作者の気分で消える世界にて   作:単結晶

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勘違いですが、苦手な人はブラウザバック。


7話 友人が腐男子デビューした話

 

「そうだ、カフェに行こう。今日行こう、すぐ行こう、用意しろタイチ」

「抹茶モンブラン」

「残念、苺のショートケーキだ」

「急だな何処のカフェだ」

「スイフェ」

「スイーツフェスティバルか、遠くないか?」

「行きつけのケーキ屋さんがあるデパートが爆破予告されたとかで急遽閉店してるんだよ」

「物騒な世の中だな」

「全くだ、俺のケーキ屋に迷惑かけよって許さねぇ」

 

 お前のじゃないだろなんて呆れながら、電車の経路の検索を行うタイチ。

 俺はその隣でスイフェについて検索する。

 

 スイフェでは苺フェアが行われているらしく、ホームページのメニュー表を彩るケーキの数々に笑みが止まらない。

 

 俺は甘い物に目が無く、度々タイチを巻き込んでスイーツを食べに行くのだ。

 

 どれくらい目が無いかと言うと、中学生の頃に同級生のイケイハ君と協力してスイーツ同盟という名の部活を立ち上げるくらいである。

 

 因みにスイーツ同盟は学校の半数を超える女子生徒、スイーツ好きの男子生徒、女子生徒とのスイーツな日々を期待する男子生徒、隠れ会員の教師達が所属しており、中学で一番部員数が多かったりする。

 

「地下鉄の方が速そうだ」

「よっしゃ、行こうぜ」

 

 二人でスイーツを求めてカフェへと向かった。

 

 

 

 

 

 タイチと共に店内に入り、見覚えのある長髪の男子に遭遇した。

 

「あ、イケイハ君も来てたんだ。さすがスイーツ同盟の同士」

 

 イケイハ君の元へ駆け寄る。

 タイチとイケイハ君は友達の友達くらいの距離感であるが、俺とイケイハ君は一緒に部活動を立ち上げた頃から仲がいい。

 

「期間限定の春のイチゴパラダイスショートケーキにしようかなー。あ、これもいいなー」

 

 イケイハ君は手元のメニュー表を凝視しながらキイチゴとネコのショートケーキも捨てがたいと呟いている。

 どうやら、ケーキを選ぶのに夢中で気が付いていないようだ。

 人を殺してそうなくらい人相の悪い男が、真剣にケーキを選んでいるのは中々シュールな光景だ。

 

「猫って、似合わねえw」

「スイーツ好きに容姿は関係ないよ」

 

 ようやく話しかける俺に気が付いたようで、やや不貞腐れたように返事を返してくる。

 

「このカフェに来るのは珍しいね」

 

 この店に来ていることを不思議がる様に聞いてくる。

 普段はデパートの方に行くので、スイフェではあまり顔を合わせないのだ。

 

「行きつけのケーキ屋があるデパートが爆破予告を受けて閉店してたんだ」

「……へぇ。大変だったね」

 

 やや返答に間があったが、ケーキのことでも考えていたのだろうか。

 さっきメニュー表を見ていた時もだが、ケーキに集中しすぎて周りが見えなくなるらしい。

 

 ふとここ最近、イケイハと学校でスイーツの話ができてないことに思い当たった。

 

「せっかくなんだし、一緒にテラス席で食べないか? タイチも良いだろ」

「構わない」

 

 タイチに確認を取っていると、イケイハがタイチをチラ見した後に、頭を押さえているのが見えた。

 学校だけでなくお出かけの時も厨二病ファッションであることに頭が痛くなったのだろう。

 

 イケイハの肩を叩いて同意する。

 

「気持ちはわかる」

 

 某しわくちゃ黄色ネズミのような顔で見てくる。

 イケイハ君がケーキを購入するのを横目で見ながら、メニュー表から購入するケーキを選び始めた。

 

 

 

 

 

「よく食べるな」

 

 各ケーキを堪能し、幸福感に体を浸しているとタイチがツッコミを入れてきた。

 

「「スイーツは別腹」」

 

 ケーキを5個購入したイケイハと声が被る。

 さすがスイーツ同盟の同士、話が分かる。

 

 購入したケーキについて感想を言い合い、ケーキを一口分交換する。

 

 白苺がスライスされて一枚一枚重ねられ、まるで天使の羽の様に飾られたエンジェルハートショートケーキ。

 見た目も愛らしいが、苺と生クリームの甘みが優しく口を満たす。

 天国といえばこのケーキを指すのだろう、天上の甘味だ。

 

「最強じゃね」

「最強だねー」

 

 久しぶりのケーキ会談に全力で盛り上がる。

 

 ケーキを食べ終わり紅茶を飲みながら余韻に浸っていると、

 イケイハ君がタイチの方へ猛烈な勢いで振り向いた。

 

「きゅ、急にどうした?」

 

 イケイハ君にガン見され、戸惑う様子のタイチ。

 

「トイレ行くぞ」

 

 イケイハ君はタイチの手を掴み、どこか必死そうに訴えかける。

 

「一人で行け」

「連れションだ」

「なんでだ」

「ええっと……寂しいからだ」

「はぁ?」

 

 本当に急にどうしたのだろうか。

 意味が分からない。

 

「寂しいなら、俺が行ってやるから落ち着け、な?」

 

 無理にタイチと一緒に行かなくても、俺と一緒に行けばいいだろうとイケイハ君に提案する。

 

「タイチじゃないとダメなんだ」

「「はぁぁ?」」

 

 俺とタイチはそろって素っ頓狂な声を上げる。

 タイチじゃないとダメってなんだ。

 動かないタイチに焦れたのかイケイハ君は肩を掴んで無理やり移動させようとする。

 その方向は、茂みだ。

 

 俺じゃなくてタイチじゃないとダメで、トイレという名目で茂み。

 まさかとは思うけどナニじゃないだろうな! 

 

 降って湧いた可能性に、体が固まる。

 

「しかもそっちは茂みだ。トイレじゃない」

 

 同じく疑問に思ったのだろう。タイチがツッコミを入れる。

 タイチは手からすり抜けようとするも、イケイハ君が必死に捕まえてくるので振り払えないようだ。

 

「都合がいい」

「なんの? 本気でなんのだ?」

 

 

 

 

 

 マジかよ。

 

 

 

 友人が厨二病になったと思えば、別の友人が腐男子になった? 件について。

 いや、まだ決まったわけじゃない。

 

「ガチで狙ってるのか」

 イケイハ君へ外れてくれと思いながら直接聞いてみる。

 

「狙ってる」

 

 

 

 

 

 

 衝撃的過ぎて、思考がフリーズしていた。

 タイチを引きずりながら何やら口論していたようだが、

 イケイハ君は急に引きずるのをやめて、タイチの顔を捕まえる。

 

「動くな」

「え」

「目線を他所へ向けるな」

「待て」

 

 ハアハアと息を荒くしながらタイチに詰め寄るイケイハ君。

 

「無理やりはヤバいって、イケイハ君の気持ちはよく分かったから」

 

 俺もうどうしたらいいんでしょう。

 無理やりはヤバいから、とりあえず止めないとまずいよなと、イケイハ君を制止するため話しかける。

 

「良いから移動するぞ、店の外に出るんだ」

 

 全然話を聞いてくれない。

 

 悲観していると金髪のおさげのお姉さんがイケイハ君に話しかけてきた。

 

「ねぇ、どこに行くの爆弾予告犯さん」

 

 イケイハ君が腕をひねり上げられ、お姉さんに押し倒される。

 そして腕をおさえたまま、携帯を取り出し素早くカチカチと三回ボタンを押す。

 

 え、緊急通報じゃん。

 ある意味俺たちに爆弾を落としたといえば落としたけれど、まだ未遂です。

 

 慌てて止めようとすると、その前にタイチが擁護するためにお姉さんに近づく。

 

「待ってくれ、変態なのは確かだが警察に通報するほどじゃない」

「バカ、さっさと逃げろ」

 

 イケイハ君が床に押し付けられたまま必死に叫ぶ。

 逃げろとはどういうことだろうか。

 

「あら」

 

 お姉さんはタイチを見て、輝くような笑顔でにっこりと笑う。

 

「まっ」

 

 イケイハ君が何かを言いかけたその直後、タイチと目があった。

 タイチは俺に背中を向けていたはずだ。

 

 

 クルクル、クルクルと宙を舞う目のあったナニか。

 

 

 ボーリングの玉を落としたみたいな鈍い音を立てて地面に転がる。

 眼帯で隠されていない右目は濁りきっており、何も映していない。

 

 首をなくしたタイチから流れる赤いものとは別に、視界に赤いものがちらつく。

 

 そうだ、似たような光景を見たことがある。

 

 

 

 

 

 思い、出した。

 

 

 

 

 

 そうだよ、タイチは死んだじゃないか。

 あの日、虹色の刺に頭を貫かれて。

 

 

 なんで思い出しちゃったのかな。

 

 

 夢なら夢のまま、幸せな夢を見ていたかった。

 なんで夢の中でも死んでんだよ。

 

 自覚しろってか、認めろってか。

 

 正気になんて戻りたくなかった。

 




おめでとう、モブは腐男子(笑)に進化した。

救済のためにサクッと殺される系の厨二病系主人公。
ちなみに群像劇なので全員主人公なんです。
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