作者の気分で消える世界にて   作:単結晶

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原作知識持ちといえば救済だよね。


5話 前世持ちモブの暗躍

 

 あのタイチの厨二病デビュー事件から1週間が過ぎた。

 朝を迎える度これが悪い夢であることを願っていたが、これ以上現実逃避をするのも限界だろう。

 手元の目覚まし時計に表示された日付を見て、嘲笑する。

 

 自分の記憶が正しければ、今日は同級生が死ぬ日だ。

 死ぬと言っても救済等を行うつもりはない。

 仮にも主要キャラであるため、後ほど生き返るというか、人間なら確実に致命傷である傷を自己再生するからだ。

 

 そもそも、助けるにしたって自分にそんな力はない。

 

 例え致命傷を治すために同級生に寄生している化け物の侵食が悪化するとしても。

 それにより闇堕ちに1歩近づくとしても。

 闇堕ちした同級生によって、ここら一帯が吹き飛ばされて死人が多く出るとしても。

 

 生まれ持った力もなく、後天的に異能を手に入れることが出来る世界の結晶も手元にない、ただの人間の自分には無理だ。

 

 そう、自分は同級生を助ける気がない。

 

 けれど、オレは同級生を、タイチを助けたい。

 

 オレはタイチのあり方が好きなのだ。

 友人であるキョウヤの日常を守るために奮闘する姿が好きなのだ。

 

 タイチは人間を辞めることを怖がっていた。

 能力を使用する度、化け物へと近づいていく。

 

 けれど化け物になりたくないからと、

 人間でいたいからと、

 友人を守れる力があるのに使わないのは、

 人間性を欠いた行いだと

 心が化け物と化すんだと

 体が化け物と化すのと一緒だと、

 そう、彼は信じて戦い続けたんだ。

 

 オレは、自分は、オレの人生が既に終わりを迎えていることを何となく自覚している。

 

 どのような終わりを迎えたのかはまだ思い出せていないが、確かに終わりを告げたのだ。

 

 だからオレからすれば今こうして漫画の世界で生きているのは前回の人生の延長戦、おまけみたいなものだ。

 

 けれど自分は違う。

 どこまで行っても、今生きている現実こそが自分の人生だ。

 自分はオレではないし、自分は自分でしかない。

 既に終わった人間であるオレに自分の人生を振り回されたくなんてない。

 残り短い人生なら自分のために使って死にたい。

 

 自分のことだが随分と奇妙な状況に陥ったものだ。

 二重人格などとは異なる、二つの意識が混在した状態。

 

 オレは自分で自分はオレじゃない。

 

 自分は2次元の世界の住人だが、二次創作等の前世の記憶がある他のキャラクター達はどうやってこの記憶を受け入れたのだろうか。

 

 偶に憑依先の意識を塗り潰してしまったなどと後悔するキャラクターが居るが、本気で悔い改めて欲しい。

 

 憑依先の自分はあの事件から止まらないため息を、深く深くついたのであった。

 

 

 

 

 

 自分から大ブーイングを受けているオレだが、救済は諦めきれない。

 流石に体を張って助けるのは身体的にも精神的にも厳しいので、別の手を打っといた。

 

 タイチの首チョンパ事件は、体に寄生している化け物の気配を感じ取ったワルキューレを名乗る少女が、早とちりして殺したのが原因だ。

 

 生き返ったあともワルキューレに命を狙われ続けるが、殺されたのは最初の一回だけだ。

 

 時間が経つにつれ能力の扱いに慣れ身を守る事が出来るようになった事が大きいだろう。

 

 つまり、最初の一回を防げれば良いのだ。

 

 漫画ではデパートで買い物していたワルキューレに偶然遭遇し殺された。

 

 だから、近くのネットカフェのパソコンを借りて問題のデパートに爆破予告を行った。

 

 完全に犯罪であるため心が痛むが、人の命には変えられない。

 流石に警察が彷徨っている所で、タイチの首を刎ねることはしないはず。多分。

 

 ネットカフェをパソコンが遠隔操作されたように偽装したし、爆弾の設計情報も載せて送った。

 

 オレの技術を惜しみなく使用した遠隔操作に、爆破予告の専門的な内容。

 

 仮に警察が嗅ぎつけたとしても

 ピカピカの高校生一年生である自分がやったとは思わないだろう。

 

 オレに近づき過ぎた精神を戻すため、切り刻んだ手首を見てため息を一つ。

 

 これだけやって防げなかったら、オレを殺す。殺せないけど。

 

 何故自分はオレの望みを叶えているのだろうか。

 救済への手配にが一段落着いたせいか、正気に戻り、段々と自分の行動にイライラしてくる。

 

 財布を覗き込む。

 ネカフェに何時間滞在する事になるのか自分には目測が立っていなかった為それなりの金額を持ってきている。

 

 よし、ショートケーキ食べに行こう。

 

 実は自分はお金があるなら三食ケーキを食べたい位の甘味好きである。

 

 しっとりとしたフワフワの優しい味のスポンジ。

 ダークラム酒が香り立つ、後味がさっぱり目の生クリーム。

 ケーキ全体の甘さをさらに引き立てる酸味の効いた苺。

 

 ショートケーキを食べればその店のレベルが分かると言っても過言ではない。

 

 自分のお気に入りの店で、ショートケーキを専門としたカフェがある。

 確か、4月は苺フェアで数種類の苺をふんだんに使ったショートケーキが出ていたはずだ。

 

 ウキウキしながら、行きつけのカフェへと向かうのであった。

 




救済するためには、誰かを殺さないと…
とりあえずタイチ殺すか。
くらいのノリで、死亡が決まった厨二病患者君に合掌。

これはおまけですが、モブのオレ人格は菓子より酒派であったりします。
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