再会   作:ピットくん

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第三十話 再会 その3

 二人は彼のことを待っていたが、彼が竜と長話しをしていたので、待ちきれなくなったまー君はおもむろに彼の手を取り、いこうよ、と言って強引に彼を引きずり、敷地内の唯一の建造物である、白の宴会場へと三人は足を踏み入れた。

 中では、多くの白装束を着ている人たちが宴会をやっていて、それに混じって天狗と風神・雷神の義兄弟が、ひとりの老人と酒を交わしていた。彼は会場内の光景を目の当たりにして少し戸惑っていたが、彼の姿を捉えた赤ら顔の天狗が、にやにやしながら近づいてきて、なれなれしく彼と肩を組むと、さあ、こっちへ来なさい、と言って彼を宴会の中へと連れて行った。

 彼が連れていかれた先には、七年前にがんで死んでいたはずの祖父が座っていて、生前のように落ち着いた温かいまなざしで彼を迎え入れた。

「二人ともよく来てくれた。亜里ちゃん、日頃からお墓のお世話をしてくれてありがとう」

「いえいえ、とんでもないです」

「こっちはこの通り、一見楽しそうにやっているように見えるが、どう見積もりをしてみたところで、生前の方が何十倍も楽しかったと断言できるのう。もちろん、こちら側の者には、全ての生きとし生ける者が患っている<他人より優れたい病>を発症している者がいないという利点はあるが、逆に、それを克服してしまうと、人間らしさがなくなってしまうから、それも面白みに欠けるというところもあるのだがな。結局のところ、人間というものは己の安全を確保してからでないと、他人のために行動しようとしないのが原則原理なのだろうな。そんなことより」と老人はそこで話し続けるのをやめて、孫の顔を見つめた。どうやら、この老人には雰囲気からほとんど孫の感情がまるわかりであるようだった。

「お前、何か言いたいことがあるのか」

「うん」

「どうした」

「まだ周りの人にはほとんど言ってないんだけど、ゆくゆくは物書きとして生計を立てていきたいと思っているんだ」

「それは、小説家になりたいということか」

「そう」

「なるほどな。それはまた面白い道を選んだものだ。まあ、将来のことについては、己の後悔がないように選択するのが吉というものだ。その類の話しをしたいのであれば、酒を飲みながらゆっくりと聞かせてもらおう。照れ屋なお前にはアルコールの力に頼った方が何かと便利なこともあろう」

「そうだね。麦酒で乾杯といきますか」

 老人は、孫のグラスに並々と麦酒を注いで乾杯をした。正面の小舞台では、天狗がウォッカの小瓶をつぎつぎと一気飲みし、飲み干した瓶を足元にいくつも並べていた。やがて、それらをボウリングのピンに見立てて、どこから持ってきたのか判明としないボウリングの玉を、空っぽの瓶めがけて試投し、「ストライク!」と大声で叫んでうひゃうひゃとひとりで盛り上がっていた。やがて、それにも飽くと、千鳥足で二人の間にふらふらと割って入り込み、普段から常飲している、お気に入りの焼酎を彼のグラスが空くたびに間断なく注ぎ込む嫌がらせを始めた。アルコールにまったく耐性がない彼にとっては、拷問のように過酷ではあったものの、天狗から注がれた酒を残すということは失礼に当たるように思われたので、覚悟を決めてその全てを飲み干した。しかし、多くの若者がそうであるように、彼には酒の耐性が全くなかったために、次第に視界がゆっくりと回転を始め、とうとう三半規管はすっかり酒に狂わされてしまった。最初のうち、彼は非常に気分が良かったのだが、だんだんと目を開けていることが億劫になり、上機嫌に話しかけてくる天狗の話しに相槌は打っているものの、酒に脳を支配された彼には、その内容を理解することはもはや不可能であった。

 

---次へつづく---

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