個性把握テストがあった翌日、俺とお嬢様は雄英へと向かっていた。
「昨日は楽しかったですわね!」
「……楽しかったかはともかく、入学初日からあんなものがあるとは、さすがは雄英、ですかね」
嘘である。俺はあの存在を始めから知っていた。
そのことを悟られないように、お嬢様の話に合わせているだけである。
「あら、何言ってるの? あれが普通なわけないじゃない」
お嬢様が「あらあら何言ってるの? 仕方ない子ね」みたいな感じで言ってきた。
くっそムカつく。昨日の組手で勝てなかったからって、ここぞとばかりに言ってきやがってるな。
「……お嬢様。そろそろヒーロー科の訓練があるでしょうが」
「分かってますわ。やり過ぎないように気を付けます。それより! 雄英の中でもお嬢様なんて呼び方で呼んでたら、要らない注目を集めますわ。ここは昔のように――」
「そろそろ教室に着きますよ、八百万さん」
「…………」
何だそのジト目は。ご要望通り呼び方変えたでしょ。
「どうしましたか?」
「百歩譲ってその敬語は良いとして、名前呼びではありませんの?」
「名字の方が自然ではあると思いますが」
「名前では駄目なのですか、リュウ!」
何故名前呼びにこだわる。原作じゃそうだろうが、この世界のアンタはそういうキャラじゃないでしょーが。
そうこうやり取りをしていると、教室に到着した。
呼び方を変えても護衛であることは変わらないので、先に扉を開けお嬢様を招き入れる。
お嬢様を入れたところで、後ろから声を掛けられた。
「少しいい?」
「はい? ……あなたは」
振り向いた先に居たのは、右と左で髪の色が違う一人の少女。顔の左側に追っている火傷痕が痛々しいが、その火傷痕も含めて顔立ちが整っている。
「あなたは轟凍火さん、でしたね」
「うん」
――轟。そう、あの轟である。この世界では、なんと轟焦凍が女の子になっているのである。
お嬢様の変化には戸惑ったが、これにはもっと意味が分からない。
「それで、何か用でしょうか?」
「…………」
動揺を顔に出さないように苦労しながら、用件を聞く。
しかし眼の前の彼女は、何を言うわけでもなく、俺の顔をジーッと見つめて来る。
「……あなたの名前は、炎崎竜牙。会ってる?」
「ええ、合っていますが、それが何か?」
「これに見覚えは?」
そう言って右手を突きだし、握っていた手を開く。
「それは……!?」
そこにあったのは、俺が見間違えるはずがないもの。
「なんでそれを「良かった……!」なっ!?」
どうしてそれを持っているのか聞こうとした瞬間、俺は凍火に抱きしめられた。
え、なんでだ!? というかヤバい、何がとは言わんが、こいつ結構成長してる。色んな意味でヤバい!
突然の抱擁に色めきだしたクラスの連中の声が聞こえる中、俺は背後から感じる危険な空気に冷や汗を流していた。
「……リュウ、随分と親しいようですが、その女性とはどういう関係でしょうか?」
底冷えするようなお嬢様の声が聞こえる。
そりゃ、護衛が仕事ほっぽり出して他の女といちゃついてちゃ、怒りもするわな。
だけど今回の事に関しては、俺も聞きたいことが
「何してんだお前ら。不純異性交遊なら問答無用で除籍だぞ」
……ある意味で絶対来てほしくない人が来てしまったようだ。
だが、このタイミングは非常にありがたい。
「轟さん。さすがにそろそろ」
「うん、いきなりごめん」
「いえ。それより、後で聞きたいことが」
コクンと頷いて席に戻る彼女を見届け、俺も席に向かう。
「後で話、聞かせてもらいますわよ?」
そう耳打ちしてくるお嬢様を宥める方法を考えながら……
やはり普通だった授業を終え、俺はお嬢様に引っ張られながら食堂へと来ていた。
「それで、轟さんとはどういった関係で?」
「お、落ち着いてってば百」
絶対零度の視線を向けるお嬢様を宥めているのは、初日から仲良くなった耳郎響香である。
轟さんにリュウソウルの件で話を聞こうとしたら、引きずられて食堂へと連行された俺を心配してきてくれたらしい。あと、純粋に話が気になるとか。
「あんな衆人の目がある中で厚い抱擁を交わすなど、並ならぬ仲ではないことは明白。さっさと白状なさい」
「そうは言われましても、私としても思い当たる節がなく……」
「では、彼女から折を見て話を聞くしかありませんわね」
「さっきそれをしようとしてたんじゃ……? と、とりあえず、昼も食べちゃわない? 午後からはヒーロー基礎学もあるし!」
響香が上手いこと場を取り直してくれたお蔭で、話の話題が午後の授業に移った。
「ヒーロー基礎学……一体何をするのか、楽しみですわね」
「それに今年は、あのオールマイトが教師として勤めているっていうし、そっちの方が楽しみだよね」
それからは比較的穏やかな時間を過ごすことが出来た。
そして時間は午後の授業まで進み、
「私が、普通に来た!」
教室にオールマイトがやってきた。
やっぱ画風が違うな。あれはどういう仕組みなんだろうか。
「今日のヒーロー基礎学でやってもらうのはこれ! 戦闘訓練だ! まずはこれを君たちに渡しておこう。個性届と要望書に沿って作られたコスチュームだ。着替えた後、グラウンドβに集まるように」
オールマイトの指示通り、A組の生徒たちはコスチュームが入ったケースを手に、更衣室に入る。
俺のコスチュームは、銀色の首元まで覆うマウンテンパーカーだ。あの擦ったらシュッシュッシュッシュ音が鳴る奴。
「なあなあ炎崎!」
「はい?」
着替えが終わり、お嬢様を待っていようかと考えていると、上鳴に話しかけられた。
「お前って、もしかして轟と付き合ってたりすんのか!?」
「いえ、そういうわけでは……」
「嘘つけぇ! あんなに抱き合っといてそんなわけねえだろお!?」
「というか、八百万とか耳郎とかとも仲良いよな」
「炎崎てめえぇええええええ!!」
何も知らねえお前らからすれば、良い思いしてるように見えるだろうな! 実際そんなもんじゃねえよ!
上鳴と峰田のせいでうるさくなった更衣室からどうにか抜け出して、女子更衣室の近くでお嬢様を待つ。
5分も立たずに出てきたお嬢様の姿を見て、俺はすぐにお嬢様の元に向かい、肩を掴む。
「――お嬢様」
「ひゃっ。な、なんですか」
一瞬、このバトルジャンキーらしからぬ声が聞こえた気がしたが、今は気にしない。
なんで、何でこの人は……
「お嬢様、すぐにジャージに着替えてください。それとすぐにサポート会社に改良を申請しておきましょう」
「何ですの急に……」
――こんな痴女同然の格好をしてるんだ!!
いや知ってたよ? 原作だってほぼ痴女同然だったもん! だけどさ、こんなバトルジャンキーになってるから、一縷の望みに掛けてたんだよ!
何で俺がこんなに焦ってるかって?
こんな状態で将来活動してみろ。肌面積が多すぎるコスチュームを見た御当主様に、何を言われるか分かったもんじゃねえだろ!
せめて体育祭までには布面積を増やさないと、俺が御当主様に何を言われるかは分からないんだよ。これが原因で消されたらどうするんだ!
「いや、あなた私の個性のこと知ってるでしょう? これだって、要望書のモノよりも布面積増えてるのですよ?」
サポート会社ぁ! 中途半端に増やしてんじゃねぇ! 実はちょっと願望は入ったりしてねえだろうなぁ!?
「そういえば竜牙。今、ヤオモモのことお嬢様って呼んでた?」
…………あ。
作者の趣味です。轟TSして良い?
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駄目に決まってんだろぉ!
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良いじゃんもっとやれぇ!