再会   作:ピットくん

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第二十三話 嵐 その13

 彼らは、敷地の右奥に位置し、現在は人が住みつかなくなって久しい、彼女の家よりも一回り大きな母屋の前へとたどり着いた。玄関は昔ながらの二枚扉で、彼は若き時分の郷愁の念に駆られた。玄関脇の土壁には、蛇行した亀裂が生じていて、何かの拍子に崩壊してしまうのではないかと彼を震え上がらせた。

 傘は、扉の前まで来ると、それまで軽快に刻んでいたけんけんのリズムを停止させた。その後ろ姿からは、以前にも同じような状況を何度も習慣的に経験したことがある者が見せる悠然さが発せられていたが、一体、傘をそうさせる根拠がどこにあるのか彼には皆目見当がつかなかった。もしや、このまま玄関と永遠に睨めっこすることが目的の可能性だって考えられなくはないのだ。なんたって、傘が目の前に存在していることの確かな説明をすることができるのかどうかだって怪しいのだから。

 彼が、そうやって傘を見つめながら先行きを心配していると、彼女が前へ歩み出て、がらがらと二枚扉を開けてやった。すると、そこに陣取っていた傘は家の中へとぴょんぴょんと入っていった。傍から見ていると、その光景は、主人に扉を開けてもらって一目散に室内へと駆けて行く飼い犬に見えなくもなかった。

 どうぞ、と彼女は言って先に中へ入っていった。彼も続いて家の中に足を踏み入れると、敷居の先は土足で入ることができる四人掛けの応接間になっていて、左側と正面はガラス戸で仕切られた和室へと続いていた。右側はタイル張りのダイニングキッチンにつながっていた。彼が見えた範囲だけでも和室にはガスストーブやほこりのかぶった扇風機などが雑然と放置されていて、この家が物置として使用されていることは一目瞭然であった。

「うん」

 そう言うと彼女は、彼を置いてけぼりにして正面の和室へと向かい、突き当りを左へと曲がって奥の方へ姿を消した。辺りは静寂に包まれたが、彼は初めて訪れた場所ではいつもそうであったが、全ての視覚情報が新鮮であるために全ての家具をひとつひとつ認知しなければならないので、彼の精神は少しずつ疲弊していった。

 そうやって、彼が玄関のところで立ち尽くしていると、どこからか妙な視線を注がれていることに気づいた。しかし、周囲を見回してみたところで視線の主を特定することはできず、彼が気のせいだったのかもしれないと気を抜いた次の瞬間には、彼の隣でまー君が小型ゲーム機にイヤホンを付けて大音量で遊んでいた。驚きやすい質だった彼は、まー君の突然の出現に肝を冷やして、その場に倒れそうになったが、なんとか踏みとどまり、今の自分が置かれている状況が何となく理解できるようになってきていた。

 

---次へつづく---

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