八百万の騎士   作:神咲胡桃

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護衛役の入学式

 

段々と暖かな気温になってきた今日この頃。

 

俺の職場である八百万家の中庭では、バシッ!バシッ!という音が響いている。

 

その発生源は俺と

 

「ハッ!」

 

俺相手に拳を放っているお嬢様(八百万 百)である。

 

俺たちが今何をしているのかというと、まあお嬢様の訓練である。

 

どういうわけかこのお嬢様は武術を嗜んでいる。しかも結構強い。

 

それだけでなく、どういうわけか剣術、棒術、射術、馬術、柔術等々……果てには医学や経営学にまで、幅広い分野に手を出している。

 

どういうわけだ。原作じゃこんなの聞いたことないぞ。いや、俺が知らないだけで実はそういう設定があったとか? 俺じっくり読まずにさっさっさっさ読んでいくタイプだからなぁ。それに、もう細かい部分までは覚えていない。

 

「シッ!」

 

そんなことを考えながらお嬢様の相手をしていると、俺が集中していないのを勘付いたのか、左手で割と鋭い掌底を鳩尾に打ち込んできた。

 

それを右手で逸らす。次の瞬間、開いた胴体目掛けて蹴りが飛んでくる……前に俺が左足をお嬢様の右ひざに沿えるように置き、蹴りを阻害する。

 

「甘いですわ!」

「うぉっ」

 

蹴りを止められたお嬢様は、あろうことか軸足の左足だけで飛び上がり、そのままローキックを放ってきた。意外な動きに思わず声が少し出てしまった。無茶苦茶だぁ……。

 

でもまぁ、所詮は無茶な姿勢から放たれた攻撃である。対して痛くない。

 

わざとその攻撃を食らい、お嬢様の動きが止まる。そして落ちる前に、お姫様抱っこで抱える。

 

「……私の負け、ですか」

「途中の掌底は、かなり鋭かったですがね。ですが、あのローキックはやめた方が良いかと。お嬢様の体格では、あまり有効とは思えません」

 

お姫様抱っこされているのにも関わらず、今の組手について話し出す。なんというバトルジャンキーか。

 

やれやれ。お嬢様はお淑やかにしてるのが可愛いぜベイベー?……やめよう、悲しいだけだ。

 

「雄英に入学するまでに、せめて一本取りたかったですわ」

「お嬢様に負かされてしまったら、私の立場がなくなってしまいます」

「うふふ。それも面白そうね」

 

勘弁してくれ。それをされたら俺は行く当てがないんだ。その前に消されるかもしれんが。

 

「準備をいたしましょう。今日は雄英の入学式です」

「そうね。楽しみだわ」

 

頼むから、戦闘狂のようにクラスメイトに勝負ふっかけないでくれよ?

 

ただでさえ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

「大きいわね……」

「大きいですね……」

 

雄英のでっかい扉を見て、ありきたりな感想が口から飛び出す。まあ、それくらいしか言うことないわな。

 

足を止めるのもほどほどに、俺たちは自分のクラスへ向かう。

 

「私たちはたしか、1-Aだったわね」

「はい」

「ふふっ。同じクラスで良かったですわね?」

「……そうですね。俺も、お嬢様が近くにおられた方が、護衛がしやすいので」

 

俺たちは共に1-A。どうやら志望理由に書いたあの一文が役に立ってくれたらしい。

 

と言っても、おそらく家の方から遠回しな圧力が掛けられたとは思うけどな。漫画読んでて不思議だったんだが、何で原作だと護衛役の一人や二人を寄越さなかったんだろうか。

 

 

それと話が変わるが、まさか一般受験で主席合格してしまうとは……。合格ラインのポイントが分からなかったから、落ちないように手を抜けなかったのが原因だろう。あとポイント数えてなかったのも。

 

あの一位絶対なるマンに目をつけられるのは嫌だ。彼に絡まれたらお嬢様にも迷惑が掛かる。そうなったら八百万家に消される……絶対に嫌だ!

 

というか、主席合格した時の御当主様と奥様への報告がマジで怖かった。お二方は笑顔でおめでとうと言って下さったが、本当に大丈夫? その笑顔はもうすぐ死にゆく者への戯れじゃないよね?

 

一般と推薦の違いはあるものの、主席合格というのは何気に目立つ。まさかそれで消されたりはしないだろうが……まさしく生きた心地がしなかった。

 

しかも一緒にいたお嬢様が当然みたいな、でも嬉しそうな顔で「当然ですわ!」て言った時が一番怖かった。特に御当主様が。「ほうほう……」と言いながら笑顔で頷くの止めて! 別に狙ってませんから! 狙ってないからー!

 

 

「ここですね」

「そうね。さっそく入りましょう」

 

教室に着いた俺たちは、そろって中に入る。

 

中は意外と広く、黒板に机に椅子と一見普通に見える。

 

原作を知っている身からすれば、あそこがコスチュームが出てきた場所かとちょっとだけドキドキするのだが。

 

「どうやら既にほとんどの方は登校しているようですのね」

 

お嬢様の言う通り、クラス内にはすでに多くの生徒がいる。みんな楽しみだったのだろうな。

 

そんなことを思いながら教室を見渡していると、一角に()()()()()()()を見つけ、慌てて顔を逸らした。

 

え、いや、ちょ、なんで? なんであいつが……

 

「――あ。あんたあの時の……」

「ん? ああ、実技試験の時の……」

 

心の中でおもっくそ慌てていると、前から見知った顔が現れた。

 

「あの時はありがとう。お陰で大きな怪我もなかったよ」

「それは良かったよ」

「知り合いですか? どちら様ですの?」

 

ああ、お嬢様は知らないよな。

 

そのことに気付き、俺は話しかけてきた少女を紹介する。

 

「えっと、彼女は実技試験の時に知り合った……」

「耳郎響香。響香で良いよ」

「私は八百万百。こちらも名前で読んでもらって大丈夫ですわ」

「そっか。よろしく百。それでさ、二人って同じ中学なの? 一緒に教室来たんだし」

「ええ。そんなところですわ」

 

やはりというか、原作でも二人は仲が良い感じに書かれていたからか、すぐに打ち解けたな。

 

俺が響香と知り合ったのは、さっきも言ったように実技試験の時。

 

途中現れた0Pの巨大仮想ヴィランの移動で起きた崩落に巻き込まれていたところを助け、その後に少しだけ会話した。

 

それは置いといて、やっぱあれだな。カッコイイよな、響香。

 

前世でも俺の推しの一人だったから、会えたのはすっげえ嬉しい。

 

「仲良しごっこがしたいなら他所に行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

怒鳴っている訳でもないのに良く通る声が、生徒たちを黙らせた。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」

 

測ってみたら本当に8秒だった。すげぇ。

 

「このクラスの担任になった相澤消太だ。よろしくね。さっそくだが、これを着て外に出ろ」

 

遂に始まるんだ。俺の……ヒーローアカデミアが。

 

 




リュウソウジャー要素は次回から。

作者の趣味です。轟TSして良い?

  • 駄目に決まってんだろぉ!
  • 良いじゃんもっとやれぇ!
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