再会   作:ピットくん

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第十四話 嵐 その4

 一方、父はこの危機的状況においても、泰然とした態度を保っていて、仕事がうまく取れずに、平日に不名誉な休みができてしまったときにも、顔色ひとつ変えずに、パチンコ屋か競馬へ意気揚々と出かけて行った。ある不名誉な休みの日、彼が父に「お父さん、今日はお仕事行かなくていいの」と尋ねると、父は「今は、ちょうど我慢の時期だからね。物事には不可視の流れというものがあって、それを感覚半分、論理半分で感じることが重要なんだ。その風をなるべく高い正確性を持って理解できるようになることが、中小企業の経営者には、必要な資質であり、将来的には、松下幸之助が言っていたように、蛇口を調節するだけで、仕事量がある程度自由に決定することができるようになる、ダム式経営というものを目標に、日々営業しているんだ。まあ、こんな話しをしたところで、お前には理解できないだろうが、お前には父さん流の帝王学というものを、今のうちに教授しておこうと思う」

「ていおうがく?」

「そうだ。まあ、帝王学という言葉の意味については、まだ知らなくていい。ただ、お前は父さんの血を引いているから、いずれ、自分で会社を経営していきたいと思い立つ日が、来ないとも限らないから、できる範囲で、一子相伝していきたいね。話しを元の戻すと、今はただ、種をまくことしかできない時期だからね。たしかに、目の前の畑には、遠くまで収穫できるものがないように見えるかもしれないけど、土の中には、これから五年か、十年かくらいしたら、家族を十分に満たしてくれるだけの作物の種が埋まっている状態なんだ。来月は、今月よりもある大企業からのお仕事がまた増えるから、状況は少しずつ上向きになりつつあるから、お前は心配しなくても大丈夫だよ」そう言った父の言葉を、彼はほとんど理解することができなかったが、父の飄々とした雰囲気から、そんなに心配する必要はないのであろうと安心することができた。

 そんな父とは対照的に、母の精神状態はかなりの極限にまで追い詰められていた。真面目で愛情深い母は、父が、いくら将来的には会社は安定していくに違いないと、諭されようとも、目の前の借金が、毎月増大していくという現実に、大きなストレスを受け、次第に情緒が不安定になっていった。

 彼は、少しでも母のことを元気づけようと、思いつく限りの行動を、実践してみることにした。しかし、どんなに彼が、愛情を持って何か母のために骨折ったところで、表面的に笑顔を見せてくれるだけで、母の心には、何ひとつ訴えかけることができなかった。

 

---次へつづく---

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