個性把握テスト。
原作では、入学式をブッチして行われた、いわゆる原作イベントの一つである。
「入学式は!? ガイダンスは!?」
「ヒーローを目指すならそんな悠長な行事、出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。それは教師もまた然り」
いや普通に考えておかしいだろ。何で他の先生は誰も呼びに来ない。
まさか相澤先生、毎年これしてるの? 何、他の先生呆れちゃってるの?
確かに去年はまとめて除籍処分にしたみたいなのは知ってるけどさぁ!
「今年の首席は確か炎崎、お前だったな」
そうだったぁぁぁあああ!! 主席だとデモンストレーションさせられるんだったぁ!
「中学の時、ソフトボール投げの記録は?」
「72mです」
「――チッ!」
「んじゃ、個性使ってやってみろ。円から出なけりゃ、何やってもいい」
やめろぉ、俺を目立たせるなぁ! 背後から殺気がビンビン来てるぅ! そういうのは俺の隣にいる
しかし悲しいかな。お嬢様の護衛役ということで雄英に来てる俺は、現在お仕事モード。余計に事を荒立たせないように、大人しく円の中に立つ。
というかこの白線って、相澤先生が一人で描いたのかな? まあ、入学式に出ずにテストやるって知ったら誰も手伝わなさそうだけど。あ、ヤバい。一人で白線を引く先生を想像したらなんかおもろい。
なんてことを考えても、
「何時でもいいぞ」
どうしようか。やっぱりここはほどほどの記録で場を乗り切った方が良いだろう。
方針が決まったところで、俺は頭の中でイメージする。俺がかつて憧れた戦士たちの力の一端を。
――個性『リュウソウル』、発動。
俺が転生したことで貰った特典――もとい個性はリュウソウル。
これは文字通り、リュウソウジャーで出てきたリュウソウルと呼ばれるアイテムを生み出せる。これらは様々な種類が存在しており、種類ごとに異なった能力を持っている。
それだけじゃない。劇中ではリュウソウルはリュウソウケンという剣を使うことで能力を発揮するが、個性で作ったリュウソウルは持っているだけでその効果の一部を発揮してくれる。リュウソウケンで使うよりも効果は劣るが、一々変身する必要がないのと、
目的の物がボールを持っていない左手の中に現れたのを感じると、そのまま右手を弓を引き絞るように下げる。
「(頼むぞ、ムキムキソウル!)」
ボールを投げる直前、体中の筋肉が強化されそのままボールを投げる。
どうだ!?
「……539m」
相澤先生の行った距離に、A組から歓声が上がる。
俺としてもこの結果は満足だ。原作じゃ、爆豪が出した記録は約700m。これなら、余計な目を付けられずに済んだだろう。
今回使ったのはムキムキソウル。筋力を強化する能力だが、うまくハマってくれたようで良かった。
上手くいったことに安堵していると、原作通り相澤先生から除籍処分の話がなされた。
後は他の競技もほどほどにやればオッケーだな!
――メーデー、メーデー。私は今、相澤先生に特注のマフラーで引き寄せられています。
「お前、本気でやってねえだろ?」
……どうしてこうなった!?
順調に競技は進んでいたはずだ。ソフトボール投げで、お嬢様が個性『創造』で組み立て式の大砲出したときは目を疑ったが。お嬢様が作った物を片付けるの俺だから、助かったけど。
事の発端はラストの競技の50m走。原作じゃ、ラストではなかったはずなんだが、そこは良いだろう。そういうこともある。
しかし問題はそうじゃない。意外なことに誰も脱落していないことで21人となっているからか、最後は俺一人で走るように指示があった。公開処刑ですか?
で、いざ走ろうとしたら、マフラーでグルグル巻きにされて詰め寄られた。ヒロアカの主人公緑谷が、ソフトボール投げで例の原作のイベントをこなしていたが、あれと全く同じ構図である。
やめろ! 俺はオッサンに詰め寄られて喜ぶ癖は持っていない!
「その気になれば、お前他の奴らの記録簡単に超えれるだろ。なんでやらない」
「買いかぶり過ぎでは?」
「俺はこのテストが、現段階での自分の個性の限界を見極める為って言ったよな?」
すいません。そこだけ聞いてませんでした。……なんて正直に言えば除籍まっしぐらである。
「……お前が何を言わなくても構いやしねえが、本気を出していないと判断すれば、除籍処分にする。良いな」
マジかよ。内心泣きそうに、というか泣きながらスタート位置につく。
あそこまで言われてしまったら、手加減は出来ない。俺は個性を使って、右手の中にハヤソウルを生み出す。こいつの能力は名前のごとく、素早さを上げるもの。
そして合図と共に、能力をフルで使って走る。
『――1秒97デス』
『うぉおおおおおお!!』
個性を使っていれば5秒を切るのが当たり前みたいになっているが、一秒台をマークしたのは俺だけだ。
ちなみにお嬢様は2秒台後半。突きだした手からワイヤーを発射してゴールより少し奥の壁に差す。そしてローラーシューズに履き替えると、ワイヤーが高速で巻き取られ、あっという間にゴールしてしまった。
どうやら発射したワイヤーっていうのが、グラップルガンらしくワイヤー部分だけを中途半端に想像することでより強固になっているらしい。
にしても、今日は目を付けられたりして大変だった。ああ、この後もお嬢様の相手かぁ……。『体が火照るので一戦お願いしますわ!』だなんて、勘違いさせる気満々に言われて組手やらされそうで憂鬱だ。
どうやらこの世界の八百万百は、やはり性教育だけは受けなかったようです。
……今年はそれなりに目ぼしい奴らがそろっているようだな。
目の前でテストを受ける生徒たちを見て、俺、相澤消太はそう思った。
爆破の個性と天性の運動センスを持つ爆豪克己。
今は氷しか使っていないが、氷と炎を操れる
創造という個性の強みを存分に生かし、尚且つ武術の心得を持っていると思われる八百万百。
反動が大きいがそれに見合った力の個性を持ち、そして俺に僅かながらに見込みがあると感じさせた緑谷出久。
他にも大なり小なり、使える個性を持っている。あの実技試験の内容には不満もあるが、こうした個性の持ち主が集まりやすいのは事実だ。
だが、今から走ろうとしているこいつには、今の段階ではおそらく誰も勝てない。
――炎崎竜牙。個性『リュウソウル』。
最初に資料を見た時は、何よりもまず疑問が浮かんだ。
大抵の個性は名前を見ただけで、どんな能力か想像がつく。だがこいつのは予想がつかない。
それにその能力を見ても意味が分からない。このテストで、炎崎は実技試験で0P仮想ヴィランを倒したときの鎧を身に纏わない。だが、テストで確認できたのは筋力増強や、跳躍力の強化など、運動能力を強化するものだった。
はっきり言って異常だ。大抵の個性は、ある種の一定のラインを超えることはない。だが、炎崎の個性は明らかに普通の物質ではない鎧を作ったり、能力を強化したり、明らかに異様。
……個性は魔法であり、魔法ではない。
昔、個性の研究を行っていたある人物が残した言葉だ。絵本に出て来る魔法の様でありながら、しかしそれは現実じみたリアリティを伴っている。八百万の個性『創造』や俺の個性『抹消』など、一部例外はあるが、大抵はそういうものだ。
しかし炎崎の個性は、そのラインを軽々と飛び越えた。
見れば見るほどその全容が把握できないが、これだけは言える。こいつは全力を出していない。だからこそ、50mを走らせる前にくぎを打っておいたが……。
『――1秒97デス』
『うぉおおおおおお!!』
これがこいつの全力。素早さまで強化するとはな。能力だけを鑑みたら、あのビッグ3と並ぶかもしれない。
炎崎が本気で戦えば、おそらく他の奴らは負ける。それだけの実力がある。生徒たちを鍛えるのが俺の仕事でもあるわけだが、その間に炎崎も鍛えるわけだからな。
…………数日前、炎崎に関して校長から直々に聞かされた話がある。
校長曰く、八百万百の実家から遠回しな圧力があった。その内容が「八百万百と炎崎竜牙を同じクラスに配属すること」。
日本の財政界の重鎮からの圧力と言えば、大した能力のない息子娘を入学させろとかいうことが思い浮かぶが、どちらも真っ当に試験を合格している。不正入学なんてものには該当しないし、なにより入学の数日前にする意味がない。
その上でこの圧力がかかって来たと言うこと。この事から、俺と校長は、炎崎竜牙が八百万百の護衛ではないかと察しを付けた。ま、金持ちのお嬢様なら、ヒーロー志望だとしても護衛は付けるだろうな。
幸いなことに八百万家は、そう言った方面で悪い噂は聞かないので、そこまで警戒する必要もないだろう。
だが、俺の受け持ちになったからには特別扱いはしない。他の生徒同様に、平等に扱うさ。
翌日、炎崎と轟が教室で抱き合っていた。……不純異性交遊につき、除籍処分予定っと。何やってんだこいつら?
作者の趣味です。轟TSして良い?
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駄目に決まってんだろぉ!
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良いじゃんもっとやれぇ!