作者の気分で消える世界にて   作:単結晶

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愉悦したいので自給自足することにしました。



1話 友人が厨二病デビューした話

"高校デビュー"

 それは高校に入ってイメージチェンジを行い、垢抜けたカッコをしてみたり、不良の真似事をするような行為のことだ。

 

 心機一転して学校生活を楽しみたいという気持ちは分かる。

 分かるんだが、

 

「まじかよ……」

 

 そう呟く俺の前には手に包帯を巻き、眼帯をした友人がいた。

 

「なんで厨二病デビューしたんだよ!!」

 

 記念すべき高校生活一日目は、盛大なツッコミから始まった。

 

 

 

 

 

「なぁタイチ、なんで包帯巻いてんの。さっきから周りの目が痛いんですけど」

 

 クラスメイトのほぼ全員が、俺の友人を見ていた。

 

 女子達はコソコソと囁きあい。

 ある男子は古傷を思い出したのか、机に突っ伏してプルプルしている。

 別の男子は褌一丁で現れた勇者を見るような眼をしていた。

 

 噂を聞きつけたのか、他のクラスの人たちも廊下側の窓から覗き込んでいる。

 

 

 同じ中学のイケイハ君もタイチのあまりの変わり様に顔を真っ青にしてるんだが。

 あ、立ち去った。耐えきれなくなったな。

 

 今ならまだ傷の浅いうちに引き止められるはず。

 というか、引き止めないと俺の高校デビューは厨二病の友人キャラになる。

 

 そう思い、周りの目のことを指摘しつつ包帯と眼帯のことを聞いてみると

 

「腕は強酸で、目は最後っ屁の攻撃にやられた。キョウヤは大丈夫か?」

 

 と返ってきた。

 なるほど、ただの厨二病じゃなくて人にロールプレイングを強要する感じか。

 これは重症だな、どうしたものか。

 インターネットで "友人 厨二病 解決策" で検索したら出てこないかな。

 

「覚えて、ないのか?」

 

 タイチは困惑した声でおずおずとそう聞いてくる。

 なんだろう、何故か罪悪感のようなものが湧いてくる。

 話を合わせてみるか? 

 なんで厨二病になったのか分かるかもしれないし。

 

「いや、覚えてる覚えてる。昨日のことだよな」

 

 一昨日会った時は普通の格好だったから、心変わりしたのはおそらく昨日の事だろう。

 

「そうか、覚えてるか。夢じゃなかったよな」

 

 ん? 夢? 

 これは肯定せずに否定した方が良かったのかもしれない。

 今更後悔しても後の祭りだ。

 このまま話を合わせることにする。

 

「全然知らない場所に落とされるし、化け物に追いかけられるわ、生きて帰ってこれたのが奇跡だな」

 

 おー、なかなかヘビィな世界観だな。

 どう話を合わせたものか……

 でもなんか楽しくなってきた。

 

「そうだよな。マジで死ぬかと思ったわ」

「お前が格好つけて "ここは俺に任せて先に行けっ" なんて言った時はもうダメかと思った。どうするつもりだったんだ?」

 

 まさかの俺が主人公なのか。

 その言い方だと、お前俺の事置いて逃げてないか? 

 まぁいいか、どうせ夢の話だ。

 

「そりゃかっこよく呪文を唱えて撃退したに決まってるだろ」

 そう言いながらかめはめ波のモーションを行う。

 それを悲しそうな目で見てくるタイチ。

 おい、その痛い格好より数段マシだからな!

 

「俺が撃退した」

 

 お、逃げてなかったマイベストフレンド。

 しかし、化け物に襲われて撃退したとかコテコテの話をするなー。

 

「あの化け物の話だが、周りには言いふらすなよ。見張られている可能性がある」

 

 はいはいはい、エージェント(笑)ですね。

 電子レンジなタイムマシンの鳥の人ですね。

 

 どうしてこうなったのか。

 

 話を切り上げて、体育館の場所を確認する。

 そろそろ移動しないと、新入生のガイダンスに間に合わなくなる。

 

「キョウヤ、どこに行くんだ?」

 

 体育館へ向かおうとする俺をタイチが困惑した顔で引き留める。

 

「どこって、早く移動しないとガイダンスに間に合わないじゃん」

「ガイダンスは終わったじゃないか。今日はもう帰るだけだ」

「一体何を言って」

 

 ふと、時計を見ると針は14時を指していて学校が終わっていることに気がつく。

 周りを見ると、タイチ以外の人が居ない。

 

 

 静寂に包まれた教室。

 何も、自分の呼吸しか聞こえない空間。

 

 

「あれ、おれ、今日何してた?」

 

 思い出せない。いや、今日だけじゃない、昨日の記憶も……

 思い出そうとすると脳裏に赤いものがチラつく。血を流し息が止まった……。

 

「きっと疲れてるんだ。帰ろう」

 

 深く考えようとした途端、タイチが急かすように袖を引っ張ってくる。

 走ったわけでもないのに冷や汗と動悸が止まらない。

 どこか真剣な顔をしたタイチに促されて、校舎をあとにした。

 

 

 

 

 

「今日の晩御飯はハンバーグよー!」

 

 目の前には俺の好きなハンバーグ。

 入学祝いということでお肉を奮発したらしい。

 

「学校はどうだった?」

「タイチが厨二病になってた」

「あらー、そういうお年頃なのね」

「母さん、呑気すぎない?」

 

 タイチの高校デビューならぬ厨二病デビューは驚いたが、

 なんだかんだ楽しい学校生活になりそうだ。

 

 あぁ、明日が楽しみだ。

 




この中にSAN値ピンチは何人いるでしょう。
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