胡散臭い笑い声をあげるスティーブンさん。ザップさんは驚愕と困惑と茫然を足して割ったようななんともよくわからない顔をして未だ動かない。K・Kさんがおーいザップっちーと目の前で手をプラプラさせるも動かない。ひたすらフリーズしている。

 さすがに大丈夫かと心配になってきたところで今度はチェインさんがザップさんの手を取り脈を図りだした。数秒後、時計を確認しこちらに振り返りサムズアップをして、

 

 「午前10時6分。死亡確認」

 

 「勝手に殺すんじゃねえメス犬ゥッ!!!」

 

 あ、再起動した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 ―――そんなわけで僕は斗流を学ぶべくザップさんと一緒にH・L(ヘルサレムズ・ロット)の外に出た。

 ちなみにザップさんは師匠の下に行くのを大層嫌がってた。それはもう普段使わない脳みそをフル稼働させて言い訳し続けるくらい。

 以下回想。

 

 

 「い、いいんですかスターフェイズさん?ここからしばらく俺という貴重な戦力が減っちまうんすよ?」

 

 「本部から臨時で応援を手配済みだ。しばらくの間なら問題ないし、むしろお前も修行を付けてもらえてちょうどいいだろ」

 

 「……だ、だったらスターフェイズさんの方で教えるってのはどうすか!ほら、血を与えたら使えるかもしれな―――」

 

 「複数属性を持てる保証はないぞ?検証が出来てない以上混ぜるのは危険だし、安定していて血液操作が出来る今の少年にお前の流派を教える方がもっとも効果的だ」

 

 「……も、もうすぐトレイシーの誕生日で機嫌損ねると後がこえーんすよ、だから」

 

 「……先週トレイシーの誕生日だから金貸してくれって財布ごとむしりとっていきましたよねザップさん?」

 

 「おいこらバッカ余計な事言ってんじゃねえ!?」

 

 「…………」

 

 「そ、そんな目で見ないでくださいよスターフェイズさん。ちょっとした友達同士の金の貸し合いじゃねえっすかハハハ……」

 

 「そういえば先週少年がチンピラにカツアゲにされてしまったらしくお金の無心をしてきたことがあったな。どう思うザップ?」

 

 「……………………行かせていただきます

 

 「よろしい」

 

 

 回想終了。言い訳中、終始ヤダヤダと嫌がる感情が形になって視界一杯に映る幻覚が見えた気がする。個性か何かかな?と一瞬思ったけど多分違うと思う。

 必死で言い訳するザップさんだったがスティーブンさんに勝てるはずもなくあっさり折られた。決まり手は僕だけど。

 項垂れてるザップさんに頭を下げて感謝を述べると感謝はいらねえから紹介料として飯おごれコラとベソ掻きながら言ってきた。紹介料と考えたら安いものだ、むしろ贅沢しても構いませんと言ったら喜んでいた。未来の兄弟子はチョロかった。

 ……その後言質を取られたせいで本当に高い所に連れていかれて、後でスティーブンさんにお金の無心をする羽目になり呆れられたけど……。

 未来の弟弟子は詰めが甘いようです。

 

 そして現在、某所の未開地の奥も奥、秘境魔境の類と言える場所に足を踏み入れていた。

 ザップさんが「またこんなド秘境に……」と呟いてたがその通りだ。図鑑にも載ってなさそうな獣から明らかにサイズが可笑しい蟲やらわけのわからない鳴き声の生き物やら……

 

 「いや、それでも何ですかポポロパッペロって!?ここまで鳴き声で想像どころか混乱する生物なんて初めてですよ!?」

 

 「ああーポポロパッペロか。尻尾が焼いたら見た目最悪だが美味かったっけか」

 

 「いや本当になんなんですかポポロパッペロって!?」

 

 「ポポロパッペロはポポロパッペロだろ鳴くときポポロパッペロって鳴くからポポロパッペロって名付けられてるだけだからポポロパッペロに意味はねえよポポロパッペロ程度でいちいち騒ぐんじゃねえよポポロパッペロ陰毛」

 

 「楽しんでませんか!?」

 

 一息にポポロパッペロと連呼するせいで若干ゲシュタルト崩壊を起こしているがそんなのお構いなしとザップさんは先へと進み、僕も置いてかれないようにと足を動かし秘境の中を歩く。獣道のため登るだけでも相当しんどく、ザップさんを見失わないように必死に食らいつくのが精一杯だ。それを見てザップさんがニヤついているし一体なんなんだ?

 しばらく歩くと山の中腹あたりでザップさんは足を止めた。ようやく休憩を取ることができ、その場に大の字に倒れ込む。吐きそうになるがなんとか押し留め周囲に目をやる。

 近くの洞の中には焚火や獣の皮で出来た寝床などがありここで誰かが生活している様子が見られる。

 

 「はあぁ~……マジでいやがんのかよあのクソジジイ……今だけは情報が誤報であってほしかった……」

 

 盛大なため息を吐いてそう呟くザップさん。普段の傲岸不遜な雰囲気はナリを潜め哀愁が漂っている。こんなに怖がるとは、ザップさんの師匠はどんな存在なのだろうか。

 ザップさんからはとてつもなく強いこと、修行が文字通り死ぬほどキツいことなどは聞かされてるが詳しくは聞いてないし。そう口から零れた言葉をザップさんは拾って答えてくれた。

 

 「……俺たち牙狩りの頂点と言われるほどの実力を持つ人ってのは言ったな。素質がある人間が研鑽にのみその人生を費やした修羅のごとき存在、それがうちの師匠だよ。一介の牙狩りの身としてみたら尊敬すべき高みなんだろうが……俺個人から言わせてみれば鬼畜外道の極みだ」

 

 今すごい不穏なワードが出たんだけど。しかしザップさんは関係ないと話を続ける。

 

 「傲岸不遜で毒舌。研鑽脳の修行スキー。強くなるのならトラウマになるような苦痛だろうが自分にも相手にも嬉々として行うドSM。万一身体を欠損しようが血法で補えればオールオーケービーハッピーな頭沸いてるデス仙人だよ。一体あのクソジジイにどんだけ酷い目に遭わされたか……!」

 

 「待って欠損すら気にしないって何それ怖い。え?それ全部事実なんです?」

 

 「事実だよちきしょう!あの野郎の修行で一体どれだけ俺の心に傷を負ったと思ってんだ!しかも質が悪いのが本人も経験しているからどれくらいで限界か死にかけるかその身が欠けるかがわかってて絶妙な加減で追い詰めてきやがる!そのうえ抜き打ちで油断したら死亡確定な追加メニューをぶちこんできやがるおまけ付きだ!例え道半ばで死んでもあのクソジジイのことだ、涙一滴流すどころかひたすら嘲笑と罵詈雑言を吐いて阿鼻地獄から出直してこいと直接蹴落としてくるに決まってる!っだー思い出したらだんだん腹立ってきた!あの妖怪襤褸雑巾、いつかボッコボコにしてやるかんな!」

 

 

 

 シャアッ(ほう)

 

 

 

 後ろから金切り声のようなものが聞こえた瞬間、ザップさんが動きが固まった。ギギギギッと錆びた歯車のような動きで後ろを振り向くザップさんに釣られて僕も後ろを振り向く。

 

 そこには一本の杖と動物の骨を包んだ襤褸布がヒラヒラと舞っていた。

 

 シャギシャシャシャアシャ(ワシの指の毛ほども及ばぬその未熟なる身で)シャシャキシャアシャアシャア……(それほどの大言壮語を吐き出すとは……)シャッシャシャキシャア(ロクに現実を写さぬその眼、いっそ)シャシャアァァ?(くり抜き出してやろうか?)

 

 襤褸がなにやら喋る?とザップさんの顔が急激に青どころか紫色になり―――――全速力で逃げ出した。

 

 シャ(おそい)

 

 「すんませんした師匠オオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 ザップさんが師匠と言われる襤褸布からひたすら逃げる。あ、血の手に頭を掴まれた。そのまま振り回されて頭から地面に叩きつけられてる。あ、一回じゃ終わらないの?何度も叩きつけて大丈夫なの?と思ったら罵りあいだした。でもすぐに杖で叩かれながらアイアンクローされてザップさんがもがきながら謝ってる。

 

 どうしよう、今のザップさんを見てざまあみろって感情が強い僕がいる。あの街で色々フラストレーションが溜まってたんだろうなあ……主にザップさんの横暴で。

 

 ……そしてもしかしなくてもザップさんの立ち位置がこれからの僕の立ち位置になるかもしれないと思うと、今からでも僕の心が死にそうなるのだった。

 

 ―――クラウスさん、みんな。早速H・L(ヘルサレムズ・ロット)が恋しいです。

 

 




Q:なんで出久君H・L外に出れてん?
A:ご都合展開です。こまけえことはいいんです。

Q:仮説の下りは捏造?
A:完全捏造妄想です。本気にしないでください。

Q:仮説の話でココとココがおかしい!整合性とか大丈夫なの?
A:貧弱一般人に遺伝子学なんてわかるわけないだろ!?(逆ギレ)
ノリで流してください。


【誤字報告】

zzzzさん。クオーレっとさん。愛想豆腐さん。

誤字報告ありがとうございました。やはり一人でチェックするには限界がありますね……。まあチェックする度加筆修正してるのが悪いんですが

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