作者の気分で消える世界にて   作:単結晶

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伏線回収という名の物語設定集。


6話 ヒロインという名の死神登場

「余計な事を(しないで/するな)」

 言葉は違えど、同じ事を何度も言われた。

 

 ママが疲れてるみたいだから晩御飯を作ってあげた。

 初めてだったから、卵の中身が周りに飛び散って、殻が入って、焦げて、塩っぱい卵焼きだった。

 持って行った先でママは深いため息をついた。

 

「余計な事をしないで」

 

 ママは料理を机に置いたまま、台所を掃除していた。

 

 

 彼氏が出来た。

 毎日家に行って、ご飯を作って、部屋を掃除した。

 服を買い与え、好きなジャンルだと思われるエロ本を渡した。

 彼が一ミリも動かなくていいように尽くした。

 なのにある日、食卓で彼は告げた。

 

「余計なことをするな」

 

 彼は目の前で私が買い与えた物を捨てた。

 合鍵を没収された。

 

 

 なかなか告白出来ない友人を手伝った。

「余計な事しないでよ」

 文化祭の仕事を全部肩代わりした。

「余計なお世話だ」

 全身に傷を付けた男子生徒の家に突撃した。

「余計な事をすんな」

 

 何故こんなことを思い出しているのだろうか。

 

 思考が目の前の状況に追いつく。

 ひび割れた空間から、死が此方を見つめている。

 

 キラキラと極彩色に輝く欠片が散らばる。

 

 空間の奥、虹色の中空円筒型の化け物がすぐ隣に居た友人を頭から飲み込んだ。

 

 助けないと。

 友人の足を引っ張る。

 

「痛い、痛い痛い痛い!」

 

 狂ったように痛いと叫び続ける友人。

 

 手を止める。

 もしかしてこれは余計な事なんだろうか。

 

 足を引っ張る度に友人の体がミチミチと音を立てる。

 上半身と下半身が千切れそうになっている。

 

 友人から手を離す。

 すると、友人の体は化け物の中へと取り込まれていった。

 

 化け物は満足したのか、亀裂を閉じて帰ってゆく。

 帰った後は、世界が割れた時の極彩色の破片が転がるのみ。

 

 一番大きな欠片を手に持って弄ぶ。

 余計な事って何だろう。

 私はどうすれば良かったのだろう。

 誰か教えてくれれば良いのに。

 

 みんな、余計な事をするなと怒ることはあっても、何が必要で何が余計な事なのかは言ってくれなかった。

 

 欠片の放つ極彩色の光が強まる。

 

『誰か私にやるべき事を示して』

 

 欠片が砕け散り、少女の中へ吸い込まれる。

 その瞬間、背後に感じた。

 

 振り向くも誰もいない。

 けれど見えない何かがいる。

 

「誰?」

 ー導くモノ。

「教えてくれるの?」

 ー望むなら。

「姿が見えなくて、道を指し示してくれる存在か。もしかして神様?」

 ー個体識別名を認識。

「私の神様、迷える子羊の私を導いて」

 ー了解。

 

 少女は神様から化け物について色々と教えてもらった。

 

 世界の外から来た巨大な犬の化け物が世界を食いつくそうとしているらしい。

 

 先程の化け物は、犬の化け物のヨダレらしい。

 ヨダレと言っても、人間が分泌する液体と異なり自立行動するらしい。

 アミラーゼがデンプンを分解するように、ヨダレの化け物は世界や世界に住む生き物たちを取り込んで溶解しているらしい。

 

 先程の極彩色の欠片は世界の食べカスらしい。

 例え食べカスであっても、人間が望めば願いを叶えるらしい。

 

「ねぇ、化け物は人々を襲っているんだよね。私はどうしたらいい?」

 ー人々を助けることを推奨。

「どうやったら助けられるの?」

 ー地面に転がった残りの欠片を使用することで戦闘用の能力が習得可能。

「分かったわ」

 

 少女は辺りに散らばった小さな欠片を拾い集めた。

「神様に使える女性の戦士って何だっけ? 戦場の乙女って呼ばれる戦士なんだけど」

 ー解、ワルキューレ。

「それそれ、欠片さん欠片さんお願いを叶えて」

 

 少女の願いに呼応して極彩色の光が強まる。

 

『ワルキューレに成りたい』

 

 

 

 

 

 力を得た少女は街を、世界を救うため天を駆ける。

 世界が罅割れる音が耳に届く。

 

 急行すると一人の中年女性が泡のような化け物に体の半身を取り込まれて呻いていた。

 

「たすけ、たすけて」

 

 焼きただれた喉を振り絞り助けを求める女性。

 

「神様、どうやったら助けられる?」

 ー強酸による熱傷が50%を超過。直ちに病院に搬送したとして、命の救助は不可能。

「分かったわ。私はどうしたらいい?」

 ー介錯を行うことで苦痛の軽減が可能。

「分かったわ」

 

 ワルキューレは女性を安心させるように天使のような笑顔を浮かべる。

 

「今、助けてあげる」

 その言葉を聞いた女性は歓喜の涙を流した。

 

 ワルキューレは、出来るだけ苦痛を与えないように女性の体を真っ二つに切断した。

 

 その場に崩れ落ちる女性の体のうち、化け物に取り込まれていない体を支える。

 そのまま、化け物から少し離れた塀の近くへ持って行く。

 

「化け物に取り込まれるとグズグズになっちゃうもんね。片側だけでも綺麗に残してあげないと」

 切った時に内臓が散らばってしまったが許容範囲だよね? と呟きながら、

 女性の顔に付いた血を、持っていたハンカチで丁寧に拭き取る。

 

 死体が綺麗になったことを確認した後、

 ワルキューレは化け物の方へと向き直る。

 

「神様、どうしたらいい?」

 ー25度の方向に体を向け剣を72.5度傾けて斬撃。

「分かったわ」

 言われた通りに放った斬撃は核を深く傷つける。

 

 泡の化け物は体の半分以上を液体へと変えながら、別空間へと逃げていく。

 そしてその場から居なくなった。

 

「神様? 死んでないよ」

 ー解、ワルキューレは32度の方向に体を向け剣を69度傾けて斬撃を放った為、核の中心から外れました。

 

「角度で言うのやめようよ。難しいから」

 ー了解。次から角度ではなく標的付近の物体を目印に指示を行います。

 

「そうしてー、逃げた化け物はどうなるの?」

 ー数時間後に核が崩壊し消滅します。

 

「即死しなかっただけでちゃんと死ぬんだね、良かった」

 

 ワルキューレは変身を解き、背筋を解すようにグッと手を伸ばす。

 

「今日も疲れたー! 甘い物食べたいな」

 ー解、行きつけのケーキ屋の新発売されたビワのタルトが美味しいと評判。

 

「採用!」

 

 一週間後、お気に入りのケーキ屋があるデパートに爆破予告が届き、

 犯人を九割九分九厘殺しにすることを決意するが、それはまた別の話。

 




厨二病君とモブ君のたまを狙う系のヒロインちゃん。
人を殺すというのはただの凡人には越えられない壁があると思った作者により、ちょっと頭のネジを抜かせてもらいました。
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