再会   作:ピットくん

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第二十六話 嵐 その16

 彼が驚きを隠せないでいると、階段の壁から、片目だけを出して彼女とまー君が彼の姿を観察していた。彼女は彼と目が合うと、すぐに視線を下にそらし、何か伝えたいことがあるが、それを伝えることが果たして正しいことなのか逡巡する気配を見せた。しばしの熟考ののち、彼女は決意を固め、彼の瞳をみつめると、彼女は躊躇なく彼の方に近づき、そっと彼の手を握った。そして唐突にこう言った。

「ねえ、お祖父さんに会いたくない?」

「可能であればね」

「不確実ではあるんだけど、もしかしたらあなたのお祖父さんに会うことができるかもしれないのよ」

「さすがにそれは無理だろう」

「そう。これなら信じてくれる?」と言って、彼女はゆっくりと彼の身体を、自分に引き寄せようとした。だんだんと二人の顔の距離は近づいていき、彼はかなり照れくさい気持ちになった。しかし、彼女は相変わらず無表情で、彼に対して特別な感情を持ち合わせていないことは明々白々であった。お互いの息遣いが感じられるほどに顔と顔が近づいているのにもかかわらず、彼女の表情からは、これから起きるであろう接触に対する感情の高まりを読み取ることが一切できず、彼は困惑するしかなかった。やがて、お互いの鼻が触れ合うと、彼女は自然と瞳を閉じてしまい、彼の心臓は生まれてから一番の活動を見せようとしていた。しかし、彼はこういったことに不慣れであったため、接触の雰囲気を味わうために目を閉じることはなく、目の前で揺れている彼女のきれいなまつげを眺め続けていた。そうすると次の瞬間、彼女の閉じられた瞳から、一筋の涙がこぼれてきて彼を狼狽させることになった。あまりにも突然の出来事であったために、彼はこの数秒の間に起きた彼女の心情の変化を理解することができず、彼は精一杯の心遣いとして優しく彼女の肩に手を添えてやることしかできなかった。しかし、彼の努力も虚しく、彼の両手は彼女の肩に触れることなく空を切った。そのまま彼は前のめりにバランスを崩して、彼女の半透明になった全身を貫通した。彼は後ろにいたまー君と目が合ったが、まー君は彼に何かを言いかけて、あきらめたように悲しい顔で首を横に振った。

「ごめん、よく事態が把握できていないんだけど」

「まあ、何となくは理解できた?」と彼女は、彼に背を向けたまま言った。

「まあね」

「もう一度聞くけど、あなたのお祖父さんに会ってみたいと思わない?」

「本当に会えるのであれば、会いたいけど」

「よし、そしたらもう一度湖に戻ろう」

 

---次へつづく---

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